逆転劇は真夜中に
深夜のオンボロ寮の自室。恋人同士である男女が二人きり、となればやることはただ一つ。そう、トランプである!
——という冗談はさておき、そうこうしている間に現在進行中だった戦いに決着がついた。
「なんていうか……デュースってびっくりするぐらいトランプ弱いね……」
シーツ上に広がるスピードの結果。ほぼほぼ私一人で終わらせた試合を眺めながら私は思わずそう口にする。別に侮辱したつもりはないが、私の言葉に「う゛っ」とデュースはダメージを受けているようだった。
スピードは二人でやるトランプゲームだ。ざくっと説明すると七並べをもっとシンプルにしたようなゲームで、手札からお題となったカードと数字が繋がるカードを素早く出して、相手より先にカードがなくなれば勝ち。
それを五回やって全部私が圧勝している。別に私は特別強いわけじゃない。反射神経も動体視力もデュースの方が優れていると思う。というか反射的に動けてしまうからこそ、こういった騙し合いや妨害が要となるゲームだと後々不利な状況に陥ってしまうんだろう。
昼間にグリムとエースも合わせて行ったダウトも酷かった。これも順番に手札を出して早くカードが無くなった人が勝ちというゲームで、これは嘘を上手く混ぜ込むのがポイントなのだが……。
デュースは早く手札を減らそうと焦るあまり、そうはならんやろという嘘を吐き続け、グリムにすら呆れられるほどの惨敗っぷりを見せていた。このゲームは全体の戦況を見るのが重要なのにデュースってば目先の勝負しか見えてないんだよなあ。
と、あんまりにも酷いものだから、グリムがハーツラビュルに泊まるべくエースと一緒に出て行った後、二人でできるトランプゲームで特訓していたのだが結果はこの通り思わしくない。
もう一回もう一回と彼に頼まれるまま応えるうちにすっかり夜も更けてきた。もう夕飯もお風呂も終えているから、まだ続けても問題はないけども……さすがに疲れた。一旦休憩させてほしい。
トランプを拾ってサイドテーブルの上に置く。それから私はシーツへと横たわった。以前からは考えられない動作だ、主にベッドが壊れかねない恐怖のせいで。
実はウルトラゴージャス寮事変の後、イデア先輩の弱味に漬け込んだのと皆の好意により浮いたお金で、ベッドをかなり大きなものに買い換えておいたのだ。やっぱり手足を伸ばせると心地よさが断然違うな〜。行儀が悪いけど足下のデュースにはぶつからないよう倒れ込んだから問題ないだろう。
前と違って染みだらけの木目ではなく、クロスに覆われた天井を眺めながら思案に耽る。
「しょうがないのかな、デュース嘘吐くの得意じゃないみたいだし」
「……だって僕のこと言えないぐらい、下手くそだぞ」
これまでの負けっぷりを見てきた私は何を言ってるんだという感想しか抱かなかった。ただデュースはあまり負け惜しみとか口にするタイプじゃない。その違和感に私は首を傾げる。
いつの間にかデュースが私に覆い被さっていた。耳元に彼の頭部が寄せられる。
「はいつも嫌だって言うじゃないか、本当はもっとしてほしいくせに」
なんのこっちゃと、とぼけられるほど私は経験不足じゃなかった。恥ずかしさから退いてとばかりに彼の背をバシバシ叩くがデュースは一切ひるまない。体格差のせいで自力では抜け出せそうもなかった。
「もしかして私の恋人は『嫌よ嫌よはマジで嫌』って言葉をご存じでない?」
「の『イヤ』は本当にポーズだけだろう?」
挑発上手の親友をイメージしつつ煽るような態度を取る、ついでにぐいぐい胸を押してみるがやっぱりびくともしない。肉体はもちろん、精神的にも。デュースってわりと短気な方なのに。
私が本気で言ってるわけじゃないと見抜いているのか。デュースはダメージを追うどころか、むしろ私を追い詰めてくる。とりあえずどさくさに紛れて太もも撫でるのやめてほしい。
「エースの真似はイライラするからやめてくれ」
「まあ怒らせようとしてるからね、って、もっ、やだぁ♡」
「わざと嫉妬させるなんて酷いじゃないか。それに嘘はだめだぞ、」
あ、怒ってるのそっちなんだ。パジャマの中へと入ってきた彼の手が私の胸をぐにぐにと揉む。その刺激に私は体をくねらせながらデュースの愛撫に反抗してみせた。
