恋するタイムパラドクス 02

 ひとまず二人揃ってベッドの上に座ったはいいが、デュースは見ていてかわいそうなぐらいガチガチに固まっていて。そうなるよね、彼からすればほぼ初対面の女とベッドインしなきゃいけないわけだし。
 ここは年上で一応(未来の彼だけだが)経験のある私がリードしてあげるべきだろう。彼の膝に手を置く、それにすらびくっとデュースは肩を跳ねさせた。

「えっと、私が全部するよ。できる限り声押さえるから、瞼を閉じて好みの女の子とか、もしいるなら好きな子の事、考えてて」
「なんでそんなことする必要あんだよ」
「いくら夢でも初めてがほぼ見ず知らずの女とか嫌でしょ?」
「は、初めてなわけねーだろ! 勝手に人を童貞にすんじゃねえよ! 女の一人や二人ぐらい……」

 最初こそ勢いづいていたが、どんどん彼の声は尻すぼみになっていく。途切れたかと思えば、ギッと記憶にあるよりもギラついた瞳が睨み付けてくる。ただなんとなく涙目になっているせいか全く怖くない。

「つーか、お前の方こそいいのかよ。惚れた男いるんだろ」
「デュースだからいいよ」

 夢だからというのは言わなかった。例え夢だとしても相手がデュースでなければきっと拒んでいただろうから。
 即答した私に何故かデュースはきゅっと唇を噛んで、さっきよりも泣きそうな顔を見せる。どうしたのだろうと心配していれば、彼はじっと私を見つめてきた。そして「なあ」とデュースは呼びかけてきて。

「……名前」
「え?」
「俺だけ知られてるなんて不公平だろ、お前の名前教えろよ」

 彼のお願いにさっきまでのやりとりを振り返り、そういえば名乗ってなかったなと気付く。私だけが一方的に知ってて、ましてや今から性行為をするような状況。彼の言い分には一理ある。うん、全くもって正しいのだけども。

「……ごめん、言えない」
「なんでだよ」
「君の声、好きな人に似てるから呼ばれると変な感じがしそうなんだよ」

 似てるというか張本人なんだけど、幼い彼に手出しするという後ろめたさが既にだいぶあるので、ちょっとでも減らしたい。なので正直に告げてお断りさせてもらった。
 言い忘れていた自分グッジョブと内心褒めていれば、チッと大きな舌打ちが聞こえる。不便なので怒りたくなる気持ちはわかるけど許してくれ。私の精神衛生上のためにも。

「デュース、キスしてもいい?」
「……好きにしろよ」

 了承が貰えたところで顔を近づければ、彼はぎゅっと瞼を閉じた。その初々しい反応に微笑ましくなりながら、軽く唇を合わせる。それにデュースは小さく声を漏らして、長いまつげをふると震わせた。な、なんだろう、このすごくイケないことしてる気分……。
 何とも言えない気持ちになりながら、触れるだけのキスを何度か繰り返す。ならば突然ぬると彼が私の唇を舐めた。あ、これ舌を入れようとしている。そう気付いて私は慌てて口を離した。油断も隙もないな!

「なんでやめんだよ」
「ごめん、舌入れたりするのは苦手だから……」

 本当は苦手というか弱点なんだけど。デュースは基本不器用なくせにやたらディープキスが上手くて、されたが最後すぐに私はふにゃふにゃになってしまうのである。しかもあまりの技術に思わずどれだけ経験積んできたの?と以前尋ねたところ、お前が初めてだと恐ろしい答えが返ってきた。
 だから目の前の彼も既にあのテクを身に付けてる可能性は十分にあって。だからこそ主導権を握らせてしまうかもしれない行動は避けておきたい。
 むすっとわかりやすく拗ねている彼には悪いけども。ごめんねと頭を撫でれば「ガキ扱いすんな」とキレながらも彼は大人しく撫でられていた。
 ジャケット、ベスト、ネクタイ、シャツ、ズボン、順番に制服を脱ぎ捨てていく。単純な構造だけども、初めての時パジャマですら脱がすのにもたついていた彼の不器用さを考えると、ここは自分で脱いだ方がいいだろう。照明もないのに明るい場所でストリップとか恥ずかしさの極みだけども背に腹は代えられない。
 ショーツとサラシ一枚になった私を見て、デュースがごくりと彼が唾を飲み込む。巻いてる部分の内側へと噛ませた耳を取り出せば、サラシはしゅると音を立ててほどけていった。

