紳士が剥がれて猫が鳴く
スカリーくんを動物に例えたら、たぶん犬だと思う。なんなら親戚の家で飼ってたゴールデンレトリバーが一番イメージに近い。
大きくて温厚で社交的、あと感情が振り切れた時にハチャメチャするところもぴったりだなと。
だが現在、スカリーくんは猫になっている。パッと見わかる変化はふさふさの黒い耳と尻尾がぴょこっと生えたぐらいだが、他にも猫獣人と同程度の変化が起きているらしい。
その理由を説明すると長くなるが、錬金術、グリム反省文、鍋大爆発の単語で察していただきたい。
なお当の親分だが反省文を書き終えるまで監督役の私も帰れない事から、スカリーくんに強圧スパルタ指導された結果、怯えて別の寮に泊まりにいってしまった。
いつもの彼ならもっと穏やかなのだが、今のスカリーくんは猫ちゃんのワガママ気質が強く出ているみたいだ。
と言っても、そもそもスカリーくんがこんなことになってるのは咄嗟に私とグリムを爆散した魔法薬から庇った結果なので、彼は怒って当たり前だし、それどころかスパルタだろうと手伝ってくれているのだから、むしろ対応としては優しいぐらいなんだよなあ。
そんなわけで私はオンボロ寮の私室でスカリーくんと二人きりで過ごしているのだが……何故か彼に後ろから抱えられている状態である。
部屋に入ると同時に彼がベッドに腰掛けたかと思えば、膝の上に乗るようねだられ、今日は一段と甘えん坊だなあと、それに応えたのだから疑問に思うまでもないっちゃないんだけど。
そこから今に至るまで、めっちゃおなかをふみふみってかモミモミされてる。確かこれって子猫がお母さん猫から母乳もらおうとする動作なんだよね。でもいくら揉んでもおっぱい出ないよ。私、赤ちゃんいないし、そもそもそこおなかだし。
「スカリーくん、おなか触られるの、くすぐったいから……」
そろそろやめてほしいと言おうとしたが、それを察したのか。スカリーくんはぐりぐりと私の首元に頭突きをして、無言の抵抗を示してくる。
これが攻撃ならメッて怒るところなんだけど、確か猫にとってはこれってコミュニケーションだったよね。確かマーキングとか、甘えたい時にする動作だったような。
少し悩んだ末に、まあ害意があるわけじゃないから……と受け入れることにした。なんかさっきから触り方がだんだん不埒になってる気がするけど、たぶん私の考えすぎだろう。
「雄の猫は」
「ん? なあに?」
「雌の発情にあてられないと交尾に移れないのですが」
考えすぎじゃなかった。思いっきりそういったつもりじゃないか。私のおなかを揉み続けながらスカリーくんが耳元で吹き込んできた知識に静かに私は悟る。このムッツリスケベめ。
彼の言ってることはあながち嘘ではないのだ。雄の獣人は雌をその気にさせた上でお伺を立ててOKをもらえないと交尾できない。雌の発情期にあてられて雄がムラムラするのも事実。
が、別に雌が発情してようが、なかろうが、雄は欲情はできる。現に既に私のお尻の下のスカリーくんはわんぱくになってるし。君の主張が強いんだよ、さっきのセリフを通すつもりなら押しつけないの。
あと獣人の雌は愛撫を受け入れるのがOKサインなので、実質もう私は許可してるも同然だ。知らないうちにそうなってたけど、別にまんざらじゃない。ともかく獣人の交尾のお誘いは行動で示すものであり、言葉のやりとりではない。
となると考えるのはどうして、スカリーくんが勘違いさせようとしているのか?あと私をいやらしい手付きで高めようとしているのか?だろう。まあおそらくだけども、私にしていいよ♡って言わせたいのだと思う。
「ん……♡」
うなじを舐め上げる舌は猫化の影響か、いつもよりもざらざらしていて刺激的だった。さり、さり、スカリーくんは何度も震える私の首筋に舌を這わせる。
