寝技も得意です。

 ちゃんって警戒心死んでるのかな。
 ついさっき人を煽っておきながら、宣言通りオレの肩で寝息を立てる彼女に軽く目眩を覚えた。
 
 事の始まりは一時間ほど前、ちゃんの家でのおうちデートが始まった時まで遡る。
 しばらくお互い仕事が忙しくて、会えない日々が続いていた。本当は先週会えるはずだったんだけど、ちゃんが酷い風邪にかかったことで延期になっていて。
 オレとしては看病しに行きたかったんだけど、近くに住んでいるグリムちゃんに頼んだからと断られてしまった。
 もうこれでもかって嫌がられたんだよね。魔獣には移らないとお医者さんに確認を取ったのと、あと「先輩にだらしない寝間着で鼻水じょんじょろりんな姿見られたくない……!」ってことで。
 あまりに独特すぎるオノマトペだけど、ものすごく酷い状態なのはよくわかった。あと具合悪いんだから楽な格好するのは当然とはいえ好きな相手にそういうところ見られたくないよね。まあ、オレも結構見栄っ張りだから気持ちはわかるよ。

 でもちゃん自身はオレの失態を思いっきり見てるし、なんならフォローもしてくれたよね。
 忘れもしないあの日、ちゃんの家に遊びにいったオレは体調が悪くて、彼女の目の前で戻してしまったのだ。それに彼女は「わっ、ケイト先輩大丈夫ですか!」と驚きこそしても、ただただ心配しているだけ。
 まずい!と慌てて洗浄魔法を唱えようとするオレを「調子悪い時に魔法使うのしんどいでしょう? 私がやるので楽にしててください。お水持ってきますね」と制して、片付けからオレの看病まで彼女は何から何まで嫌な顔一つしないでやってくれた。
 おかげで前々からずっと思っていたけど、改めて絶対この子と結婚しなきゃ……と更に決意を固めたのは記憶に新しい。
 そんな感じでちゃんは当然のように幻滅しないくせに、彼女自身はされてしまうかも!と怯えている。しないってば。むしろちゃんのダメなところバンバン見たいよ。そんなにオレってば信用ないかな。ちゃんのそういうところ、ちょっとだけ嫌だなって思う。

 話がだいぶ脱線しちゃった。
 ともかくオレは部屋に招き入れられて。彼女が一緒に観たくて録り溜めていた番組を一緒に見ようという事になったのだ。
 同じソファに隣り合って腰掛けていたんだけど、しばらくしてちゃんはオレにもたれかかってきた。
 疲れてるのかなと思って彼女の顔を見たら案の定眠そう。ベッド運ぶから寝ていいよ、と言うオレに彼女はふるふると首を横にふって。

「鼻水だけ、まだ収まらなくて。それで薬飲んでるんですけど、その副作用でたぶん、いや確実に私もうすぐ寝ちゃうと思うんです」
「あーアレルギー系の薬って眠くなるよね。せっかくだし、オレも一緒にお昼寝しちゃおっかな」
「だから私が寝ても気にせずえっちなことしてください」
「え」
「別に調子悪いわけじゃないんで。それに寂しかったから、その分、いっぱい……」

 うつらうつらしながら、ちゃんはとんでもないことを言い出した。声だって眠そうだし、話し方もいつもよりつたない。
 そりゃオレだって久々だし夜になったらとか考えていたけれども、予想外すぎるお誘いに思考がショートする。
 おかげでテレビの内容なんか全く頭に入ってこない。もしこの状況で混乱しない男がいるなら、けーくん本気で尊敬するよ。
 で、そうこうしているうちに、オレの気持ちを置き去りにして、ちゃんは寝息を立て始めた……というわけだ。

 ため息交じりにリモコンでテレビの電源を落とす。それから彼女を抱きかかえて、当初提案した通り寝室へと向かった。
 寝室の扉は開いていたものの、ライトは当然消されたまま。両手が塞がっているので明かりのスイッチを押すことは叶わない、テーブルランプだけが頼りだった。
 だけども何度も泊まった経験から一切手間取ることなく、マットレスの上へと全く起きる気配のないちゃんを横たわらせた。
 年上の彼氏としてあるべき姿はせいぜいこの隣で一緒に眠る辺りなんだろうな。でもあいにく自分はラブロマンスのヒーローではなく、悪い大人だから。
 無防備な半開きの口に手を近づければ、彼女はちうちうとオレの指を吸い始める。危機管理能力がなさ過ぎる。野生だったら五秒で捕食されちゃってるよ、人間に野生も何もないけどさ。
 男が好き勝手できる状況を作るなんて。ちゃん、自分がどれだけ危ないことをしてるか、わかってるのかな。わかってないよね、絶対。
 輪姦、ハメ撮り、中出し……ざっと浮かぶだけでもヤバすぎなラインナップが並ぶ。しないけど。いくら自分の分身でもオレ以外がちゃんにいやらしいことするのなんか許せないし、ネットに詳しいイデアくんならまだしも自分じゃ何かの拍子に流出させちゃうかもしれないし、結婚したらしばらくは新婚さん楽しみたいからしないけどさ!
 信頼の証と言われてしまったらそれまでだけど、真面目に心配になるから、もうちょっと警戒心を付けてほしい。
 ぐだぐだ言ってるけど、結局手を出す自分に若干の嫌悪感はある。でもいわゆる据え膳だし、ちゃんも望んでるしと言い訳を心の中で続けながらお互いの唇をひっつける。
 実のところ、寝ている彼女にイタズラするのはこれが初めてじゃない。先に起きた時に隣ですやすや寝息を立ててる彼女の髪を撫でたり、キスしたり、そんな感じの軽いスキンシップは何度もしてる。
 ただそれ以上のことは誓ってやってない。こわーい姉ちゃんズが揃って「気持ち良く寝てる時にセクハラとか控えめに言ってもぶっころ案件よ」と愚痴ってたの、けーくんしっかり聞いてたからね。
 だからなのかな。ちゃんからお触りOKむしろ来い!って許可もらってるはずなのに、謎の緊張感やら罪悪感が拭えないのは。

