道化モドキと王妃様

 俺はモービィ。NRC唯一の女子生徒である監督生に想いを寄せている、ごく普通の男子高生だ。
 ぜひとも監督生とお近づきになりたいが、クラスが違うし、彼女も俺も部活動を行っていないため、仲良くなろうにも接点がない。だが無いなら作ればいいのだ!

「えっモービィくん、ハロウィン同好会に興味あるの?」
「ああ、だからぜひ体験入会してみたいんだけど、会員の奴、全く知らないから頼みづらくて」
「そっか。じゃあ私の方からスカリーくんに話通しておくよ」

 彼女は部活に入っていない。ただハロウィン同好会という、今年新設したばかりの同好会に積極的に関わっていると聞いていた。
 同じ寮に配属された編入生の野郎(めちゃくちゃ羨ましい)が、ハロウィン同好会の会長らしいから、他の部活よりもたぶん気軽に訪ねやすいのだろう。
 なので今回はそれを利用させてもらう。この名案を思いついた俺は即座に行動に移った。オルトにDVDを借りる約束をしていたらしく、休憩時間にうちの教室へ来ていた彼女に声をかける。

「よかったね、監督生さん!」
「うん。オルトくん、さっき貸してくれたの、早速使わせてもらうね」

 現時点では知人ですらなかったのでまずは自己紹介、そして本題に入って。通常であればファーストコンタクトは悩みどころだが、あの名案のおかげで何の問題もなく彼女に話かけることができる。我ながら完璧な作戦だ。
 俺のお願いを快く了承した彼女は「放課後待ってるね」と嬉しそうにはにかむ。
 体験入会は十日間。帰宅部の快適さに慣れてしまっているので、そもそも入会する気はさらさらない。だからこそ、この間に絶対仲良くなってみせるぜ……! そしてゆくゆくはあんなことやこんなことも、ヘヘヘ。
 めくるめく薔薇色の日々の幕開けに俺は心を躍らせたのだった。

「監督生は何か部活とか入らないのか?」
「入りたいんだけど、放課後は学園長からのおつかいとかあって難しいんだよね」

 体験入会して早三日。その図体にこそ一瞬驚いたが、会長であるスカリーはここの生徒にしては穏健派で、また熱烈に歓迎してくれたこともあり、さほど問題なく活動に参加できていた。
 ハロウィン同好会はその名前の通り、ハロウィンのあらゆることについて調べたり、次のハロウィンに生かすためにホラー映画を見たりするのが主な活動だが。
 はっきり言ってつまらない。調べ物してる時は勉強してるみたいだし、ハロウィン終わったばっかりなのにもう次回のことを考えるなんて馬鹿らしい。それに俺はホラー映画はあんまり好きじゃない。
 すっげー面白かったら入会することも考えたけど、これじゃ最初の予定通り入会しない方針でよさそうだ。
 ああ本当に退屈この上ない。でもこれも全ては監督生と仲良くなるため。やる気なんて微塵もないが、積極的に手ほどきしてくる監督生にそんな姿を見せられない。
 今日の活動はハロウィン関連の読書だ。受け取った本にしっかり目を通してるフリをしながら、さりげなく監督生に話をふる。やっぱ仲良くなるには小まめなコミュニケーションでしょ!

「へえー入れるとしたらやっぱりハロ研?」
「そうだね。一番参加してて楽しいのもここだしなあ」

 この三日間で知ったが、監督生は心からこの同好会の活動を楽しんでいるらしい。あとめちゃくちゃホラー映画が好き。こんな大人しそうな顔して、血しぶきと腸が飛び散るような映画に目を輝かせてるのにはめちゃくちゃ驚いた。
 過激なスプラッタホラーを初日から見せられて脱落しなかった俺偉すぎる。まあ、監督生の意外な一面を知れたので悪くなかったけどさ。

「それに私、ハロウィーンの王が好きなんだ」

 ふにゃりと監督生が蕩けるような笑みを見せる。その表情があまりにも可愛くてドキッとした。
 丸い頬は淡く赤みを帯びていて、ホラー映画鑑賞の時よりもキラキラと目が輝いている。思わずその可憐な姿にぽーっと見とれる俺へ彼女は言葉を続ける。

「彼の故郷でしか知られていなかったハロウィンを後世の人々の為に、世界のどこにいても楽しめるお祭りとして広めた偉大な人。私、彼のことを尊敬してるし大好きなの」

 語りながらとびきりの笑顔を見せる監督生。本当に彼女はその偉人のことが好きなんだろう。
 だったらそいつについて調べれば、彼女との会話に役立てられる。でも彼女にこの顔をさせる男がどうにも癪で、そんな気にはなれない。なんとも言えない不快感に、話題を変えようと思った時だった。