「……でか」

 たじろぎながらも彼の視線は私の胸に釘付けである。私が知る未来の彼もよくこの胸をガン見してるので、全く同じ馬鹿正直な反応にやっぱりデュースなんだなと今更ながら思ってしまう。
 私はこの胸が嫌いだった。肩は凝るし、稽古するのに邪魔だったし、男の子からも女の子からも変な目で見られるから。
 でもデュースが「の胸なら何でも好きだろうが、というか感動しておっぱい!ぐらいしか思えなかったが、正直に言うと僕は大きいおっぱいが好きなんだ!! 巨乳が大好きなんだ!!!」と初夜で暴露したのを聞いているので、今ではこの胸になって良かったと思ってる。

「あの、触る……?」
「えっ」
「あんまり力込められると痛いから優しくしてほしいな」

 催促じみたそれを口にすれば、恐る恐る彼の手が伸びてきて私の胸を緩く掴む。埋まった指に沿って形を変える自分の胸が今日はなんだかひどくいやらしいものに見えた。既に大きいとはいえ、私が知るよりかは少し小さな掌のせいだろうか。

「すっげえ、やわらけえ……」

 やわらかさを確かめるようにじわじわと彼の指先に力が籠もっていく。それから下から掬い上げるようにたぷたぷと持ち上げて。
 そういった感じで最初こそ控えめに触れるだけだったのに、次第にデュースの手付きは遠慮がなくなっていって、今ではもにゅもにゅと両手で揉みしだかれている。

「ん、んっ」
「お前、鳴き声かわいいな……」

 大胆になったとはいえ、優しい手付きに思わず声が漏れる。デュースと初夜を迎えるにあたって勉強がてらに見たAVの女優さんはもうとんでもない勢いで喘いでいた。それがあまりにも印象に残った為に調べたのだが、こっちの世界ではそれが普通らしい。なのでもしかして物足りないかなと不安だったから、こんな状況でアレだけども彼の言葉に安心して。
 気付けばツンと上向いていた胸の先。仕方なしに始めた行為だったくせ、まるで期待しているかのような自身の反応にたまらず、ぎゅっと瞼をつむる。

「やっ」

 胸の膨らみを掌に収めつつ、デュースは親指と人差し指できゅっと乳首を摘まんでくる。二本の指の腹ですりすり撫でられて、その少しもどかしい快感に息が上がる。優しく擦られている胸の先がびりびりして、腰に甘いだるさが蓄積されていく。
 指が離れたならば、今度はぱふと胸の間へと彼は顔を埋めてきた。デュースの形の良い鼻がぴたりと谷間にはまっている姿はなんだか滑稽だけども、恋人のデュースもよくこれをやる。私にはよくわからないけど彼曰く男の夢、らしい。こんな所で感じるのもどうかと思うが、未来の恋人と被る姿に改めて目の前の彼はデュースなのだなと実感した。
 谷間から顔を上げてデュースはぱくりと私の胸の先を口へと含んでしまう。ただその舌使いはいつもよりつたない。だからなのだろうか、的確に母性本能をくすぐってくる彼へいつもとは違う意味できゅんとときめいてしまっていた。じゅっじゅっと音を立てて吸い上げる彼の鮮やかな金髪へ力の入らない指先を絡める。

「……デュース、なんだか赤ちゃんみたい」
「あ゛?!」

 すっかり母性に目覚めていたせいか、そうとしか思えない。その為、夢中でしゃぶりつく彼を見て浮かんでいた感想がうっかり零れてしまった。私の言葉にかかさずデュースは凄んでくるが、やってることがやってることなので全く怖くない。むしろそんな顔すらかわいいと思ってしまうのだから、もう末期だ。
 普段の彼ですら頻繁にかわいいと思うのだ。それがいつもより幼い彼となれば、いっそう思ってしまっても仕方ないんじゃないだろうか。しかも今の彼はいつも以上に余裕がない、そこがまた可愛く見えて。

