妻の特権
最近、夫の入浴時間が長くなった。別にそれで困ってるわけではないのだけれど、疲れて湯船で寝てるのかなとちょっと心配になる。あれ、寝てるというより気絶してる状態らしいし、若い人でもそのまま溺死事故に繋がったりするからなあ。
ここのところのデュースはお休み貰えてないし、帰れない日も結構多いし、明らかに忙しい。もう少ししたら落ち着くとは言ってるけども。
それに……明らかにえっちの回数も減ってるしなあ。疲れてるみたいだから無理しないでと言っても問答無用でベッドに連れ込まれるので、頻度はそんなに変わってないんだけど、一晩でこなす回数は目に見えて減ったなと。やっぱり疲れが出てるのかなあ。
いつものように寝台でデュースがお風呂から出てくるのを待ちながら、私はぼんやりとそんなことを考えていた。
「あ、そういえば石けん切れそうだったなあ……」
昼間、お風呂掃除した時に見つけて補充しようと思ってたのにすっかり忘れてた。私はボディソープ派で使わない為、先に入浴した時に気付けなくて。
予備は脱衣所のわかりにくい所に置いてるから、きっとデュース困ってるよね。ベッドから降りて気持ち早足になりながら脱衣所へと向かう。
音で気付くかなと思ったのだが、私が脱衣所に訪れても浴室のデュースはこれといって反応を見せなかった。まあ渡す時に声をかければいいだろう。気を取り直して石けんのある棚を探ろうとしたその時だった。
「っ……ぐッぅ………」
デュースの苦しげな唸り声が耳に触れる。どこからどう聞いてもただ事ではなかった。
浴室にいる以上、彼は裸だろうがそんなことを考えている場合じゃない! というか未だに恥ずかしいと言えば言えば恥ずかしいけども彼の裸はもう何百回も見てきたし、私だって見られてる! ええいままよ!
「デュース?! だいじょう……ひぎゅっ」
勢いよく扉を開け放した私は予想外の光景に喉が引きつった。動揺が滲んだその声のおかしな事と言ったら。
このままではせっかくの熱気を逃がしてしまうのはわかっていたけれども、私は思考ごと固まってしまって。おそらく暖まったからではなく興奮から肌を淡い桃色に染めたデュースもまた硬直していた。
そんな彼の手の中にはバキバキにそそり立った男性器があって、さっきの声と合わさってそれが何を意味するのか理解して顔に熱が集まっていく。
「でゅ、でゅーす、だ、だいじょうぶ?」
混乱した結果、さっき言いきれなかった台詞を壊れた音楽プレイヤーのように繰り返す。どう見たって元気だけど大丈夫じゃない。私が今してあげるべき事はただ黙って扉を閉めてあげることなんだろうけど、わかっていても手が動かない。目も動かなくて、彼の局部に張り付いたままだ。
こんな状況でなんだけども、もしかして最近お風呂が長かったのと回数が減ったのはこれが原因だったのか。でもなんで?
「、その、大丈夫だから出て行ってくれないか……」
先に我に返ったのはデュースの方だった。頼む、と紡いだ彼の声はおそらく羞恥で震えていた。足を閉じたぐらいではおおよそ隠しきれないそれを私の視線から遮ろうと押さえつけている。彼のそれを見るのだって初めてじゃないけれど、やはり自慰をしていた所を見られるのはまた違った恥ずかしさがあるのだろう。
私は見られたことがないからわからないけども! そもそもデュースが頻繁に抱いてくるから一人で発散しなきゃいけないほど溜まらないからね!
一旦扉を閉める。たぶんデュースはこれで終わったと思うだろうし、おそらくお風呂から上がったら「変な所を見せて悪かった」と謝るつもりだと思う。でも残念ながらそれでおしまいにしてあげるつもりはなかった、私に新しい疑問を持たせたのが悪い。
戸棚から石けんを取り出し、洗面台の上に置く。それから服も下着も脱ぎ捨てた私は石けんを持って再び扉を開けた。中のデュースは再びそびえ立つそれを握り込んでいた。
「え?!」
「お楽しみのところ失礼します! はい、石けん! あと私ももう一回入る!」
「えっ?!?」
一緒にお風呂に入るのはこれが初めてじゃない。でも前はタオルを巻いていたし、照明も薄暗くしてもらっていた。だが今日は隠すものは一切無く、また明るさも最大のままだ。おかげでとんでもなく恥ずかしい。
文字通りの裸の付き合いである。でも彼が腹に抱えてるものを明らかにするにはこれぐらいノーガードで迫るしかないと思ったのだ。デュースって隠し事はド下手だけど、口は凄く固いから。
タイルの上、デュースの隣へと正座する。彼の視線は生身の私の胸や恥丘を行ったり来たりをしている。飽きるほど見てるのに何を今更、顔を見ろ、顔を。もの凄く恥ずかしいんだから! そんな意図を込めて、両手で彼の顔を固定する。
「なんで私とする回数減らしてまで一人でしてるの? ああでもよく言うよね、せ……セックスとオナニーは別物って。デュースも一人でする方が楽しい?」
