純愛証明
「ぽ、ぽり……?」
「ポリネシアンセックス、ッスね」
浮気した元彼への報復作戦からラギーさんの猛アタックが始まり早半年。彼の熱烈な愛情を前に一月あまりで落ちしまいラギーさんとお付き合いをしていた私は本日入籍し、晴れて・ブッチとなった。そして今宵は嬉し恥ずかし新婚初夜なわけなんだけども。
ついにこの時がやってきたのかと緊張しながらもベッド上の私はそれ以上に喜んでいた。ただ私の前でラギーさんは正座したまま、いっこうに情事へなだれ込もうとしなくて。それにどうしたのだろうと思っていたなら彼は「ポリネシアンセックスしましょう」と切り出したのだ。
聞き慣れない単語に思わず首を傾げてしまった私へラギーさんが説明し始める。
「——って感じッスね。本来は五日なんスけど我慢できないと思うんで、簡易版の三日コースで進めようかなと」
ラギーさんの説明をざっくり噛み砕くと、ポリネシアンセックスとは挿入まで五日間に渡って行うセックスで。最初の四日間は性器に触れない愛撫だけ、最後の一日だけ性器の愛撫と挿入を行うのだと。挿入してからもすぐには動かず、またピストン運動もじっくり時間をかける方式らしい。
それを聞いて私はますます首を傾げてしまう。別に嫌とかそういうわけではないのだけれど。
「普通にすればいいのでは……?」
未遂に終わったあの日以来、私はラギーさんと肌を合わせていない。つまりまだお互い初めて同士のまま(あんなに気持ちよかったのにラギーさんも未経験らしい)なのだ。それもこれも私が結婚するまで純潔を保ちたいと我儘を言ってたから。
ただラギーさんが相手なら姉たちの二の舞にはならないだろうから、別に婚前交渉してもかまわないと言っておいたのだけれど、ちゃんとケジメをつけておきたいのだと。
そういったわけでただでさえラギーさんには我慢を強いていたのだ。だからこそ解禁した今、わざわざ更にそんな辛抱しなくても……と思ってしまったのである。本人も五日とか我慢できないって宣言してるぐらいだし。
「この方法だと普通にするより、もっと気持ちいいらしいッス」
「普通にしても気持ちよかったですよ……?」
「……これなら指ですら辛そうだったくんでも痛がらせずに済むと思うんスよね」
ラギーさんの返答にぱちぱちと瞬きしてしまう。つまり、私のため。
ぽぽぽと頬が赤らむのがわかる。彼に悪いと思いながらも大切にされている事を改めて実感して嬉しくなってしまう。ラギーさんなら痛くても良かったけど、せっかく申し出てくれたのだ。ここは受けるべきだろう。
「えっと、じゃあその、お願いします……。あ、でも、もし途中で我慢できなくなったら進んでくださっていいので!!」
「しょっぱなから信念曲げたくなること言わないでほしいッスね……」
「ごめんなさい、でも、あの本当に私、ラギーさんなら何でも」
「はいストッープ! ストッープ!」
ちょっぴり赤い顔しながら制止の言葉を叫ぶラギーさんに押し倒される。おそらくどう繕ってもラギーさんにとって悪い事を言ってしまいそうなので、それを機に私は口を噤んで。
閉じた口にラギーさんが唇を合わせてくる。えっちこそしていないけど、キスは唇が腫れそうになるぐらいしてきた。というか一度しつこすぎて腫れたことがある。おかげでキス禁止令を出すはめになってしまい、ラギーさんはしょんぼりしてたけど、私だって本当はしたくてしたくてしょうがないのを我慢していたのは秘密だ。
軽いキスの繰り返しでお伺いしてくるそれに緩く口を開く。唇をなぞってラギーさんの舌が差し込まれる……かと思いきや、彼は唇を離してしまった。
「ついうっかり乗っちゃったんスけど、愛撫するのは脱いでからッスね」
そう言ってラギーさんは手早く私の服を脱がせて、彼もまた下着一枚の姿になる。あっさり外していたけれど、今日のために用意しておいてえっちな下着はお気に召していただけたようで、ぴこぴこと彼の耳が忙しなく動いていた。
