酷愛 01

監督生へ

久しぶり。オレは全く元気じゃないよ。当たり前だよな、いきなり恋人に捨てられてんだよ、こっちは。でもどうせお前はそんなかわいそうなオレの事なんか忘れて、のうのうと元気に暮らしてるんだろうね。

でもこうしてようやく復讐できると思えば、ちょっとは溜飲が下がるかな。せいぜい胸を痛めれば良いよ、お優しいカントクセーのことだから後悔はともかく罪悪感は残ってんだろ。それを今の百倍にしてやるよ。
この手紙は全部読み終わるまで閉じれないようにしてるから。ま、読み終わっても破けないし燃やせないし、どうやっても処分できない上、手放してもお前の手元に戻ってくるんだけどね。お前が一番ビビッてた映画の呪いの人形と同じ仕様だよ、ざまあみろ。

元カレ、それも異世界から十年ぶりに連絡が来た気分はどう? 驚いてる? それとも怖い? ……嬉しい? ……それはないか。
オレだって本当はもっと早く届けたかったけど、この魔法道具がそういうシステムなんだよ。書き終えてからちょうど十年かかるけど、相手がどこにいようと届けられる魔法のレターセット。例え相手が死後の世界にいようと、生まれ変わっていようと届くんだって。だから元の世界に戻ったお前の元にだって、きっと届いてるんだろ。

一月前、卒業式のあの日、学園長からお前が元の世界に帰ったと聞かされて皆泣いてたよ。グリムも、デュースも、ジャックも、エペルも、セベクも、みんな泣いてた。なんでお別れすら言わせてくれないんだって。
入学当初は魔法の存在どころかこっちの常識すらわかってなかったくせ、自力で方法見つけるとかお前どんだけ帰りたかったわけ?
お前が帰るって言わなかった理由、オレはわかるけどね。どうせ帰るって言ったら邪魔されるって思ってたんだろ。その通りだよ。

だってオレ、あの日、お前にプロポーズする予定だったんだから。
お前が元の世界で築いた十六年捨てさせて、けどいつかはそれでも良かったと思うぐらい、のこと幸せにしようって決めてたのに。
なんで帰っちゃうんだよ。普段分かりやすいくせ、お前一切そんな素振り見せなかったじゃん。元の世界に帰れて嬉しいとか、オレとお別れになって寂しいとか、全然匂わせなかった。オレ、お前のことならちょっとした変化もすぐわかるのに。オレを出し抜くとか生意気。気付いてたら絶対に帰さなかったのに。お前にとってオレってその程度の存在だったわけ?

そういえばお前、結婚してんの?もしかしたら子供とかできてたりする?いてもおかしくないよな。あれから十年も経ってんだし、お前自分が大家族だったから子供たくさん欲しいって言ってたし。
いるなら旦那も子供も絶対オレに写真見せたり名前教えたりすんなよ。オレのこと殺人犯にしたくなかったら。異世界だから関係無いとか思うなよ、こうして手紙届いてるだろ。きっと今のオレはそれぐらい平気でできる魔法士になってるだろうから。
オレはしてないよ。絶対にしてない。もう恋愛とかこりごりなんだよ。どっかの薄情者な元カノのせいで。
優秀な魔法士は早く子供作れって周囲がうるさいらしいけどね。それでもオレは断ってるよ。子供とかそんなに好きじゃないし、何よりもうこれ以上抱えきれないし。

お前、初めてヤった後「私、きっと今夜のことは一生忘れられないんだろうなあ」って言ってたじゃん。
オレはあの日だけじゃなくてお前と過ごした時のこと、全部覚えてるよ。お前の笑った顔も、泣いた顔も、怒った顔も、可愛い顔も、不細工な顔だって、全部全部すぐ思い浮かぶんだよ。本当なら興味がない話だって、おざなりに相手してたけど、お前の話だからちゃんと聞いてたよ。どんな些細な事だって、お前を好きになった時から、全部忘れないようにしてたの。嘘だと思うなら尋ねてよ。あの時、何の話してたっけ?って。ならしっかり答えてやるから。……何書いてんだろ、そんなのできっこないのに。ばっかみてえ。

十年後だってオレはお前のことを引きずったままだよ。お前わかってなかっただろ、オレがそんなにお前のこと好きだって。お前と別れるぐらいなら他の何を犠牲にしてもいいと思ってたのにさ。
お前の世界じゃ魔法は存在してないらしいし、家族も友達もいないけど、それでもお前の為なら世界を捨てても良かった。方法があるなら、お前にだけ背負わせるつもりなんてなかった。なのにどうして連れて行ってくれなかったんだよ。お前とならどんな不幸な目にあっても良かったのに。オレの手を取ってくれたなら、最後は絶対にハッピーエンドに連れて行ったのに。

普通の男ならここでお前の未来を祝福するんだろうな。でもオレはお前の幸せなんて祈ってやらない。むしろ不幸になれば良いと思ってる。お前だけ幸せになるなんて、俺以外の男と幸せになるなんて許してやらない。絶対許さない。
好きだよ、。お前のこと愛してる。十年後の今だってお前が好きで好きで、ちっとも思い出にできてないんだ。学生時代の恋なんて熱病みたいなもんだなんて誰が言ったんだろうな。酷くなる一方じゃん。こんなに自分が一途だなんて思ってもなかった。
だから一生お前のこと忘れてやらない。生涯お前のこと憎んで呪って、でも嫌いになってやらない。ずっとずっとお前のこと思い続けてやる。覚えとけよ、お前のせいでオレは死ぬまで不幸なんだって。今のお前の幸せは、オレの人生の犠牲の上にあるんだって忘れんなよ。例えお前がオレを嫌いになったって、お前をどんなに恨んだって、オレはお前のこと好きなんだから。こんなにもオレの心をかき乱しておいて、普通に生きていけるなんて思うなよ。

愛してるよ、。お前と幸せになりたかった。

エース・トラッポラより

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