「スカリー、お前何してんの?」
「我輩のことはお気になさらず……」

 さっきまでこちら、というか監督生の方を気にしながら、立って本を読んでいたスカリーが床にうずくまっていた。
 微かに見える耳や首筋が赤くなってる。なんだ、熱で目眩でも起こしたか。風邪かなんだか知らねーけど迷惑だから移すなよ。本人が気にするなと言ってるし、面倒なので放っておくことにした。こいつ恋敵だしな。
 スカリーの奴は間違いなく監督生が好きだ。俺が監督生にかまわれてると明らかに不安そうな顔してるし。悪いな、監督生に好かれちゃって。
 でもいいだろ。中途半端な時期に編入してきたお前より俺の方が監督生を先に好きになったんだから。その分の交流を取り戻してる、ただそれだけのことなんだし。

「うーん、スカリーくん大丈夫じゃなさそうだし、今日はこの位で終わっておこうか」

 スカリーのことはほっといて監督生との雑談に戻るはずが、その前に彼女から部活動自体を切り上げられる。
 くそっ、いいところだったのに! まあいい、あと一週間もあるんだから。慌てる必要はない。この調子で続けていくだけの話だ。

「監督生って確か数学得意だったよな? 宿題でわかんねーとこあって教えてくれねー?」
「いいよ、スカリーくん来るまで時間あるし。どの問題?」

 経験入学五日目。俺は順調に監督生と交流を深めていた。
 今日は委員会の集まりらしく、スカリーはまだ来ておらず、彼女と二人っきり。監督生は先日聞いていた通り、毎日来るわけではないので、このチャンスを生かさないとな。
 勉強なんて正直やりたくないが、監督生はどうも誠実なタイプが好みってことだから、こういった形のアプローチの方が効果的だろう。
 ワンチャン隣に座ってくれることを期待したが、監督生はナナメ前の席に腰掛ける。まあ隣ほどじゃないけど、これでも近いからいいか。

「この問題なんだけど」
「ああ、これはあの公式を使って……」

 問題集を開いて指差す。褒められて喜ばない奴はいない。これは彼女を褒める為の流れに持って行く作戦だ。
 実のところ、この問題は本当は解き方をわかっている。なので、この問題を選んだのはもし彼女の教え方が下手だった時の保険だ。だがその心配はいらなかった。とてもわかりやすく解説してくれる。

「ありがとな、監督生! おかげで何とかなりそうだ。やっぱ監督生って頭良いんだな」
「なら良かったよ」

 自然な流れで彼女を褒める俺に監督生は微笑む。この学園で素直に賞賛する男は殆どいない、だから彼女にとってこの言葉はとびっきり響いたはずだ。
 彼女とやりとりしていく中で俺はある確信をしていた。監督生は俺のことが好きだ。だって最初から監督生は俺に優しかった、今だってこうやって親切にしてくれる。それって俺に気があるからだろ?

「実はさ、監督生には前も世話になってて……」

 よし、あの事を伝えるならこのタイミングしかない。緊張に出てきた手汗を誤魔化すように拳を握り込む。
 俺の発言に監督生は覚えがないからか、きょとんとしていた。ただ少し間を置いて、俺がスカラビア生だったことで「ジャミル先輩の件なら気にしないで、仕方ないよ」と彼女が答える。

「それもあるけどさ、俺、親が厳しくて、だから良い点取らなきゃってプレッシャー凄くてさ。それでオクタヴィネルの提案に乗っちゃって……あれも監督生が助けてくれたんだろ? 本当に感謝してる」
「ああ、別にアレも成り行きだし……」

 別に俺の親はそんな風に圧をかけてくるタイプじゃなくて、単にラクしたかっただけなんだけど。でも監督生の好みを考えると言えるはずがない。
 同じくイソギンチャクになって迷惑をかけたエーデュースが監督生と普段から仲良くしているところからすると、友達にはなれそうだけど俺がなりたいのは恋人。だから真実を知られるのは得策じゃない。
 でもこの理由だったら監督生の同情を誘えるだろうし悪くないだろ。そもそもイソギンチャクになったことを話さなければいい? それは違う。だって俺が彼女に惚れたエピソードだから、絶対彼女には知っていてもらうべきだ。
 よしちゃんと伝えられたことだし、この調子で畳みかけるぜ。

「俺、その時から監「すみません、遅くなりました!」
「あっ、スカリーくん。おつかれさま、随分かかったね」

 俺が正に告白を決めた瞬間、勢いよく開いた扉とスカリーの声でかき消された。ああクソクソクソ! せっかく良いムードだったのに!
 あまりの間の悪さにわざとやったんじゃないかと勘ぐってしまう。
 もうどうせだから、改めて再度告げてみようか。そうして目の前で奴に絶望を突き付けてやろうか、そう考えてみたが。

「はぁー、はあー……ありがとうございます、さん」
「どういたしまして……落ち着いた?」
「はい。ではいつもより時間も押していることですし、早速今日も活動を始めましょう」

 でも息を切らすスカリーの背を彼女が撫でて労っている姿に、さすがに両思いとはいえ、この状況で言うのは監督生を困惑させてしまいそうだなと躊躇った。
 仕方ない。今日の所は一旦諦めてやる。でも次こそは必ず……!