私も猫ちゃんなら毛繕いかな?で流しただろうけど、あいにく私は人間のまま。だからこれが彼の思惑への誘導だと私は気付いている。でも嫌じゃないから抵抗できず、反応を決めかねていた。
えっちするのは嫌じゃない。でもわざわざ言うのは恥ずかしい。だから無言の抵抗(ただし嬌声は出る)を続けて。
そうやって喘ぐだけでいっこうに望む言葉を口にしない私に焦れてきたのだろう。さん、と切羽詰まった声で私を呼んで耳を舐めてきた。力業じゃないか。
私は耳が弱い。なのでこれをされるとあっという間に落ちてしまうのだけれど、今回もやっぱり耐えきれなかった。
「っふ♡ ス、カリーくん♡ んんっ♡ ……して、いいよ」
「……」
「? スカ、リーくん? あっ♡」
ちゃんと答えたのに耳舐めを継続される。彼は何も言わない。ただ身を縮こまらせて逃げようとする私の耳を唇で食んで咎めてくる。
なになに、ほんとなに?! 考えようにも、今もなお耳から与えられ続けている快感で頭は回らない。
ざりざりあむあむと耳の縁やら耳たぶを責めながら、部屋着の上から胸を揉まれる。かと思えばブラトップの感触が気に入らなかったらしい。
被って着るタイプだったから、部屋着のワンピースをすぽんと頭から抜かれて。そしてブラトップの中へ手を突っ込んで、スカリーくんは直に膨らみを触り始めた。
耳への刺激が止まったのは脱がされた一瞬だけですぐに再開されてしまう。しかも片腕をおなかに回されているから、余計に逃げようがなかった。
「……って」
「あうっ♡ ん♡ な、に?」
「我輩のこと、もっと欲しがって」
やっぱり今のスカリーくんはいつもより欲張りになってるみたいだ。
ようやく彼が望んでいた言葉がわかったので、ねだられた通り「してほしい」と声に出す。さっきよりも大胆なセリフが恥ずかしくないと言ったら嘘になる。でも私は結局のところ、彼が喜ぶことならなんだかんだ迷いながら、最終的には応えてしまうのだ。
「嬉しいです、さん♡」
「んんっ♡」
「いっぱい濡れていらっしゃいますね……♡」
ショーツの中に彼の手が滑り込む。これまでの愛撫によって、ぐちゃぐちゃになってる入り口を指先で確かめて、スカリーくんは報告してくる。
普段は優しいけど、こういう時のスカリーくんはちょっとだけ意地悪だ。こんな風に羞恥心をかき立てるような真似をわざわざしてくるのだから。あいにく最中に上手い返しなんて浮かぶはずもなく、その酷い事に私は「ばか」と子供じみた悪口しか言えない。
耳を咥えるのは止めてくれたけど、片方の手は何かを探るようにおなかをまさぐって。もう片方が愛液で濡れた指で陰核を撫で回す。
おなかの中を触ってほしいのに。そう思いながらも的確に与えられる快感に軽く気をやってしまう。
「あっ♡ やだっ、今はやっ、ひぁあっ♡」
「ああ暴れないで、愛しい人。気持ちよくするだけですから、ね?」
「〜〜〜ッあ、ああ♡」
イった直後で敏感になってるから止めてほしいのに、追い打ちをかけるようにぐっぐっと陰核を押しつぶされる。優しい声色だけど、やってることは意地悪この上ない。
両足をまとめて持ち上げられ、ショーツを脱がされる。こんな器用なことを私を落とさないよう支えながら、片手でやってしまうのは凄いけれど、されていることがされていることなので感心はできなかった。
足を下ろされたなら、ひくひくと物欲しそうにしている中へ指が差し込まれる。まずは浅いところを擦って、だんだんと奥へと飲み込ませて。体格差がある上、スカリーくんのはかなり大きい(他の人のは知らないけど以前本で読んだ平均のサイズは軽く超えている)ので普段から丁寧に慣らされるが、今日は特に丹念に中の肉をほぐされる。
