つまり、とこしえ 05

「すっかりモテモテじゃのう」
「改めてここ、異世界なんだなって実感しました……」

 あの後から私は先輩のアドバイスに従って、自分を偽るのを止めた。というか今まで黙って受け流していたことに対して、我慢しないようにしただけなんだけども。
 そしたら何故か、今まで以上に告白を受けるようになった。主にサバナ生とオクタ生から。たまに他の寮生はいるが、大体はその二つである。
 女バレしてから私には無くなったが、グリムにちょっかいをかけてくるサバナ生やオクタ生を締めるようにしたのだけども、それが原因らしい。
 そういえばレオナ先輩が獣人は雌に尻に敷かれがちみたいなこと言ってたけども。人魚も似たような傾向なんだとか。だから素の私の方が好みに近いんだろうけど……。
 他の寮生はわからない。いつも私のノート頼りのマブ達を叱った(二人とも謝ってくれて今は自力でなんとかしてる)けど、別に後は特に変えた覚えないんだけどな。
 でもまあだからと言って本気にはしてない。現状を冷静に考えればわかることだ。
 自分はこの学園の唯一の女子。私を彼女にできたら自尊心がたかいたかーいなNRC生にとってはこの上ないステータスになるんだろう。前の性格では全く好みから外れていたけど、今ならとりあえず彼女にしてやってもいいかなと思ったに違いない。強引に押せば行けそう感が抜けたのも更に付加価値を上げてるのかも。
 と、私の考えを口にすれば、リリア先輩は「うーん、これは手強いのう」と苦笑いを浮かべていた。何の事だろう。

「ただディアソムニアの人達はさすがですね。高尚を掲げるだけあって彼らだけですよ。私に言い寄ってこなかったのは」
「……まあ、そうじゃろうなあ。うん」

 もはや日常となったリリア先輩との時間。
 話題は尽きないけれども、高尚の精神を体現する彼らのことはぜひとも先輩に報告しておきたかった。ただ、自寮生の功績にもっと誇らしげにするかと思いきや、先輩の反応は思わしくない。どうしたんだろう。

「あっ、そうじゃ。話は変わるが、お主の世界のことで報告があってのう……」

 先輩の前で泣きはらしたあの日から、リリア先輩とツノ太郎が元の世界へとの道を探すのを協力してくれるようになった。
 ツノ太郎は最初渋っていたが「行き来できるようになるまで帰るつもりはない。私の国のアイスも美味しいから、いつか一緒に食べようね」と伝えると嬉々として手を貸してくれることに。
 そしてこの度、手紙のような軽い物に限るがやりとりする方法を見付けたらしい。学園長に任せていた時は一切進展しなかったのに……。

「ひとまず物ではないが、目当ての相手に届けることは確認できたからのう。安心して良いぞ」
「ありがとうございます! 大伯母様達への手紙が書けたらお願いさせてもらいますね……あの、先輩と撮った写真とか同封してもいいですか?」
「うむ。お主が紹介してくれるならば、わしも挨拶がてら一筆したためておこうかのう」

 異世界にいるなんて、にわかには信じがたい話だけども、きっと二人は信じてくれるだろう。
 私を信頼してくれているのもある。でも何より二人ともおじいちゃんの影響と趣味の関係でサブカルチャーに詳しいから。特に台頭してきたのは最近だけど、昔の作品でも少なくないんだよね。異世界トリップもの。
 なので返信で世界を救うの?とか聞かれそう。普通に治安の悪いホグ○ーツで生活してるだけなんだよなあ……いやホグ○ーツも大概治安悪いわ。むしろ人死に出ていない分、NRCの方がマシかもしれない。

「転移魔法の応用だからの、要領はわかってるんじゃが……あいにく安定して人を運ぶにはもうしばらくかかるな。まあ、しばらくといっても数年程度じゃ。人の子のお主でも充分間に合うじゃろう。シュラウドの協力が得られたら、もうちっと早められそうなんじゃが」
「あ、じゃあ私からお願いしておきます」
「あのシュラウドの協力をこぎ着ける算段があるとは……さすが猛獣使いと呼ばれるだけあるのう」
「あはは……」

 おじいちゃんとありとあらゆるゲームで対戦し続けたかいあってか。一年生の間で行われたゲーム大会で優勝候補だったイグニ生を打ち倒すことができた。
 その話を聞きつけたイデア先輩と勝負することになり、いい線までいったものの負けてしまったが、それをきっかけにイデア先輩と私は交流がある。
 リリア先輩ほどディープではないが、元の世界での話は幾度かしており、イデア先輩にはオタクに優しいお嬢様じゃん……と驚かれたが、ブーメランなんだよなあ。あと普通に話しただけで優しい扱いって心配になってくるんだけど。
 ともかく同類と知っているせいか、イデア先輩の好感度は比較的高いと思う。なので最大の難関であるコンタクトは問題ない。
 以前、私の故郷オタク大国だって聞いて目を輝かせていたイデア先輩のことだ。異世界の作品で釣れば、ウキウキで手を貸してくれるだろう。
 きっと私が元の世界に戻れる日はそう遠くない。だから、今のうちに伝えておこう。

「リリア先輩、初めて元の世界に戻る時、一緒に付いてきてくれませんか」
「一番が、わしでいいのか?」
「リリア先輩がいいです」
「くふふ。そうか、そうか。もちろんOKじゃ。お主の世界はぜひとも行ってみたかったからのう、嬉しいわい」

 その夜、私は三通、手紙を書いた。大伯母様と、大叔父様、それから——

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