二度目はないって言っただろ 04
恋の妖精は上機嫌だった。
つい最近、推しカプであるレオ監が本懐を遂げたのである。微かなトキメキを嗅ぎ取って幾年月、いっこうに結ばれる気配のない二人には随分ヤキモキさせられたものだ。
といっても本当はさほど長い期間ではないのだが。更に彼に関して言えば寿命が長い妖精族なのだから、本当に一瞬なのだが。それでも彼にとっては自身の寿命と同レベルで長い時間に思えていた。
だがそんな苦しい日々ともお別れだ。ちょっと早急かなと感じつつも、あの部屋に閉じ込めて良かった。グッジョブだな自分!と彼は自画自賛しながらテリトリーである植物園をルンルン気分で歩いていた。
「ぎゃっ」
が、喜びも束の間。彼は突然背後から全身へ巻き付いてきた何かに捕らわれてしまった。それが推しカプの片割れの手であると気付いたのは「随分楽しそうじゃねえか」と皮肉げに笑うレオナの顔が目の前にあったからだ。
歪められた口からは肉食獣特有の鋭い牙が覗く。自身を鷲掴みするレオナは表情とは裏腹に目が全く笑ってない。骨が軋むほど握り込まれた手に妖精は恐怖から粗相しそうだった。余計に酷い事になりそうだから我慢したが正直危なくて。ただ震えはいつまでも止まりそうにない。
生殺与奪の権を文字通り握られている。その事実に妖精はただ怯えることしかできない。
妖精族は魔法が得意であり、彼は強大な魔力の持ち主だった。だがあいにく彼はその才能を自分の欲望……恋人同士をイチャつかせることにだけ力を注いできた。おかげで近くに恋人達やそれに準ずる存在がいる場合はほぼ全知全能だが、逆にそれ以外の状況ではからっきしなのである。
「二度目はねえって言っただろ」
ミシッと体からまずい音が立つ。死を覚悟しながら彼は「レオ監バンザイ!!」と悲鳴を上げたのだった。