「ああ、オルトのやつ、マジでうぜえ……!」

 教師に見つからないようにハロウィン同好会の部屋に向かって、俺は苛つきながら廊下を走り抜けていた。
 同好会は他の部活と違って、アクセスの悪い校舎の端の部屋を使わされる。教室の辺りを抜ければあまり人が来ない場所なので、途中から全力で走れるのだけはラッキーだった。
 何故俺がこんなに急いでいるのか、そしてムカついているのか。それもこれもあのロボットのせいだ。
 今日もスカリーは遅くなり、そして監督生は同好会に参加する日で。だから放課後になってすぐ俺は同好会に向かう予定だった。
 ただその前にクラスの友人から今回の件について聞かれたのだ。ハロウィン同好会ってどうなの?とか、それで怠い活動について話せば、お前マジであの同好会入るつもりなの?と尋ねられ。
 そこで俺がこの計画について語ったところ、盗み聞きしていたらしいオルトが割って入ってきて説教してきたのだ。
 『期待させられたスカリーさんが可哀想、それにそういった不誠実な行動はさんが一番嫌がることだよ』とかなんとか。それで口論になって、なんとか途中で切り上げたが、それでもかなり時間を取られてしまった。ロボットのくせに人間に逆らうなんて不良品じゃねーか、あいつ。
 やっとこさ、同好会の部屋に辿り着く。扉に手をかけて、俺はふと先日のスカリーと監督生のやりとりを思い出した。
 今の俺はあの時のあいつみたいに肩で息をしてる。だから監督生はきっと心配してくれるだろう、期待に胸を膨らませて俺は扉を開いて。

「っ、か、監督生?」
「……ああ、君か。いらっしゃい」

 テーブルでスマホを眺めていた監督生はひどく冷めた表情をしていて、その物々しい雰囲気に思わず気圧される。
 だが俺が声をかけると即座に彼女は普段と変わらない笑顔を向けた。

「なあ監督生、なんかあったの?」
「何が?」
「いや、その、何もないならいいんだけど」

 尋ねる俺に監督生は問い返す。本当にわからないといった表情に追求しようがなくて、息を整えたいこともあって俺は言葉を濁した。
 監督生は机の短い方に置かれた椅子にいるせいで、今日も彼女の隣には座れない。リュックを床に置いて、それでもできるだけ近くの席に腰掛ける。
 まだスカリーは来ていない。せっかくのチャンスだ、一旦さっきのことは忘れよう。さて今回は雑談にするか、また勉強を教えてもらうか。
 俺が迷っていたところ、監督生が机の上にDVDの箱を広げる。パッケージからしてどれも俺の苦手なグロ描写が多そうなだ。内心でウゲッと声をあげる。

「今日はスカリーくんが来たら映画見る予定なんだ。どれが見たい?」
「そ、そうなんだ。いや実は俺、今日は用事があって。それ伝えにきただけなんだ。だから監督生が好きなの選べよ」
「わかった。じゃあスカリーくんには来ないって言っておくよ」
「ああ、ありがとう。またな」

 初日の映画でもうこりごりだ。だからせっかく監督生と二人きりだけど、今回は遠慮させてもらおう。心配せずとも、あと三日ある。なんなら体験入会が終わるだけで接点はできたんだし、いずれ何かしら機会は訪れるだろう。
 屈んだ彼女が俺のリュックを渡してくれる。それを受け取って、俺は寮へと帰っていった。

 自室に戻った後、寮服に着替えたタイミングで俺はリュックに差していたはずのマジカルペンがないことに気付いた。
 どこで落としたんだ。必死に思い返して、そういえば監督生にリュックを渡された時には既になかったような。でも授業が終わった直後、オルトと口論する前には差した記憶がある。
 だとすると教室か、全力疾走した時か、同好会のどこかで落としたんだろう。これがノートとかならともかく、マジカルペンはまずい。誰にも拾われてなきゃいいけど。
 面倒だがもう一度制服に着替える。忘れ物を取りに行くだけだし、宴の準備が始まる前には帰ってこれるだろう。だから外出届は出さなくてもいいか。バイパーはともかく、寮長はそこらへん緩いから許してくれるだろ。
 急いで用意を終えた俺は寮を抜け出して校舎へと向かった。

 放課後だけあって皆、何かしらの部活に行ってるんだろう。まだ夕方だが、校舎にあまり人気はない。
 あまり期待せず向かった落とし物センターには届いていなかった。それから教室を隅々まで探したが、どこにも俺のマジカルペンは落ちていなくて。
 それから廊下もくまなく注意を払いながら歩けど見つからないまま、部室近くまで来てしまった。
 となるとやっぱり部室か。あまり気は進まないが行くしかないよな。
 用事があると行って帰ったからというのもあるが、映画の内容が嫌だ。スカリーが来てからどの位経ったかわからないが、まだ時間的に映画は終わっていないだろう。むしろヤベエシーンが始まったばかりかもしれない。あーいやだいやだ。せめて一旦グロが落ち着いたところでありますように。
 そうして祈っているうちに部室の前に辿り着く。

