五発食らわせた
「こんな状態で言葉通り、私は手も……足は出せるかもだけど、まあやっぱり何もできないに等しいと思うからスカリーくん、後は頼むね!」
「さん、いくらなんでも割り切るのが早すぎませんか!?」
恋人からのツッコミに多少自分でもそう思わなくもない。
だが、ドキッ春夏秋冬オバブロ祭り7連発〜(コンプレックスやトラウマの)ボロリもあるよ〜含め、他にもやべえトラブルの数々(寮をボッシュートされたり、千年留年しかけたり、この現彼氏に誘拐されたり)を体験してくれば適応能力も身に付かざるをえないのだ。
私の現状だが、目が覚めたら頭上にて手を縛られた状態で、感触からしてベッドへと転がされていた。
この見知らぬ部屋は壁の看板を信じる限り、どちらかが拘束された上でセックスしないと出られない部屋(※なおどちらが拘束されるかはランダムで決定)なのだろう。
あと一緒に詰め込まれた相手が恋仲のスカリーくんなところからして、きっと噂に聞く恋人達のイチャラブ応援してえな〜〜〜〜〜!!!!!!という(推しカプの)恋愛脳厄介お節介妖精のしわざだよなーと思ってる。
NRC生のいたずらだったら、こんなリア充が美味しい思いをする部屋は選ばないので。ダンボール1箱分のタマネギの皮を剥かないと出られない部屋とかにされてることだろう。まあこのネタは嫌がらせしてきたサバナ生に私がマジックアイテムで仕返したやつだけども。
「正直言うと、こんなアブノーマルな体験はもっと後というか、マンネリになってからにしたかったけどね……。妖精のせいなら致し方ないかなって」
「……まあ下手に大妖精に逆らうのは得策ではありませんね」
異常事態に最初こそ、わたわたしていたスカリーくんだけども、私が肯定的なのもあって早くも腹を括ったらしい。
スカリーくんと一線を越えたのはつい最近で。だから今がそういうことをするのが三回目とお互い数えきれる程度にしか経験が無い。間違っても拘束プレイとかする段階じゃないと思う。
ただなんにせよ、今はわがままを言える状況じゃないので覚悟を決めるしかあるまい。
スカリーくんがベッドに乗って私へ覆い被さる。ギシリと彼の体重にスプリングが軋んだ。
さんと呼ばれて間もなく、唇がくっつけられる。スカリーくんの癖によって、キスにはだいぶ耐性が付いたと思う。だけどもこうして、ぬるりと口内で動き回る舌は未だ慣れない。
わからないなりに彼の舌に自分のを絡めてみる。深まる口付けにくらくらするのは単純な酸欠になっているのか、はたまた興奮のせいなのか。
キスは続行されたまま、器用にベストやブラウスが脱がされていく。ホックも外され、ブラがずらされた。
剥き出しになった胸をじっとスカリーくんが眺めている。いつもと違って明るい場所で肌を晒しているのだと今更気づいて「恥ずかしい見ないで」と訴えるが、彼は瞳を細めるだけだった。……なんだろう、ちょっと今のスカリーくん、目が怖い。
手で隠したくても両手首を縛る何かにがっちり固められてしまっている。身じろいでみるがびくともしなかった。
「さん、そんな風に暴れたら綺麗な肌に傷がついてしまいますので」
「だったらガン見するのやめてよぉ……」
べそべそと情けない声でお願いしたら、スーッと目を逸らした後、スカリーくんは胸へと愛撫し始める。こ、この野郎……!