「〜〜ッう゛あ゛」

 すっかりぱんぱんになった彼のズボンの膨らみをさすれば、びくんとデュースの体が跳ねる。うめき声を上げた彼はびくびく体を痙攣させた後、じわじわと顔を赤らませていく。涙目になった彼は唇を噛みしめ、ぷるぷると震えている。あれ、もしかして。

「デュース、服脱がすね」
「おまっ、やめろ!」

 たぶん今なら力が入らないだろうから、さくっとパンツごと彼が履いていたスラックスをずり下ろす。案の定思っていた通り、脱がした彼の下着からぬとと白い糸が引く。それにまた彼の顔に朱がさした。

「……笑いたきゃ笑えよっ!」

 やけくそ気味に叫んだ彼は今にも泣き出しそうだった。涙目で噛みついてくる姿にまた胸がきゅんきゅんしてしまう。あーかわいい、甘やかしたい。むくむくと湧き上がる感情に入っちゃいけないスイッチがパチンと頭の中で音を立てた。

「私でいっぱい興奮してくれたんだね……」

 彼の頭を胸元へと抱き寄せてよしよしと撫で回す。予想外の反応だったらしく、腕の中のデュースは固まっていた。そうして大人しく撫でられているうち、彼の肌が赤らんでいく。
 状況に頭が追いつかないのだろう。呆然としている彼の上の服も脱がして、ベッドへと押し倒す。胸を押しつけるように彼の体の上へと全身を乗せて。
 彼が吐き出していた精液を指に絡める。そうしてぬるぬるになった手で彼の性器を緩く握り込み、ゆっくり上下に扱く。

「デュース、痛くない?」

 こんなことをするのは初めてでよく力加減が分からない。だから不安になって尋ねてみれば、真っ赤になった彼はこくこくと勢いよく頷く。
 目の前の熱を帯びた耳がなんだか美味しそうでついぱくと唇で食む。手の動きはそのままに耳たぶを甘噛みすれば、デュースは声にならない声をあげて悶絶していた。耳、気持ちいいよね。未来の君がいつもやってることだよ。

「大きくなってきたね♡」

 扱くのを止めて、だらだら零れていた先走りを塗りたくるように指で亀頭を撫で回す。くちくちとわざと音を立てて指先を遊ばせる。それにまたこぷと先走りが滲んできて。
 赤くなった目尻、潤んだ瞳、切れ切れな息、目の前の彼はいつものデュースなら絶対しないとろけた顔を浮かべていて。先端をいじめられるだけでは物足りないのか、私の掌に擦りつけてくる。
 かわいいけれど心を鬼にして、きゅっと根元を指で締める。それに彼は絶望した表情を見せた。

「な、んで」
「こっちでするの、嫌?」

 彼の手を取って秘部へと導いた。触ってもないのにそこはもうぐちゃぐちゃで、ショーツの上から触れても濡れているのが丸わかりだろう。
 またしても硬直してしまった彼に異議はなかったと勝手に判断して、するするとショーツを足から抜く。案の定ショーツと秘部の間で糸を引くほど濡れていた。これなら慣らさなくても大丈夫だろう。
 身を起こして彼の太股の上へ跨がる。ごくりと彼が喉を鳴らした。彼が幼いという点を除いても、いつもとは随分異なる視点にまた興奮が募る。
 これが普段デュースの見ている光景なのか。不安げに、それでいて隠しきれない期待を緑色に滲ませながらこちらを眺める、さっき以上にかわいらしく見える彼の姿に、恋人のデュースが私との行為でがっついてしまう気持ちがなんとなく分かってしまった。
 腰を浮かし、腹に付くほど反り上がったそれに指を添えて支える。びくびくと手の中で震える彼の熱は凶悪な形なのに、なんだかとても可愛らしかった。濡れそぼった膣口へ彼の先端を宛がい、じわじわと腰を落としていく。