「……?」

 おかしい。扉の前に立っているというのに何の音も聞こえてこない。映画を見ているにしては静かすぎる、それも前の時はめちゃくちゃ音量あげてたのに。
 もしかして俺の祈りが通じたのか、ちょうど休憩パートに入ったところなのかも。
 そう考えながらも大迫力のグロシーンが待ち受けている可能性も考えて、少しだけ扉を開けて覗き込む。そして飛び込んできた光景に俺はヒュッと息を呑んだ。

 ——真っ暗な部屋の中、映画を見る時に使っていたソファーの上で監督生とスカリーがキスをしていた。
 正確にはスカリーだけがソファーに腰掛けていて、その前に彼女は立っている状態で。だから、どう見てもあれは彼女から口付けている。
 何が起きてる、なんで。監督生、お前、どう考えたって俺のこと好きだっただろ。そう確信していたはずの両思いを目の前の現実がかき消してくる。
 俺の想いを裏切って踏みにじるその姿に心が引き裂かれるようだった。これ以上傷つきたくないのに、どうしてか目が離せない。
 監督生の口元が動く。何かをスカリーに語りかけていることはわかるが、声は聞き取れない。
 突如ぺたりと彼女は床に座り込む。それにスカリーは静止するような動きをしていたが、彼女はかまわず奴のズボンのチャックに手をかけて。見るな、見るな、と理性が訴えかけてくるのに俺の足は一歩も動こうとしない。
 俺の方が先に好きになったのに。どうして、そこにいるのは俺じゃないんだ。嫉妬に胸が燃えるように熱くなり、胃が締め付けられる。怒りの衝動から顎が痛むほど歯を食いしばった。

 彼女が奴のズボンから取り出した、青筋を浮かべそそり立つそれは自分の股間についているものと同じものとは到底思えない。
 俺のブツはけして小さくない。それでも軽く自信を失うほど、奴のペニスは巨大すぎた。あんなの、どこからどう見たって凶器だ。人一人殺せそうな凶悪な肉塊に思わず怯んだのか、育ち始めていたはずの俺のブツが少しばかり萎えていく。
 男の俺でも怖い。だというのに、彼女は何の躊躇いもなく、奴のペニスを撫で回して。彼女の小さな手の中で赤黒いペニスが脈動して、ビクビク震えている。
 気持ちいいのだろう、男の腰が揺れていた。さくらんぼみたいな唇がグロテスクな凶器に何度も何度も愛おしげに口付ける。彼女の可愛いらしい口元と、奴の醜い性器の交わりはあまりにもアンバランスだ。
 彼女はまるで子供がキャンディーでも舐めるかのよう、熱心に舌を這わせる。彼女の可憐な顔に男の卑しいものが突き刺さる。彼女が頭を動かすにつれて、頬が膨らんだりしぼんだりしてた。
 そのうち口いっぱいに頬張ったり、丁寧に睾丸まで飴玉のように舌で転がしたり。そんな普段の彼女からは考えられない姿を見れたことを今の俺は喜べない。
 口を離した彼女が上着を脱ぎ始める。ブレザーもシャツも脱ぎ捨てて下着を外す。そうして、あどけない顔立ちには不釣り合いな、大きな丸みが現れた。清らかで美しい乙女のシンボルはまるで作りたてのゼリーのようにぷるりと揺れる。
 ごく平凡な、地味だけど人の良さそうな顔立ちをしておきながら、服の下ではこんなにもいやらしい男を誘う体をしていたなんて。
 触りたい、そう願ったところで俺の手は届かない。宙を彷徨った手を俺は自身の下腹部へと伸ばす。これが彼女の手なら、だが残念ながら俺の平均的なペニスを包むのは慣れ親しんだ固い掌だった。
 やわらかな膨らみにスカリーのブツを挟み込むと、彼女ははみ出た先端にたらりと唾液を垂らす。谷間を奴のペニスが行き交じって、乙女のシンボルを汚していく。
 胸を揺さぶる手はそのままに彼女は先端を口に含む。スカリーは彼女の頭を押しのけようとしていたが、びくりと体を跳ねさせて動かなくなった。
 対照的に監督生の白い喉が何かを飲むかのよう上下に動く。俺もよく知っている、俺の手の中にも吐き出された、白く泡立った寒天質の体液が、彼女の小さな唇からこぼれだし、顎へと伝っていった。
 射精したことで少し冷静になったのか、彼女達のすぐそばに俺のマジカルペンが落ちていることに気付く。だが、この場に乗り込む勇気は無い。
 明日の朝、早起きして取りに行こう。息を殺して急いでその場から俺は立ち去った。


