明月ばかりと思うなよ 03

 ——お父さん、お母さん、お兄ちゃん。
 こちらの世界に来て家族を恋しがって泣いたのは一度や二度のことじゃない。私は幾度となく夜更けにグリムがすっかり寝入ったのを見計らって、ベッドから抜け出し、いつも台所で泣いていた。
 ここなら、もしグリムがうっかり夜中に起きてきてしまっても、水を飲みに来たのだと言ってごまかせるから。

 そうやって頻繁に発散しておいたからか。ナイトレイブンカレッジでの生活において私が涙することはなかった。どんな事件や厄介ごとに巻き込まれようと、どんなに怖い目や苦しい目に合っても、虚勢を張り続けられた。
 こちらの世界のめまぐるしい日々の中で、新たに大切な思い出やたくさんの友人ができた。けれどいつかの別れに備えて、深入りしすぎないように気をつけて。そう考えていながらも、既にエースとデュースは私にとって特別な存在になっていたように思う。
 でも二人とずっと一緒にいることはできないだろう。だって私はこの世界にとって異物で、いつか別の世界に帰る人間なのだから。

 その事をひどく寂しく思っていたある日、私は彼に恋をした。
 親友達にそれを話したならば、二人とも祝福してくれて、エースは彼との仲を積極的に取り持ってくれたし、デュースは彼とのやりとりを語りたがる私に付き合ってくれた。
 そうやって今まで通り三人でいられる日々が嬉しかった。エースか、デュースか、どちらかに恋していたらきっとこんな風に過ごすことは難しかっただろうから。いつまでも大好きな二人と一緒にいるにはきっとこの形が一番なんだろう。
 気付いてはいけない何かを奥へと押しとどめて、これこそが最善なのだと強く自分に言い聞かせる。間違っちゃいけない。私と二人は……友達、だ。

 いつか元の世界に戻る。その気持ちを強く持ち続けたまま、毎日をやり過ごして。
 二年に進級したばかりの頃、学園長から元の世界には一生帰れないことを告げられて、私は——心が折れた。

 呆然としたまま、一緒に呼び出されていたグリムと共にオンボロ寮に戻った。それから何をするでもなく自室の床にへたり込み、ぼーっとしていた私へグリムは悲しげな視線を見せて。

「俺様は子分がずっとこの世界にいてくれて嬉しいんだゾ、でもはそれだけじゃないんだろ?」

 その後「俺様、見ないよう明日まで出かけてやるし、ゴーストも追っ払っておいてやるから、いつもみたいに泣けばいいんだゾ」と続けられた言葉に私がこっそり泣いてたの、グリム知ってたんだなあって。
 悪いことしたなと思っている間に彼は発言通りどこかへ去って行った。

 一人になってもう会えない家族のことを考える、でもいつもみたいに涙が出ない。
 今までのそれは弱音を全部吐き出して、また明日も頑張る為の儀式みたいなもので。元の世界に戻る、家族と再会する、そう拠り所となる目標があったからこそ実行できたのだ。
 でもその前提は崩れてしまった、今の私にはもう目指す場所も縋るものもない。私、これからどうすればいいんだろう。

 どんどん気分が落ち込んでいく中、ふと頭をよぎったのは想いを寄せる彼ではなく、親友である二人の姿だった。
 そうして気付けばスマホを手にしていた。無性に二人に会いたくて仕方なかった。でもいくら親友と言えど、突然「会いたい」なんて言われても困るだけだろう。もう彼らの寮の門限だって過ぎていたし。
 だから「こっちに永住することに決めました! 今度お祝いしてよ!」と、心情とは真逆の文面で二人にメッセージを送った。

 本当は帰れなくなった事も、胸が張り裂けそうなくらい苦しい事も書いてない。なのに二人とも息を切らしながら私の元へ駆けつけてくれた。そして私の顔を見た瞬間、二人揃って抱きしめてきて。
 こんな遅くに抜け出してくるなんてリドル先輩に怒られるよとか、エースってばそんなキャラだっけとか、デュース力込めすぎててちょっと痛いとか、なんでわかってくれたのとか、色んなことが頭に浮かんでは消えて。でもそれ以上に二人の体温に安心し、どんどん私の涙腺は緩んで、ついに瓦解した。
 会いたい、ひどい、どうして、頑張ったのに、怖い、嫌だ、なんで、寂しい。とりとめのない言葉を思うがまま喚いて、子供のように力の限りわんわんと泣きじゃくる。
 二人はそんな言われなどないのに私の八つ当たりじみた吐露を最後まで黙って聞いてくれて。優しい言葉と手付きと声色で宥めてくれる二人に今まで見ないふりをしていた不安を咄嗟に口にしていた。

 ——置いていかないで、と。
 私はこの世界において何にも持ってない。皆みたいに魔力もないし美人でもない、戸籍とか食べていけるような技術も持ってない。言葉通り、皆とは住む世界が違うのだ。
 だけど、グリムもエースもデュースも、他の友人達だって皆めきめきと頭角を現し始めてる。いくら頑張ってもどんどん皆が遠くに行くばかりで、いつまでたっても私は追いつけない。そんな私が二人と一緒にいられるとは到底思えなくて。
 今まで私の方が置いていく側だったくせに随分虫のいい話だ。だからこそ言わないようにしていたのに。涙を拭うことすらせず、気付けば感情のまま私は二人へそれを訴えてしまってた。

「これからも、ずっと、私と友達でいてほしい」
「できるもんならね」
「どうだろうな」

 精一杯勇気を振り絞った上で言ったのに二人の言葉は大変すげない。そこは嘘でも頷いてほしかったなあ。そう思ったけれど、この方が彼ららしいなと納得して。
 いつも通りに戻った二人を見てると変に冷静になってしまい、泣いているのが途端に馬鹿らしくなった。悲しくないと言ったら嘘になるけど今までの鬱憤を吐き出しきったおかげか、思いのほか気持ちは晴れやかで。
 そうして、やっと泣き止んだ私に二人が笑顔を見せる。ゆっくり瞳を細め、優しげな眼差しで「ただ」とエースは続けた。