スルーに対する怒りを抱いていても、まさぐる彼の手に快感を覚えてしまう。きゅっと強めに胸の先を摘ままれ、意志とは裏腹に喘いでいた。
私が抵抗できないのを良いことに見せつけるようにスカリーくんが胸を舐める。かすめた歯に思わず、びくっと怯えた私を見る彼の目。そこにはいつもと違う熱が宿っていた。なんか、なんか、よくない予感がする。
このアブノーマルプレイによって、彼の開けちゃいけない扉が開こうとしているのを感じ取った私はできる限り平然を装うことに決めた。
どんなに恥ずかしがろうともういっそ快感に流されてしまおう。たぶんそっちの方が断然マシだ。
腰を撫でるようにして彼の手が下へと向かう。いつの間にかベルトは緩められていて、下着の中に彼の手が侵入する。
ぐちぐちと自身から立つ水音に耳を塞ぎたいけど、それは叶わない。とんでもなく恥ずかしいけど、羞恥心に身悶えている姿を見せないよう快感に集中してやりすごす。
手が抜けたかと思えば、ズボンと下着を引っこ抜かれる。そして生身になった足の間に彼が顔を埋めた。
流れるように行われたそれに足が出るよりも先に、彼が太ももをがっちり掴んだことで下半身も身動きが取れないようにされてしまった。
ぢゅると大きな音が出るくらい吸い上げられて、ビクッと体が跳ね上がる。丁寧に、それからねっとりと舐められ、十分にほぐれてもなお、しゃぶられて。
こんな明るい場所で、全部丸見えの状態で、そんな自ら羞恥心を煽るような真似をしたくないのに、頭が勝手に考えてしまう。その上、思うように体を動かせないせいで快感を逃がすことができない。
途中から泣きの入った声を出しても彼は止めてくれなかった。むしろいっそう激しくしてきて。おかげで何回スカリーくんに「ばか」「いじわる」「このすけべやろう」と罵声を浴びせたことか。もうなんか途中から可愛い言葉を取り繕えなかった。
「さん、そろそろ……」
「やだ、もうやだ、もうやめる」
「う゛っ、すみません、さんが可愛くてつい意地悪しすぎました。ごめんなさい。でもしないと、ずっと我輩とこの部屋に閉じ込められたままになるので」
「それは、良いけど……」
ぐったりしながら私はごねる。わがままを言ってるはずなのに、何故かスカリーくんは赤面してる。あと嬉しそう。それに疑問を感じても頭が回らない。
ただわかってることもある。本当なら別に私の許可などいらないのだ。だって口先でやだやだ言ってるだけで、この通り抵抗できないのだから。好き勝手に突っ込んでしまえばいい。
でもそれをしない彼だから、結局私は負けてしまうのだ。
「……次、やなことしたら足出すからね」
「わ、わかりました」
脅しをかける私に緊張した面持ちのスカリーくん。私はやると言ったらやる女だと彼は知ってるので、この反応なのだろう。
すりすりと彼に頬を撫でられる。慈しむような手付きにうっとりする私を眺めながらスカリーくんは呟く。
「我輩には『嫌い』が一番効くと思うのですが、さんは仰いませんね」
「嘘でも、ううん、それだけは嘘だからこそ言っちゃダメだよ」
「……我輩、さんのそういった優しいところがとても愛おしいです」
キスされて、そのまま彼の熱が沈められていく。大きな質量が中を押し広げていく感覚は未だ慣れず、つい息が詰まった。
進められていた腰がぴたりとくっつく。私の奥底、一番深い所に彼まで彼が埋まった。ただいつもと違って彼の背中に腕を回せないのが、なんとも心細い。
彼の熱が馴染んだのを見計らって、動きますねとスカリーくんが宣言する。
言い終えるやいなや、ベッドのスプリングを利用して彼が腰を打ち付けてくる。とんとんとその振動がおなかの底にまで響く。動き自体はそこまで強いものじゃないのに、的確に弱い所を擦られ、視界にちかちかと光が飛んでいた。
彼が動くたびに快楽の波が押し寄せる。怖いと気持ちいいが頭の中を覆い尽くす。これ以上は無理だと思うのに、それを期待しているかのように私の体はスカリーくんをきゅうと締め付けて。
私の反応を伺いながら責める彼。その表情自体が私を好きだと伝えてくるものだから、嬉しくなってしまう。
すきと、こぼす私にスカリーくんが口付けて。ぶるっと彼の体が震えた後、一番奥で熱が弾けた。
瞬間、パッと腕の拘束が解かれた私は、荒い息で胸元に顔を寄せた彼の頭を撫でる。さっきまで触れられなくて寂しかった分を補うようにスカリーくんの髪を手で梳いて。
「んっ、んんっ……?」
「さん……♡」
むくりと彼が上半身を起こしたため、自然と私の手は行き場を無くす。そんな私の両手首を彼は片手で一纏めにして押さえつける。わあ、スカリーくん、手大きいね。
思わずそんな他人事みたいな感想を述べてしまったのはある種の現実逃避だと思う。
簡単に拘束されてしまった私の姿にスカリーくんはひどく興奮している。残念ながら、なんとか目覚めさせないよう気を付けていた彼の加虐性欲だが、ばっちり開花させてしまったらしい。Bキャンセルさせてほしい、かつての手を繋いだだけでテレテレだったウブなスカリーくんを返して。おのれ迷惑カプ厨妖精め。
なお立ち上がったのは彼の上半身だけではない。繋がりっぱなしなので否が応でもわかってしまう。
「うぐっ」
猛獣使いとして、このまま彼の思い通りにさせるとよろしくないなと判断した私は自由な足でスカリーくんの無防備な横っ腹をどつく。
予想外の攻撃にぷるぷる震える彼は何故……?と本気で戸惑っていたが、萎えてはいなかった。そうじゃないと困る。
「間違いなく今からされるだろうなあと思ったから、先払い」
例え恋人相手でもいじめられて喜ぶ性癖はあいにく持ち合わせていない。でもスカリーくんがしたいなら付き合ってあげたいという気持ちもあって。
私なりの譲歩に気付いた彼が感極まった様子でキスしてくる。どうか二発目を食らわすことにはなりませんように、と祈りながら彼の背中へ念を押すように爪を立てた。