ピーマンフェスタ開催のお知らせ

「いつもより激しくしたいんだが……いいか?」

 結婚してからはすっかり日常になってしまった行為の直前、夫であるデュースがお伺いを立ててくる。激しく、激しく、言われた言葉を脳内で繰り返すが想像が付かない。でも仕方ないと思う、私はそういった事に対する経験値があまりにも低いから。
 私が初体験を迎えたのはつい一月前、つまり結婚初夜が本当の意味で私達にとって初めての夜だった。年頃の男女が五年も健全なお付き合いをしていたのは逆に不健全じゃないか?なんて、からかわれたりもしたけれど、なんとなく踏み込めなくて。
 そうこうしている間にお互い清い体のまま、夫婦になっていた……というわけである。ただし夫婦になってからはこれまでが嘘のような勢いで大人の階段を駆け上がってしまっているんだけども。
 話を元に戻そう。夫からの申し出に私はフリーズしてしまっていた。わりと今ですら心身共々いっぱいいっぱいなんだけど、激しくって事はOKしたら、これ以上すごいのが来るんだよね?
 そう考えたら尻込みしてしまうが、夫のお願いはできれば聞き入れてあげたい。予測できない怖さはあるけど、デュースってわりと暴走しがちだけど……! うーんうーんと悩みに悩んで、私はある提案を出すことにした。

「……いいよ。ただ本気で嫌な時は『ピーマン』って叫ぶから、そしたら中断してね」
「わ、わかった」
「もし続けた場合は明日のお弁当、みっちみちに焼きピーマン詰めるから」
「っ絶対に無理させない!!」

 以前、私をブチギレさせて食卓でピーマンフェスティバルを開催された時の事を思い出したのか、サーッと青ざめながら必死に訴えるデュース。まあ私もさほどピーマンが好きじゃないせいで諸刃の剣だったからもう二度とごめんだけど。
 そんな色気の皆無のやりとりを交わした後、デュースがいつも通り唇を重ねてくる。自分の中でじゃれあいから夫婦の営みへと気分が切り替わるのがわかった。
 差し込んだ舌で口内を荒らしながらデュースは私のパジャマの中へ手を潜り込ませてくる。ゆるゆる胸を揉んだかと思えば、きゅっと先端を摘ままれた。そうして彼の指に弄ばれるうちに息が上がる。

「ん、でゅーす……」

 パジャマを捲りあげられ、現れた胸の先をデュースは口に含んで。先端へ甘く歯を立てながら、ちうちうと赤子のように彼は私の乳首を吸う。
 行為の最中だから仕方ないのかもしれないけれど、もし赤ちゃんが生まれたら彼におっぱいの飲み方は似てほしくないなと思った。だって吸い方が絶妙にふしだらだし……。いやデュースがする分にはそういった行為だから、すけべなのが自然なんだけども。

「ひゃっ?!」

 胸の先に緩く歯を立てられ、思わず変な声が勝手に口から飛び出た。胸を愛撫するデュースと視線が合う。きもちいいか? そう訴えてくる瞳に私は何も答えられず、ただ彼が与えてくる刺激を享受する。
 いつもより強く吸ったり甘噛みしたり。彼が積み上げていく快感に背筋がぞわぞわして、お腹の奥が熱く疼いていく。
 ちゅく、ぴちゃ、と音を立てながらデュースは胸を食みながら、もう片方は揉みしだいて。ぐにぐにとデュースの手によって形を変える膨らみが、赤く色付いた先端が羞恥心を駆り立てる。直視していられなくて思わず視線を逸らした。

「んっ、ふ、ぅ……」
「最初の頃に比べて感じやすくなったな」

 ぎゅっぎゅっと搾るように乳首を引っぱられる。初めての時なんて緊張から胸を鷲掴みしたデュースにうっかり掌底食らわせてしまったというのに、今の私は痛みの中に快楽を見いだしてしまう。
 痛い、気持ちいい、もっと欲しい。変態みたいだと思うのに身悶えて、私の体はどんどんデュースに作り替えられていく。彼からの刺激にぴくんと弓なりに反る体、じくじく疼くような快感から私は悩ましげに息を吐き出した。

「でゅーす、もう、だめぇ……」
「じゃあ下触るな」
「ッん!」

 止めてほしいという私の意思表示をデュースは「もう我慢できない」という意味で受け取ったらしい。デュースはパジャマのズボンごと下着を抜き取って、私の秘部へと手を伸ばす。
 デュースの指先が伝ったそこは既にしっとりと潤っていた。彼が入り口で指を遊ばせれば、ぬちぬちとねばっこい水音が立つ。ふやけそうだ、ぽつりと彼が呟いた言葉に体温が急上昇する。

「やっ、ゆび……!」

 簡単にデュースの指が奥まで入りこんだ。ゆるりと中をかき混ぜながら、デュースはキスしてくる。舌を絡ませて唾液も呼吸も全て、デュースの口の中へと飲み込まれていく。
 差し込む指を増やしたかと思えば、同時に親指で陰核を刺激される。強い快感に耐えきれず腰をくねらせるが、デュースの指は止まらない。シーツを掴んで必死に耐えるが、それもいつまで持つか。

