微笑む私に貴方が泣いて

 婚前交渉を禁じられたわけでも、興味が無かったわけでもない。ただなんとなくタイミングが掴めないまま、私達は今日を、結婚初夜を迎えてしまった。
 結婚式を終えた後、私達はそのままハネムーン先に向かって。の故郷に似てると思ったんだ、そうデュースが探してきてくれた極東風の宿は確かに日本の温泉旅館によく似ていた。
 お膳に舌鼓を打って温泉を楽しむうち、夜はとっぷり更けて、現在私達は向かい合って布団の上で正座している。予約した時に夫婦だと伝えていたからだろう。お風呂から戻ってきて敷かれていた布団は一枚だけ、枕は二つ置かれていたのに。
 湯上がりからは随分経っている。だが浴衣姿のデュースは真っ赤になっていて、しかもカチコチといかにも緊張している様子。私も少なからず動揺しているけれど、自分以上にパニックになっているだろう彼の姿を見て少し落ち着いた。

「デュース、浴衣似合うね。タキシード姿もかっこよかったけど浴衣姿もすごく好きだなあ」
「えっ、あ、ありがとう。その、も、綺麗だ」

 結婚式が始まる前、控え室で私のウェディングドレス姿を見て、感極まったらしくデュースは号泣したのだけれど。あの時も綺麗だと何度も言ってくれた。
 その事を思い出してつい頬を緩めていれば、デュースから手が重ねられる。私をまっすぐ見つめてくる翡翠はさっきまでなかった熱と欲を滲ませていた。
 今までも、この瞳は何度も目にしてきた。だいたいオンボロ寮でキスした後で、ただこれまでその雰囲気に乗り切ることはできなかった。というのもグリムが帰ってきたり、生理中だったりで毎回何かしらの理由で流れてしまっていたから。
 でも今夜は邪魔されることはない。私達が夫婦になって初めての夜なのだから。瞼を閉じれば、すかさず唇を重ねられる。ゆっくりと体が後ろへと傾けられていった。

「……まさか、お布団の上で初めてを迎えることになるとは思ってもなかったなあ」
「せっかくだから特別な夜にしたくて……どうだろうか」
「ありがとう、デュース。ちょっと不思議な感じだけど嬉しい」

 もう一度唇を軽くくっつけて、デュースが浴衣の合わせ目から手を差し込んだ。するするとキャミソールの上から胸をまさぐられる。ブラジャーは悩んだ末に付けなかった。きっとこうなると思っていたから少しでも手間は少ない方が良いかなと思って。
 帯をほどかれて前身頃を開かれる。それと同時、足へと触れた外気に自分の格好を思い知らされて、羞恥心がぶわっと湧き上がった。上下共に薄布一枚の私に向けられる彼の瞳はとかく熱い、それはじりじりと布越しですら肌が焼ける錯覚をさせるほどだった。

。胸のは、付けてないのか?」
「……邪魔かなって思って」
「じゃま? ……あ」

 私の言葉の意味に気付いたらしく、デュースの頬が赤らむ。そんな反応をされると私も恥ずかしくなってくるのだけれど。その上、流してくれれば良いのに「も期待してくれてたのか」なんて言い連ねてくるのだから大変困る。
 耐えかねて抗議と催促の意味を込めて彼の胸を軽く殴りつける。デュースの厚い胸板は私の拳ごときじゃ、びくともしなかった。
 ただ催促が伝わったのか、それともデュースが限界だったのか、キャミソールを胸の上まで捲られる。敢えて長所を挙げるならば、和服がよく似合う胸である。と言った訳でまあお粗末な品なのだが、デュースは感動した様子で「おお……」と声を漏らしていた。そんなに大したものじゃないから、まじまじ見ないでほしい。
 恐る恐るといった感じで触れてきた彼の指が胸の膨らみに緩く食い込む。さほど大きさはなくても彼にとって私の肌はやわらかく触り心地が良いものらしい。まるで新しいオモチャを貰った子供のように瞳を輝かせ、彼は私の胸を揉むのに夢中になっていた。

「ひぁ」

 ぬるりとした感覚が左の頂きに走る。乳飲み子みたくデュースは乳首を銜え込んでいた。何も出ないというのにじゅうと音が立つほど吸い込んで、甘噛みされて。彼が口を離した時には見たことないぐらい、私の胸の先は真っ赤に色づき、その存在を主張していた。
 デュースが自身の帯を外して、ばさりと浴衣を畳へと投げ捨てる。そうして現れた、うっすら汗の滲んだ肌。鍛え上げられ、しなやかな筋肉の付いたその体はひどく綺麗で、もはや目に毒だなと思った。
 上半身にすらこの反応なのだから、とても目のやり場に困る。一瞬だけ視界に入った彼の下着は大きな膨らみができていた。経験が無くともさすがにその意味はわかる以上とても見ていられない。どうしよう、ホント。

