なお半年かからず買い足した
えっちって、女の方から誘っていいものなんだろうか。
恋人であるスカリーくんと体を重ねるようになって、早三ヶ月。私達の場合、同じ寮に住んでいるのでいくらでも機会はありそうなものだけれど、共に夜を過ごすのはだいたい月に一、二回のペースである。
だから付き合ってから随分経つにもかかわらず、経験回数は片手で数えられるくらいだ。
交際し始めて間もなく、そういったことは結婚してからにしましょうと彼に言われた。私としては別にそれでもかまわなかったから了承したのだけれど。
事ある毎にスカリーくん、めちゃくちゃ我慢してるなと感じさせられ。
そんなにつらいなら無理しなくていいよと私の方から切り出したのがきっかけで、少しずつ進んだスキンシップが増えていき、三ヶ月前についに押し倒されたという経緯がある。
だからスカリーくんの性欲が薄いというわけではないと思う。たぶん私を気遣った結果なのかなと。
平均がどの程度かわからないけど、私はおそらく性欲がないタイプなんだろう。スカリーくんとイチャイチャするのは好きだけど、別にえっちしなくても満足できてしまう。
その為スカリーくんのスキンシップに対して受け入れる姿勢こそしているが、積極的にこちらから返したりはできてない。だから私があまり乗り気じゃないと判断して、彼は遠慮してくれてるというのが私の予想だ。
なので、今だってほら。
「さん……♡」
何度も唇に吸い付いてきた後、私にめろめろとばかりに熱い視線を見せてくるスカリーくん。
性行為こそ滅多にないけれど、こんな風にイチャつくのは毎日のことである。最後まで行きついてないだけで、なかなか爛れた日々を送ってるなと思わなくもない。
ただ、いかにもおっぱじめそうな雰囲気だけども、これまでの経験上、彼は今日はこの辺りでおあずけにするつもりだ。彼は必ずえっちをする時、数日前に許可を取ってくる(これはこれで正直だいぶ恥ずかしい)し、あと彼の部屋でしか手を出さないので。
だからいくら二人きりとはいえ、この娯楽室のソファーの上でOH!YES!!的な展開にはならない。……いいのに。
よく話に聞くようなムラムラする感覚とかはよくわからない。でも、スカリーくんが求めてくれるのは嬉しいから。
私が経験豊富なドスケベお姉さんなら、ノリノリのスキンシップ返しで彼をその気にさせられたのかもしれない。だがあいにく私にそんな技術も積極性もない。せいぜい彼の唇の心地よさに瞳を潤ませるだけ。
でも、行動で表せないなら、言葉にするべきなんじゃないだろうか。してもいいよって。いやそれだとスカリーくん、配慮されてるって思っちゃいそうだな。ちゃんと、私はそういうことを望んでるんだよって感じさせないと。
「あの、スカリーくん」
「はい、どうなさいました?」
「私、その」
「?」
切り出したのに言葉に詰まる。私の恋愛経験値が低いばっかりに!
でもしどろもどろになる私を彼は急かしたりしない。優しく微笑んで私の発言を待つだけ。
だから焦る必要などないのに、その気遣ってくれる姿に早く答えなきゃと逆に慌ててしまって。激しく混乱する中、なんとか声を絞り出す。
「え……えっち、したい」
何かしら気の利いた言葉を選ぶつもりだったのに。迷いに迷った挙げ句、誤解されないように、という部分に意識を割きすぎた結果、私の口から出たのはド直球火の玉ストレートのおねだりだった。
あまりにも明け透けすぎる私のお誘いに一瞬間を置いてスカリーくんがピシッと固まる。
そして流れる静寂に今更ながら言わなきゃよかったと後悔しはじめて。逃げたって何も解決しないし、悪化しそうなものだけど無意識のうちに後ずさる。
スカリーくんの反応が怖い。もし、はしたないって軽蔑されてたら。
ぐるぐる巡るマイナス思考に浸食されていく。もう、あれだ。三つ数えたら走って立ち去ろう。それからちょっと一人で頭を冷やして。うん、そうしよう。一、二、三の。
「あ、あれ……?」
気付けば、両手首をスカリーくんに握られていた。痛みはないから、たぶん彼はそんなに力を入れていないのだろう。だというのに全くほどけない。
戸惑いながら見た彼はこれ以上なく笑っていた。でもそれは普段見せるような、可愛らしい笑顔じゃなくて。獲物を前にした獣のような、加虐的な匂いを感じるものだった。無意識に離れようとした私を咎めるように彼の手に力が籠もる。
イヒャ、と思わず漏れたとばかりの笑い声らしき後に「さん」と名前を呼ばれる。いつもの声色じゃないことに今更ながら、私はとんでもないことを口にしてしまったのではないかと思うが、だからといって状況は変わらない。
「我輩の部屋に行きましょうね。ここでは用意がないので」
用意って何の? わかってないくせに頷くのは私の悪癖だろう。でも決定事項にしか聞こえないそれに私は逆らえず、速やかに彼の部屋までお持ち帰りされることになったのだった。
◇
「あっ♡ すかりーく……っ♡ あ、ううっ♡」