「どんな形になっても、オレもデュースも一生お前を離す気はないんだよね」
「卒業しても、大人になっても、何があろうと僕らは三人ずっと一緒だ」

 そう告げてデュースが私の手を取った。そして「確かこうするんだろう?」と小指を絡めてくる。
 こてと首を傾げながら尋ねてくる姿は170cm越え男子にも関わらず、こんな時になんだけどもべらぼう可愛い。クッソ、意味わかんないぐらい顔いいな。
 思わず突然のあざと可愛さにIQ下げながら、その綺麗な顔についつい見惚れていれば、反対の手も同じように指切りされた。
 それの犯人であるエースは仲間はずれが不満だったのか、むっとしたように唇を尖らせてる。そんな顔が許されるのはイケメンだけなんだけどお前のことです、こっちもこっちで顔が整いまくってんだよなあ〜〜!
 両手で別々の相手と指切りしているこの状況。なんか端から見たらマヌケだろうし、なんなら怪しい儀式と思われてもしょうがない。あながち間違いでもないけど。あとあの有名な両サイドを男性二人に囲まれた宇宙人の写真っぽい。
 ……でも、ああ二人とも覚えていてくれたのかと嬉しくなってしまった。二人には彼の話をよくしていたけど、それと同じ位たくさん元の世界についても聞いてもらって。
 その中で指切りについて語ったことがある。確かお兄ちゃんの話をしている時だったか。元の世界では大事な約束をする時にこうするんだ、と手本を見せて。
 でもたったその一度きりだ。しかも二人には一生関係無い話なのに、こんな些細な事まで忘れないでくれたのか。喜びを隠しきれないまま、私は指切りげんまんの口上を唱える。
 それに「やっぱり物騒すぎない?」「痛い目合わせるってレベルじゃないな」なんて文句を言いながらも二人は付き合ってくれた。

 その後、川の字に並んで三人ベッドで寝ることになって。
 あの時はまだオンボロ寮に最初から置いていたベッドだったから、もう狭いどころの話じゃなかった。両サイドの二人がブーブー言ってたけど、たぶん囲まれてる私が一番窮屈だったに違いない。
 しかも朝起きた拍子にベッドが壊れてしまい買い換えるはめになった。でもかつてないほどぐっすり眠れたし、折れたベッドの足を見て笑い転げるぐらいにはすっかり私は元気になって。

 あの時は本当に嬉しくて、二人の事をもっと好きになって、こうしてベッドで三人一緒になるのは初めてじゃなくて——あれ、私、なんでこんなこと思い出してるんだろう。

 ——頭がふわふわする。
 すっかり過去へと飛んでいた私の意識を引き戻したのは口の中をぬるりと這いずるやわらかい何かで。薄く開いた瞼から見えたほぼゼロ距離のデュースの顔に、私の口蓋をやたらなぞってくるそれが彼の舌なのだと気付く。

「ん、ん……ぷはっ……」

 彼の唇が私を横向かせるため後頭部へ添えられていた手と共に離れていく。何とか息を整えようとする私の頬を前から伸びてきたエースの掌が撫でる。その大きな掌の温度があまりに心地よくて思わず頬ずりしてしまった。

ってば、かわいいことしてくれんじゃん」

 楽しげに目を細めたエースが唇を寄せてくる。そしてこの体勢になる前にされたようなキスがもう一度繰り返される。軽いリップ音を立てながら唇を啄むエースに気を取られていたなら、僕の事を忘れるなとばかりにデュースがお腹に腕を回してきた。
 エースからのキスが終わったところで、背後から私を抱えるようにして座るデュースへ身を任せもたれかかる。彼と密着する背中がいやに熱い。まだ汗ばむような季節ではないはずなのに、既にうっすら汗が滲んでいるような気がする。
 くたりと脱力していれば、むき出しの私の足をエースが持ち上げる。それから彼は足首、くるぶし、足の甲へと順番に小さく唇を落としてきた。日常ではまずあり得ない背徳的な光景に頭がくらくらする。
 エースはそれだけに止まらず、爪先に口付けておもむろに私の足の親指を口に含んだ。そして一本一本丁寧にしゃぶって、指の間を見せつけるように舐めあげてくる。べ、と伸ばされた彼の赤い舌、その扇情的な様がいやに目に付く。
 彼が舌を動かす度ぞわぞわと体の奥から這い上がってくる何かと、強すぎる視覚への刺激に耐えかねて、目を瞑って体を丸めようとしたその時だった。

「ぁ、あっ」

 うなじに歯を立てられ、小さく悲鳴を上げる。デュースにしてみれば本気ではないのだろう、だが急所を噛まれているという事実はエースから私の意識を奪うには十分過ぎた。
 ショートパンツを握りしめて震える私の耳へデュースが唇を寄せる。微かに当たる彼の吐息にすら私はびくつく。それに私って耳弱かったんだなと自分一人じゃ知り得なかった事実を教えられてしまった。
 ちゅと軽く耳の後ろに口付けて「お前の耳小さくて可愛いといつも思ってた」なんてデュースは囁いてくる。普段とは全く違う、聞き慣れない熱を孕んだ声に背が震えた。
 咄嗟に手で耳を塞ごうとしたがあっさり掴まれて剥ぎ取られる。私の両手首を押さえ込んだまま、デュースは私の耳の淵へ舌を這わせた。更には耳を丸ごと銜え込んで甘噛みされる。吸われて食まれて、ぴちゃぴちゃと差し込まれた舌が立てる音には脳を直接揺さぶられているみたいだった。
 視覚と聴覚を同時に犯されて、二人から与えられる暴力的な快感に翻弄されることしかできない。そうこうしているうちに、おなかの奥から迫り上がってくる未知の感覚。
 それが怖くてたまらない。なのに逃がす方法がわからず、ただただ二人のなすがまま。意図しない甘ったるい声が勝手に口から溢れて押さえられない。

