貴方ならすべて嬉しいかわいい

「スカリーくん、教えてほしいんだけど」
「はい、なんでしょうか?」
「私から夜這いされたら嬉しい?」
「そうですね、我輩としてはさんから夜這いされたら…………????????」

 ハロウィーン王、つまり受肉する前のスカリーくんについて記載された本を読み終えた私は、隣に腰掛けていた彼に確認を取る。
 ちゃんと話を聞いてくれたにも関わらず、彼は考え始めてまもなくフリーズしてしまった。
 別に返答は急いでいない。なのでしばらく回復するのを待っていたところ、ハッと何かに気付いたような顔をスカリーくんは見せた。

「申し訳ございません、さん。我輩、何か聞き間違えたようでして。もう一度仰っていただいてもよろしいでしょうか?」
「私から夜這いされたら嬉しい?」

 再度確認してみたところ、スカリーくんは顔を押さえて俯くとまた固まってしまった。
 そんな無理難題をけしかけたつもりはないのだけれど。そんなに考え込まれると、こちらとしてもどうしようと悩んでしまう。
 一旦出直そうか。そう考え始めた頃、スーッと深く息を吸い込む音が聞こえたかと思えば、ゆっくりスカリーくんが顔を上げた。ほんのり赤くなった頬と緩みかけた口元に想定より良い反応だなと思う。

さんがお相手なら嬉しいです。ただ、その、どうして」
「じゃあ今夜行くから早めに寝ておいてね」

 まあ断るわけないよね。スカリーくん、ムッツリではあるけど変に意地張ったりするようなタイプじゃないし。思った通りの回答に胸をなで下ろす。
 念のための確認も取れたことだし、ソファから立ち上がった私はさくっと彼の部屋を立ち去る。さて今夜に備えて予習するとしようか。

 午前0時をすっかり通り過ぎた頃、音を立てないようにスカリーくんの部屋のドアを開く。それから忍び足で彼が眠るベッドへと近づいていく。気を付けていても、着込んだナイトガウンの布ずれと床の軋みがいやに響いていた。
 いつもは丸まって眠る彼だけど、今日は仰向けで行儀良く横たわっていた。掛布をめくって体重を掛けすぎないよう注意しながら、彼のおなかの辺りに馬乗りになる。
 こうしてスカリーくんを見下ろすことは普段なら体格差からしてまず不可能だから新鮮な気分。ぺたと彼の胸元に手を置けば、ドクドクと早い鼓動が伝わってきた。

「寝ておいて、って言ったのに」
「……あのような刺激的すぎる宣言をされて眠れるわけがございません」

 あまりにも好都合な体勢に起きてるだろうなと責め立てれば、うっすら瞼を開いたスカリーくんが不満を口にした。やっぱり寝たふりだったか。
 とはいえ、私に襲われることに関しては抵抗がないようなので、最初の予定通り続けることに。
 屈んで、ちゅっと軽く唇を合わせる。キス魔で、わりとすぐに舌を突っ込んでくるスカリーくんだけれど、やはり上からやってくる唇に対しては難しいらしい。
 まあ拘束はしてないので、その気なら簡単に私の頭を両手で固定して、べろべろちゅっちゅっもできるだろうが。
 ただできるしやりたくとも、この状況で実行に移すのは得策じゃないと思ったんだろう。そうだよ、きっと私の機嫌最悪になって強制終了だったね。スカリーくん、危機管理能力高いね。
 キスを適当に切り上げて、彼のパジャマの前を外す。スカリーくんはわりと体温が低いタイプだけど、はだけた肌は興奮しているせいか妙に熱かった。
 いつも自分がされているように、ぺたぺたと彼の胸元をまさぐって。十分に焦らせただろうタイミングで、くにくにと彼の乳首を直接いじる。
 しばらく続けてみたところ、嫌がってこそいないけれど、あんまりスカリーくんの反応は良くない。明らかに戸惑っている。

「……気持ちよくない?」
「えーっと、その、すみません。くすぐったいとは、思うのですが」
「うーん、刺激が足りないのかな」

 ナイトガウンを脱ぎ捨てる。その下から出てきたものにスカリーくんはぎょっと目を見開いた。
 グリムはゲームやりたさにイデア先輩のところに泊まりに行ってるし、ゴーストのおじさん達も休んでる時間だから、たぶん大丈夫だけど万が一出くわした時用に着込んでいた。けど、もうその心配はないことだし。
 私が今纏っているのは黒色のスケスケドスケベネグリジェである。ネグリジェの名目で売ってたけども寝心地イマイチそうだし、これで寝るのは無理じゃないだろうか。今みたいに寝る(性的な意味で)なら、ありだろうけど。
 大胆ではあるけど、モロ見えではなくチラ見え程度のものをチョイスしておいた。スカリーくんはそういうのが好みのようだから。