「頑張るから、気持ちよくなってね」

 ゆっくりと彼の熱が飲み込まれていって、彼の下生えに恥骨がぶつかる。なんとか全部入った。ただ相変わらず大きいせいで、奥の奥までみっちり詰まってしまっている。鍵が開く音は聞こえなかった、ということは彼がイくまで続けろということだろうか。
 ひとまず彼のお腹の上に手を置いて、中のものを馴染ませるように腰をゆるく前後にグラインドさせる。いつもと違ってゴムを付けていないせいか、中で脈打つ感覚がハッキリわかってしまう。夢だというのにクセになりそうで少し怖い。
 彼の様子を見ながら少しずつ腰の動きを大きく早くしていく。そういえばAVだと上下に動いてたなと途中で思い出し、動く方向を切り替える。
 動けなくなっては困る。だから自分の弱い所は避けて、ただただ彼が気持ちよくなるよう意識して上下運動を繰り返す。その勢いにあわせて胸が揺れる様にデュースの目は釘付けになっていた。本当におっぱい好きなんだなあ……。
 中が締まるように息を止めて、ひたすら腰を動かして。なすがままとろんと瞳を溶かして喘ぐ彼にどうしようもなく興奮してしまう。
 短い唸り声がデュースの口から零れて。手の下で彼の腹筋が震え、中に熱いものが広がっていく。それと同時にガチャンと金属音がドアの方から聞こえた。
 こんなこと初めてだったけど何とかなって良かった。はあ、はあ、とお互いの呼吸音だけが部屋を満たす。

「……鍵開いたね。外、出よっか」

 中から彼の熱を引き抜こうとしたその時だった。伸びてきた彼の手が私の腰を掴んで、ぐんと下から勢いよく突き上げる。

「ひあっ♡ やっ、まってッ♡ なん、で、ひぅうッ♡」
「出てたまるか……!」

 制止をかけても止めるどころか、彼はむしろ何度も何度も中を突いて。最奥にぐりぐりと押しつけられてしまえば、私はさした抵抗もできず悲鳴のような嬌声を上げることしかできなかった。
 そうこうしているうちに腹筋を使って跳ね起きたデュースに組み敷かれる。縦にも横にも無駄に余裕のあるベッドはそれをあっさり許してしまった。咄嗟に彼の体を引き離そうとした腕はデュースの手によってシーツへと縫い付けられてしまう。
 ごちゅごちゅと激しい律動、だがさっき避けていた弱点ばかり彼は穿ってくる。そうこうしているうちにまたお腹の中に熱が放たれて。もう三回目も出したのに中のものはいっこうに萎える気配を見せない。

「や、めて♡ おなかとけちゃう……♡」
「煽ってんじゃねえよ!」
「ひゃぅ♡ まだ大きくなって、ッんん♡」

 度重なる快楽に抵抗する気力が尽きたと理解したのだろう。私の腕を押さえ込んでいた手が離れる。
 だらしなく開きっぱなしだった口へデュースは唇を押しつけて、ぬるりと舌を差し込んでくる。喉奥へ引っ込めていた舌を彼は無理矢理絡め取ってきた。好き勝手に口の中を舐め回され、体から力が抜けていく。

「ハッ、お前キスも弱いんだな」

 何が楽しいのか、笑い声を立てる彼はいかにもワルい表情をしている。というか、キスもってことはさっきわざと弱い所避けてたのばれて。
 青ざめる間もなくまたデュースはキスを仕掛けてくる。無遠慮にかき混ぜる舌にだめだとわかっていても身を任せてしまう。
 何度も何度もデュースは唇を重ねてきた。その結果ぽーっと呆けている私へ、突然デュースは真剣な表情を見せて。何か言いたげに口を開いて閉じるのを繰り返していた。

「でゅーす」
「好きだ、お前が好きだ。なあ、お前は? 俺の事……好きか?」
「……すきだよ。でゅーすが、すき」

 きっかけになればと彼の名前を呼べば、意を決したようにデュースはそう尋ねてきた。そんなの考えるまでもない。だから彼の質問に思ったまま答える。嘘偽りない私の本心だ。なのにデュースは辛そうな顔をする。どうして?
 デュースが私の方へと上半身を折り曲げてくる。ぴったりと隙間無く肌は密着しているのに、何故か彼が遠くにいるように感じてしまう。

「だったらいいよな。お前の事、好きにしたって」

 耳元で囁かれた宣言はどこか悲しげな色を含んでいた。理由はわからない、でも私が今すべきことはわかってる。

「いいよ、おいで」

 彼の背中へと腕を回す。そうして再び始まった激しい律動と共に体はかき抱かれ、彼がもたらす快感と熱にただただ私は飲み込まれていった。

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