「監督生、監督生……ウ゛ッ」

 アレで抜くのはきっと惨めこの上ない。そう理解しているのに自室に戻った俺は同室の奴らが寝静まったのを見計らって、股間を擦り上げていた。
 あの後、二人はセックスしたんだろうか。間違いなくしてるよな、だってあいつらどう見たって。
 俺が逃げ去る直前、目にした彼女はとろけきった笑みをアイツに向けていた。そして、聞こえないはずなのに「だいすき」と奴に彼女が告げているのがわかってしまった。
 ティッシュの中にぶちまけた、見た事のない量の精液を引き出したのは、はっきり目にした彼女の痴態でも、妄想の中で奴に乱される監督生でもなく、アイツに愛を告げた時の恋する表情だった。
 これまでのオナニーで一番気持ち良くて、どうしようもなく空しい。ボタボタと涙が落ちる。噛み殺しきれない嗚咽が耳障りだ。吐き気を催しているのは、きっと漂う精液の匂いだけのせいではないんだろう。
 もう二人には会いたくない。監督生とクラスが別であることに初めて感謝した。体験入会はこのままバッくれよう。そうすればきっともうどちらとも関わることはないだろうから。
 気怠い体でなんとか後処理をして、俺はベッドに倒れ込んだ。

「おはよう」

 にっこりと普段通りの笑みを見せながら、挨拶してくる彼女。
 昨日までの俺だったら喜んで、浮かれていたのだろう。でも今は恐ろしくて仕方なかった。どうして、ここにいるんだ。
 校舎が開いたばかりの時間に登校した俺はまっさきにハロウィン同好会の活動部屋に向かった。だというのに彼女が部屋の中にまるで待ち構えるかのよう居座っていて。そしてその手には俺のマジカルペンが握られていた。

「君、もうハロウィン同好会には来ないでね」

 魔法石に軽く爪を立てるような持ち方をしながら彼女は俺に言い放つ。
 マジカルペンの魔法石を傷つけてはいけない。ブロットの軽減率が悪くなるのもあるが、なにより魔法が暴発する可能性が高くなる。魔法石の破損はマジカルペンの補助がなければ、まともに魔法を発動できない一年にとっては致命傷だ。修理しようにも目が飛び出すほどの金額になると聞く。
 青ざめているだろう俺はようやく「なんで」と彼女が待ち伏せていたことへの疑問を口に出した。それに彼女は打って変わって冷たい表情を見せる。あの昨日スマホを眺めていた時のようなその顔に、更に俺の体は凍り付いた。

「だって、君、はなから入会する気なかったんでしょ? 迷惑なんだよ、別に幽霊部員になるのは勝手だけど。正式な会員じゃないなら予算下りないんだからさ」

 突き放すような声色だった。利用していたのは俺だけじゃなかったと思い知らされる、そして同時に俺は見限られたのだとも。

「私に感謝してるっていうなら、行動で誠意を示してほしかったよ。別にエーデュースレベルの挽回、君に期待してないし。あ、このペンはオルトに渡しておくから、せめて彼にちゃんと謝るぐらいはしてね。わかったなら返事」

 彼女は俺が思っていたような、ただの可愛い女の子なんかじゃない。
 魔法についてはマジカルペンが手元にないから控えるとして。だとしても男女の力量差を考慮すれば、力尽くで奪うこともできる。
 とは、思えなかった。一人でノーマジの女の子がノコノコ無防備にやって来た? そんなわけあるか。だって賢い彼女がそんな当たり前のことに思い当たらないはずがない。
 だから見せてないだけで、監督生はまだ何かしらの隠し球を持っている。害意を与えようとした瞬間、発動するような何かを。きっとそれを浴びたが最後、俺は。
 喉が震えて声が出ない。頷くこともできずに固まるだけの俺に、彼女はこれ見よがしにため息を吐いた。

「ここまで言ってもまだわからない? あんな明らかな詐欺に引っかかるだけあって、君、察しも悪いんだね。……ハロウィーンの王に道化モドキは必要ないんだよ」

 じゃあね。そう告げると彼女は俺の押しのけて立ち去っていった。

 最初聞いた時は意地でも調べる気にならなかった。だが、別れ際に罵倒された時から妙に気になって。俺は『ハロウィーンの王』について調べた。
 これまで聞いたこともないのに、意外にもあっさり目当ての情報は見つかった。まるで何かの力に導かれたかのように。
 数百年前のこの学園の卒業生であるそいつは、ハロウィンを広める決意を固めたきっかけとなった出来事で恋に落ち、生涯独身を貫いてその女を想い続けたと。
 そう表記された男の名を見て悟った。なんて分かりやすい答えなのか。二人は運命で、奇跡で、必然で。
 俺が先に好きだった、なんて滑稽な思い上がり。とっくの昔、俺が生まれるよりも遙か数百年前から、俺が好きだった女の子はハロウィーンの王のものだったのに。
 理解した瞬間、頭の中で壊れてはいけない何かが、ぐちゃぐちゃになる音がした。