「明かりをつけてもいいですか!!」
「やだ」
「そんな殺生な……!」

 こういうのは夜目で見るくらいでいいんだよ。視覚からの刺激はこれで十分だろう。どうせ後からもう一回見せるし。
 本気で悔しがってるスカリーくんはさておいて、彼の下腹部に手を伸ばす。パジャマのズボンを持ち上げる熱はいつもながら大きかった。
 跨がるのを止めて、彼の横に寝そべる。それからスカリーくんの乳首へと舌を這わせた。
 指の時は無風だったけれど、舌の感触は効果的だったみたい。ぷくりとそこが膨らんだのを機に取り出しておいた男性器も一緒に扱く。乳首を刺激した時の気持ちよさと、この快感を誤認させると良いって書いてあったから。
 ふうふうと荒い息を殺すようにしてスカリーくんが短く喘ぐ。カリカリと先の方を軽く引っかけば、声にならない声をあげて、びくびくとスカリーくんの体が震えていた。
 このまま一回射精させてあげた方がいいんだろうか。でもこの後のことを考えると、今の状態で始めた方がいい気がする。
 起き上がった私はサイドテーブルにあったウエットティッシュで手を拭う。スカリーくんの体液でべとべとのままだとやりにくいし。
 次にガウンのポケットから取り出した避妊具をスカリーくんのスカリーくんに付けて、再び彼の上に跨がった。Tバックはこういう時、脱がずともずらせばいいのだから便利だよね。

さ、ん、まっ、〜〜〜ッ!」

 にゅぷにゅぷと腰を下ろして、胎内に飲み込んでいく。夜這いに来る前に慣らしておいたし、感じて喘ぐ彼の姿に興奮していたからだろう。スムーズに彼の先端が奥にぶつかった。
 私を押しのけることもできただろうに、スカリーくんはぎゅっとシーツに爪を立てて快感を耐え忍んでいるようだ。必死に我慢している彼の顔はかわいそうでかわいい。
 慣れないなりに腰を動かして更に彼を責め立てる。ぐりぐりと繋がってるところを押しつけるようにしたり、屈んでキスしてみたり。
 自分の体を揺する以外にも色々しているうちに限界を迎えたらしい。スカリーくんの熱が中で大きく膨らんで弾けた。よかった、スカリーくん気持ちよくなれたみたいで。
 自分から仕掛けたのだから本当はもう数回戦持ち込むべきなんだろうけど、もやしの私には到底無理な話。
 胎内から彼の熱を引き抜く。息を整えたら色々片付けないと。そう思うのに疲労感からぼーっとしているうち、むくっとスカリーくんが無言で起き上がった。

「へ?」

 ちゃっちゃと使用済みの避妊具を処理した彼にコロッとベッドの上へ寝かされる。
 今度は私がハテナマークを浮かべる番だった。覆い被さり、いつものように私を見下ろしているスカリーくんの目はギラギラしていて、身の危険を感じる。
 傍でパチンと音がしたと思えば、ベッドサイドのランプに明かりが灯っていた。部屋全体は暗いままだが、ムードはそのままに、私のこのドスケベネグリジェ姿を見るには最適すぎる明度になったことだろう。
 体を隠すように縮こまる。だが胸元を隠していた腕は軽々とスカリーくんの手に左右へと広げられて。

「あの、スカリーくん、怒ってる……?」
「怒ってないです。ただ興奮してるだけで」

 荒い息で怖い笑顔を見せる彼に青筋は立っていない。本当に怒ってはないようだった。でもなんか逆にそれはそれで怖いので、好き勝手されて怒ってます、って言われた方がいっそましだったかもしれない。
 彼の片手で簡単に、両手首を頭の上へと固定される。余った彼の利き手が、ぺらっとネグリジェの裾を捲りあげた。
 今日、一度もイってらっしゃいませんよね。私に向けられたはずの確認だが、返答を待つことなく彼はさっきまで入り込んでいたそこへ顔を埋めて。

 もう一度終えられたぐらいなのだから必要ない。なのにそこからは吸われたり舐められたり、執拗な愛撫で何度も何度も絶頂を迎えさせられて。
 そうして何回戦も過ごした後のようにへろへろトロトロふにゃふにゃになった私を、スカリーくんは一晩中抱き潰し続けたのだった。

 朝になっても体力が回復せず、ぐたっとしていた私にスカリーくんは「さんにおたずねしたいことがあります」と切り込んできた。
 疲れ切っていたこともあり、うまくごまかせるような気力はない。そんなわけで昨日からぼかしていた彼の質問について白状するはめになったのだけれど。
 私があんな破廉恥な行いをした原因だが、昼間、私が読んでいたハロウィーン王についての本に書かれていた"ハロウィーン王の元には数多の美女が押しかけ、夜這いを仕掛けられることも少なくなかったようだ"の一文だ。
 それを見て思ったのだ。スカリーくんは積極的に私へ愛情表現してくれるけれど、彼の時代的には本来、女の子の方から言い寄るものなのかなと。
 スカリーくんは普段から私に合わせてくれたり、譲歩してくれてる。だから私もできることなら彼の価値観に合わせたいなと思った末の行動だったのだけれど。

「えーっと、ですね」
「うん」
「我輩の心はさんにありましたので、他については一切合切追い払っていたのでそうなっただけで」
「……本当は男の人から女の子にする感じ?」

 言いにくそうにしながら「……はい」とスカリーくんが肯定する。つまり私の行動は全くの見当外れだったってことか。
 昨晩は変なテンションでぐいぐい行けたのに、今になっては恥ずかしくてしょうがない。火が出そうな顔を掛布に押しつけて、ジタバタと足をばたつかせる。

「とても嬉しかったので、我輩も行ってもよろしいですか?」

 身悶えてる私にお伺を立てるスカリーくんは悪い意味で良い性格をしている。でも本当に嬉しそうな声をしているから、怒るに怒れない。

「……可愛い下着つけてる日ならいいよ」

 だからいざという時はおあずけできるように、負けじと私も意地悪を口に出すのだった。

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