「んん〜〜〜ッ!」

 そして突然、頭から爪先まで強い電流みたいなものが走って、びくんと私の体は大きく跳ね上がった。
 私の様子がおかしいことに気付いたのか、二人とも私の体から唇を離す。手首をデュースに掴まれたままだったから崩れ落ちることはなかったが全身から力が抜けていた。は、は、と小刻みな呼吸しかできない。普段よりも早すぎる心臓のどくどくという音が体内でいやに響いていた。
 ぱっとデュースが手を離したことで私の体は自然と後ろへと倒れ込む。頭がくらくらして全然考えが纏まらない。いったい、なにがおきて。

「前くすぐったのでわかってたけど、って本当敏感だよな〜」
「ひ、ぁ」

 エースの指先が服の上から軽くへその辺りをなぞる。元々くすぐったがりだけど、それでも過剰なまでに反応してしまう。普段ならちょっとこそばゆいだけなのに。
 首筋、手の甲、脇腹、足の裏、ぱっと浮かぶだけでも私の弱点は多い。あとはさっき耳も発覚したっけ。これについては元の世界での友達から散々ネタにされたし、この二人も知っている。
 先程エースが言った通り、実際くすぐられたから。このメンバーでたまたまやってたサスペンス映画を使って犯人当てゲームをやったのだが、見事に私だけ外してしまい、その罰ゲームがくすぐりだったのだ。
 二人とも容赦なくくすぐってきたものだから、軽く呼吸困難になるくらい笑い転げることになって。そんな事思ってる場合じゃないのに、懐かしいなあなんてつい浸ってしまう。

「……相変わらずエロいな」

 だがそんな微笑ましい気持ちはデュースの一言ではじけ飛んだ。何かの聞き間違いだろう、そう思って首を回して彼を縋るような目で見る。なのにデュースは否定せず、恍惚とした表情を取っていて。えっ。

「今みたいに真っ赤になった頬も、上がって切れ切れな息も、涙目になってるところも、全部かわいくて、いやらしかった」
「ま、どっかの誰かさんは筋金入りのニブチンだから、オレとデュースがあの時のお前をそんな目で見てたなんて知らなかっただろうけどさ」
「でも色っぽくて当然だな。絶頂した時と同じ顔なんだから」

 酔っているのを抜きにしても、きっと色々と理解が追いつかない。あの時二人ともそんな事考えて、というか絶頂って、えっ。じゃあ私、足と耳舐められて気持ちよくなって、その末に……? えっちの経験どころか、一人でシたことすら殆どないのに……?
 衝撃の事実にぐるぐる目を回す。思考が纏まらないのはお酒のせいなのか、それとも二人にもたらされた快楽のせいなのか、どっちにしても今の私がひどく混乱していることには変わりない。
 そうやって放心している間に身をかがめたエースが、ぐいと私の足を顔の方へと押し込んだ。折り曲げられた足へまたしても彼は唇を寄せて。
 たださっきとは逆にエースの唇は爪先から上へ向かって移動していく。それから膝の裏へキスした後、エースは太股に向かって舐めあげてきて。ショートパンツの裾をずらされ、内股に軽く歯を立てられる。きわどい場所への愛撫に私は悲鳴じみた嬌声をあげていた。
 デュースはデュースでさっきから私の首筋を撫でたり、優しく耳を揉んだりしている。絶妙な力加減のせいで、笑い転げたり痛がったりして雰囲気をたたき壊すことはできそうもない。むしろ決して色めいた動作ではないはずなのにただただ気持ちいい。ぞわぞわと甘い痺れが体中へと広がり、再び昂ぶっていく。

、上脱がすから」
「ッ、いや!」

 ただ熱に浮かされていた意識はエースの一言で一気に引き戻された。足の愛撫を終えた彼がTシャツを捲ろうとしていたのに対し、私は咄嗟に声を上げて身をよじった。
 それからTシャツの裾を握って下へと引っ張り、精一杯の拒絶を示す。いやいやと子供のように頭を振る私に二人の手が止まった。

「む、胸はやだ……」

 酔っているせいでいつも以上に緩い涙腺からじわじわ涙がにじむ。散々よがっておきながら今更もったいぶるなと思われても、ここは見られるのも触られる嫌だった。
 胸を両腕で庇う。それから私はまたぐずつきはじめてしまった。こんな態度じゃ呆れられても仕方ない。でも二人は面倒がる様子も怒った気配もなくて。

、なんで胸は嫌なの?」

 私の様子を窺いながら口にしたエースの声はどこまでも優しい。その泣きじゃくる子供に尋ねるような声色は私を甘やかす時と同じものだった。デュースも言葉こそ発しないものの、髪を撫でる手付きは私を宥めるそれだ。
 二人とも普段は手がかかるし甘え上手なくせ、ふとした拍子にこうしてお兄ちゃんっぽさを発揮する。弟と一人っ子でありながら、なんでこんな甘やかすのが上手いんだ。ずるいでしょ。もちろんお兄ちゃんとこんなふしだらな真似はしないけど、本来末っ子気質の私は二人のこういった態度にとことん弱かった。
 だから恥ずかしくてたまらないのに、うっかり私は素直にそれを口にしてしまう。

「ほ、他の女の子みたいに……胸、ないから。それで、二人に、嫌われたくない……」

 私が貧乳なんてことは二人ともわかってるだろうけど、実物を見たり触ったりするのはまた別だと思う。男の人って大きい胸が好きだっていうし、二人に言い寄る女の子はみんな私より可愛くてスタイルが良くて。
 今のところ特定の彼女がいたとかそういう話は聞いてないけど、モテモテの二人のことだから巨乳に見慣れているはず。だからきっと私のつまらない胸なんか見たらがっかりさせてしまうだろう。
 幻滅されたくない、嫌われたくない、だだを捏ねながら身を縮める。そんな私を眺めながらデュースは気まずげな様子を見せて。