………
……

 ——優しくして損した、と思っていたんだけどなあ。

 オルトくんからスマホに送られてきた真相を見た時、元々なかったあの男への好感度はマイナスに振り切った。
 私があの男を親切にしていたのはハロウィン同好会に入会させる為だ。部活ほどではないが同好会でも会員が増えれば、活動費は増額される。お金はあるにこしたことはない。
 それに同志がいた方が、私達と過ごしたハロウィンを愛してくれたスカリーくんも楽しいだろうなと。まあ最悪、幽霊部員になったとしても活動費が稼げるだけで充分だ。
 だから私が同好会に入れないこともあり、期待していたというのに。同志に出会えたんだと一生懸命プレゼンしていたスカリーくんを思い出して、いっそう苛立った。
 まったくイソギンチャクの件といい、監禁してきた事といい、二つも大きな貸しがあるくせに使えない奴だな。

 もうこれ以上、こいつにスカリーくんとの時間を邪魔されたくはない。そして彼を欺いた罪はしっかり償ってもらおうか。
 男がホラー映画が苦手なことには気付いていた。なのでこれまでは配慮してやっていたが、思いついた策に使えることもあり、映画を見ると奴に嘯いた。
 ならば案の定、男は逃げることにしたから、私は男のリュックを持ち上げた際、密かにマジカルペンを抜き取り、テーブルの下へ転がす。うっかり落ちた風に装う為に。
 これに関しては一か八かの賭けだったが、DVDのカバーに気を取られていたこともあって、何とかその細工は気付かれずに済んだ。
 あとは取りに戻ってくるかどうかだけれど、まあこれは問題ないだろう。マジカルペンの重要性は耳にたこができるほど説かれているのだ。よっぽどの間抜けじゃなければ、さすがに探しにくるでしょ。
 仕掛けは施した。だから後は赴くまま、スカリーくんとイチャつくとしよう。と、まあ、ここまでは想定通りだったのだけれど。

「う゛ぅ……いやだ、もういやだ……やだ……」
「スカリーくん」
さん、お願い、モービィさんにもう優しくしないで……」

 部室へとやって来たスカリー君を出迎えた私はあの男は来ないから、イチャイチャしようねと告げるつもりだった。
 だけどもあの男の名前を出した途端、スカリーくんは私をソファーの上へと押し倒して。
 突然の事に呆然としていれば、まもなく彼は号泣し始めた。なお現在進行形でガチ泣きである。

 ここ最近、何か言いたげだなとか、セックスが激しいなとは思っていたけど。どうやら、あの男へ親切にしていたことで、彼をめちゃくちゃ嫉妬させてしまっていたらしい。
 この件については全く想像してなかった。さっきのちょっとした違和感はあったけど、それ以外は本当にいつも通りだったし……。
 覆い被さられているので、重力に負けたスカリーくんの涙が私の顔に垂れる。うーん、まさか、ここまで泣かせてしまうことになるとは。限界迎えてプッツンするまで耐えた結果、暴走するのはスカリーくんの悪い癖だ。まあそんなとこも可愛いのだけれど。
 あの男への優しさは全部無駄になったと思っていたが、ちょっとは役に立つところもあったらしい。少しだけささくれだった心が和らぐ。だとしても感謝なんて一ミリも芽生えないが。

「彼ならもう来ないよ。なんか思ってたのと違うから辞退するって」
「え……そうなのですか?」
「うん。もしかしたら会員になってくれるかもって思って、できるだけ親切にしてたんだけどダメだったよ。ごめんね」
「あ、謝らないでください! 我輩が魅力を伝えきれなかったのが悪いので。我輩の方こそ勘違いして、さんにこのような真似をしてしまって……申し訳ございません……」

 嘘を吐く時は本当のことを混ぜろ、とはエースのアドバイスだが真理だなと思う。初めて聞いた時クズいなとか思ってごめんねエース。すごく助かってる、ありがと。しれっとスカリーくんを騙しながら、私は内心でエースへ感謝を捧ぐ。まあ今から真実にするんだけど。
 スカリーくんが起き上がったことで解放された私は、彼にソファーへ腰掛けるようお願いする。さっきの負い目があるのか、素直に彼は従ってくれる。
 座る彼の前に立った私はスカリーくんの涙を拭って。宥めるように彼の髪へ指を通した。普段ならあのまま抱かれるのもやぶさかではないのだけれど……。
 スカリーくんへのスキンシップは続けたまま、横目でアイツのマジカルペンの位置を確認する。一応入り口の導線からは外しておいたけど、もしかしたら彼が気付かず蹴ってしまう可能性はあった。うん、でもちゃんと転がしなおした理想通りの場所のままだ。
 既に男が来ているかどうかはわからない。途中で確認することも行為に夢中になってしまうから難しいだろう。だけど、もうそろそろ始めてしまおう。

 近くにあった照明のリモコンに手を伸ばして部屋の電気を消す。
 カーテンを閉めているので真っ暗になるが、この距離なら明かりがなくても彼の顔の場所はわかる。なので不思議そうにしている彼の両頬を包んで、そっと口付けた。
 私からのキスに驚いてスカリーくんは目を丸くしていたが、うっとりした顔で彼は私の唇を受け入れる。

「ねえスカリーくん、口でしていい?」
「えっ、あの、してくださるのは嬉しいのですが……ここは学校ですし」
「えー? さっき私のことソファーに押し倒してたの、どこの誰だっけ?」
「う……」

