わがままな女の子でごめんね

 別に嫌とかそういうわけじゃなかった。ただ手帳を見返した時にひよこのシールだらけだったことに、ちょっと思うところが出てきてしまっただけ。
 ハートだとあからさまだし、恋人ではなくもう一人の友達のトレードマークということから、私はデュースと肌を合わせた日にはひよこのシールを貼っていたのだけれど……まあほぼ毎日手帳の上でぴよぴよ鳴いている状態で。
 それに他の人の平均がどのくらいなのか、わからないし調べようもないけど、さすがに多すぎるんじゃないかなと疑問を抱いてしまったわけだ。
 だからここ最近はずっと彼からのお誘いを断り続けている。私に拒まれてしょんぼりするデュースには悪いと思ってるけど、私達はまだ学生なのだ。ちゃんと節度を持ったお付き合いをするべきだと思う……一線を越えてしまってる以上、あまり説得力はないのだけれど。
 本当は怖いのだ。いつもあんなに激しく求められてしまっていたら、すぐに飽きられてしまうんじゃないかって。デュースはそんな人じゃないってわかってる。なのに私は不安で。

「わかった。だったら激しくしない……と言い切りたいんだが、その、正直抑えきれる自信がないんだ。ただ飽きるなんてことは絶対にない」

 最後に肌を合わせた時から断り続けて一ヶ月ほど経ったある日。オンボロ寮へと訪れたデュースから一度ちゃんと腹を割って話し合いたいと願われ、その結果、私は本音を彼にぶつけた。お前に触れられなくて寂しいんだと零されてはもう黙っていられなかったのだ。
 それに返されたのは何ともデュースらしい、ある意味、誠実な約束だった。デュースってば自分の為には嘘吐けないタイプだもんなあ。
 拒んでいた立場の自分が思うべきではないけれど、本当のところ私も寂しかった。だから彼に誘われるまま寝室へと向かって。

 彼の唇を受け止めながらマットレスへと体が沈む。いつも眠っている場所なのに、デュースと一緒に横たわるとドキドキして目が冴えてしまうのだから不思議なものだ。
 唯一許した間接照明の一番小さな光はお互いの顔が近づいたら見える程度の明るさで。
 だけどまだ暗闇に慣れていないにも関わらず、デュースはテキパキ私の服を脱がす。最初の時はもう少し明るくしていても手間取っていたのに。一月分のブランクを感じさせない手付きに、それだけ私が彼に抱かれてきた事実を突き付けられたみたいで恥ずかしかった。
 普段のように舌で唇をこじ開けるような真似はせず、私の頬に触れながらデュースは短いキスを繰り返してくる。それにリラックスしたのか、いつのまにか自然と開いていた口に彼が舌を差し込んだ。
 もどかしいぐらいゆっくりと丁寧に口内を舐められる。余すところなく舌を這わせた後、軽く唇に吸い付いてデュースは口を離した。

「ひぁ」

 緩やかながらも思考力を奪っていったそれにぼーっとしていたところ、首筋を舐められ思わず悲鳴じみた声が出た。この後はいつもかぷかぷと噛まれてしまうものだから、つい身構えてしまう。だが想像していたような痛みはいつまで経っても訪れなかった。
 予想外のことに彼の様子を窺う。バチと視線がぶつかった途端、デュースの目の色が変わって。薄く笑った彼がゆるく首筋に歯を立てた。さして強い痛みじゃない。けど場所が場所だからか、背中がぞくぞくと震えていた。

は噛まれるのは好きなんだな」
「ちが、んっ」

 肩口を噛まれ思わず出た声は甘くて、デュースの指摘を否定させてくれない。痛いのなんか好きじゃない、なのにどうして気持ちいいと思ってしまうんだろう。
 さっき凄く物欲しそうに見てたぞと囁かれ、頬が熱くなる。私、前はこんな風じゃなかったのに。さっきよりも強く噛まれているそこにはきっと歯形が残ってしまうだろう。でもそれをまったく嫌だと思っていない自分がいた。
 噛み跡を舐めながらデュースはブラを上へずらして私の胸をまさぐる。肩のピリピリした痛みと胸からの快感がごちゃ混ぜになって頭が変になりそうだった。
 肩から口を離したデュースがキスしてくる。その間も胸への愛撫は止まらない。きゅっと胸の先端をつままれて体がびくつく。親指と人差し指で捏ねたり、時折押しつぶしたり。少なくとも優しくないはずのそれがとにかく気持ちよくて、悲鳴じみた嬌声をあげてしまう。

「でゅーすも、ぬいで」
「わかった」

 私ばっかり恥ずかしいのは嫌でそう言ってみたものの、デュースは何の迷いも恥じらいもなく全裸になった。思い切りがいいのは悪い事じゃないけども……彼の興奮具合のせいで目のやり場に困る。見るどころかもっと凄い事をしているけども恥ずかしいものは恥ずかしい。
 ショーツが足から抜き取られる。そのさい触られてもいないのにぐずぐずになった秘部から粘液が糸を引いていて、自身のあまりのはしたなさに目を逸らした。
 ただ私にとってはふしだらでしかないその様はデュースにとってはそそるものだったのか。ごくりと喉を鳴らして、彼はそこへ顔を近づける。