「……あーその、さっきから見てるが、むしろ興奮してるから安心してくれ」
「えっ。み、見てる、って」
「そんな襟ぐりぐでぐでの服着てたら見えるに決まってんじゃん。オレ達、ただでさえ身長差あるんだから」

 エースの指摘に顔から火が出る思いだった。羞恥心から、ぷるぷると体が震える。
 デュースはもろに見たと言ってるし、エースも台詞からして同じなのだろう。二人してどこに目をやってるんだ。おっぱいが大きかったら谷間が見えるだけ、でも私みたいに小さい胸は下着まで丸見えになる。なのに今日に限ってブラジャー着けてない、ということは。

「へ、へんたい! ばか! ばか! 二人ともきら……きらいじゃないけど、ばか!」
「無防備すぎるが悪いんだろ。でもこれでわかっただろ、オレもデュースもお前の胸が見たいし触りたいの」
「だから腕をどけてくれないか?」

 普段ならもうちょっとマシな罵倒ができるはずなのだが、今の私はショックのあまり小学生レベルまで語彙力が下がっていた。きゅうと唇を噛む。
 こんなぺったんこ見て触って何が楽しいんだ、正直ジャックやセベクの方が大きいぐらいなんだぞ。そうじゃなくても女の子入れ食い状態のくせに、わざわざ私を選ぶなんて二人ともやっぱりとんだ変態だ。
 ここで無理矢理事に及ぼうとするなら容赦なく殴ってやるのに。でも二人ともお伺いをたてただけで無理強いせず、ただただ私の判決を待っている。そのいじらしい姿にほだされるのに、そう時間はかからなかった。

「……一言でも文句付けたら二人とも去勢してやる……」
「お前が言うとシャレにならないぞ……」

 なんてデュースがぼやいているものの、あいにく私は冗談のつもりで言ってない。だからなのだろう、私の本気を肌で感じ取ったらしいエースは何も言わなかった。
 腕を下ろせば、エースによって首元までするするとTシャツを捲り上げられる。そして露わになる、ささやかすぎる胸。ひやりと触れた外気のせいで、そこへ集中する二人の視線の熱っぽさをいっそう感じてしまう。

「デュース、お前胸触ってなよ」
「いいのか」
「だってお前、酒盛りの間、隙ありゃの胸ずーっと見てたじゃん」
「エース! お前!」
「ってことでオレこっちな」

 ムッツリぶりを暴露されて怒るデュースをエースは気にも止めず、私の手を取ってその甲へ口付ける。それを見てこれ以上争っても無駄だと悟ったのか、デュースの手がおそるおそる私の胸へと伸ばされた。
 そうして私の胸はデュースの大きい手に全部包み込まれてしまう。続けて感触を確かめるようにゆるゆる揉まれる。そのもどかしい刺激に、はあと熱い吐息が溢れた。

「さっきので分かったと思うけど指って性感帯なんだよなー」

 「あとは手も」と呟いてエースが私の掌を軽くひっかく。むずかゆいような感覚を残したそこをすかさず彼の舌が這って、その後ちゅうと軽く吸い付かれた。そんな些細なはずの刺激が信じられないくらい気持ちいい。
 指の股を舐めながらエースがチラとこちらを見る。そのどこか倒錯的な情景と色めいた視線に耐えかねて顔を逸らす。彼の方がよっぽど卑猥なことをしているはずなのに、どうして私ばかり恥ずかしいと思ってしまうんだろう。
 胸と手、異なる快感を別々の場所からもたされて、身もだえる私の口からはしたない声が上がり続けている。さっきからじくじくとおなかの奥が疼いて、なんだか切ない。

「あー、あっつ」
「……も脱ぐか?」

 エースが服を脱ぎ捨てて下着姿になる。背中越しの布の感触からしてデュースは上だけ脱いだみたいだ。あ、デュースが組んでるあぐらに私の上半身が乗っているから脱ぐに脱げないのか。
 デュースの質問に頷く私へ「じゃあ、ばんざいして」とエースが促す。その通りにすれば、仰向けに寝転んだままなのに、器用にもTシャツは脱がされて。ついでにショートパンツも両足から抜けていった。あまりにさらっと手をかけられたせいで異を唱えることすらできかったけど、どうせ抵抗する気なんて端からない。
 おへその周りをエースの指先がそっとなぞる。それから更に下へと彼の手が移動して、触れる直前にぴたりと止まった。

「ここも触っていい?」

 さっきまでは好き勝手してたのにどうして今更聞くのか。意地悪のつもりなのかと思ったけど、盗み見た彼の顔はいつもみたいに笑っておらず、真剣な表情を向けていて私を案じてのことだとわかってしまう。
 ……そっか、さっき胸を嫌がったから。ならば真面目に答えるべきだとは思うのだが、言葉に出すのが恥ずかしくて何度も首を縦に振る。
 私の許可を得たのを確認したエースが下着の上から秘部に触れる。軽く指先を押し込まれただけで、ショーツへじわりと愛液が染み出す。かつてないほど濡れていることを実感させられて、恥ずかしさに思わず自由だった腕で顔を隠した。