まあ彼が泊まっている時点でこんな風になるのを期待してなかったといえば嘘になる。なので実のところ、デュースの言うとおり、私の抵抗は形だけだったりする。でも指摘されたことで意固地になってしまった私は嫌がってるフリを続けることに。
べろっと私のパジャマを捲り上げ、デュースが胸への愛撫を再開する。彼の大きな手によって形を変えるほど胸を揉みしだかれ、だんだん息が上がってくる。
「感じてるんだな」
「違う♡ 全然気持ちよくないもん♡」
「、ダウトだ♡」
昼間に嫌になるほど聞いて、そして毎回外していた台詞。だが今回に関しては大当たりだった。そうなると嘘を見破られた私はペナルティがあるのだけれど。
首筋を舐められて快感に身を震わせる。お互い昂ぶってきたせいか、ふざけていられる余裕はもうなかった。
慣れた手つきで脱がされて、私はあっという間に全裸にされる。単純に熱くなってきたのか、それとも一人だけ裸にされることを私が嫌がるからか、デュースも続いて己の服を剥ぎ取っていった。
足を閉じれないよう、デュースの体が太ももの間に挟まる。私達は今全裸で、そしてデュースは欲情していて。だから下腹部に育ちきった彼の興奮の証が当たってしまう。それが妙に恥ずかしくなり、私はぎゅっと目をつむった。
がさごそと小さな物音に彼が避妊具を付けていると察する。となるともう入れるのだろうか。自分でもわかるぐらい濡れているから問題ないとは思うけども、慣らされていないことからちょっと身構えてしまう。
「あっ、あっ♡」
「嫌がってたわりにびしゃびしゃだな」
だが予想していた衝撃ではなく繊細な刺激がやってきたことから私は思わず過剰に反応を示してしまった。
さっきのおふざけの仕返しなのか。ぬぷぬぷと私の膣内へ指を差し込みながらデュースは煽ってくる。挑発に乗ろうにも気持ちいいところばかりを責められて、反抗は全て嬌声に変わってしまう。彼が指を動かす度ぐちゅぐちゅとまるで果実が潰れたかのような酷い音がしていた。
「奥擦ってほしいか?」
焦らすように浅い所ばかりを擦られ、特に感じる奥の方は慣らす程度にしか触ってもらえない。それが酷くもどかしかった。
だから観念してその質問に頷いたにもかかわらずデュースは指を抜いてしまう。なんでと非難めいた言葉は直後に入り込んでいた熱の塊に吹き飛んでしまった。
一気に奥まで届いた彼に一瞬意識を失う。だが気を失ってる暇はないぞとばかりに叩き付けられた快感にすぐさま引き戻される。
「やだっ♡ デュース、こんなのおかしくなる♡ やだぁっ♡」
「やっぱりは嘘が下手だな」
「んぁあっ♡ だめ、だめっ♡ あっ、あああっ♡」
行き過ぎた快感に本気で泣きを入れるが、デュースはそんな私におかまいなしで激しく腰を振る。もう私の声は悲鳴じみていたけれど、自分でも嫌になるくらい甘ったるくて。誰が聞いても悦んでいるとバレバレだっただろう。
当然幾度と体を重ねてきた彼がわかっていないわけがなく、デュースは律動を早めていく。奥をガンガン打ち付けられて、その度に私は達してガクガクと体を痙攣させる。逃げ場のない快感に頭が沸き立って、本当におかしくなりそうだった。
足を持ち上げられ、ぐっと体重をかけるようにしてデュースが更に奥へと潜ってくる。もう入らないという所までやってきた途端、ただでさえ大きいものが膨らんで、薄い膜越しに熱い物が吐き出されていった。
使い終わったコンドームを取り外し、新しいものに付け替えると再びデュースは私の胎内へ自身を埋めていく。
やだと泣き言を口にすれば、デュースはキスで遮って。ぐずぐずになっている私に向かって、デュースはとびっきりの笑顔を見せる。いつもなら可愛いなと思えるそれが今日は何とも邪悪に見える。たぶん気のせいじゃない。
「今回の勝負は僕の勝ちだろう?」
いつから戦っていたのか、知らないうちに私は土俵に乗せられていたらしい。とりあえず私は何回見破られたっけ。先程までのやりとりを思い返しながら、最低三回は続けられるだろうことに白旗をあげるかように体の力を抜く。
だが夜通し続けられたその勝負は先程とは打って変わって、彼が勝ち続ける事となるのだった。