 私の指摘にスカリーくんが言葉に詰まる。あのまま誤解を解かなければ、抱いていた確信があるのだろう。
 ですが、でも、とオロオロしているスカリーくんをよそに私はさっさと座り込む。そして彼のストップもお構いなしにスカリーくんのズボンのファスナーに手をかける。
 もうスカリーくんの分身はズボンの上からでもわかる位、膨らんでいて。あの大きさなら当たり前なんだけど、窮屈そうで可哀想。うっかり挟むことのないように気を付けてファスナーを下ろす。

 古本市から帰った後、学園長に見せられたハロウィーンの王の肖像画に私は一目惚れした。
 学園長に頼み、引き取った後はオンボロ寮の使ってない空き部屋に飾って。そして毎晩こっそり誰にも見られないよう、額縁を磨いたり、眺めたり、話かけたり。ロザリアちゃんのように反応が返ってくるわけでもないのに、私は額縁の中のハロウィーンの王に愛を捧げていた。
 彼のことを調べて生涯想い続けた運命の君がいたこと知っても、私の気持ちは変わらなくて。
 そしてとある夜、思い切って肖像画の彼に口付けたところ、絵の中から彼が飛び出してきたのだ。後で聞いた話によるとゴーストになってからずっと絵に宿っていたらしい。
 なお「まさかこんな日が訪れるなんて……ずっと、ずっと、会いたかったです、さん」と告げた彼は仕草こそ紳士然としていたが、めちゃくちゃ真っ赤な顔してた。あとプルプル震えてた。当時は不思議だったが、今なら私からのキスに照れてたんだなとわかる。
 彼に名を呼ばれた瞬間、私はハロウィンタウンで過ごした記憶を思い出して。そうして私達は、スカリーくんからすると数百年ぶりの再会を果たしたのだった。
 結果的に貴重な肖像画をぶっ壊してしまったので、人間になった彼を引き連れて学園長に相談したところ、衝撃の展開とあまりの情報量に学園長が泡を吹いてぶっ倒れたのは記憶に新しい。
 それでもなんやかんやあって、スカリーくんは編入生としてNRC生に通えることになった。
 こういったことはたまによくあることなんですけど色々その後処理が複雑なんですよ!と唸っていたけど、パッと思いつく限りでも莫大な手続きが必要だろうに、それを数日あまりで準備できる学園長は普段あんなのでも優秀な魔法士なんだなと少しだけ見直した。
 入学準備が整うまでの間、彼はオンボロ寮で過ごすことに。ただ結局のところは闇の鏡の判断も変わらなかったが、もしかしたら別の寮に配属される可能性もあった。
 だからその間に決着を付けようと私は彼に猛アタックして「サリーさんのことを生涯想い続けたのは知ってるけど、私スカリーくんが好き!」「誤解です!!」とのやりとりを経て、無事に私達は恋人同士になったのだった。
 学園長の言っていた『たまによくあること』とは、真実の愛によるキスが引き起こす、伝説レベルの魔法を示していたのだと、私はそこでようやく理解した。

「ん……スカリーくんの、いつ見ても大きいね♡」

 ベルトも外し終えたところで下着ごとズボンを下ろせば、ぶるんと彼の分身が飛び出した。服を着ている状態ですら存在感が凄まじいのだから当たり前なのだけれど、覆うものを剥ぎ取ったら尚更大きく感じる。
 こんな大きいの受け入れて、よく私のおなか壊れないな。最初の頃、半分ぐらいしか入らなかったのも納得がいく。
 ビキビキと血管の浮き出た立派なそれは単体なら、さながらホラー映画に出て襲ってくるモンスターのような迫力があった。でも私からすると、大好きなスカリーくんの一部だし、すりすりと頬ずりすればぴくぴくと震える様に可愛いなあという感想しか抱けなかった。
 強く握り込まないように気を付けながら、彼の男性器の全体を両手で包む。同時に撫で回すように動かせば、スカリーくんの口から甘い吐息が漏れた。
 びくびくと手の中で跳ねるスカリーくんの分身。その先端から先走りがとろりと溢れるのを見て、思わず生唾を飲み込む。
 でも我慢して、まずは全体へ焦らすようにちゅっちゅっと軽くキスしていく。視線を合わせながら徐々に激しくすれば、スカリーくんは明らかに興奮した様子で息を荒くしていた。
 舌先を擽るようにチロチロと這わせて、裏筋をれーっと大きく下から上へと舐め上げる。全体が私の唾液で濡れたなら、敏感な先端を重点的に、けど優しく責めて。
 さっきよりもこぼれている先走りをちゅっと啜れば、しょっぱい味が口内に広がった。独特のえぐみがあるけど、スカリーくんの味だと思うと興奮を誘うだけで。
 あーっと大きく唇を開いて、歯が当たらないよう気を付けながら口の中に彼の分身を運ぶ。彼のは大きすぎて浅いところを咥えるだけで精一杯だ。
 一度、自ら喉奥に招こうとしたが盛大にえずいて以来、やりすぎるとスカリーくんからストップがかかる。今では大人しく従っているが、前の私はとても聞き分けが悪かった。
 というのもスカリーくんは独身だったとはいえ、カッコイイのだからそれなりに他の女の子と寝ることがあっただろうと思っていて。絶対負けたくない!という気持ちから、ムキになっていたのである。
 なお、実際にはスカリーくん、童貞だったんだけど。そして、その件の話合いにおいて「そういったことは好きな方とだけするものでは……?」と心底疑問を覚えていた彼の純情さに、更に惚れ直したわけだが。
 袋の部分を舌で転がす私の髪をスカリーくんは耳にかけてくれる。そのさりげない気遣いにもっと喜ばせてあげたいという気持ちになった。