「やっ」

 身をよじったところでがっちりと太股を掴まれていては逃げようがない。にゅるにゅると内壁を割って彼の舌が中を行き来する。舐められているところから広がっていく快感に下半身が溶けてしまいそうで。
 内股に力が入るけども、彼の頭を押しのけようとする腕には全然力がこもらない。やだと、やめてと、どんなに口にしたって体の方が正直だ。デュースにはそうバレてしまっているのだろう。絶えず湧き出る愛液を啜られ、一番敏感な粒を何度も舐め上げられる。じゅっと粒を吸われた瞬間、勝手に体が仰け反ってびくんと大きく跳ねた。
 目の前がちかちか明滅する。びくびく震えていた体は痙攣が治まるとゆっくり力が抜けていった。彼の顔は私の愛液でべたべたになっていたがそれでも綺麗で。イケメンって恐ろしいなと思う。
 そんな風に汚したのは自分なのだから拭おうしたが、デュースはその前に自身の腕で拭き取って。それから彼は脱ぎ捨てていたズボンのポケットを漁りだした。
 お目当ての物のパッケージを破いて、中身を装着する彼をぼんやりとした頭のまま見つめる。さっき取り出した時、パッケージは何個か繋がっていた。最初の頃は付けるのに失敗していたからだけど、今はそうじゃない。
 激しくしないようにとは言ったけど、そちらの約束は忘れていた。でも久しぶりだからしょうがないと言い訳をして受け入れるつもりなのだから、自分も大概どうしようもない。

、いいか?」

 言葉の代わりに頷く。それを合図に避妊具をまとったデュースの熱が私の膣口に宛がわれた。
 唇が彼の口に覆われる。同時に先端の丸いところがゆっくりと入り込んできた。久しぶりだからか、圧迫感に息が詰まる。けど、ぬるぬるになっていた中はあっさり彼の熱を全部受け入れていった。
 デュースの背に腕を伸ばして、ぎゅっと彼を抱きしめる。剥き出しのまま触れ合う肌がどうにも心地良い。お互いの熱を分け与えられるこの瞬間が私は一番好きだった。まるでデュースと身も心も一つになれたみたいで。
 しばらくそうしてくっついて満足した私は腕を下ろす。そのタイミングを見計らってデュースがゆるゆると腰を動かし始めた。

「あ、あ、あっ」

 いつもと違って緩慢な律動だけれど、浅い場所にある良いところを擦られて嬌声が漏れる。普段なら絶対出さないからこそ、デュースはその声にいたく興奮しているようだった。
 彼もまた日常では絶対に見せないだろう顔を、私しか知らない表情を向けている。それにおなかの奥が甘く疼く。しばらくして、ずぶっと深くデュースの熱が潜り込んできた。
 覆い被さる彼の額から、ぽたと私の肌に汗が落ちる。私を見つめるデュースの目は寒色であると忘れるほど熱っぽくて、その視線に溶けてしまうんじゃないかと錯覚させられる。
 私の痴態を眺めながら、デュースは緩やかに奥を突いてくる。とん……とん……と優しい動きなのに、彼の先端が最奥に当たるたびに電流のような快感が全身を巡っていった。
 今までの行為とは違う動きと快楽に勝手に涙が滲む。何かに縋りたくて、思わず隣に脱ぎ捨てられていた彼の服を抱き寄せた。顔へと押しつけた服から感じる香りはいつも通りで少しばかり気持ちを落ち着かせてくれる。
 そのぬくもりに包まれて何とか乗り越えようとしていたのに、突然デュースに服を取り上げられてしまう。なにをするんだ、そんな気持ちから睨み付けたデュースは不満げな顔をしていた。

「服じゃなくて僕に縋ってほしい」

 言い終えた直後にキスをされる、その唇は角度を変えて繰り返すうちに深まっていった。
 ぐっと腰を掴まれ強く突き上げられる。それから体重をかけるようにして奥をぐりぐりと押しつぶされて。徐々にいつものような激しさを見せ始める。
 けどもう嫌だとか、怖いとは思わなかった。視線が交わる、私が欲しくてしょうがないと示す瞳と。飽きるわけないと心から信じさせてくれる眼差しだった。それに自分でも気付いてなかったけど、今の私はこれぐらい求めてもらえないと満足できなくなっていたから。
 、好きだ、愛してる、とデュースは私を揺さぶりながら幾度と口にする。愛してるなんて、物語でしか聞くことのない言葉だと思っていたのに。彼がそう言ってくれるたびにたまらなく嬉しくなる。だから私も同じだけ想いを声にして。
 一番奥に食い込むぐらい彼の先端が押し当てられる。がぶりと肩を噛まれ、その衝撃に頭の中が真っ白になった。絶頂にきゅうきゅうと彼の熱を私の中が締め付ける。それに彼も達したようで、私の中でデュースの熱が大きく脈打っていた。
 ずるりとデュースの熱が体から出て行く。使い終わったゴムを捨てた後、彼は迷っているようだった。いつものようにもっと欲しいけど、私が激しくしないでくれと言われたからだろう。
 どうにか呼吸を整えた私はそわそわと落ち着きのない彼の足へ手を添える。

「ごめんね、デュース」

 私もやっぱりもっと欲しい、これからも。そうこぼした私にデュースはただただ嬉しそうに再開のキスをした。

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