、顔見せてくれ」
「ひゃっ」

 一度離れていたデュースの手が再び胸を包む。胸の下をすりすりと撫でる指が生み出す快感にねだるように腰が浮く。殆ど無い膨らみのせいで、ぷくりと尖った胸の先がひどく目立つ。
 着々と思い知らされる己の卑猥さにいっそう羞恥心は増えていくばかり、それに強制されたわけじゃない。なのに私は顔を覆っていた腕を下ろしてシーツを掴んでいた。
 そうしてデュースの手付きに気を取られていた間に、私の下着をエースは脱がしていて。しかも彼の頭が私の足の間に埋まっていた。
 待って、と言う制止の声は容赦なく押しつけられた湿った熱にかき消される。秘部全体をねっとり舐め上げられ、びくびくと腰が震えた。
 たっぷり唾液を纏わせた舌が陰核を這う。舌で優しく押しつぶされたり、転がされたり、そのたびに走る強烈な快感にまともに息もできない。さっきから何度も何度も上り詰めて、呂律が回らない私はただただ喘ぎ続けていた。
 再びエースの舌が秘部へと戻る。もう嫌というほどほぐされたというのにまだ許してくれないらしい。尖らせた舌先が中へと滑り込む。愛液を掻き出すように抜き差しされ、じゅると下品な音を立てながら啜られるのが恥ずかしくて。
 止めてほしいと思っているのに、馬鹿になった頭はもっととばかりに腰を揺らす。開きっぱなしの口から飲みきれなかった唾液が零れていた。

「ひッ、あ」
「ははっ、すっげートロトロじゃん……でも痛かったらちゃんと言えよ」

 やっと口が離れたと思ったら、今度はエースの指がゆっくり埋められていく。すりすりとおなか側を撫でるようにしながら、エースは指をゆっくり抜き差しする。様子を窺いつつ、徐々にエースは本数を増やしていき、気付けば彼のあの長い指を私は三本も軽々咥えてしまっていた。
 動き回る指がある一点に触れた時、自分の意志とは関係無く私の中はきゅうと締め付けてしまう。それによってそこが私の弱点だとバレてしまった。マズいと思った時にはもう遅い。エースがニッと口角を上げる、見るからにわるーい顔だった。
 それからというもの、エースはさっきわかった弱点を重点的に指の腹で押し込んでくる。その度におなかの奥からじゅわと愛液が溢れてきて、自分の体から出続けてる粘着質な水音は一向に止まりそうにない。
 デュースによる胸の愛撫による快感も相まって、私はずっと高みに上り詰めたままだ。目の前がちかちかする。浅い呼吸しかできず酸素が足りてないのか、私の頭はぼーっとするだけの役立たずでしかない。
 今の私はきっとひどくみっともない顔をしている、声だって発情期の猫みたく甘ったれた上にやかましいだろう。なのに目の前の二人ともそんな私に欲情している。そして私もまたそんな二人に興奮してるなんて。

「念のために確認なんだけどさ、ってこういう事……初めて、だよな?」

 何度目かわからない絶頂を迎えた後、示し合わせたかのように二人が手を引く。それにより私が何とか息を整え、少し考える余裕ができた頃、エースに質問される。
 ……この乱れようでは信じてもらえないかもしれないが、バリバリの処女である。それもお兄ちゃんの隠してたAV見てうそくさいなーとか笑ってたり、試しに自分で胸揉んで気持ちよくねえなって事で興味失ったぐらい性欲少なめ自慰経験すらほぼゼロの。そのくせ自分でもちょっと引くレベルでアンアン言ってたけど……自分があんなド淫乱だなんて知らなかったし知りたくなかった。きっと二人が経験豊富なせいだ、そうに違いない。
 なんて事を考えてしまい、だいぶ戸惑いつつも肯定すれば優しく頭を撫でられる。ここでそれはずるい。

「えーっと……後ろからの方が痛くないって聞くけど、どうする?」
「……?」
「あー、この体勢のままするのと、犬みたいに四つん這いになってするの。どっちがいい?」

 エースの言葉の意味を考えて、ああ私今から取り返しのつかないことをしようとしてるんだなと気付いてしまう。
 散々醜態を晒しておいてなんだけど、まだ最後の一線は越えてない。二人と友達でいたいなら、きっとこれが引き返せる最後のチャンスだ。
 今ならまだ全部お酒のせいにできる、ここで寝オチして明日何も覚えてないって誤魔化せば。それでもし寝ている間に食べられたとしても酔いの過ちだって言えるから。冷静になれ私、二人とずっと一緒にいたいんだろう?
 ——だが、やっぱり私の沸騰したように熱い頭はちゃんとした判断力を失ったままらしい。

「…………顔、見れないのは、やだ」

 咄嗟に私の口から出ていたのはここで一番出しちゃいけない答えだった。
 答えを聞いて何故かほっとした様子を見せたエースは「ん、りょーかい」と私に告げて、瞼にキスしてくる。続けて彼はデュースへと向き合った。

「で。そういうわけなんだけど、デュース」
「エース、お前が先でいいぞ」
「え、いいの?」
「お前の方が器用だし、未経験の僕よりかは勝手が分かってる以上、が初めてならその方が良いだろう」
「……いや、オレもしたことないんだけど」

 エースの聞き捨てならない言葉にデュースが『何を言ってんだお前』と言わんばかりの顔をしている。たぶん私もまったく同じ表情をしていることだろう。
 四つの疑いの眼差しにエースは納得いかない様子だった。そんな態度を取る前に自分の行動を思い返してほしい。

「童貞は足舐めとか指フェラは普通しないと思うんだが……」
「くすぐったがりにはめちゃくちゃ有効とか書いてあったらやるしかねーじゃん!!」

 私の内心をそのまま反映したかのようなツッコミを決めたデュースにエースがキレ気味に反論する。
 そういえば、部屋に置いてたバスケの技術書とか、得意科目が明確な答えは出るが根気のいる魔法解析学だったり、エースって意外と研究熱心なタイプだったなあ……。いや、私からすれば何調べてるんだって感じだけども。
 っていうか全員初めて? あんな頭おかしくなるぐらい気持ちよかったのに? ずっとひんひん言ってた私が言うのもなんだけどウッソやろ。そもそも二人とも例えがちょっとアレだけど誘蛾灯かなってレベルでモテまくってんのになんで?

