二度目はないって言っただろ 03
「あっちゃー」
私の気の抜けた台詞とは対照的にレオナ先輩の表情はひどく険しい。
またしても唐突な転移だった。すっかり忘れた頃に仕掛けてきたせいなのか、今回に関しては先輩は完全に油断していたように思う。その生まれのせいか、いつも気を張っているタイプなのに一体どうしたんだろうか。
二度目ましてのセ出部屋に私は一回目が嘘のように冷静だった。ご丁寧に魔法は禁止しますとまで表記されてるし、実際に試した先輩が舌打ちまでしている状況だというのに。
まあとぼけてみたものの、本当はわかってるんだけどね。それだけの心境の変化があってはさすがに疎い私でもわかる。というわけで私は問題ないのだけれど……。
「あの、レオナ先輩」
空振りになりながらも何度も呪文を唱えて脱出を試みる先輩へおそるおそる声をかける。発動していないし、彼の許容量は人一倍多いらしいから大丈夫なのかもしれないけれど、この場で万が一オバブロとかなったら止められる自身がない。
私の声にぴくりと彼の耳を動く。不機嫌そうに「なんだ」と振り向いた先輩、その耳と尻尾は力なく垂れ下がっていた。
これは私を気遣ってなのか、それとも私と打開策をこなすのが苦痛なのか。彼と違って敏くない私にはわからない。あと前回あんな反応をしてしまった手前、微妙に言いづらいのだけれど……私が切り出すしかないだろう。
「先輩が嫌なら無理強いはしたくないです。でも私は先輩だったら大丈夫です……えーっと違うな、その、嬉しいです」
先輩のエメラルドの瞳が大きく見開かれる。ぽかんとした顔に、先輩ってこんな表情もできるんだとか、こんな面持ちでも美しいのはさすがだなとか呑気に思っていたところ、情熱的に唇を塞がれた。
もしかしたら先輩を傷つけてしまうことになるかもしれないと心配していたのだけれど杞憂だったらしい。むしろ現状と「二度目はない」との発言からして、以前からこの展開を望んでいたんじゃないだろうか。
だとしたら、いっそう好きになってしまう。推測から出した結論に愛しさを募らせて「レオナ先輩、好きです」と私は口にする。それに対する返事を彼は言葉にしない。けれど、くるりと私の体に巻き付いた尻尾はどんな言葉よりも雄弁だった。