裸になって抱き合うと聞いていたのに下着は着けたままなのは最後の砦ということなんだろうか。色々考えているうちに、さっき中断されたキスが再開された。
ぴったり素肌を合わせた状態で合わせた唇を深めていく。舌の動きはそのままにラギーさんは胸をまさぐってくる。
もうキスの時点でラギーさんの下着はぐんと盛り上がっていて、私のお腹にくっついている状態だ。性器は刺激してはいけないからだろう、心なしラギーさんが腰を引く。
その後は指を咥えられたり、耳を舐められたり、お尻を触られたり、きわどいところまでいったものの、ラギーさんは説明した注意事項をきちんと守って一日目が終わった。
◇
「ラギーさん、獣人はポリネシアンセックス向いてないって調べたら出てきたんですけど……」
そうして迎えた二日目。いざ尋常に、の前に彼が仕事に行ってる間に調べたそれを口にすれば、ラギーさんは頭を抱えていた。
ぎぎぎとぎこちなく顔を上げたラギーさんは引きつった笑みを浮かべてる。彼のように聡くない私だけど、少なくともその顔は楽しい気持ちからではない事はわかった。
「……くんは相変わらずマジメッスね。というかなんで調べちまうかな」
「昨日は私がしてもらってばかりだったので、私も何かしてあげたいなと思って」
「君のそういうとこ好きだけど、今は発揮してほしくなかったッス……」
獣人は人間よりも遙かに性欲が強く、また思考が獣寄りであるが故に性行為=子作りの認識が強い為、我慢の連続かつ肉体よりも精神の繋がりを重視するポリネシアンセックスは根本的に相性が悪いらしい。
その上、ハイエナのように雌の許可がないと行為に至れない種族にとっては、雌からOKされてるのに手を出せないのは拷問に近いと。
「あのラギーさん」
「止めないッス」
「いや、でも」
「昔っから我慢するのには慣れてるんで。それにせっかく惚れた雌と番えるんだ、どうせなら最高の夜にしたいじゃないッスか」
ラギーさんの意志はどこまでも固いらしい。そのわりには目がギラギラしてるし、呼吸も完全に発情した獣のそれである。でもきっと彼は今夜も乗り越えてくれるのだろう。
ならば私が取るべき行動は一つだ。自らの服を手早く脱ぎ捨てていく。私としては続けてラギーさんも脱がせる予定だったのだけれど、彼は自分で昨日同様下着一枚の姿になっていた。
ぎゅっとラギーさんの首に腕を巻き付けるようにして抱きつき、彼の下唇を甘噛みする。緩く開いた彼の唇に舌を差し込めば、ラギーさんは驚いていたものの抵抗されることはなかった。
いつもラギーさんにしてもらっているように歯茎や内頬を丁寧になぞる。こ、これであってるのかな。戸惑いながらもしばらく続けていたなら彼に舌を絡め取られる。
隙間無く合わせた肌からラギーさんの心音が伝わってくるのだけれど、とにかく早い。小動物のそれと聞きまごうばかりの速度だ。余裕そうに私をリードしてくれているけれど、本当は緊張しているのか。お揃いなのだなとなんだか嬉しくなった。
ラギーさんとのキスは何度おこなっても気持ちよくて、ついつい夢中になっては彼の体に縋り付いてしまう。最初の頃ですら腰砕けになっていたにも関わらず、回数を重ねるごとにラギーさんはどんどん上手くなっていくから余計に。
「ふ、あ……ラギー、さん……」
「気持ちよかったッスか? ……なんて、その顔見たら聞くまでもないか」
彼の指摘通り、快楽に緩んだ表情になっている自覚がある。ちゅ、ちゅ、と触れるだけのキスを繰り返すラギーさんにただでさえ少ない理性が削られるのを感じつつ、何とか私は口を開く。
「……みみ」
「耳? 耳がどうかしたんスか」
「触ってもいいですか」
学生の頃のように対価はない。でもさっきから忙しなく動いている彼のそれが気になって気になって、またその感触がどうにも恋しくてお願いすれば、彼は私の方へ頭を下げてくれる。
言葉を貰ったわけじゃないけども、了承を得られたのだと解釈して、彼のやわらかなそこを好き勝手に弄くり倒す。あーふわふわー!
