ステップアップは一緒でいい
デュースとのえっちでイったことがない。というか人生で今までイったことが一度もない。
おそらく彼と体を重ねるまで処女で、初体験含めからまだ三回しかしていなくて、性的な事に慣れていないのが原因なんだと思う。
イけないこと自体に不満はないし、行為自体は好きだった。好きな人と肌を合わせるのは気持ちいいし、心が満たされる。デュースが私の体で良くなってくれてるのも嬉しい。
でもこのままじゃ嫌われてしまうのではないかと不安だった。いかんせん経験がないせいでイったフリなんかできやしなくて。デュースはいつも丁寧に体を拓いてくれているのに、私は彼のその優しさに応えられてない。
「……よし!」
そこで私はどうすればいいのか、考えるより先に文明の機器ことインターネットで調べてある結論を出した。使える物は使うべきだし、私の性知識なんてたかが知れてる以上、一人で思い詰めるだけ時間の無駄なので。
慣れていないなら経験を積めば良い。と言っても、もちろんデュース以外とそういうことはしない。好きな人以外とあんな恥ずかしい事したくないし、論外にもほどがある。浮気ダメ絶対。デュースを悲しませたいわけじゃないのだ、私は。
ならば何をするのか。自己開発である。なんてカッコイイ言い方をしたが、つまりは世間で言うところの自慰である。
そういう事、全然興味がなくてやった事まったくないんだけどね! とりあえずネットで調べたやり方は頭に叩き込んだので、なんとかなるだろう。
自室のベッドの上で意気込みながら、いざ取りかかる前に最終確認する。ゴーストのおじさん達は女の子には紳士であるべきという精神から寝室に寄りつかないし、グリムは今夜はサバナクローでお泊まりするから不在。
そういったわけで部屋には私一人。お風呂も入ったし、休み明けに締め切りの課題は終わらせてある。まだ夕方なのでこういう事をするには時間帯からするとちょっと早いかもしれないけど、まあそれはさして問題にならないだろう。
安心して励める事を確信して、私はベッドへと横たわった。まず最初にどうするんだっけ……そうだ、触り始める前に想像しないといけないんだよな。
瞼を閉じて思い出す。熱い吐息、触れる彼の手、私を呼ぶ声。一つ一つ丁寧に記憶をなぞっていく。
気分が高揚してきたところでパジャマのズボンの中へ手を差し込み、ショーツの上へ指を這わす。初心者ならば布越しでもいいと参考にした記事を頭に浮かべながら、陰核に触れてみる。
「はっ、ん……」
最初は優しく、慣れてきたら少し刺激を強めにして。続けているうちにショーツを履いたままでもわかるぐらい陰核が膨らむ。主張し始めたそれを弾いて、摘まんで、転がして。
本当はそういった道具を使うと楽らしいけども、つい怖じ気づいてしまった。別にもう処女ではないのだから全然問題ないはずなのにデュース以外が体内に入ってくるというのはどうにも抵抗があったのだ。
行為を始めてどのくらい経っただろうか。心許ない手付きではあったが、じわじわと快感は募ってきていた。でもそれだけだ、いつもと変わらず絶頂の兆しはない。自分の感じにくさが嫌になる。
「でゅ、ーす」
荒い息の中、咄嗟に口にした彼の名前はまるで助けを求めているかのようだった。だんだん空しくなってきて、じわりと涙が浮かぶ。行き場のない熱に弄ばれる中、何度も何度もデュースを呼ぶ。もう、くるしい。
デュースに触ってほしい。この場にいない彼に都合良く頼る自分はみっともない。でもやっぱり彼が良かった。デュースだったら、例えこの状態でもただただ嬉しくて幸せだと思えるから。お願い、デュース。
「ッ、大丈夫……か……?」
「ひっ」
心の中で願った瞬間、勢いよく部屋の扉が開く。そして飛び込んできたその人は私の醜態に目を丸くしていた。だんだん尻すぼみになっていた声が消えた途端、彼の頬がじわじわと赤らんでいく。
——どうしてここにデュースが。願いは叶った、でも喜べるはずがない。
服は着ている、でも体勢と表情からして彼は私が何をしていたのか理解してしまったのだろう。そして私もわかってしまう、とんでもない所を見られてしまったと。
情けなさにボロボロ涙が落ちていった。両腕で顔を隠す。見ないで、何とか絞り出した声に反して、デュースがベッドにいる私の方へと近づいてくる。
「その、部活が早く終わったから、借りていたノートを返しに来たんだ。勝手に入ってすまない。ベルを鳴らしても出ないし、なのに鍵が開いてて、お前の苦しそうな声が聞こえて、それで」
先程から抱いていた疑問はデュースの懇切丁寧な説明で解消した。だが問題はそれじゃないのだ。私は今すぐ彼にこの場から立ち去ってほしい。しばらく一人にしてほしい。
でもデュースは靴を脱ぐ。それからベッドへ上がってきて、私の腕をぐいと両サイドへと広げた。元々男女差がある上に、彼は力が強い。私は為すすべもなく、涙で濡れた顔を晒すはめになった。
今の私の顔面はきっと愛らしさや美しさからは真逆の位置にあることだろう。なのにデュースの瞳は興奮に潤んでいて、はあと思わず零れたような吐息はどうしようもなく熱を孕んでいた。