単に中がやわらかくなるだけならともかく、その動きですら快感を拾ってしまうようにされた身としてはたまったもんじゃない。きゅう♡と彼の指を銜え込みながら、何度目かわからない絶頂へと追いやられる。
脱力していたら膣内から指が抜かれた。もう既にだいぶぐったりしてるけど、まだ本番始まってすらいないんだよなあ。とはいえ、ここでもうやめようと言うほど私も鬼じゃない。……スカリーくんにも気持ちよくなってほしいし。
「ひ、ぅっ♡ えぁ、なに、えっ?」
「あ、さん、驚かせてすみません。避妊魔法かけました」
突然カッとおなかが熱くなり、何事かと混乱していればスカリーくんが宥めてくる。ぱっと彼が手を離したなら、その下の肌に見た事の無い紋様が刻まれていた。
たぶんこれは避妊魔法を刻まれた証なのだろう。いかんせん初めて見るものなので、彼の発言からそう予想するしかない。
というか避妊魔法使えたんだ、スカリーくん。いつもは徹底的にゴムを付けて、無くなったらどんなに盛り上がってても終わりにするから、使えないものだとばかり。
「ごめんなさい。獣人用の避妊具、用意してなくて。でも止められない」
「えーっと、いいよ。ここで終わりはさすがにつらいだろうし。ただ、普通のじゃダメなの?」
「……今は生えてるので」
「男の人なら元々生えてるのでは……?」
「いや、それはそうなのですが、そちらではなく、そのトゲが」
「とげ……?」
「獣人へと至る進化の過程により元祖ほど尖ってはいないので、女性を傷つけることはないのですが……避妊具は専用のじゃないと破けるんです」
猫の交尾で雌がうるさいのは排卵を促されるさいの痛みでキレてるから。スカリーくんの説明によって、頭の片隅にあった知識が引きずり出される。
つまりお尻の下でスタンバイしているこれも猫ちゃん仕様になってると。そっかー……。そんなところまで効き目出ないでほしかったなあ。
彼の言うことを信じるなら痛くはないのだろうけど、びびってしまう私を許してほしい。だってただでさえ凶器とばかりに大きい上、今はおそらくとげとげなのだ。それが言い方はなんだが内臓に触れることになる。めちゃくちゃ怖いだろ!!
「あの、やっぱりお嫌ですか……?」
私が怯えているのを感じ取ったのだろう。か細い声で呟いて、スカリーくんはぎゅっと私を抱きしめてくる。
止められないと言ってたし、今かなり我慢している状態なんだろう。でもここまで準備万端にしてても、私がやめよっか!と言い放ったら、泣く泣く耐えてくれるんだよな。私の大好きな恋人はそういう優しい人なのである。
「その、本物の猫みたいに痛かったら、私めちゃくちゃ暴れると思うけど……大丈夫?」
「受け入れてくださるのは嬉しいのですが、ご自分の身をまず気遣ってください……我輩はこの通り丈夫ですし、無理矢理さんをねじ伏せられるほど力も強いのですから」
「うん、でもそうやって私のことはスカリーくんが最優先で心配してくれるから。代わりにスカリーくんのことは私が考えるよ」
きっぱり言い放てば、ぎゅーっとスカリーくんが私を抱きつく。感極まってるんだろうなあ、わりとよく遭遇する光景なので好きにさせる。
しばらくそうした後、首をなかなか無茶な角度にすることで、なんとか後ろのスカリーくんとキスをして。
ひょいと軽々体を持ち上げられる。そして、ぴたりと蜜口に熱の塊が宛がわれた。
ぬぐと張り詰めた先端が吸い込まれ、煮え切った中を押し広げながら征服していく。いつもと違う巨大な侵略者に、今回は慣れ親しんだ形ではないとわかっていたのに少しだけ戸惑ってしまった。
若干不安だった普段はない突起だが、とげとげと言うより、ごつごつとたくさんの大きな粒が集まっているような感じだった。入ってくる時はその分も広がるから、ちょっと怖かったけども、根元まで受け入れてしまえば何も問題はなくて。むしろ気持ちよくて。
