終わらないハッピーエンドを君に 01

 ラギー先輩の予想した通り、私の帰還を知った友人や先輩方、果ては先生達までもが一斉にオンボロ寮へと祝いに押しかけてきた。わざわざ集める手間が省けるし、衣装含めて好都合ということで結婚式を挙げて、夜まで飲めや騒げやの大宴会をしていたのがさっきまでの話。
 それから「結婚した以上、初夜は欠かせないッスよね〜」とニマニマした先輩によって、着替えぬままご機嫌なステップを刻みながらのお姫様抱っこで寝室へと運ばれたのがほんの数分前。
 ベッドの上に下ろされて、自身のネクタイを外す先輩が待ったを聞き入れてくれたのは運が良かっただけなのだろう。先輩の灰青の目は完全に「今からお前を抱く」とギラついていたから。半年のお預けの末に奇跡の再会となれば、そんな気持ちになるのはわかる。私だって期待している。
 先方のご希望でやたら金をかけたブライダルエステによって、どこもかしこも磨かれているので体を見られる分にはまったく問題無いわけだし。ただ一個だけ本来ならありえないはずの問題が発生していた。
 口に出すのはかなり恥ずかしいがそうも言ってられない。こんな雰囲気の中で申し訳ないが、中断してでも伝えるべき重要事項なのだ。なけなしの勇気を振り絞ってラギー先輩へ私は訴える。
 それは私の今のステータスについて。グリムがオンボロ寮を出て行く前に軽く説明しておいたが、元の世界に帰らされた時、記憶はそのままだが、体はツイステッドワンダーランドへ訪れる前の状態へと巻き戻っていた。つまり、ラギー先輩と恋人どころか出会う前の状態だ。
 身長や髪のことからして体の状態は軒並みリセットされているということは、まあ、つまり……。

「その、私、しょ、処女に戻ってるんですよね……」

 私のトンデモ発言にラギー先輩は、ネットで流行ってるとイデア先輩がかつて見せてくれた宇宙を背景に抱えるネコチャンみたいな表情をとっていた。えーっとこういう時なんて言うんなんだっけ、ああそうだ、スペースにゃんこだ。
 まあ先輩ハイエナだけど。よくイヌ科と間違えられるが、ハイエナはハイエナ科である。遺伝子的に見たらどっちかと言えばネコちゃんに近いけどハイエナ科である。

「…………まじで?」
「あの、戻ってから、一人でシた時、指一本すら入らなかったので、まじ、です……ね」
「そ、そっか」

 私はなんで彼氏に自慰の報告してるんだ。いや一応理由はあるんだけども。例を出した方がわかりやすいかなと思ったっていう。だとしても、もう少しなにか良い例えあったでしょ。
 これじゃただの痴女じゃないか。うう、引かれちゃったかなあ。先輩とえっちしてる時の夢を見てしまったとはいえ、どうして我慢しなかったんだ。この変態め。
 これでも元の世界にいた頃は性欲なんてなかった。というか、むしろあのエロ親父のせいで性的な事とか嫌悪感しかなかったのに。先輩と一線を越えてからというもの、ブレーキ知らずハイスピードで転がり落ちてしまっている。
 たっぷり数十秒間を置いても普段の口調が崩れちゃう位には動揺させてしまったらしい。貴重な瞬間のはずなのに素直に喜べない、発生した会話がお下劣なものなので。このレアシーンはもっと日常会話をしてる時に出てほしかった。

「ご、ごめんなさい」
「なんで謝るんスか」
「先輩のこと考えて自分を慰めるようないやらしい女でごめんなさい……」
「いやそれはオレもおあいこ」
「なのに実際はそれすらできない処女とか、面倒くさい事この上ないじゃないですか……」

 自分のふがいなさとか、先輩への申し訳なさに、ついつい涙ぐんでしまう。あーあーもう! ただでさえアレなのにこれ以上面倒くさい女要素を増量させるんじゃない!
 ぐずついていた私の目尻を先輩が舐め取る。その流れで唇が重ねられた。角度を変えながら徐々に深められていく口付けに夢中になっていれば、ジィーと背後から音がしてドレスがずり下がる。