彼の唇が押しつけられる。何度も何度も私の口をデュースが食んで、最初は触れるだけのキスはいつのまにか舌が絡み合わせるほど濃厚な物と化していた。
「なあ、。僕のことを求めてくれてたのか」
そう言いながらデュースは私の頬へ手を添えてくる。情事の始まりの合図と同じ触れ方だった。
これから起こるであろう出来事を考えれば彼と目を合わせられない。でもデュースは逸らす私に無理矢理自分から重ねてくる。まっすぐな彼の視線は普段なら好ましいのに今は恥ずかしくてたまらない。
だけどきっと答えるまでデュースは離してくれなくて、きっと拒絶されるつもりもない。変なところでワルを発揮しないで。そう思いながらも私は頷くしかなかった。
◇
「ひもちいいか?」
「そんなところで喋らないで……!」
私の足の間へ顔を埋めるデュースに訴える自分の声は我ながら哀れなものだった。だが彼の同情は誘えなかったらしく、無慈悲にも彼の舌が秘部を這う。
嫌だ、恥ずかしい、そう思っているはずなのに、体は彼から与えられる快感に悦んで、びくびくと跳ね上がる。
無意識のうちに頭を横に振るって快感を逃がそうとするが焼け石に水だ、押さえられるものより与えられる方がずっと多い。ぎゅっとシーツを握り込む指は力を込めすぎて白くなってしまっていることだろう。
溢れてきた愛液をじゅるじゅると彼が啜る。私の羞恥心を煽っているようで、彼からすればそんな意図はないのだろう。デュースはただしたいからしてるだけ。それが逆につらい。
まだ舐め足りないのか。秘部の窪みに沿って舌を動かしながら、デュースが陰核を指で押す。今まで味わったことのない強い刺激に喉が引きつった。
「やっ、でゅー、ん、んん、それ、やだ……!」
ぐずついて懇願してもデュースは止めるどころか、いっそう舌の動きを激しくして。そうこうしているうちに何かが体の奥から迫り上がってくる。
あ、と思わず母音を零した瞬間、背筋が弓なりに反る。ふわっと意識が一瞬飛んで、爪先がぴんと伸びた。目の前が白く明滅する。なに、いまの。
震えながら肩で息をする私に身を起こしたデュースがキスをする。ふわふわした気持ちの中、瞼を閉じてその感触を堪能していれば、秘部に熱いものが押しつけられる。
視線を下げる、いつの間にかゴムに纏っていた熱の先端がふやかされた入り口へとくっついていた。
「……すまない、もう限界なんだ」
返事はさせてくれなかった。ずぶずぶと体を割り開いていく質量に息が詰まる。この感覚は何度体験しても慣れない。
自分では触れられない場所に彼の熱が届いた時、不意に短く息が漏れた。おなかがデュースでいっぱいになっていて少し苦しいのに、私の中は離したくないとばかりに、はしたなく食らいついている。
ふと、いつもと同じ圧迫感の中に見知らぬ感覚があるのに気付く。背筋がいやにぞわぞわする。私の不安を余所にデュースは腰を動かし始めて。
上側を擦られ、奥に彼の先端が当たる度、また私の中で何かが膨らんでいく。きもちいい、こわい、きもちいい。快感と恐怖がまぜこぜになった私は咄嗟にぎゅうと彼へ縋り付く。
「」
腰の動きはそのままにデュースが口付けてくる。頭が溶けてしまいそうに熱い、なのに妙に思考は冴えている。また、何かが来る。来てしまう。
でもさっきとは違って私はそれを抵抗せず受け入れていた。デュースが与えてくるもので起こるなら悪いものじゃない、そう思えたから。
再び意識が白色に染まる。同時にデュースの熱が弾けるのをゴム越しに感じていた。
◇
「嫌わないが?! いや、なんだ、その……嫌わないが!!!?」
「わ、わかった。わかったよ、デュース。ありがと」
行為を終えてピロートークにて、今日味わったあの言葉にしがたい感覚こそが絶頂なのだと教えられた。努力する前に解決してしまったことに拍子抜けしつつも、安心して。
あと、もうあんな恥ずかしい姿を見られた以上、全部ぶちまけてしまえと私はヤケになっていた。イけないせいでデュースに嫌われるのが怖くて練習してたのだとぶっちゃけたところ、彼の先程の台詞に戻る、というわけだ。
うまく言葉が見つからなかったんだろう。彼は同じ台詞を繰り返しただけ。ただ必死に訴えてくる様子でデュースは本音で言ってくれているのは痛いほど伝わってくる。
だからこそ、自分も素直に伝える事ができるのだ。ゆっくり拳を握り込み、一息置いて口を開く。
「私、えっちだけじゃなくて恋愛自体デュースが初めてで、だからちょっとした事ですぐ不安になっちゃって」
面倒くさくてごめんねと謝ると同時、力強くデュースが抱きしめてくる。ぎゅうぎゅうと少し痛い位のそれがひどく落ち着く。混じり合う体温がどうしようもなく気持ちよかった。
少しばかり体を離して、デュースが私を見つめる。彼の一途な眼差しは少しばかり眩い。それでも今度は彼の瞳から視線を逸らさなかった。
「僕もと一緒だ、きっと僕も同じように悩むことがあると思う。その時はに聞く、だからもどんな些細な事でも言ってくれ。そして二人で考えて解決しよう、僕らのペースで一緒に進んでいこう」
「……うん」
体でも言葉でも、まっすぐ想いをぶつけてくれるデュースに愛しさが募る。この人を好きになって本当に良かった、そう唇を緩めながら私は彼の胸へ体をすり寄せた。
back