、下、触っていいか?」
「ど、どうぞ……」

 慎重ながらも進めて行くデュース、対照的にテンパって固まるだけの私。すっかり形勢逆転だ。
 身を縮める私の足の間へと彼の腕が伸びる。ショーツの上から秘部を指で押され、喉がひくついた。
 お腹側からデュースの手が下着の中へと入り込んだ。彼の指が割れ目をなぞって小さな水音が立つ、そして濡れてると呟く声。それがたまらなく恥ずかしかった。
 下着が足から抜き取られて、自分でも殆ど見た事の無い場所がデュースの眼前に晒される。それだけに飽き足らず、彼は私の足の間に顔を埋めた。
 いやだと泣きを見せてもデュースの耳には届かなかったらしい。秘部に口付けられ、何度も割れ目を彼の舌が行き交う。恥ずかしい止めてほしい、そう思っているのに秘部の上の粒を吸われる度にとろりと愛液が奥から溢れてくる。自分の体なのに言うことを聞いてくれない、どんどんおかしくなる。
 にゅると舌が膣内の浅い所に差し込まれる。ぬぽぬぽと何度も抜き差しして少しずつ奥に入り込んでくる。だがやわらかくて濡れているからだろう、痛くはない、ただただ気持ちいいだけ。それが今は逆に辛い、確実に理性が削られていくのがわかってしまうから。無意識にくねる腰に気付いて頭がおかしくなりそうだった。
 顔を上げた彼が私の愛液にまみれた口元を腕で拭う。ほぐれきった膣口が物欲しげにひくつくのも、ぴくぴく痙攣している太股も、ここから先に期待しか抱いていないようで恥ずかしい。怖いという気持ちもあるけれど、止めたいとはもう思えないだろうからあながち間違いでもないのだけれど。

「付けなくてもいいか……?」
「えっと、何を?」
「その、ゴムをだな。一応持ってきてはいるんだが……僕は子供が欲しくて、でもが嫌なら」

 しどろもどろに口にする彼に愛しさが募って衝動的に抱きしめる。突然の事でデュースは焦っていたが、おかまいなしに腕へと力を込めた。
 そもそも用意しないという手段もあっただろうに。私の気持ちを尊重して、誠実に向き合ってくれる、デュースのそんな所が私は大好きだった。だから今も嬉しくてしょうがない。

「女の子だったらお嫁さんに行く時、デュース泣いちゃいそうだね」
「……男でも女でも産まれた時点で泣くと思う」
「そこからかあ。じゃあデュース、いっぱい泣いちゃうね」

 私の台詞の意図を理解して、デュースがはにかむ。続けて、寄せられた唇を受け入れた。
 デュースが下着を脱ぎ捨てる。ぶるんと弾みを付けて現れたそれに小さく悲鳴を上げた。即座に目を逸らしてしまったから一瞬しか見てなかったけど、お腹に付くぐらいそそり立っていて。太さもジュース缶ぐらいあった気がする。え、無理じゃない? あれ入れるの? お腹破けない?

、いいか?」

 正直言うと大丈夫じゃない。でもここで止めるなんて、いくらなんでもデュースが可哀想過ぎる。最初は痛いもの、最初は痛いもの、だからしょうがない。怖くてたまらないが頷いて、シーツをぎゅうっと握り込んだ。
 ぴたと先端が秘部に宛がわれる。触れた所から彼の脈打つ熱の振動を感じて、それに共鳴するかのよう私の心臓もばくばく音を立てて。衝撃に備えて目を固くつぶる。

「あ」
「えっ」

 ぐっと先端が少し埋まったところで、中にじわと熱が広がる。思わず戸惑いの声を上げる直前にデュースも同じように母音を発していて。何が起こったのか、把握できずにハテナマークを浮かべていれば、デュースが顔を手で押さえていた。

「すまん……出ちまった……」

 しょぼんと項垂れて報告してくるデュース。それによって状況をようやく私は理解した。つまり射精してしまったとのことだが、ちらと確認した限りデュースのそれが萎えた様子はなかった。
 みんな、こんなものなのだろうか。私はそれを知り得ることはまずないだろう。だってデュース以外とこんな恥ずかしいことするつもりなんてないし。
 ぐいと腰を軽く押し込まれる。その折「やめたくない」とまるで懇願のような言葉を彼は呟いていたが、ギラギラと獣じみた目にその意見は絶対覆らないのだろうなと静かに悟った。
 腰を前へと突き出され、その瞬間走った鋭い痛みに思わずデュースの体にしがみつく。息を吐いて痛みを逃がしていたところ、唇が塞がれて。キスしたままデュースは奥へと割り入っていく。

「……大丈夫か?」

 はくはくと浅い息を繰り返す私にデュースが心配そうに見つめてくる。今は痛みよりも圧迫感が凄い。ただ苦しいはずなのに、やっと一つになれた事への感動と幸福感で胸がいっぱいだ。色んな感情が交ざりすぎて何も言えない。
 言葉が出ない代わりに頷いて返事をする。みちみちに広がった、その一番奥がじんじんと疼いていた。

「動く、ぞ」
「う、ぅ、んんっ……」

 ゆっくりデュースが腰を動かし始める。引いて、押し込んで、突き上げられて。ぬこぬことデュースの熱が内壁を擦る度にじわじわおなかの奥で何かが溜まっていく。
 彼が動く度、下腹部の異物感が徐々に心地よい何かに塗り替えられていく。ある一点に触れた時、足がびくんと反射的に跳ね上がった。ここが好きなのか?と聞かれたがわからない。ただ執拗に責められた時、さっきよりも早く何かが体内で積み上げられている気がした。

「……、好きだ」

 覆い被さっているせいで耳元に来ている彼の唇が吐息と共に愛の言葉を送り込んでくる。いつもとは違う、低く甘い声色に脳が溶けてしまいそうだった。
 私を強く抱きしめてデュースの体がぶるりと震える。それと同時におなかの奥で熱が弾ける感触がした。
 はあはあと静かな部屋にお互いの荒い呼吸だけが響いている。軽くキスをして、デュースの熱が体内から引き抜かれた。布団へと身を預けて、デュースが腕の中へと私を収めた。
 無事に二人の夜を迎えられた実感に安堵して脱力すれば、途切れた緊張感と積もった疲労、デュースの体温、あとふかふかのお布団の魔力のせいだろう。すぐさま眠気がやってくる。

 薄れていく意識の中、デュースの熱に満たされた胎の奥でとくんと音が鳴る。きっと彼が泣く日はそう遠くないのだろう。

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