「オレ、おかわり大好きなんスよね」

 ラギー先輩のそれはこの場に似つかわしくない可愛らしい主張のはずなのに、先輩の目を見た瞬間その認識は間違っていたのだと悟る。獲物を前にした飢えた獣の目、獰猛な輝きに背筋がざわつく。ああ、私今からラギー先輩に食べられちゃうんだ。
 首筋を先輩の舌が這う。だんだん下りていくようにしながら肌へ押しつけられる唇、ちくりと小さな痛みがいくつか走った後には赤色が残されていた。ぼんやりとその光景を眺めるだけだった私の唇を先輩が軽く食む。

「だから、何度だって骨一本残さず食べ尽くしてやるッスよ」

 どこか楽しげに笑うラギー先輩、大きく開かれたその口からは肉食獣特有の鋭い牙が覗いていた。

 動きにくいし汚れてしまうからと衣装を脱ぐ。ただあいにく私のドレスは一人で着脱できるデザインではなかったので先輩に脱がしてもらったのだが……。
 ドレス下に着込んでいたものを見た途端、目の色を変えた先輩が私を押し倒して舌なめずりをする。完全に雄の顔だった、普段のベビーフェイスとのギャップで破壊力が凄い。ラギー先輩の顔がバチクソ好みな私からすれば、なんでも会心の一撃だというのはツッコまないでほしい。
 現在の私の装備はビスチェとショーツとガーターベストとストッキング、どれも色こそ清楚な白だけども。なんでドレスは変えてくれたのにこっちは変わってないのか。もう必要なくなったからなのか、はたまたこっちに意識が向いたせいなのか、ベッド下に畳まれた衣装の魔法は既に解けていたが、そう思わずにはいられない。
 ベルトから垂れる留め具の紐に先輩が指を引っかける。先輩の舐めるような視線がクロッチ部分へ集中していた。足を閉じようにも間に入り込んだ先輩の体がそれを許してくれない。

「へえ〜、あのねんねのくんがこんなスケベなの付けちゃうんスね」
「あ、あっちが用意しただけで私の趣味じゃないです!」

 必死に弁解する私に対して、ラギー先輩はにんまり底意地の悪そうな笑みを見せる。ほ、捕食者〜! ううう、本当に違うのに。
 私が今履いてるショーツだが、前に付いてるリボンをほどくとぱっくり開いて秘部が丸見えになるデザインなのである。これを渡された時、下着とは……とちょっと哲学に走りそうだった。ノーパンは憚られたし、逆らったところで縛ってでも身に付けさせられるだろうから仕方なく履いたが、履いてる意味あるのかなこれ。
 ドレスは一人じゃ着れない為、女性だけとはいえ手伝いの人にこんなドスケベショーツ履いてるのを見られた私の目は死んだ魚よりも酷いことになっていただろう。ただでさえマッハなメンタルに追い打ちかけないでほしかった、ドレスを整えられてる最中いっそ脇目も振らず赤ん坊のように泣きめいてやろうかと何度思ったことか。
 先輩にはもう全身余すことなく見られているけれど、それでも今だって羞恥心で死にそうだ。

「も、もう脱ぎます……」
「せっかく綺麗に盛り付けてるのに崩しちゃもったいないッスよ」

 まあぐちゃぐちゃになっても食うんスけど。そう言いながら先輩は下着越しに大きくなったものを秘部へごりごり押しつけてくる。きっとまだ入らないだろうに、その刺激に私の腰は意図せずはしたなく揺れてしまった。
 この体は先輩を知らないけれど記憶まで失われたわけじゃない。だから私は覚えてるのだ。縋り付いた先輩の体の逞しさも、体の奥深くまで入り込む先輩の温度も、先輩から与えられる気が触れそうなほどの快楽も、全部、私の中に残ってる。
 先輩もそれに気付いているのだろう。処女らしからぬ反応を見せる私にラギー先輩はどこまでも楽しげで、それでいて隠しきれない興奮が開いた瞳孔から透けて見えた。

