リピートミー

 男の人はAVみたいなセックスに憧れるものらしい。などと、男子達は猥談語っていて、私はそれをうっかり聞いてしまった。
 だから今、私の手元にはナイスバディのお姉さんが扇情的な下着を身につけたパッケージのDVDが存在している。
 未成年にも関わらず、サムさんに馬鹿正直に「恋人を喜ばせたいので参考資料としてAVください」と無茶苦茶を言った所、融通を利かせてくれたのである。やっぱり男子校だから、その辺は甘いのもあるんだろうな。
 たださすがに法に触れるのはマズイと思ったのか、本物のAVではなく性教育のビデオとの事だ。そのわりにはパッケージからエロスを前面に押し出してない?というツッコミが浮かんだが、海外の性教育用の教材は日本のそれより過激らしいので、ヨーロッパっぽいこの世界もそんな感じなのかもしれない。
 まあともあれバッチリ勉強させてもらおう。私達の明るい、せ、性生活……いや、未来の為に!
 休日ということでグリムもゴーストさん達もおでかけしてる。真っ昼間からこういうやましいのを見るのは気が引けるけど、こんな風に完全に一人きりになれる機会なんてそうそうないのでしょうがない。そう自己弁護しながら、薄暗くした自室、そこのソファーへ腰掛けた私はプレイヤーの電源を付けた。

『んちゅ、ちゅば……』
『ああんっ、はぁあん』
「ひょわっ」

 しょっぱなから濡れ場が始まり、思わず悲鳴を上げる。照明を落とした薄暗い部屋のベッドで既に素っ裸の男女が濃厚なキスを交わしていた。導入用のストーリーとかないのか、効率と実用性を重視しまくってるなあ……。パッケージのセクシーランジェリーを期待してた人はキレそう。
 興奮させるためなのか。わざと音を立てるようにキスしながら、男が彼女のたわわな胸を揉んでいる。激しい手付きによって、むにゅむにゅ形を変える。他人事だからだろうか、その光景をすごいえっちだなと思った。男の子(彼氏含む)が巨乳を好きな理由がちょっとわかってしまう。
 やっぱりこの巨乳を生かすべきだと制作陣は考えたのか。今度は女の赤く尖ってきた乳首を見せつけるようにべろべろと男が舐め回す。ぢゅるると吸い付けば、甘ったるい声を上げながら女の体が跳ねた。
 女の足が大きく左右に開かれてカメラのアングルが変わる。おかげで秘部が丸見えになった、なんでモザイクかかってないの?!
 自分のですらロクに見た事が無い私にはあまりに刺激が強すぎる。慌てる私を余所に男が秘部へと指を抜き差しし始めた。それにすぐさま女が派手に喘ぎ始める。オウ!イエス!カム!カム!と勢いの良い声は自分のものとは全く違う。私もこんな風にいっぱい声出した方が良いのかな、でも一ミリも真似できる気がしない……!
 ずぼずぼとピストンしていた男の指が女の絶頂と共に抜き取られる。そして男は反り立ったそれを秘部へと宛がって。うわー!うわっー!!

「なあ、
「ひぴゃッ?!」

 呼ばれると同時に後ろから肩を叩かれ、奇声を上げた私の体が大げさなぐらいに跳ねる。震えながら振り向けば、ほんのり赤くなった頬を指でかくデュースがいた。
 すとんと自然な流れで彼は隣に座る。何故。たぶんグリム辺りから私が今日オンボロ寮に一人だって聞いてサプライズに来てくれたんだろうけど、普段だったら凄く嬉しいけど、今は見なかったふりをしてそのまま出て行ってほしい。

「……これ、そんなに面白いのか?」

 見知らぬ男女の痴態をしばらく眺めた後、視線は画面に向けたまま、デュースは私へ質問を投げかけてくる。いつもは見惚れる綺麗な横顔が今は何よりも恐ろしかった。

「そ、そういうのじゃない」
「僕も見ていいか?」

 一応確認を取っているが、もうデュースの腕は私の腰に回っている。逃がす気はない、という意思表示なのだろう。とんでもないことになってしまったと思いながらも私はなんとかテレビへと集中しようと努力し始めた。