「……人間同様、獣人にとっても耳は急所なんッスよね。さすがのオレでも金積まれても触らせないぐらいの」
「えっ、でもラギーさん、学生の時から触らせてくれて……。もしかしてずっと嫌なのに私、無理させてたんですか?!」
あのラギーさんがマドルですら屈しないほど、と聞いて私は思わず手を離す。だがさして気にした様子のない彼は開いたままの掌に頭ごと耳を擦り付けてくる。可愛いけども、どういうことなの。混乱する私にラギーさんはなんだか意地悪な笑みを向けてきて。
「発情のスイッチでもあるんで番にしか許さないんスよ」
こうしてよく触らせてもらっていた頃、私達は恋人ですらなかった。ただの先輩後輩の関係で、だからそんな色めいた雰囲気なんてなくて。好き勝手に和やかに彼のふわふわを堪能していた、はず。でも、結果的に私は先輩の発情を促して……?
なんだかとんでもない事を聞いてしまった気がする。ちょっとした雑談だったのに、彼の忍耐強さやら愛情深さとか私への執着心等々、思い知らされることになるなんて。
「だからくん。どんなに可愛かろうが、産まれてくるチビ共の耳とか尻尾は触んないよーに。その分オレはいくらでもお相手するんで」
まだ行為にすら至ってないのにチビ共って。二人は作る予定なんですね、ラギーさん、私全くもって初耳なんですが。別に嫌なわけじゃなくて大歓迎ですけども! あとお相手ってどっちの意味ですか、触る方ですか、触った後のことですか。あ、両方ですね、この感じだと!
と、そんな風に混乱した私の頭はついにフリーズして、だから私の体も同じように固まってしまった。
彼の口撃にまんまとハマっている私へラギーさんは仕返しとばかり触ってきて。最初に決めたルール通り、性器以外は全身くまなく舐められ囓られた。ただやられてばかりもどうだと私も彼にいっぱい触れて口付けて。
お互いかなり悶々とした状態になりながらも、なんとか二日目も無事に乗り越えることができたのだった。
◇
「ふっ……は、ぁっ……ぷは、ぅ?! んー! ん、んん……」
ついにやってきた三日目。仕事から帰ってきて早々、ラギーさんは出迎えた私を寝室へと攫って。始まりの合図にしては濃厚すぎる口付けを繰り広げてきた。
こんなスタートダッシュ決めてたらバテちゃいますよ、私が。体力お化けのラギーさんには不要な心配である。
ラギーさんはこの口付けを繰り出す前にネクタイをほどきながら「明日有休にしてきたんで」と言っていた。直後にこんなことになってるので、実質的な抱き潰す宣言に私が震え上がる暇はなかった。
「ラギーさん、待って、まって……〜〜〜ッまて、おすわり!!!」
「……オレは犬じゃないッス」
私があまりにも必死で抵抗したからだろう。渋々といった様子ではあるが、ラギーさんは一旦身を引いてくれた。興奮しているからか、瞳孔開きまくっててちょっと怖いけども。
「えっと、最終日もじっくり愛撫しなきゃダメなんですよね? だから、こんなにハイスピードにしちゃうのはダメなんじゃ……」
「あ゛〜〜、そうだった……」
ラギーさんにはたくさん我慢させてきたけども、本当はずっと触ってほしかった。自分から結婚するまではしないと言い出したくせ、ラギーさんと付き合い始めてからはそういうことしたいなって思ってて。
だから高められた二日間も相まって、今日という日が心から待ち遠しかった。やっと繋がれるんだって、今もはしゃいでる。だからこそ、頑張って平静に見えるよう取り繕う。
「あと、もうちょっとなので頑張りましょ。ラギーさん」
ふと、言い終えてからこの発言じゃ行為にノリノリみたいだなと。いや何も間違ってはないのだけれど恥ずかしくなってしまい、ぎゅっと顔をラギーさんの胸に埋めるようにして抱きつく。
それにラギーさんも抱きしめ返してくれて。お互いの体温を分け合うようにしばらくそうした後、軽いキスを何度か繰り返す。
続いて私の服を彼は脱がし始めて、私もラギーさんの服を脱がしにかかった。いつもならなんてことないはずなのに緊張しすぎて手が震えてしまい、なかなか上手くいかない。にも関わらず、ラギーさんは私が無事に脱がし終わるまで根気強く待ってくれていた。
「んっ……」