「ん、でゅーす……もう、わたし、おかしくなっちゃう……」
「ああ、気持ちよくなってくれ」

 限界は思いのほか早く来た。今度は先に進んでほしいと意味で懇願したのだけれど、またデュースは別の解釈をしたらしい。ぐりっと強く陰核を押しつぶされる。

「ひぅうっ、ん、ぁああっ」

 脳を貫くような快感に体が跳ね上がった。びくびくと打ち上げられた魚のように全身が痙攣する。
 今までの絶頂はデュースと一緒に迎えていて。一人で、つまり愛撫の段階でイってしまうのはこれが初めてだった。ずるりとデュースが中から指を抜く。てらてら私の愛液で濡れているのがいやに卑猥だった。
 はあはあと私が肩で息をしている間にデュースが自身の服や下着を脱ぎ捨てる。彼の熱は大きく張り詰めて、デュースが興奮している事をしかと表していた。
 ひくつく秘部へ切りっ先が宛がわれる。ぬるぬると何度か擦り付けた後、デュースはずぷりと勢いよく中へ熱を穿ち込んだ。
 胎内をこじ開けられるこの感覚はいつまで立っても慣れそうにない。でも前までとは違って、私の体はすぐに快感を見いだしてしまう。ぐりぐり奥までデュースの熱が入り込む。だけども濡れそぼった中はそれを喜んで受け入れて。

「ん、んんっ、でゅーす、でゅーす……」

 揺さぶられるたびに頭の奥がじんじんしてくる。気持ちいい、気持ちいい。ぐぽぐぽとひどい水音に体が熱くなっていく。
 なんだかいつもより昂ぶるのが早い。どうしてだろうと考えて、一度先に達したせいで敏感になっているのだと気付く。でも、なにか変だ。自分でもよくわからない。でもおなかの奥がむずかゆい。知らない感覚に身震いする。

「ふ、ぁ、あ」

 腰を動かしながらデュースが陰核をくにくにといじる。それに一際強くなった感覚は尿意に似ていて、さっと血の気が引いた。これはだめだ。咄嗟に両腕で彼の胸を突っぱねて中断を促すが、デュースは行為に夢中で気付かない。その間も彼からの刺激で私の体は良くも悪くも盛り上がっていく。

「んぁ、ま、って、まって、でゅ、あっ」

 思いっきり腰を打ち付けて、デュースは最奥を先端で叩いてくる。こつこつと子宮口に彼の先端がぶつかるたびに私の体は勝手に彼の熱を締め付けてしまう。自分の体なのに言うことを聞かない、止めてほしいのにもっと欲しいと体は浅ましくねだって。これでは伝わるはずがない。

「でゅーす、ぴっ、んッ」

 なんとか思い出したセーフワードを叫ぼうとしたがキスで遮られてしまった。離してほしい、そう思ってデュースの背中を叩くが、すっかり鼻で息継ぎができるようになった彼はまったく唇を離してくれなくて。長い口付けを終えた時には舌が回らない状態になっていた。
 だめ、だめ、だめ。がくがくと全身が震える。彼の背中に回した指先に力がこもって爪が立った。外れかけた箍はもう戻りそうにない。

「やっ、だめぇ……!」

 頭がショートした瞬間、ぷしゃと中から秘部からそれは吹き出した。状況を理解して、ぼろぼろと涙を零す。そんな私にデュースは慌てふためいていた。

「ど、どうした、。痛かったか……?」
「うう、もらしちゃう、なんて……もう、やだぁ……」
「えっと、これはおもらしじゃないぞ、。潮吹きだから心配しなくていい」
「しお……?」

 潮吹きってあの鯨がブッシャー!ってするやつ……? 私の体、プランクトンも海水も入ってないけど……?
 ハテナマークを浮かべる私に「気持ちよくなると人間も潮を吹くんだ」とデュースは説明する。よくわからないけど、そういうものらしい。あと男の人にとってパートナーを潮吹きさせるのはおそらく誇らしいものなんだろう。セックスが上達した証拠的な感じで。
 というのもデュースがなんとなくうっとりしているから。おもらしだと思ってショックを受けていた私はそれを見てちょっとイラッとした。

「あの、続きしてもいいか……?」

 だが入ったままの彼の熱が可愛そうなぐらいガチガチなのと、まるで雨の日に捨てられた子犬のような表情をするイケメンに負けて、私は頷く。それに打って変わって晴れやかに笑うデュースは可愛かった。中でびくつくそれは全然可愛くないけど。
 がっちり私の腰を掴んで、ばちゅばちゅと最奥をデュースは攻めたてる。痛いくらいに、怖いくらいに、気持ちいい。既に二度上り詰めていた体はあっという間に追い込まれて。
 ぎゅううと呼吸が苦しくなるほど私を強く抱きしめながらデュースが達する。びくんびくん、中で大きく彼の物が脈打った。最奥に押しつけられた先端から熱の塊が流れ込んでくる。おなかがじんわりとあったかい。

……」

 お互いの荒い呼吸だけが場を満たす。汗ばんだ体をぴったりくっつけたまま、デュースは私にキスをして。とろりとあの美しい緑を溶かしながら、彼は私に微笑みかけてくる。
 穏やかな表情とは裏腹におなかの中に依然入り込んだままのそれはむくむくとまた元気になりはじめていて。いつも通り二回戦に突入するつもりなのだろう。それに異論はないけども、一つ言っておきたいことがある。

「デュース……」

 彼の背中にあった手をデュースの頬へと移動させる。しっかり視線を合わせて、私は青筋を立てながら笑みを作った。

「明日のあなたのお弁当箱がピーマンフェスティバルの会場になります」
「なんでだっ?!」

 死刑宣告にも似た私の宣言にデュースが叫ぶが後の祭りだ。許可無く成人女性をおもらしさせた恨み、しっかり味わってもらおう。
 そこから始まった二回戦、三回戦……四回戦以降は覚えてないけど、デュースは営みの中で私の機嫌を取ろうとしたものの、残念ながら開催宣言は覆ることなく。
 次の日、帰ってきた彼はこの上なくしょんぼりしながら綺麗になった空のお弁当箱を渡してくるのだった。

back