「まあ、まずはこっち」
「あっ」

 ビスチェの胸元のリボンをほどいて、留め具を上から二つ外される。中途半端に脱がされた結果、胸だけが晒される形になった。仕事が雑じゃないですか先輩。全裸にされるより恥ずかしいんですけど。男装してた頃にエーデュース達が見せてくれたえっちな漫画みたいな格好させないでください、ここは三次元ですよ。
 むき出しの膨らみをラギー先輩が触れる。下着の補正を失い寝転がってる事もあり、簡単に先輩の手に収まってしまった。私の胸を包む先輩の手はなんだかいつもより熱く感じる。
 首筋をやわく噛みながら、先輩は掌で私の胸を弄ぶ。感触を楽しむように緩く揉んでいたかと思えば、いきなり先端をぎゅって摘まんだり。先輩が行動を起こすたび、私はそういったおもちゃみたく声を上げた。
 先端がぱくりと先輩の口に含まれる。ざらついた舌に舐めあげられた感覚につい背を丸めようとするが、ウエストを覆ったままのビスチェに阻まれてしまった。おなか苦しい、下着の締め付けもそうだけど、それ以上にともった熱が中でぐるぐる渦巻いていているのが妙に切なくて。

「やっぱ、腹が見えないのは物足りねえや」

 ふと腰回りの開放感に視線を下げれば、いつの間にかビスチェの留め具が全て外されていた。あれ、けっこう外すの大変なのに。やっぱりラギー先輩って器用なんだなと場違いな感想を抱いてしまった。
 触れるか触れないか、そんな力加減でラギー先輩の指が脇腹をなぞる。それは何とか耐えられたけれど、くびれを確かめるように手を這わすのはたまらず身をよじって逃げようとする。けれどもラギー先輩からすれば、そんなの抵抗にも入らないようで。私の腰を掴んだラギー先輩によって軽々押さえつけてられてしまった。

「ラギー先輩ってもしかしておなか好きなんですか……?」

 さっきの台詞とすりすりお腹を撫で回してくる手に思わずその疑問を口にする。
 付き合ってからというもの、先輩はやたらおなかを触ってきて。私はその意味をずっと聞きそびれていたのだ。
 だらしない体型ではないと思うけれど、細身の先輩からすれば目に付くのかなと。てっきり痩せろと言外に伝えてるのかと思って、ダイエットした方がいいですかと以前尋ねた時には凄い顔をされた。その上ラギー先輩お手製のごはんいっぱい食べさせられた。あの時あまりにも鬼気迫る表情をされたのがトラウマで、以来この話題に触れてこなかったんだけども。

「好きッスね。男にはないやわらかさとか、単純に触り心地とか、すっげえそそられるんスよ」

 もしやの疑惑がまさかの的中。うーん、でも私も先輩の厚い胸板とかゴツゴツした指にときめいたりするから、それと同じような感じなのかな。「あとはほっぺとか、二の腕とか、太股も美味しそうッスよね〜」挙げた箇所を順番にあむあむと甘噛みされる。本気で噛まれることはないとわかっていても、先輩の牙の鋭さを知ってる身としてはドキドキしてしまう。

「あとは獣だからッスね。獣人はみんな薄い腹とか腰のくびれに魅力を感じるもんなんスよ」
「獣人は腹フェチか腰フェチ……?」
「あー違う違う。その状態だと動物的本能がくすぐられるって言えばわかります?」
「え、っと……?」

 まだピンと来ない私に先輩は下腹部をぽんぽんと軽くたたく。たぶんそれもヒントなんだろうけど、察しの悪い私にはさっぱりで。そんな私に対してラギー先輩は怒るどころか唇を緩めていた。

「妊娠してない、つまり自分の子供を孕ませられるメスだって判断するんスよ」

 想像以上に野性的な理由だった。
 いや確かに性行為自体が子供を作る方法なのだから、当たり前と言えば当たり前なのだけれど。そもそも性行為をコミュニケーションや愛情表現として使うのは人間だけで、他の動物にとっては交尾つまり子供を作る為の手段でしかない。だからおそらく獣人達にとっては性行為=子作りとしての認識が強いのだろう。
 にも関わらず先輩はいつもしっかり避妊してくれているから、その事を理解していなかった。私が今まで彼と行ってきたのは交尾で、今から行うのも同じ事で。そう意識した途端ぶわと全身が熱くなる。今更だけど私とんでもない格好で、すごい恥ずかしいことしてるんじゃ。

「まあおしゃべりはこの位にして、ちょっと失礼〜」
「み゛」

 返事する間もなく私の足の間にラギー先輩が顔を突っ込む。するっとショーツの例の結び目を口でほどかれたことに驚きすぎて変な悲鳴が出た。
 確かに指一本入らなかったと宣言しましたし、都合良くローションなんか揃っておりませんが、でもだけどそれは。先輩が何しようとしているのか理解して羞恥心が爆発する。
 守り手である布地を失った秘部へ先輩がふっと息を吹きかける。その動作につい反射的に先輩の頭を両足で挟んでしまった。が、膝裏を掴んだ先輩の手にあっさり押し返される。ならばと頭を掴んで突っぱねてもびくともしない。