唇を合わせる、ただそこに先程の激しさはない。ラギーさんのざらついた舌が優しく唇をなぞる。ねだるようなその動作に薄く口を開けば、するりと彼の舌が入り込んだ。それは私の舌先をくすぐったかと思えば、絡め取って。
私の舌をねぶりながらラギーさんは耳に触れてきた。男の人らしい、大きなごつごつと骨張った手でありながら、指先は繊細に私の情欲を煽ってくる。
ぞわぞわ、背筋を走る快感に体が震える。私の手付きは彼のものと比べて格段に雑だったけれど、それでもラギーさんが耳を私にしか触らせないという理由がわかった気がする。こんなの、本気で好きな人にしか任せられない。
「あ、う」
「くんは耳も小さくてうまそうッスね」
ふーっと熱い吐息を耳に吹きかけられ、びくびく体が反応してしまう。その次に彼は裏側や付け根を舌先で舐め上げてきて、癖になりそうなくすぐったさに私はただただ身悶えるだけ。
かぷりとラギーさんが口の中に私の耳を収めたかと思えば、穴に舌を差し込んでくる。音を立てながら舐められるのがあまりに気持ちよくて訳も分からぬまま涙が浮かぶ。軟骨を優しく食まれて情けない悲鳴が出る。捕食者の加虐性のせいか、私の反応にラギーさんが思わず鳴らしたであろう喉は興奮を隠し切れていない。
「……くん、好きッス。ずっと君が好きだった」
「わ、たしも、ラギーさんがすき、です」
度重なる愛撫で敏感になった耳にその愛の告白はよく響く。彼らしい飾り気のない言葉、けどシンプルだからこそまっすぐ私の心に届くのだ。どちらからともなく唇を交わす。
私もラギーさんに触りたい。その欲求が抑えきれず、ぺたぺたと彼の胸板を触る。ラギーさんの体はしっかり筋肉で引き締まっていて、見ているだけでもドキドキしてしまう。
彼の胸板へ唇を寄せて吸い付く。下手くそながら付いたキスマークに満足げにしていれば、お返しとばかりにラギーさんは私を押し倒しながら首筋を舐め上げた。口付けながら下へと降りていったラギーさんの唇が私の胸元に吸い付く。ちゅっとリップ音と共に私の肌に赤色が咲く。きっと明日の朝、これを見た私は今夜の事を思いだして悶えちゃうんだろうな。
ラギーさんはホックを片手で外して、ブラジャーを上へずらす。のけられたカップの代わりに大きな手が私の薄い胸を包み込んだ。
「ら、ぎー、さん。ん、んっ……」
すっかり尖った先を避けるようにして、優しくラギーさんは胸を揉みしだく。気持ちいい、でもちゃんと触ってほしい。彼の目を見ながら緩く首を振るって訴えれば、胸の先をいじめるような動きに変わる。
ぷくりと膨らんだ突起をかりかり爪の先で引っかかれる。まだ胸だけ、なのに少しでも気を抜いたら達してしまいそうなぐらい感じてしまっている。少し強く摘まんだ状態で捏ねられて、甘い痺れがおなかに溜まる。
その熱の温度を上げるかのよう、ラギーさんが私のおなかを撫で回す。しばらくしてラギーさんは下腹部へと指先を滑らせて、とんとんと軽くノックする。合図のようなそれに意識を向ければ、シシシッと彼が楽しげに笑った。
「ポリネシアンセックスって避妊できないんッスよね」
正確には私が調べた文献によると男の人も何度も何度も連続で絶頂してしまうため、コンドームでの避妊はかなり難しいと。そして他の手段、例えば薬等を使っての場合は事前に準備が必要だ。だが私もラギーさんも今日は何も服用していない。というか最終日はご飯も少なめにするようにと書いてあったので食事すらまともに取ってないのだ。
それでもいい?とラギーさんはお伺いを立ててくる。答えなんて分かりきってるだろうに。昨日の時点で最低でも二人は作る予定立ててたのに。
けれど私は答えるつもりしかない。何せ、その言葉は獣人の雄にとって最大級の愛情表現だと知っていたから。
「あの、ラギーさん」
「何ッスか?」
「わ、私……あなたの、ラギーさんの子供が、産みたい、です」
「おっけーッス」
ニンマリ笑って、ラギーさんは私に口付ける。恥ずかしかったけれど本当に嬉しそうな彼の姿に言って良かったなと思った。ありがと、と耳元で囁く声はひどく浮かれている。
太股の内側を付け根に向かってさすった後、下着の上から秘部を押される。ラギーさんの指が押し込まれるたびに、ぐちゅぐちゅといやらしい音が立つのが耐えがたくて頭を振った。