「んん……」

 合意、これ合意だから。そう自分に言い聞かせながら、ぺろっとちゃんのルームウェアを鎖骨辺りまで捲りあげる。着痩せするせいで知られてないふくよかな胸とそれを包む下着が現れる。
 あ、コレ初めて見る下着な気がする。ちゃんが相手ならスポーツブラでも興奮するだろうけど、こう明らかに意識してくれているとやっぱり嬉しい。
 女の子のちゃんとした下着はめっちゃ高いらしく、レースに穴開けられたから殴って別れたと上の姉ちゃんが言っていた。そのまま上にずらすのはワイヤー歪むから絶対に止めとけと下の姉ちゃんがアドバイスしてきたのも思い出しつつ緊張しながらホックを外す。
 助かるけど今考えると弟に対してすごい話してるな、うちの姉ちゃんズ……。まあ二人ともちゃんのこと気に入ってるから、オレが捨てられないように気遣ってくれてるんだろうけどさ。
 無事にブラを痛めることなくずらし、剥き出しになった大ぶりな胸を緩く揉みしだく。オレの手に収まりきらず、むにゅりとこぼれるそこは何度触ってもやわらかくて気持ちいい。男の性というやつか、夢中でオレしか知らない感触を堪能する。
 かなり好き勝手したというのに、オレの手にちゃんはぴくぴくと反応こそするけど、全然起きる気配がない。
 固くなり始めた胸の先をカリカリと爪で引っかけば、彼女の腰が誘っているかのように揺れていた。だんだん赤らんできた肌といい、酷くそそられる。
 こんな一方的なセックスでも頭の中がこのことで支配されてしまうんだから恐ろしい。そのうち知らず知らずのうちにちゃんの抵抗も無視しちゃうんじゃないかって。
 まあ確実にちゃんが本気で嫌がったら負けるけど。惚れた弱みもあるけど、それ以上にちゃん、マレウスくんにジャーマンスープレックス食らわせちゃえる子だから……。あの時は色んな意味でビビったなあ……。

「けいとしゃん……」

 むにゃむにゃと完全に寝たままの声なのに、オレの名前を呼ぶ彼女につい喜んでしまう。ちゃんと囁き返すけど、戻ってきたのは寝息だけ。確実に刺激は伝わってるだろうからオレとスる夢見てると思うんだけど。
 すっかりツンと立ち上がった先端を口に含む。じゅる、とわざと音を立てるように強く吸えば彼女の体が震えた。
 荒い息をこぼしながら、ちゃんは瞼を少しだけ開く。だけども覚醒したわけではないらしく、まもなく閉じてしまった。
 そういえばちゃんって、かなり眠りが深いタイプだった。もっと強い刺激を与えれば起きてくれるだろうか。
 彼女のズボンを脱がして、ショーツもするすると抜き取る。もし起きていたなら、今のあられもない姿に恥ずかしそうにしてたんだろうなあ。
 続けてぐいっと彼女の足を広げるが、やはり反応はない。そのことを残念に思いながら自分の指を舐めて濡らす。
 痛くないようにと用意したけれど、撫で上げた秘部は既にぬるぬると潤っていた。つぷと差し込めば、隘路はオレの指をゆっくりと飲み込んでいく。
 あとは様子を見て指を増やしつつ、とにかくちゃんの感じる場所を刺激するだけ。もう数え切れないぐらい体を重ねてきたから、ちゃんの好きな力加減も、一番喘いじゃう動かし方も全部覚えてる。
 オレの手で何度も甘イキをくり返すちゃんはとても可愛い。でもさすがにオレくん、もーう我慢の限界!
 だからちょっぴり心の中で彼女に謝りながら、ぐりぐりとクリトリスと一緒にGスポットを押し込む。
 ひときわ大きな絶頂はとてつもない衝撃だったんだろう。びくっびくっと彼女の体が大きく跳ね上がった。徐々に彼女の目が開かれていく。オレの姿を瞳に捕らえると、一拍置いて彼女はへにゃと笑った。

「けいと、さん」

 ぎゅーっと抱きついてくるちゃん。まるで寝ぼけてるような反応に迷いながらもキスをすれば、更に彼女はくっついてくる。
 エロいことしてる真っ最中だけど、こういう可愛いことされると性欲より愛しさが勝ってしまう。抱き返すオレにちゃんは好き好き♡と甘えてくるのでなおさら。
 この雰囲気的にお開きにすべきなんだろうなー……でもやだ、今は空気読みたくない〜〜!

「わっ?!」

 葛藤は突然走った下半身への刺激で遮られる。確認すれば、すりすりとちゃんがオレのけーくんを撫で回していた。その表情はどう見ても、オレのせいでするようになった艶めいた顔で。
 あ、全然ちゃんやめる気なかったんだなって思い知らされる。間違いなくここで止めたらオレが第二のマレウスくんになってしまう。いや止めたくなかったらから全然ありがたいけど!
 なんて考えているうちに彼女がオレの下から抜け出していて、更には馬乗りに……ってアレ? なんだかおかしくない?!

「今夜は寝かせませんよ、ケイトさん♡」

 いやそれオレくんの台詞ゥ! 戸惑っても状況は変わらない。そうして一回眠って逆に目が冴えたのか、爛々と目を輝かせた彼女に昼間からオレは搾り取られることとなったのだった。なんでぇ?!

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