「ひ、ぅ」

 往生際の悪い私に対するお仕置きのつもりなのか、内股に少し強めに歯が立てられる。ぴりっとした痛みが走ったそこへ慰めるかのよう続けざまに先輩の舌が這う。痛みとくすぐったさが混ざって訳がわからなくなる、痛いはずなのに気持ちいい。
 秘部に先輩の熱い息が触れる。べろと秘部全体に生暖かい感触が動き回り、十分に濡れたところで舌のざらつきを生かすように膣口へ擦り付けてくる。その刺激に溢れてきた愛液をちゅと音を立てて吸い取るのにまた私は反応してしまう。
 膣の浅いところに先輩の舌が入り込む。抜き差しされたり、ぐると円を描くように動かしたり、先輩の舌によって中が丁寧にほぐされていく。自分の指とは全然違う、気持ちよくて頭の中がぐちゃぐちゃになる。
 尖らせた舌が陰核をつつく。びりりと電流のような快感に私が震えていようがおかまいなしに何度も何度も舐めて。そうこうしているうちに、びくんと大きく体が仰け反った。ばちばち目の前で星が踊る。まるで溶けてしまったかのようにしばらく下半身の感覚がなくなっていた。

くん、舐めて」

 絶頂を迎えてぼーっとしている私は差し出されるがまま先輩の指をくわえる。しっかり濡れるように唾液を舌で塗りたくれば、先輩の指がちゅぽんと口から出て行った。
 自分がした時とは違ってあっけなく先輩の指が秘部へと飲み込まれていく。先輩の指の方が私よりよっぽど太いのに、引きつるような痛みなんてどこにもなくて。ただただ気持ちいい。先輩が触れるとどこもかしこも性感帯になってしまうんじゃないかと思う。
 私の中を出入りするたびに溢れた愛液を纏って先輩の指がてらてらと光っている。普段はかさついているそれが私のせいでふやけてしまっているのが、ひどくいやらしい気がして。
 甲高い声を上げ続けていた口を先輩の熱い唇が塞ぐ。口の中の粘膜をかき混ぜられながら、中の弱い所をぐいぐい押されてまた私はあっけなく果てた。ぴんと足を伸ばして、ぎゅーっと先輩の指をきつく銜え込む。
 絶頂の余韻か、ぽーっとする頭を引き戻したのは秘部にこすりつけられる濡れた感触だった。何だかいつもと違うことを不思議に思いながらも、彼を受け入れようと腰を上げる。ちゅぷと切り先が泥濘に埋まる。

くん、いいんスか? オレ、今日はゴム持ってきてないッスよ」
「ごむ……」
「このまましたらオレの赤ん坊できちゃうッスねえ」

 嗜虐めいた笑みを私に向けながら先輩はくちゅくちゅと先っぽだけを何度も出入りさせる。互いの性器が直に触れ合うのはこれが初めてだった、ああさっきの違和感はそれだったのか。
 働かない頭でラギー先輩の言葉を反芻する。赤ん坊、ラギー先輩の赤ちゃん。先輩と同じふわふわの耳と尻尾を持ったちいさなハイエナを想像して、どろりと残り僅かだった理性が完全に溶けていった。

「ほしい、です」
「……え?」
「先輩の赤ちゃん、産みたい、です。ラギー先輩、私のこと孕ませてください……」

 あと一歩遅ければ好きでもない男の子供を腹に抱えていた、その事が私の妊娠に対するハードルを著しく下げていて。気付けば今までの私なら言ってなかったはずの事を口にしてしまっていた。
 頭のネジが外れたような発言だと言い切ってから少し冷めた思考が判断する。でも嘘偽りない本心だった。