「ぅ……ん、っ……」

 またどこかに飛びそうになっていた思考を引き留めたのは重ねられたエースの唇だった。突然のことだったから瞼を閉じ忘れて、しっかり彼の赤みのひかない顔を至近距離で見てしまう。
 角度を変えながら、ちゅ、ちゅ、と合わせられる唇はひどく熱い。そのやわらかさと温度が心地良く、うっとりして目を細めてしまう。ぐだぐだになっていた空気が一変する。

「……好きだよ、

 告白するエースの熱を帯びた声に胸がぎゅっと締め付けられる。
 二人と友達でいたいなら、その言葉は聞くべきじゃなかった、言わせるべきじゃなかった。せめてその場で払いのけなきゃいけない。そう、わかってるのに、私は彼のその真摯な告白にときめてしまっている。
 酒が抜けて素面になった明日の私は絶対死ぬほど後悔してることだろう。でも今の私は彼の想いが嬉しくて仕方なかった。だから、もう知らない。明日なんてもうどうでもいい、明日の私がどうにかしろ。今はただ、彼の想いを受け入れたい。

「デュース、胸弄っといてあげてよ。その方が気が紛れていいだろうし」
「わかった」

 エースとのやりとりを終えてデュースの親指が胸の先を撫でる。くにくにと捏ねるような手付きに自分のものとは思えないような高い声がこぼれていく。
 そうしていた中、エースが私の両足を左右に大きく割り開き、その間を陣取った。濡れそぼった秘裂から愛液をエースの指が掬い取って陰核へ塗りたくるようにして押しつぶす。
 その刺激に体の奥からこぽと愛液が溢れてくる、それがお尻を伝ってシーツを湿らせた。ひくひくと物欲しげに蜜口が動いているのが自分でもわかってしまう。
 いつの間にかエースは下着も脱ぎ捨てていて。すっかり大きくなった彼の性器が秘裂へと擦り付けられる。くちくちといやらしい音に脳が焼き焦げそうだと思った。
 ひくつく蜜口へ熱の塊がひたりと密着する。思わず怖じ気づいて引いた腰をエースがぐっと掴んだ。ぐちゃぐちゃに濡れていたせいで、押し当てた先端があっけなく入り込む。そして、くぷくぷと音を立てながら質量を持った熱がゆっくりゆっくり奥へと進んでいった。その光景が直視できず、思わずぎゅっと目を瞑る。

「ッは、せま……」

 突き当たりにエースの熱がぶつかる。下げた視線の先でエースの腹筋が私の足の間にぴったりくっついていた。あんな大きいのが全部収まっちゃったのか。
 おかげで割り拓かれた私の胎内は彼の熱で満たされて少しの隙間もない。信じられないところまで入り込んだそれがびくびくと脈打っているのを感じ取る。

「あ……ごめん。、痛い?」

 途中ほんの一瞬ぴりっとしただけで破瓜の痛みは殆ど無かった。でも血が出てしまったらしく、それに気付いたエースが心配そうに尋ねてくる。
 けどエースの方がよっぽど苦しげな顔をしていた。いつも余裕そうな彼の見慣れない姿にきゅうと胸が疼く。
 だからエースに笑いかけて「へいき」と返したけれど、掠れた声ではちょっと説得力がない。それに潤んだ視界からして知らず知らずのうちに涙が浮かんでいたのだろう。そのせいか、胸を弄っていたデュースの手は移動して私の髪を梳くように撫でていた。

「エース、私、大丈夫だから、動いていいよ……」

 多少の圧迫感はあるものの、奥に当たってからは動かさずにいてくれたおかげで、すっかり私の中は彼の大きさに馴染んでいた。それどころか、私の中の肉は彼の熱に絡みついて離そうとしない。まるでこうなっていることこそ自然とばかりに。
 エースの腕に触れながら促す。それに彼は何も言わず私へキスして腰を引いた。エースはどっちかと言えば普段おしゃべりなのに、どうやら今の彼には喋る余裕がないらしい。眉を寄せた彼らしくない表情がひどく色っぽかった。

「ふあっ、あっ、ぅ……んっ……」

 中がエースの熱で擦れる度、果実が潰れるような音が立つ。ぐちゃぐちゃと、そのいやらしい響きが自分の体から出ているものだと思うと頭がおかしくなりそうだった。
 ベッドの軋み、擦れるシーツ、ぱちんとぶつかった肌。情事を感じさせるそれらの音に否が応でも追い立てられていく。

、心臓の音すごいな」

 ぺたりと私の胸に掌を当ててデュースが呟く。肉がない分クリアに聞こえるのだろう。それまであまり意識していなかった自分の心音は彼の指摘した通り、我ながら酷い事になっていて。その馬鹿げた動悸をはっきり彼に読み取られているのが、なんだか恥ずかしくてしょうがない。

「こんなにも僕達にドキドキしてくれているのか……かわいいな」

 デュースからかけられた言葉に、私はきゅうと中のエースのものを締め付けてしまう。完全に無意識の反応だったが自分でもわかった以上、エースに伝わらない訳がない。
 さっきまでの必死な表情から一転、にやーっと普段よく見る意地悪な顔をエースが浮かべる。悪い予感しかしない。

ってば、かわいいって言われるの好きなんだ」
「そうなのか?」

 違うとすぐさま反論したかった。だが図星を突かれた私は、ぱくぱくと口を開閉させることしかできない。大根役者どころの話ではない。これではもうその反応自体が答えを言っているようなものだ。
 エースの手が右胸の先をくりくりと弄ってくる。それにきゃんと仔犬のような鳴き声を私は上げていた。反射的に両手で口を覆うが、もう遅い。