「ち、違う。その、僕も、とする方が好きなんだが……う゛おっ?! えっ、あの、ッ?!」
既に予想は付いていたが、まごつく彼の態度にむくむくと加虐心が湧き上がって欲のまま彼の男性器を握り込む。するする上下に緩く扱けば、デュースは目を白黒させていて。けれど手の中の彼はどこまでも正直だ、嬉しそうにびくんびくんと激しく脈打っている。
珍しく私が積極的でしかも中途半端に昂ぶった状態だからだろう。まもなくデュースの息が荒くなり、彼の目尻が艶やかに赤く染まる。さっきよりも増した先走りを塗りつけるように手を動かせば、ぐちゃぐちゃといやらしい水音が立つ。
「ん、デュース……♡」
「っ?!」
手の中の彼を可愛がりながら、空いているもう片方を自身の秘部に伸ばす。彼をいじめているうちに自分も高まっていたらしく、指先が軽く触れただけでぐちゅと淫らな音が浴室に響いた。
お風呂の熱気とこの異様な雰囲気に頭をやられてる気がする。きっと後でのたうち回るんだろうなとも思う。でもこの後に望む展開を考えると、その決して仕返しにならない仕返しであろう一人遊びを止められなかった。
ギラギラ獣じみた瞳をしながらもデュースは私のなすがまま。別に汚れてもすぐに落とせるからこのまま彼をイかせてあげてもいいのだけれど。雄々しく隆起したそれに手の中で終わってほしくないなと思ってしまった。
「デュース、足冷たいから上乗っていい?」
「えっ? あ、ああ」
生返事でも返事は返事。細かい事は気にせず、あぐらをかいている彼へと跨がりにかかる。私が何をしようとしているのか気付いたらしいデュースがゴクリと喉を鳴らした。
彼の男性器に手を添え、ほぐれた膣口に濡れた先端を合わせる。息を吐きながら腰を落とせば、慣れない動作でも十分過ぎるほどぬるついた中はあっさり彼の熱を含んでいった。
「あっ、あー……♡」
ぞわぞわと背中が粟立つ。反響してくる自分の掠れた声はひたすら甘ったるくて、気持ちよさそうだなと他人事のように思った。彼の肩を掴んで奥に向かって進めていく最中、ちょうど弱い所を抉られ反射的にきゅうと締め付けてしまう。
「う゛っ、……!」
先にいたぶりすぎたせいか、根元まで入りきる前に彼の短い悲鳴と共にどくりと中で熱が広がる。その感覚ですら彼に拓かれてきた体では明確な快楽に繋がり、ただでさえ薄くなっていた理性が溶けていくのがわかる。
吐き出してもなおデュースの熱は固くて大きくて。それにうっとりしてしまう自分がいる。彼の精液にさっきよりも滑りが良くなったのをいいことに一気に奥まで腰を下ろす。ぐちゅんと水音、続けて私の尻たぶが彼の太股に乗った。
その瞬間、私も達してしまってデュースに寄りかかるようにしてくっつく。湯気のせいか、何度も体を合わせた後のようにしっとり吸い付いてくる肌が心地良い。
茹だる頭で動けるかなと悩んでいたなら、デュースの大きな両手が私の腰をしっかりと掴んで。
「あああああッ♡」
「、……!」
どちゅんどちゅん!と下から激しく突き上げられ、あまりの衝撃に息をするのも忘れてしまう。出しっぱなしのシャワーの音に混じって、肌がぶつかる音、体液と粘膜がかき混ぜられる音、私の嬌声と互いの荒々しい呼吸音が聴覚を刺激する。
胸の頂きに吸い付きながらデュースは最奥を甘く捏ね回す。さっきまでの律動が嘘のようなおとなしさだ。けれどもたらされる快楽はさっきの比じゃない。
どちらからともなく唇を重ねる。腰にあった彼の手が私の背中に回ってぴったりと肌が合わさった。とんとん、と何度も優しくノックされ、やわらかくなった子宮口にデュースが先端をねじ込む。ぴったりとはめた状態で再び熱が放出される。彼の子種を一滴も逃したくないのだと言わんばかりに彼を咥えた子宮口は亀頭をちゅうちゅうと吸い込んで、膣壁も全て搾り取ろうときつく締め上げる。
飲み込み切れなかった精液が接合部からごぷと溢れる。なのにそれすら押し込むようにデュースはぐりと強く奥へ奥へと亀頭を擦り付けてくる。
「でゅーす、私、大丈夫、だから、壊れたりしないから、ぜんぶ、一緒にしよ……」
ちかちかと明滅する視界の中、ぎゅうとデュースに縋り付いてそれを口にする。彼と私の体力差は圧倒的だ、毎回私が行為の最中に気絶してしまうくらいには。
だからきっと事前に一人で処理して私の負担を減らしてくれてたんだろうなって。けどその気遣いが寂しかった。
「……いいのか」
「いいよ。だって私、デュースのお嫁さんだもん……ね?」
風邪を引かないように体を密着させながら、抽挿が再開される。彼の肌から、胎の中から、うだるような熱さが伝わってくる。でもそれでのぼせるならば本望だ。ゆっくり瞼を閉じて、私は彼がもたらす愛と快楽へ身も心も潜らせていくのだった。
back