深く入り込んでしまう体位だから、彼の先端がぴったりと子宮口にはまってしまっている。何もしなくても、おなかの奥から甘くて重い痺れがじわじわと広がっていった。
「あ、あ、あっ♡」
体を揺さぶられる。内壁をトゲの凹凸が擦るたび、いつもはない刺激に快感を覚えて。奥を捏ねるように突かれてしまえば、あっという間に上り詰めて背中が仰け反った。
ずちゅずちゅとスカリーくんは容赦なく突き上げながら、彼の大きな手が私のおなかをくっくっと押してきた。中から外から同時にポルチオを押し込まれて、バチバチと目の前に火花が飛ぶ。声に鳴らない声を上げて、爪先がきゅうっと丸まった。
快感に頭が焼き切れそうになってるのに私の体は貪欲だ。無意識に自ら腰を振って彼を煽ってしまう。
私の痴態に耳元で聞こえる彼の息が荒くなった。がぶっとうなじに噛みつかれ、力強く腰を打ち付けられる。上と下、同時の刺激に一際強い快感の波が襲ってきて。
「さん、さんッ♡」
「ッあ、あああ♡」
ぎゅっと抱きしめられ、とくとくと彼の熱が子宮へと注ぎ込まれる。初めて胎内で感じるそのぬくもりに背筋が震えた。子宮を満たす熱に、かつてない心地よさを覚えてしまう。
「す、かりーくん、もっと……♡」
雌猫にキレられるので雄猫は射精が終わったら、すぐに離れるらしい。でも私がねだったせいか。スカリーくんは余韻に浸る間もなく、再び腰を動かし始めた。打ち付けられるたび、繋がっている場所から入りきらなかった彼の精が溢れる。
誘ってしまった私にも多少責任はあるだろうが、それにしても大変なことになるとは知らず。三回目まではなんとか意識があったけれど、途中からの記憶がなくなるほど、発情期のケダモノと化した彼にめちゃくちゃに抱き潰されたのであった。
◇
「さん、ごめんなさい。さんの負担も考えず……」
数え切れないほどの交尾の末、ベッドでぐたっと突っ伏す私をスカリーくんは甲斐甲斐しく世話を焼いていた。
そうして彼がこれまで避妊魔法を使わなかった理由を語ってくれたのだが、私がノーマジなので予想外の効力が出るかと心配してのことだったらしい。あと歯止めが利かなくなりそうなので……と。
確かに今回覚えている限りでもぬかさん決められているので納得するしかなかった。
もう本当に今回はめちゃくちゃにされたなあと思う。ただ別に疲労困憊なだけで元より怒っていない。たぶん私からお誘いに乗ったのが大きいだろうし。
それに彼のまだ生えたままの猫耳がぺしょっと力なく項垂れているのを見て、なおさら怒る気にはなれなかった。
「とりあえず、成人するまで避妊魔法は禁止で」
「はい……」
「………………中に、出されるの、くせになりそうだから」
シーツに顔を埋めながら本音を語る。あれはいけない。今はまだ覚えちゃいけないタイプの快感だ。なので彼に協力してもらわないと。
そんな発想から何の捻りもなしにド直球に告げた私はあまりにも愚かである。後々で考えなくても、あの場で絶対に言ってはいけない発言ぶっちぎりナンバーワンだった。
でもこの時の私は疲れ切っていたせいで、頭が回ってなかったし、めちゃくちゃふわふわしていたのである。判断能力くん? 良い奴だったよ……。
しばしの静寂が流れた後、ぎしとベッドの軋む音。手元に落ちる影。なんだなんだと上向いて。
「いけない、それはいけないねぇ……♡」
私の耳元で囁く時みたいなえっちな声を出しながら、覆い被さるスカリーくんは着込んだばかりのブラウスの襟に手をやっていて。
ゆらゆらと彼の後ろで黒い尻尾が揺れている。可愛いはずのそれが何故だかひどく恐ろしいものに見えて。
何より彼の表情は一発で自分の失言を思い知らされるものだったばかりに「ひえ」とあがった私の枯れた悲鳴はまもなくスカリーくんの唇の中へと飲み込まれていったのだった。