下着越しでも目立ってしまっている陰核をラギーさんが、くにくに押しつぶす。その刺激に私は早くも達してしまって、瞼の裏がちかちか点滅する。絶頂の余韻のせいで頭の中がふわふわと定まらない。気持ちよさに閉じられない口から、たらりと唾液が垂れた。
何も考えられず宙へと視線を彷徨わせてるうちにショーツは脱がされていて、しかもラギーさんの顔が足の間に入り込んでいた。羞恥心よりも先に前回の指で覚えた痛みを思い出し、意図せず体が強ばる。
「くん、嫌ッスか?」
「だ、大丈夫、大丈夫です!」
「そんな引きつった顔で言われても説得力ないんスよねえ……」
ラギーさんが身を起こす。それから横たわっていた私の体を軽々自分の胸へと引き寄せた。ラギーさんの腕の中に収められ、ぽんぽんとあやすかのよう背中を叩かれる。
彼にこうしてもらえるのはひどく心地良い。でも前回同様、中断してしまいそうな雰囲気には焦るしかなくて。止めてほしくない。でもどうしたらいいのかわからない。出口のない考えへと迷い込み、ぐるぐる目を回してしまう。
「くん、悪いけど今日は止めてあげられないッスよ」
「へっ」
「でも君が落ち着くまではこうしてるんで」
「ら、らぎーさん……」
最終日も今までと同じく挿入まで一時間の愛撫が必要で。でも今日の分はもうとっくに過ぎているのにラギーさんはまだ待ってくれている。ラギーさんはどこまでも私に優しい。ずっとずっと私を大事にしてくれている。
なのに私は何を怯えてくるんだろう。ラギーさんは私に酷い事なんて絶対しないのに。
「つ、続きしてください」
「もういいんスか?」
「あの、ラギーさんだから、してほしい、です」
そう言って彼へおなかを見せつけるように横たわる。それにラギーさんは「じゃあ遠慮なく」と告げて、再び元の体勢に戻った。続きをしてとは言ったけど、こんな間近で見られるのはちょっと、いやだいぶ恥ずかしい。でもラギーさんだから、嫌じゃない。
ただ見ていられなくて、ぎゅっと目を瞑る。そんなつもりはなかったが、それが合図とばかりにラギーさんが舌を這わし始めた。初めての感覚にびくっと跳ねる。痛みじゃない、けどバチバチと全身を貫くような快感に目を見開いた。
ラギーさんはきっと快楽の追求ではなく、この後に備えてほぐすための動きを心がけているのだろう。でもおあずけを食らっていたからこそ、どんな些細な快感も拾い上げてしまって。咄嗟に口を手で押さえる、けどそれでも押さえられないぐらいの嬌声が溢れてしまう。
舐められてるだけでこれなら、入れられたりしたら、私どうなっちゃうの。
「こーんなにとろとろになっちゃってまあ。入れたら絶対気持ちいいッスよねえ……」
「あ、あっ」
「入れてから三十分動くなとかできる気しねえや……」
くちくちと膣口にラギーさんの指先が抜き差しされる。前回は痛みで声を上げたけれど、今回は快感に身を震わせることしかできない。
ラギーさんが下着を脱ぎ捨てる。露出させたそれは今にもはち切れそうなほど、なんだか前よりも大きくなってる気がする。でも不思議な事に怖いとはもう思えなかった。
先端が秘部に擦り付けられる。ぬりゅぬりゅと先走りがただでさえ潤っている秘部を更に濡らす。私の意志を反映したかのよう、切なげに膣口は先端へと吸い付いて。
ぐっと押し込まれた熱が、ず、ずと私の胎内を拓いていく。少し詰めては戻ってを繰り返して、確実に奥へとラギーさんの熱が進んでいく。途中で何かが千切れたような感覚があったけれど、すぐにそれを越える快感に塗りつぶされた。
「……くん、ッごめん」
ラギーさんが最奥に辿り着いた瞬間、じわとお腹の中で熱い物が広がる。その感触に釣られて私も絶頂してしまう。精を吐き出しながらも、ラギーさんのそれは固く私を貫いたままだ。
やっちまった、と告げるラギーさんの目元は興奮からか赤く染まっている。挿入しただけで出してしまったことを情けなく思っているのか、へにょと彼の耳は垂れ下がっている。場違いだけれどもかわいいなと思ってしまう。ポリネシアンセックスだと普通のことらしいのに、ラギーさん知らないのかな。