「え、さん……?」
「おっぱいでしてみたいの。スカリーくん、いや?」
「い、いやじゃないです……」

 良いところで口を離して服を脱ぎ始めた私に、スカリーくんは戸惑っていて。それに私は安心させるように声をかけると、上半身に纏っていたものを全て取り払う。期待から潤む瞳を私は見逃さなかった。
 胸が大きいのって不便だなって思ってたけど、こうして彼を喜ばせることができるのだから悪い事ばかりでもない。胸でするのは初めてだけど、たくさん調べておいたから自信があった。今日こそ最後までやり遂げてみせる。
 バキバキに反り立った彼の分身を両胸を寄せて谷間に挟む。私けっこうおっぱい大きいはずなのになあ、それでもスカリーくんのはみ出るんだよなあ……。
 位置を調整して、谷間から覗いている彼の先端に唾液を落とす。よし、これで滑りがよくなっただろう。
 ぎゅっと圧迫しながら扱くように胸を上下に動かす。にゅるにゅると膨らみを擦りつけられる刺激に興奮からか、おなかの奥がきゅうと疼く。
 先に口でいっぱい可愛がったのもあって、スカリーくんはそろそろ限界ないのだろう。胸の中の彼がびくびくと強く脈打っている。だから手は止めずに、ぱくっと彼の先端にしゃぶりつく。
 いつもなら途中で終了させられるけど、今日は譲ってあげない。

「あっ♡ だめです、さっ♡ 出てしまうので、離して、くださ、い♡」
「ん、らしていいよ♡」
「ハッ♡ さん、ダメです♡ イくッ、出る、出ちゃうから♡ ぅう〜〜〜ッ♡♡」

 感じすぎているせいだろう。ぐいぐい押しのけようとするスカリーくんの手には殆ど力が入ってなかった。
 上目使いで彼を眺めながら仕上げにちゅっー♡と吸い付けば、口の中のスカリーくんが大きく膨らんで。どくどくと喉奥に向かって勢いよく彼の体液がなだれ込んできた。

「あ、ぁ……♡」

 私の頭に置かれていた彼の手がだらりと垂れ下がる。今のスカリーくん、えっちな顔してるなあと彼の痴態を見つめながら、んきゅっ、んきゅと口の中に注がれたものを喉を鳴らして飲み込んだ。
 初めて含んだ精液だけども粘ついているし、けっして美味しくはないけど、飲んだ方が男の人は嬉しいらしいので。ただ正気に戻ったスカリーくんは謝ってきそうだから、今のうちにさっさと片付けないと。自分の意志で望んでやってるって思い知らせる為にも。
 でもいかんせん多すぎて飲みきれなかった分がちょっと溢れてしまった。拭って舐め終えた後、全部飲んだよとアピールの為に口を開いて見せつける。
 それに「ミ゛ッ」と悲鳴のような顔をあげつつもガン見するスカリーくん。そして即座にムクムクと復活し始める彼の分身。元気だね。
 ただ、まだ自分頑張れます!と主張してくるその子ではなく、よしよしと彼の頭を撫でて。とろん、と心地よさに瞳をとろかすスカリーくんへ私は言い聞かせる。

「続きはオンボロ寮に戻ってから、いーっぱいしようね♡」
「はぃ……♡」
「……スカリーくん、大好きだよ」

 スカリーくんは快感にふやけているせいで気付いていないみたいだけれど、微かに立ち去っていく足音が聞こえた。どうやら当初の目的は無事に果たせたようだ。
 それにしても骨抜きになって、めろめろの顔をしているスカリーくんの可愛いことと言ったら。
 でも夜になるとここから想像できないぐらい、雄々しい表情するんだよなあ。そして私の方が今の彼の顔をしていることだろう。
 きっと今夜はこれまでにないくらい盛り上がってめちゃくちゃにされる。嫉妬というスパイスはさっきので多少和らいだだけで消えたわけじゃないのだから。こんな状態でもしっかり耳を傾けて「我輩も愛してます」と返してくれる彼にそう確信して。

 だから計画通り、明日の朝に早起きするのも、それもスカリーくんを振り切って一足先に登校するのも大変だろうなあ。……けど。
 やりとげてみせるよ、私の愛するハロウィーン王。貴方の数百年の誠意たる愛に応える為にも。

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