君だけのダークヒーローになりたい 03

「監督生、その花って……」
「オルトくんからもらったの。本当は髪飾りだけど、普段使いにはちょっと大きいから学校ではこうしてるんだよね」
「ふーん、お熱いこった」
「もうエースってば、からかわないでよ!」

 【朗報】推しカプめっちゃアツアツ
 人の溢れた教室だし、陽キャラビュとの会話に聞き耳を立てるとか愚行かな〜と思ったけど、やってよかった盗聴(ライト)よい子は真似すんなよ! リボンのセンターパーツとして使われている花の飾りを愛しげに撫でる監督生に俺は心の中でガッツポーズを決める。
 1−A所属の俺ジョン・マディソンはロボ×少女萌えのオタクであった。彼女が男装していた頃から、オタクの勘で「監督生は女の子なのでは……?」と思う程度には生粋のロボ×少女萌えであった。いやだってさ、他の女顔の奴がオルトに絡んでても一ミリも興奮しないのに、監督生だと痺れるぐらい興奮したからさ……。
 そんなわけでオルトと監督生が仲良くする姿にネタ帳を日々厚くしていたのだが、まさか公式カプになるとは……。全俺が喜びにむせび泣いた。
 初期の頃に思わず親しくしている二人を観察するのに没頭してしまい、監督生にはすっかり警戒されるようになってしまった。萌え過ぎて「ふええ」とうっかりこぼした俺に向けられたゴミを見るような目は一生忘れられないだろう。

 だが、実はオルトとは密かに交流があったりする。というか彼の方から接触してきたのだ。
 俺は密かにツイシブという創作コミュニティサイトに漫画を投稿している、もちろんロボ×少女だ。書籍化され、少女漫画ランキング上位に入ったそれは辛い過去から人間不信に陥った少女とそんな彼女の絶対的な味方であり続けようとするロボの純愛物である。
 それがどうもオルトの感性に刺さったらしく、更新するたびに彼はクソ長い感想をくれていた。まだ自我が芽生えたばっかりなのに、ちゃんと感情のこもった言葉の数々、情緒が育っているようで何よりだ。その件についてはさくっと特定されたことがどうでも良くなるぐらい喜んでいたりする。まあ、あの寮長の弟だしね……。
 しかも監督生との交際で俺の漫画の内容を参考にしてくれているらしく、彼女と交換日記を始めたのだとか。えっ何それ可愛い、中身見てえよ〜〜! でも推しカプの邪魔するのは自分でも許せないから妄想するに留める、妄想するだけならタダ!
 それに推しカプのある程度の情報についてはオルト自ら開示してくれるからね。おかげで進捗が捗ること捗ること、あまりに毎回分厚くなるもんだから担当さんが苦労してるがすまねえ!としか言えない。変える気はないんで……。
 といった感じで、今日も密かに俺はオルトから最新情報を仕入れていた。このカウンセリングルームは完全防音だ、だからよく密談に使用されている。

「そういえばさあ、オルト。そろそろ俺に近づいた目的教えてくんない?」

 彼からの報告を終えたタイミングで俺から話を切り出す。それにオルトは寮長によく似たヴィラン顔を見せた。
 俺は世界中に数多の広大な土地を所有する一族の次期当主である。わざわざ偽名で入学する程度には警戒が必要な。そんな俺の弱味を握り、その上で懐柔してきたのだ。この学園にいれば、そこに何かしら裏があることぐらいすぐにわかる。
 これだけ楽しませてもらったし、今後も色々とお世話になるに違いないし、よっぽどのことじゃなければ乗ってみるのもアリだろう。

「ありがとう、プルートスさん。話が早くて助かるよ」

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