奥様は優しい罠の中 03
「あ゛た゛ま゛お゛か゛し゛く゛な゛る゛か゛と゛お゛も゛っ゛た゛!!!」
「うっわ、声ガラガラじゃん」
「エ゛ース゛の゛せ゛い゛じ゛ゃ゛ん゛ッ゛!!!!!」
途中から意識が飛んでいたので正確な回数はわからないが、めちゃくちゃに抱き潰された。ずーっと声出しっぱなし、ぐずぐずのどっろどろにされてひたすらなくばかり。二重の意味で。
ついつい浮かぶ淫らな光景に、頭をふるって追い出そうとするが、むしろ逆効果。いけないと思えば思うほど鮮明に蘇ってしまう。ぷしゅーと茹で上がる私を置いてエースは部屋を出て行く。
間もなく戻ってきた彼の手には500mのペットボトルがあった。ベッドに上がったエースはそれを私の目の前にぶらさげてくる。
「ほら、水」
「……ありがとう」
受け取るやいなや夢中になって口にしたボトルは一瞬で空になってしまう。ああでも生き返る。喉の渇きが取れたのと体を通る水の冷たさに少しだけ落ち着きを取り戻した。
いつもの事後ならエースのパジャマを上下で半分こしているけれど、今日はお風呂に入れる前だったから手元になくて、私はシーツを巻き付けただけですっぽんぽんのまま。ベッドの下に落ちてる下着を取るだけの気力がない。
対して下だけとはいえ、ちゃっかり服を身につけていたエースは何を言うでもなく私を眺めている。隣から向けてくる視線はひたすら甘く、目を細めるその姿は幸せを噛みしめてますと言わんばかり。これはこれで、さっきまで繰り広げられていた行為とはまた別の意味で恥ずかしくなってくるんだけど。
もう数え切れないほどの夜を共にして体はすっかり慣れたというのに心は未だに追いつかない。でも別にエースと体を重ねるのが嫌なわけじゃなくて。エースには絶対言えないけど、本当は好きなのだ。だってそうだろう、好きな人に求められて嬉しくないはずがない。いくらでもいちゃいちゃしたい。
そんな気持ちが伝わってしまったのか、シーツの上からエースは抱きしめてくる。裸を見られるのは恥ずかしいくせに、どうせなら直接抱きしめてほしいと若干不満を持ちながら、彼のなすがまま。
「ずっと二人きりでも、お前となら一生退屈しねーよな」
普段とは違う感覚が残るおなかをエースが撫でてくる。さっきまでとは違う優しい手付きだった。
まだ宿っていない、もしかしたらいつまでも芽生えないかもしれない。でもまだ見ぬその子に私は早く会いたくてしょうがなかった。きっとエースも同じ気持ちなのだろう。
その上で彼は私の不安を取り除こうとしてくれる。プロポーズの時だってそう、何があってもずっと一緒に居られる理由をエースは与えてくれるのだ。いったいエースは何回私を惚れ直させたら気が済むんだろう。
「エースは何人ぐらい子供欲しい?」
「んー男女両方一人ずつは欲しいかな。は?」
「私も二人は欲しいな。一人っ子なの結構寂しかったから」
「いっそいっぱい作っちゃう?」
くすくす笑い合いながら一緒にベッドへと横たわる。汗流すのはもう起きてからでいいや。たぶん一緒に入ることになるだろうから、また大変なことになりそうだけど。
「エース、私のことお嫁さんにしてくれてありがとう。大好きだよ」
ふと言いたくなった事をそのまま口にすれば、エースはキスして何も言わず抱きしめてくる。あ、たぶんこれ照れてるな。
そんなところが可愛くてついつい口元が緩む。結婚はゴールじゃなくてスタートだとか人生の墓場だなんて世間は言うけど、毎日毎日好きが溢れていく場合は何になるんだろう。そんなとりとめもないことを考えながら瞼を閉じる。
一緒に泣いて、一緒に笑って、どんな辛いことがあっても、かつての私の両親のように、私達はいつまでも互いに想い合っていく。それはきっと一人二人と家族が増えたとしても変わらなくて。
今日も明日もこれからも、私は彼の優しい罠の中で幸福に満たされながら、寂しがる暇なんてないくらい楽しくて賑やかな日々を過ごしていくのだろう。