「かーっわい♡」
「やっ」
「感じすぎてとろけた顔も、オレの手に簡単に収まっちゃう胸も、一生懸命受け入れてくれるここも、ぜーんぶかわいいな」

 繋がったままなのに身を乗り出し、ここぞとばかりに甘ったるい声で責め立ててくるエース。くるりと接合部の周りを撫でられて私は声にならない悲鳴を上げる。
 その胸を突っぱねるものの、全く腕に力が入らない。貫かれる前から何度もイって、さっきからも幾度となく軽い絶頂を迎えていたから。
 抵抗と呼ぶにはあまりにもお粗末なそれはもちろんストッパーになるはずがなくて。

「……今も、普段のお前も、すっごくかわいいよ」

 汗で張り付いた前髪をエースの手が払ってくれる。そんな些細な、けれど優しい手付きに心臓が強く脈打つ。ぼうっと彼の手を眺めているうち、ばちりとエースと視線がぶつかった。一心に向けられた熱い眼差しが、さっきまでの冗談めかした雰囲気を完全にかき消す。
 気持ちよすぎて目を開けていられない。指で探り当ててた中の弱点へ重点的に擦りつけたり、ギリギリまで抜いて中を味わうようにゆっくり腰を進めてきたり。二人の手でぐずぐずにされた体は単調に抜き差しされるだけでも感じ入ってしまっていたのに、エースは私の反応がより良い動きを追求してくる。とんとんと奥を優しくノックされるのが、わけがわからないくらい気持ちいい。

、初めてなのに奥、きもちいいんだ?」
「ご、ごめんなさ」
「エースは責めてる訳じゃないから謝らなくていいぞ。……そうか、奥が良いのか」

 私ばっかり気持ちよくなってるから怒られているのかと思ったけれど、そうじゃないらしい。
 今更だけども、絶えず上がる自分のふしだらな声に耐えかねて唇を噛みしめれば、すかさずデュースが「こら、噛むならこっちにしろ」と咎めて私の口元へ彼は指を持ってくる。
 そのまま入り込んだ彼の指は無遠慮に口の中を掻き回す。上からも下からも響く水音と快感に翻弄されて、どろどろに溶かされていく。二人が触ってるところが全部気持ちいい、こんな底なしの快楽があるなんて知らなかった。
 すりすり私のおなかを撫でていたエースの掌が軽く押し込まれる。それに中の存在を改めて認識させられ、媚びるように私の体は締め付けて。

、好きだよ。ずっとずっとお前のこと、好きだった」

 まっすぐ見つめながら告げられた言葉に、すっかり馬鹿になった私の頭は「うれしい」と言ってはいけない本音を返してしまっていた。
 私がつい口にしたそれにエースはいつものどこか皮肉めいた笑みではなく、心から喜んでいるのが伝わってくるような微笑みを浮かべて。
 指を絡められてしっかりと手を握られる。安心するのに同じ位ドキドキする。気付けば無意識のうちに私はエースの手を握り返していた。

「っふ、あ、えーす、えーす、ん、んんっ」

 穿っていた熱が最奥まで入り込んで、エースの体がぶるりと震える。内壁のひだを隙間なく埋めるかのよう、彼が吐き出した欲が中へと注がれていく。あつい、きもちいい。子宮を浸すその熱さにおなかの中から溶かされてしまいそうだと思った。
 ずるりとエースの熱が体から引き抜かれる。それに追従するように中に出された彼の精液が奥から溢れてきてシーツへと垂れていった。
 今にも眠ってしまいそうな位くたくたで、もう指一本動かせそうにない。そんな中、二人が移動して位置を変える。かちゃかちゃと金属が擦れるような音が前から聞こえた。

「すまない、もう少しだけ付き合ってくれ」
「あ」

 ぐったりしていた私の体がデュースの胸へと引き寄せられる。そして向き合うようにして彼の足の上に跨がる形となった。さっきのはデュースが下を脱いだ音だったらしい、お腹に宛がわれた剥き出しの彼の高ぶりに身震いしてしまう。

「ちょっとデュースさーん、そんなべったりくっつかれたらオレ何にもできないんだけど」
「頑張ってくれ」
「オレの扱い雑すぎんだろ。ま、いいけど」

 私の背後から不満の声を上げるエースをおざなりにあしらって、デュースが口付けてくる。触れるだけのキスがだんだん深くなっていって、貪るような荒々しいものへと変わる。ねじ込まれた彼のそれに自分の舌は半ば強引に絡めら取られ擦り合わされる。息が苦しい、そのくせ吐く私の息はひどく甘い。唇がなんだか腫れぼったくなるほど執拗に吸われて。
 デュースの体に抱きつきながら、呼吸まで色付くようなそれに夢中になっていれば、背筋にむずむずした感覚が与えられる。デュースの手は私の腰とおしりを支えてどちらも塞がっていた。だから産毛を逆立てるように触れるこの手はエースのものなのだろう。
 脇の下から体を持ち上げられ、蜜口にデュースの切りっ先が宛がわれる。ぷちゅと気泡が弾けるような音が立って、二人分の体液でぐずぐずのままの中へ一番太い部分が食い込んだ。

「あ、あ、あ」

 腰へ持ち直したデュースの手にぐっと力がこもり、ずぶずぶとデュースの熱が私の中へと飲み込まれていく。圧迫感に息が詰まる。
 混ざり合った体液のぬめりに助けられ、思ったよりも深く彼の熱が届いてしまった。そうしてお互いの恥骨がぶつかって。衝撃にはくはくと唇がわななく、見開いた目からぽろぽろ涙が勝手に落ちていった。

「う、うう、ふか、ふかい、こわいぃ」
「……おい、デュース。お前泣かせんなよ」
「う゛……す、すまない」

 背後から苛立ったエースの声が聞こえてびくついてしまう。そうしてすっかり萎縮してしまった私の口をデュースが塞ぐ。先程の喰らい尽くそうとするようなキスではなく、宥めるように優しく唇を吸われて。続けざまに目尻の涙を舐め取られる。