さっきと同じくこのまま後ろからするんだと思っていたら、挿入されたまま上半身を起こされた。それから彼の両膝でがっしりと両足を挟み込むよう固定されて。腕を支えられ、自然と膝立ちになる。
体勢のせいか、いつもよりも深く繋がっている気がする。そして気持ちいいところ全部にスカリーくんの熱が触れていて、身動きの取れない状態に己の全てが彼に支配されているような感覚に陥った。
いつもは一回で終わるのに、今夜はもう三回目に突入している。
それも終わるたびに「もう一度よろしいですか?」とスカリーくんからおねだりされるのに、私が頷いているせいで、そうなっているのだけれど。ただ彼曰く、避妊具が切れてしまったから、今日はこの回で終わりらしい。
空になった箱を見たスカリーくんが「もっと買っておけばよかった」とぼやいていたところからして、私これまで本当に手加減されていたんだなと実感する。
「さん、痛くないですか?」
「ぅ、ん♡」
「なら良かった。我輩が支えてますから、さんはただ我輩に身を任せてくださいね」
彼のその囁きが、私を安心させる為に宥めているというよりも、めちゃくちゃにしますと宣言されているように聞こえてしまったのはさすがに疑りすぎだろうか。
すりすりとおなかを撫でられる。ここまで入ってますよと伝えるような手の動きがなんだかいやらしい。
しばらくしてゆっくりと彼が動かし始める。力任せに突き上げるのではなく、トントンと私のお尻を小突いて跳ね返すような抽挿だ。
もう続けて三度目も抉られてる中はふやけきって、ぬちぬちとふしだらな音を立て続けている。
「ひあっ♡ まって♡ いっしょに、さわるの、だめ♡ んんっ♡」
「かわいい、ああ、本当にかわいいな……」
中を一定のリズムで突いたまま、スカリーくんは私の胸の先を刺激してくる。強すぎる快感に抵抗を示せば、うなじに唇を落とされた。
首筋を舐められた後、弱い耳を唇で食まれて、ひっひっと引きつったように喘ぐ。ぐぽっと奥に彼の熱がめり込んで快感の火花が撒き散らされる。
抜かれる時も、押し込まれる時も、全部気持ちいい。何かに縋りたいのに身を起こした状態で固定されているせいで、シーツまで手が届かない。だからぎゅうと拳を握り込むことしかできなくて。
「だめ、だめ♡ まだ、イったばっかり、や♡ あんっ♡」
「さん、奥お好きですよね。いいですよ、好きなだけイって」
何故だかスカリーくんはいつもより興奮しているみたいだった。ただでさえ大きいのに普段よりも激しく主張してくる彼の熱が容赦なく、私の一番感じる奥を責め立ててくる。
子宮口を熱の先端で押し込みながら、一緒に陰核も指で捏ねられて。何度も何度も絶頂の波に押し上げられて身悶える。
一際力強く貫かれて間もなく、スカリーくんが私の体を抱き寄せた。ぎゅうっと私を腕の中へ包みながら、彼は熱を弾けさせる。避妊具に遮られていてもわかるほどの脈動に、びくびくと自分の体も跳ね上がった。
ずるっと彼の熱が体から抜けるのを感じながら、私は瞼を閉じた。
◇
「その、我輩の堪え性がないばっかりに譲歩してくださってるんだろうなと思っていたので、さんから求めてくださったのが、嬉しくて」
「なるほど」
かつてないがっつきようが気になった私は一眠りした後、彼が落ち着いたのを機に尋ねてみた。
なかなか恥ずかしい話題だけれど、うっかりとはいえ誘ってしまった今の私は怖い物知らずである。さくっと確認したところ、やっぱり私が予想していた考えを彼は持っていたのだなと。
微塵もそんな気のない相手にお願いするのは勇気がいるよなあ……。
少し悩んだものの、私はこの怖い物知らずバフが解ける前に口を開くことにした。
「正直言うと、スカリーくんが辛そうだから婚前交渉OKしたし、あと私、別にえっちしなくても全然平気だね」
「う゛、すみません。これからは、ちゃんと我慢します……」
「でも恋人だからできるコミュニケーションとして考えると好きだし、経験を積めばまた変わってくるかもだから、もっと増やしてもいいよ」
私の発言に再びスカリーくんがフリーズした。でもさっきよりも早くに解凍した彼は「いいのですか?」と赤い顔で確認してくる。女に二言はない。思いっきり頷く。
それにスカリーくんはぎゅっと私を抱きしめて、顔中に何度もキスしてきた。最終的にはえっちなキスをされた。別に咎めないけど、自分で自分の首を絞めるようなことになるんじゃないかなあと。
案の定またしてもキスを終えてから「買っておけばよかった……!」と心底悔しそうに唸る彼にちょっとばかり呆れてしまう。
まあそんな彼の加減の下手さも含めて惚れてしまっているので、たぶんきっと私達のこの差もそのうち愛が埋めてくれることだろう。
なお後日、お徳用パック(12ダース入り。1ダースじゃない、1グロスだ)を買ってきた彼に「極端!!!」とビンタすることになり、ちょっと先行きが不安になったが、うん、まあなんとかなると信じて……!
back