「ん、あっ、んん……」

 また再生され始めたビデオの嬌声の方がよほど大きいのに、自分の喘ぎの方がよほど耳に付くのは何故だろう。私の胎内に入り込んだ熱に奥を突かれるたび、視界がチカチカして体が仰け反る。

「今日はいつもより感度良いな、

 見下ろすデュースは普段の優しい顔ではなく、悪巧みしている時みたいな表情だ。打ち付けてくる腰もあのAVみたいに勢いがあって、パンパンと肌がぶつかる音が大きく響いていた。
 ——どうしてこんな事になったんだっけ。ベッドが軋む音に邪魔されながら必死で考える。
 デュースが尋ねてきたあの後、結局一緒に最後まで鑑賞することになっちゃって。それからベッドに運ばれて……気付いたらこうなっていた。元々そういう用途に使われる品だ、デュースがムラムラしてしまったのも仕方ないだろう。
 繰り返し再生されるように設定した覚えはない。だからベッドに移る直前、チャンネルをいじっていたデュースが変えたのだろう。

「ひぁっ、でゅーす、ふあっ」
「こんな風にされたかったのか?」

 あのAVみたいに、とデュースの整った形の唇が動く。ギリギリ画面が見える位置だけど、今行われている行為のせいで悠長に画面を見てる余裕はない。せいぜい余所様の情事の音声に煽られるぐらいだ。
 それに別にあの女優のように激しくされたかったわけじゃない。ただデュースが喜ぶような、彼好みのセックスがしたかっただけだ。シーツを掴んでいた手をデュースの腕に移す。私が何か伝えたいのを察した彼が動きを止める。

「でゅーすは、いつもより、きもちいい……?」
「いつも気持ちいいが……?」
「わたしも、だけど、わたしはこうしてつながれるだけでしあわせだから、でゅーすがすきなことしたくて、だから」

 まごつく私の唇をデュースがキスで塞ぐ。要領を得なくて苛つかせてしまっただろうか。そう一瞬不安になったけど、嬉しそうな彼の顔に杞憂だったと悟る。
 指を絡めて、きゅっと握り込まれる。、と私の名前を呼ぶ声は優しくてやわらかかった。

「勉強してくれるのは嬉しいが、僕もが好きなことがしたいんだ。そうしてが僕で気持ちよくなってる姿が見たい」

 そう言ってデュースは律動を再開する。たださっきまでとは違っていつもみたいな緩やかな腰使いだった。激しく求められるのも嫌いじゃないけど、やっぱりデュースの優しさを感じられるこっちの方が私は好きだ。
 ぽたりと彼の額から落ちた汗が私の肌に落ちる。快感と熱に浮かされた頭がくらくらしてしょうがない。混ざり合ったお互いの匂いに興奮して、きゅうと中が締まり彼の熱を刺激する。
 私が一番感じる場所を何度もデュースは擦りつけてくる。それによって漏れ出す声は抑えられなかった。弱点ばかりを責められた私が達してしまえば、デュースの動きが彼自身が快楽を得る為のものへと変わる。彼も限界が近いのだろう。

「あっ、でゅーす、ぁ、んっ、あ、ああっ」
……!」

 ぐっと一段と深く押し込まれた熱が脈打って、膜越しに欲が私の中に広がる。全て吐き出そうと何度か突き上げて、デュースはずるりと熱を抜き取った。指をほどいて、私は覆い被さってくる彼の背中へ腕を回す。

「でゅーす……も、っと、見る……?」

 さっきの彼の台詞を思い出した私は掠れた声でデュースの耳元へ囁く。本当は私がしたいのだけれど、彼に主導権を委ねる。そんなずるい私に気付いているのか、いないのか、なんにせよ煽ることには成功したようでデュースがごくりと唾を飲んだ。
 デュースが深く口付ける。そうしてさっきから流れ続けているAVと同じように、私達の情事も再開されるのだった。

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