「奥が良いと聞いたからこの体位にしたんだが……苦しいか?」

 自重のせいでより深く繋がってしまうのだろう。思わず怯えるほど奥までデュースの熱に暴かれている。おかげで圧迫感が凄い。
 でもそれだけじゃない。彼に満たされてるという充足感を喜ぶ自分もいて。決して止めてほしいわけじゃないのだ。だから私が欲しくてしょうがない、そんな目をしているデュースを拒むことはできそうもない。

「デュースは……気持ちいいの?」
「えっ。僕は、その……すごく、気持ちいいが」
「……だったらいいや」

 そう漏らして私の方から唇を寄せれば、途端デュースの目の色が変わる。「うわ」となんだか面白くなさそうなエースの声が死角から聞こえた。
 デュースはしっかり腰を掴みなおすと、ぐんと勢いよく腰を突き上げてくる。突然の強すぎる刺激、なのに私の中は彼の熱を更に奥へと誘うかのようにうねうね蠢いて。
 衝撃に背を逸らした事により、結果的に張ることになった胸へデュースが唇を寄せる。そして収まらない快感に真っ赤になったそこをぱくりと銜え込んだ。ふやけてしまいそうなくらい吸い付かれ、胸の先がじんじんしてくる。
 前と下の快感だけでも苦しいくらいなのに、わざと音を立てるように繰り返される背中へのキスに頭の中が焼き切れそうだった。背中越しに感じるエースの微かな吐息に大げさなほど体が跳ねる。見えないから何をされるかわからない、それに余計神経が過敏になっているのだろう。下からの水音よりよっぽど小さなリップ音をしっかり私の耳は拾ってしまっていた。

「あ、あぁ、あううっ、おく、おくだめ、だめなの、だめぇ……」

 口で嫌がっている素振りを見せても、私の中は小刻みに奥を刺激されるたび嬉しそうに締め付けているのだから全く意味がない。なんなら声からしてどろどろに溶けているのだ。言葉とは裏腹なあまりに正直すぎる反応に馬鹿みたいだと思う。
 でもデュースからしてみれば、そんな私の面倒くさい態度すら興奮材料らしい。ギラギラと欲望を隠そうとしない目が乱れる私を舐め回すように見る。まるで視覚から犯されているみたいだった。

、好きだ、大好きだ……!」

 さっきまでのえげつない責めはどこへやら。突然ぎゅうと抱きしめられた。互いの汗ばんだ肌がしっとりと吸い付く、デュースの体温と匂いにすっぽり包まれてしまう。締め付ける腕は少し痛いくらいだ、なのにひどく安心する。
 湧き上がった感情を上手く言葉にできる自信がなくて、ただただ彼の体を抱きしめ返す。それに溢れかえる幸福感は軽く目眩を覚えるほどだった。

「オレの事忘れてイチャイチャすんの止めろ」
「うるさい。空気を読んでくれ、エース」
「あーあーわかった、わかったからメンチきるなっての」

 どうやら今のデュースは相当怖い顔をしているらしい。確認しようにもデュースの掌で目元を隠されているせいでわからないが、この行動とエースの証言からしておそらく間違いないだろう。
 牽制が終わったのか、デュースの手が退いてぱっと視界が明るくなる。そのタイミングで後ろから私の耳元へ顔を寄せたエースが「あとでオレともイチャイチャしような」と誘いかけた。
 瞬間また視界を塞がれる。会話は無かったが、何となく剣呑な雰囲気は感じた。自由になった後も終始無言のデュースに対して、ピューとエースはわざとらしく口笛を吹いている。ただ後はデュースへ完全に譲ることにしたようで、エースは離れたところに座り込んでいた。

 重ねるだけのキスがデュースから贈られる。くすぐったいくらいのそれを何度も繰り返して。
 ぐち、と繋がったままの場所から粘ついた音が立ったのが合図だった。下から突くようにして律動が再開される。動き始めた直後こそ優しかったものの、すぐに激しい動きへと切り替わっていく。ばちゅばちゅと肉のぶつかる音が部屋中に響いていた。

「んう、う、でゅーす、でゅーす、きもちい、きもちいいよぉ」

 コツコツと突き当たりを刺激され、私は甲高い嬌声を上げるばかり。興奮した様子のデュースに逃げられないよう押さえつけられながら奥をぐりぐりされる。乱暴にも思えるそれが嫌じゃない、逆にもっととねだるように腰を揺らしてしまう。
 びりびり電流のような快感が頭のてっぺんから爪先までずっと流れっぱなしだ、過ぎた快楽に頭がショートする。きゅうと丸まる足先、喉が仰け反って。
 目の前が真っ白になった瞬間、おなかの中が熱くなる。最奥にめり込み、中で跳ねるデュースのものが熱い飛沫をびゅくびゅくと撒き散らす。浅ましい私の体は吐精の感覚にすら快感を得てしまい、びくびくと震えていた。
 ゆるゆると奥にすりつけるようにして動いていたデュースの熱が、全て出し切ったのを機に私の体からちゅぽんと抜ける。熱を失ってぽっかり開いているだろう膣口を見てデュースが喉を鳴らしていたが、それを恥ずかしいと思っても怒る気力が無い。
 もう今度こそ本当に限界だ。まるでくらげみたく、ふにゃふにゃになった体が後ろに倒れ込む。ただシーツへ寝転ぶ前に、私の体はエースに抱き留められた。

「よく頑張ったな」

 目を細めたエースの声はさっきまでの情熱的な姿からは考えられないぐらい穏やかだった。いい子と褒められながら優しく頭を撫でられる。あったかくて気持ちいい。とろん、と瞳が潤むのがわかる。だんだん瞼が重くなる。

「後片付けはオレ達でやっとくから寝ていいよ」
「……おやすみ、

 その心地よい眠気に抗えず瞼を閉じる。胸いっぱいに幸福感を抱きながら、私の意識は夢の世界へと旅立っていった。

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