満たす夜を待ってる

 別に毛嫌いしていたわけではないけれど、わりと最近まで私は性行為をどこか他人事のように思っていた。我ながら十代にしては枯れてるなと思うが、性欲とか性的好奇心がかなり薄かったのである。それで困った事なんてなかったし、友達の猥談も聞き役に徹してれば問題無くて。
 その為デュースと付き合い始めた時は少し申し訳なかった。友人関係はともかく恋愛関係に置いて、この淡泊さはネックになるだろうなと。好きになった彼と体を重ねることに抵抗はなかったけど、行為に熱くなれない自分はきっと男性にとって好ましいものではない。だからいつかこれが原因でフられてしまうのでは、そう怯えていた、のに。

 ぎし、と二人分の体重にベッドが軋む。仰向けに横たわった私へ覆い被さるデュースの瞳はひどく熱っぽい。それもそうだろう。今から体を合わせるのもあるだろうけど、私が彼をベッドへと誘ったのだから。
 処女を捧げたばかりの三ヶ月前の私がそんな事になってると知ったら、おそらくその場でひっくり返るはず。自分だって未だにちょっと信じられないのだ。あれだけ冷めてたくせに、こんな積極的になるなんて思ってもなかった。
 一応、最初の頃は都合が合えば彼に求められるがまま体を差し出していたのに対し、こんな風に乗り気ではなかったのだけれど。回数を重ねていくうちに、デュースに求められることに喜んでいる自分に気付いてしまって。一度理解してしまったが最後、あとはずぶずぶハマって、気付けばこの有様だ。
 手慣れた様子でデュースは私を下着姿にして、彼もボクサーパンツ一枚になる。最初の頃は緊張するあまりボタンを引きちぎられたりしてたのに。彼もまた経験を経て、変わっていったのだとしみじみ思った。
 唇を優しく食んで、首筋から鎖骨へと彼からキスが与えられる。胸の膨らみを強く吸われ、鮮やかに赤い跡が刻まれる。まだうっすら前の跡が残っているのが、日を置かず体を重ねている事実を突き付けられているようで恥ずかしい。
 ブラジャーを外され、キスをしながらデュースはやわやわと私の胸を揉みしだく。慎ましやかな膨らみにも関わらず、デュースはお気に召しているようで毎回触られていて。飽きないのだろうか、なんて可愛くないことを考えてしまうけれど、小さなこの胸でもいつも可愛がってくれるのが本当はとても嬉しい。
 固く張り詰めてきた胸の先端を緩く噛まれる。吸ったり転がされたり、デュースのやりたい放題。でも胸元に寄せられた彼のさらさらの髪に縋ることはしても押しのけない時点で、無意識でも自分が許してしまっているからなのだと否が応でも理解する。
 空いた手で脇腹をなぞられる。そんなのくすぐったいだけだと思っていたのに、彼に幾度と愛された体はそれにすら快感を見いだしてしまう。ぞわぞわ震える背筋、ひくひくと痙攣するおなか、どれもこれも私が感じ入っている事を示すばかりだ。
 太股を撫でられて、ショーツが片足から抜かれる。どうせなら全部脱がしてくれれば良いのに。思っていても口には出さない、どうせすぐに忘れてしまうだろうから。
 既にぬるついている割れ目を撫でられ、彼の指に愛液が纏わり付く。この調子じゃ、もう慣らさなくても易々と彼の熱を受け入れてしまう事だろう。
 でもデュースは秘部へと顔を埋めて、舌を中へと忍ばせてくる。汚いからやだと最初の時に言ったけれど、綺麗だと何の迷いもなく言われてしまったせいで止める術は失われてしまった。にゅるにゅると彼の舌が私の肉を掻き分け、舐め回して中を広げていく。仕上げとばかりに陰核を吸われたことで、簡単に絶頂へと追いやられてしまう。

「はっ、はぁ……デュース、もう、ほしい」
「ああ僕も限界だ」

 デュースがゴムの封を切って手早くそれを熱へと被せていく。まだ学生だから仕方ないのに。こうして時折その分、彼と離れてしまう事が少しだけ寂しくなってしまう。
 彼にやわらかくされた膣口にデュースの熱が宛がわれる。くちゅりと粘っこい水音がいやに大きく聞こえた。

「あ、あ」

 ぬるぬるとデュースの熱が胎内へと飲み込まれていく。張り出した先端に内壁の弱い部分を削られ、甲高い声を勝手に私の喉は発していた。
 最初は狭くて痛くて指一本だって辛かったのに。スムーズに前後する彼の熱に最初の頃と現状を比べて、すっかり慣れてしまった自分に顔が赤らんでいく。執拗にデュースの熱へ纏わり付く粘膜はもう彼の形に変わってしまっている。再び教え込まれる事実には悶えるしかなかった。
 何も感じなかったはずの奥も今や突かれるたびに、快楽に溶けきった、デュースしか知らない女の声が抑えられなくなる。もうやだ、こんなにきもちいいの。こんなの、ばかになる。
 デュースが深く入り込んだ状態で小刻みに腰を揺らすから、ずっと奥を叩かれ、さっきから何度も甘い絶頂を繰り返して。

「うう、でゅーす、もう、むり、むりなの……」

 私の弱音は彼の唇に封じ込められてしまう。ただでさえいっぱいいっぱいなのに、口の中をまさぐる舌が更なる快感をもたらしてくるものだから派手に私の体は跳ね上がって。脳の奥がじんと痺れて一瞬何も考えられなくなった。ぶわっと全身の肌が粟立って、びくびくと太股が痙攣する。
 ぎゅう、と激しく締め上げた内壁の中で彼の熱が膨れ上がる。その流れに逆らうことなく、薄い膜越しにデュースが欲を吐き出した。遮られているから宿ることはないのに、ぐりぐりと子宮口をデュースは押し込んでくる。内部へ飲み込ませるかのようなその動きに、もし剥き身のままなら私は孕んでいたのだろうなとぼんやり思った。

「大丈夫か?」

 真っ白になった視界が色を取り戻しても、くらくらする頭は戻らない。大丈夫か、大丈夫じゃないかで言えば、圧倒的後者だけれども彼の首へと腕を回し口付ける。
 しばらくして唇が離れ、腕をほどかれる。それをただ眺めていたなら、デュースが私の顔を覗き込んだ。熱とは真逆の色をしていながら、その瞳はひどく、あつい。

「なあ、。いつかお前のここを僕で満たしていいか」

 絶頂の余韻が抜けきらない中、私のおなかを撫でながらデュースが願う。もう、既に彼の熱で埋め尽くされているのに。一瞬そうよぎったがすぐさま彼の真意に気付く。
 彼が静かに口にしたその声は懇願の色ではない、希望を装った宣言だ。今は待つけれど逃がしてくれるつもりはないのだろう。
 それに私は、その事を理解しているからではなく、ただただ純粋にそのいつかを自分も望んでいるのだと伝えるべく、ゆっくり頷いた。

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