「らぎーせんぱい……」

 浅い抽挿に物足りなさを覚えて、今の自分は処女だと言うのに彼の腰に足を回して押し込もうとしてしまった。ただ働かない頭で考えたそんな浅知恵はラギー先輩に筒抜けだったらしく、回しきる前に押さえつけれてしまったのだけれど。
 そうして、ちゅぽと先輩の熱が完全に出て行ってしまう。どうして、もう私、先輩が欲しくて欲しくて頭がおかしくなりそうなのに。
 「はあ……」と大きな溜め息と共にラギー先輩の体が倒れ込んでくる。私の肩口にぐりぐりと先輩の頭が擦り付けられて。

「できないッスよ、今夜は」
「……そんな。おあずけ、いやです」
「レオナさんが結婚祝いにくれた、おったかい避妊薬飲んできたから赤ん坊はできないッス」

 ここまで来て止めれる訳ないでしょーが、とラギー先輩がぼやく。その言葉に安心して、でも同時に寂しく思ってしまった。
 ゆるゆる身を起こした先輩はきゅうと眉間に皺を寄せて、ただ頬は真っ赤になっていて。私と目があった瞬間、ラギー先輩は更に顔をしかめた。

「なんつー顔してるんスか。ったく、困った仔猫ちゃんッスね」
「……自分じゃわかりません」
「知らなくて良いッス、ウブな君には刺激が強すぎるんで」

 自分の顔なのに? 性的なことにあまり耐性がないのは事実だけど、それにしても過保護すぎないだろうか。
 別にそこまで子供じゃない。一人でシようとしたり、今だってラギー先輩とえっちしたくてうずうずしてるくらいなのに。先輩がそんな体に作り替えたのに。
 避妊薬の件と思わしくない反応に急に不安になってしまい、気付けば私はおずおずとそれを尋ねていた。

「私、先輩の赤ちゃんならいっぱい欲しいです。先輩は私との赤ちゃん、欲しくないですか……?」
「ッ、ア゛ァ゛〜〜! 獣の雄に『貴方の子供が産みたい』は最大級の愛情表現なんで!! 最強の殺し文句なんで!! そう何度も言わないでもらえますぅッ?!」

 瞳孔を開ききったラギー先輩が大きな声で言い聞かせてくる。本気なんです、なんて弁解したら火に油を注ぐだけになりそうだから、ひとまず黙って頷く。
 グルルルルと荒い息で興奮していたラギー先輩だったけれど、深呼吸して少し落ち着いたのか。また長い溜め息を吐いた後、私をぎゅっと抱きしめてきた。

「……養えもしないのに孕ませるほどオレもバカじゃないんスよ」

 かぷりと口を噛みつかれる。少し肉厚の先輩の唇はよく開く大きなお口だ、簡単に私の口を丸ごと食べてしまう。何度も啄むように唇を吸われるのが気持ちよくて、だんだん頭がふわふわしてくる。そのままどこかに飛んで行ってしまいそうで、それが怖くて縋るように先輩を抱き返す。
 離れた唇を惜しんでいた私のおでこに先輩のおでこがくっつけられる。眼前の灰青はさきほどまでの激情が嘘のように、ひどく穏やかな色をしていた。

「だからくんが卒業するまでに、良いとこ就職して、たっくさん稼いで、ちゃんとした巣用意しておくから。そうしてオレの番になったその時、改めて言ってほしいッス」
「……はい。待ってます」

 再び唇が重なる。顔の向きを変えながら繰り返されるそれに翻弄されていれば、にゅぐと固い熱が私の秘部の上をすべる。私を見据える先輩の目はすっかり獣の鋭さを取り戻していた。ぐぷんと先が埋め込まれて。

くん」

 呼び返そうとした先輩の名前は割り入ってきた熱の衝撃にかき消されてしまった。みちみちと先輩の形に中が広がっていく。こじ開けるようにして、ゆっくりゆっくり先輩が私の体に沈んでいった。
 慣れ親しんだ体でも大きいなといつも思っていたのに、初めてでありながら思いの外あっさり私の体は彼の全て受け入れてしまった。ぴったりと先輩の下生えと私の秘部がくっついている。
 いっぱい慣らしてくれたからだろうか。前の時と違って痛みは全くなかった。でもふと見てしまった真白のショーツには赤色が滲んでいて、二度目の純潔を失ったことを悟る。
 また先輩が初めての人になってくれたんだ。そう実感した途端、訳も分からず涙が浮かぶ。嬉しさからのそれを先輩は痛みによるものと勘違いしたらしく、ぺろぺろと私の目尻を舐めてきた。