子宮を満たす熱に残り僅かな理性が削れるのを感じながらも、ぎゅっと彼に抱きつく。ここから、三十分我慢……できるかな。
「らぎーさん」
「……なんスか」
「えっちしちゃいましたね。それが、すごく、嬉しくて」
今更ながらラギーさんのお嫁さんになったのだなと実感が湧いてきて頬が緩んでしまう。胸がぽかぽかする。ラギーさんが初めての人になってくれて本当に嬉しい。
甘える私の頭をラギーさんが優しく撫でてくれる。その心地よさにとろりと体の力が抜けていく。
「オレも幸せッスよ。でも今はあんまり可愛いこと言わないでほしいッス。オレ、かなりギリギリなんで」
あまりの気持ちよさに私は蕩けて、すっかりこの待ち時間を堪能しているけれど、さっきのぼやきからしてラギーさんにとっては拷問じみたことになってるようだ。
というのも、私の額や瞼や頬、色んな所へキスをしながら、ラギーさんはぐるるるると唸り続けているから。必死になってる彼には申し訳ないけど、そんな風に我慢するラギーさんはなんだか可愛くてしょうがなかった。
ぽつぽつと会話で気を紛らわせて、なんとか三十分を乗り越えて。
「あ、あ、らぎーさ、」
ゆるゆるとラギーさんが腰を動かす。緩やかな動作にもかかわらず、信じられないほどの快感が全身を駆け巡る。一気に上り詰めて果てて、でも達したところでその快楽は引いてくれず、どんどん私の中に積み上げられていく。
ずっとイってしまってる。気持ちよさに頭がおかしくなりそうになってるくせ、私の腰は物欲しげにゆらゆら勝手に揺れて。彼の熱を包む内壁は断続的にうねっているからか、ラギーさんもまた何度も私の子宮に熱を送り込んでいた。
気絶しては過ぎた快感に起こされての繰り返し。起きるたびに薄れる意識の中、とうとう体力が尽きたのか、ラギーさんが覆い被さってきた。荒い息遣いが耳元で響く。
どのくらいそうしたのだろう。ゆっくりラギーさんが体を起こして口付けてくれる。唇が離れた後、ラギーさんは本当に幸せそうに目を細めていて。交わった視線の甘さに心がとろけるのを感じながら、私も微笑み返した。
◇
「……無理させたオレが言うのもどうなんだって話なんスけど、大丈夫ッスか?」
「らいじょうぶれす……」
「全然大丈夫じゃないッスね。はい、あーん」
生まれたての子鹿よりも足はガクガクしてるし、限界以上に体力を使い果たしたせいか、一眠りしてもまだ回復していない私は全体的にへろへろの状態だった。キスマークに身悶える元気もない。
そんな私を見かねて、ラギーさんは甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。今なんて起き上がるだけで精一杯なせいで、わざわざご飯を運んでもらう始末だ。
「ごめんなさい。朝ご飯作ってもらって、その上食べさせてもらうとか……私、奥さんなのに……」
「くんは本当にマジメッスねえ。旦那だろうがなんだろうが使える物は使えばいいんスよ。第一君がこうなったのはオレが原因なんだし」
昨日はろくに食べていない、そしてあんまりに弱っているという事でラギーさんはリゾットを作ってくれた。口に含めば、野菜の優しい甘みがじんわりと体に染み渡っていく。
ごちそうさまをした後、シンクに向かって食器を洗うラギーさんの背へ私はふと浮かんだ疑問を投げかける。
「……獣人の方のえっちって、いつもあんな感じですか?」
「えっ。うーん……どうなんだろ。オレも昨日が初めてなんで予想が付かないッスね」
「何にせよ、私、頑張って体力付けますね……」
早くラギーさんの赤ちゃんほしいので。言う直前で怖じ気づいて、その呟きは消え入りそうなほどの小声になってしまった。
だが向けた相手は人の何倍も聴覚の優れた獣人の旦那様である。流水や皿の音に混じっていただろう私の要望はしっかり届いてしまったようで、ぴこぴこ耳が忙しなく動いてるし、尻尾もぶんぶん動いている。
わかりやすい耳と尻尾だけに収まらず、真っ赤になったうなじに私とんでもない事を言ってしまったのでは気付くがもう遅い。でも撤回する気もないのだ。
昨夜だけならず、結ばれる前からずっと彼は私への並々ならぬ愛を証明してくれたのだから。そんな彼の愛情に応えるために私はまず走り込みからかなと決意を固めるのだった。