「……泣かせたいわけじゃないんスけどねえ」
「ごめんなさい、なんだか幸せすぎて」
「このくらいで泣いてちゃもたないッスよ、これからもっと幸せにする予定なんで」

 笑い混じりに先輩がキスを一つくれる、ふにと軽く触れるだけのそれに胸がぶわとあたたかくなった。
 私が痛がっているわけではないと気付いたのだろう。私のおなかをさすりながら、ずるると先輩は体から熱を抜き取っていく。その動きに伴い減っていく圧迫感はコルセットの時と違ってなんだか寂しい。さっきまで忘れていたくせ、私の中は彼で満たされる状態こそが普通だと思うようになってしまったらしい。
 私の呼吸に合わせて、ぬーっとゆるやかに熱が押し込まれる。引いて貫かれて、それを繰り返されたおなかの中は燃えてしまいそうなくらい、あつい。このままどろどろに溶けて先輩と一つになってしまうんじゃないか、繋がった部分はもうぐずぐずで自分では境目がわからない。
 とんとんと時折奥に当たるたびに、子猫の鳴き声みたく甘えた声を上げてしまう。奥で感じられるまでたくさん時間がかかったはずなのに、そこで与えられる強烈な快感を覚えているせいか、体が気持ちいいものと錯覚してしまっているらしい。びくびくと腰が跳ねるのが押さえられない。
 膨れ上がっていく快感、そして弾ける瞬間は知っていても怖くなる。だからついつい邪魔になるとわかっていても先輩の腕に縋ってしまった。らぎーせんぱいと咄嗟に呼んだ彼の名前は自分で考えていた以上にか細い。
 そんな私の不安に気付いた先輩が身をかがめてくれたの良いことに広い背中へぎゅうとしがみつく。隙間なく触れ合った肌から伝わるラギー先輩の体温に安心感を覚える。先輩の体は大きい、今みたいに覆い被さったら私の体はすっぽり収まってしまう。そのせいでかかってくる先輩の重みすら心地よかった。
 さっきの体勢よりもぐっと深く先輩が入り込んで、先っぽが最奥にぶつかっている。ぴたりと私に抱きつかせたまま、先輩は小刻みに腰を揺らして子宮口を突いてきた。やっぱり私の頭はばかになってるみたいで、それが気持ちいいとしか思えない。揺さぶられながら耳を甘噛みされて、首筋を舐められて、唇を塞がれる。ぜんぶぜんぶきもちいい。

「っは、くんってば、よくばりさんッスねえ……」

 先輩の腰に足を絡ませれば、上ずった声でたしなめられた。言葉に対してラギー先輩の表情には余裕がない。ストッキング越しに先輩の尻尾がくすぐるように揺れ動いているのを感じる。欲に溺れてぎらついた眼差しにおなかの奥がきゅうと疼いた。
 繋がったところからぐちゅぐちゅと恥ずかしい水音が止まらない。それもそうだろう、さっきからとろりと奥から愛液が溢れてくる感覚を何度も味わった。今も、また。見えないからわからないけど、きっと先輩にかき混ぜられたそれは泡立ってしまっているんだろう。
 先輩の熱が強く奥にめり込んだ瞬間、限界まで溜まった気持ちいいがばちんと弾けて頭の中が真っ白になる。ぎゅーっと腕と同じように私の中も先輩を締め付けて。
 それに先輩は短く唸って腰を押しつけてくる。中で先輩が大きく膨らんでびくびく震えた。子宮内にぐるりと熱が巡る。初めて流し込まれたそれはとにかく熱くて火傷しそうだと。私の首筋に噛みつきながら、先輩は一滴も零すなとばかりにぐりぐりと先端を子宮口へ擦り付けてくる。
 一応初めてなのにはしたないなあ。そう僅かな理性が咎めてくるけれど、中で再び固くなっていく先輩の熱に嬉しくなって腰を揺らす。

「しぇ、んぱ、い」
「そんな物欲しそうな顔しなくたって、ちゃんとぜーんぶ残さず食べてあげるッスよ」

 呂律の回らなくなった私の舌に先輩が吸い付く。そして再び始まった律動に応えるよう、先輩の体にしがみついた。

「すき、だいすきです」

 体で、言葉で、何度も伝え合う。寂しかった、怖かった、そんな半年間を埋め尽くすように私達は朝が来るまでお互いを求め合ったのだった。

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