青春ラブストーリーじゃ足りないの
オンボロ寮へ泊まりにきたエースと映画を見るのは友達だった時から変わらない。
ただ恋人になってからは今日みたいにグリムがお出かけしてるか、あるいは寝静まる時間帯まで待つようになっていた。
「お前的にさ、こういうの憧れてたりする?」
よく言えば王道、実際のところはベタオブベタな恋愛映画のスタッフロールが流れている最中、隣に腰掛けていたエースがポソッと呟く。
彼にしては珍しいジャンルを借りてきたなと思っていたけども、この質問のためだったのか。そう納得はしたものの『こういうの』がどこを示しているのかまではわかってない。
さっきまで見ていたその映画はハイスクールでくり広げられる青春ラブストーリーなのだが、ロイソ生みたいなキラキラ王子様系ヒーローと平凡(設定だが女優さんがやってるので当然可愛い)なヒロインの甘酸っぱい恋愛模様が流れ、最後は特に捻りもないハッピーエンド。
NRC生は苦手そうっていうかアレルギー起こしそう。いや、でも、この世界の人はラブロマンスに関してはウッキウキなところあるから、どうなんだろ。エースはどっちかというとダメそうだな、ひとまず私としては悪くなかったんだけど。
「私はわりと、この作品好きだよ。昔から少女漫画よく読んでたし」
「やっぱお前的にもアリなんだ。こういう溺愛系ヒーロー、女の子の間でかなり人気なんだよね」
「いや、自分がヒロインになりたいとは思わないけど」
エースの指している『こういうの』の正体が判明したので、きっぱりと否定する。
私の答えが意外だったのか、エースはキョトンとしていた。エースには私があんな恋愛に憧れるタイプに見えてるの? 私、今まであんなヒロインみたいな扱いおねだりとかしたことないのに……。
まあ正直言うとエースと付き合う前の私は少女漫画みたいな恋をしてみたい、王子様みたいなヒーローかっこいい〜!なんて、女友達とはしゃいだりもしてたけど。もしや知らず知らずのうちに、そんな趣向が滲み出ていたのだろうか。なんにせよ、今は違うのでそこはハッキリさせておこう。
「こういう恋愛体験したいとは思わないよ。その、それよりも素敵な恋してるし、私にとってはやっぱり彼氏が一番かっこいいし……」
なんとなく途中で、これなかなか恥ずかしい事言ってるなと気付いてしまい、私の主張はちょっと尻すぼみになってしまう。でもちゃんと言いたい事は伝わったようで、エースは「ふーん」とか空返事のような声を出すけど、いかにも嬉しそうだ。
頬に手が添えられてキスされる。ぴったりと合わせられた唇はなかなか離れず、しかも舌を緩く吸われたことに、これえっちの流れだと理解してしまった。
「……ここでするの?」
「だめ?」
「狭いかなって……」
「くっつけていいじゃん」
さほど大きくない二人がけのソファだから落ちてしまわないか心配なんだけども、私が本気で嫌がっているわけじゃないとエースはわかってるみたいだ。私のパジャマの中に手を忍ばせながら、エースは再びキスしてくる。
エースから好きと言われたのは告白の時だけ、初めてえっちしてからこんな風にほぼ毎日のように体を求められてる。それだけ聞くとセフレ扱いのようだけども、間違いなくそんじゃそこらの少女漫画なんて目じゃないぐらい愛されてる自覚はあった。
口へのキスを終えると、エースは続けて耳、首筋、鎖骨と唇を落としていく。私は感じやすい体質らしくて、エースに触られたらすぐに受け入れられるぐらい濡れてしまう。
でもエースはもう準備万端になっていても愛撫をやめない。私の反応を見ながら、じっくり責め立ててくるのだ。挿れてほしいとぐずぐず泣いてるのに、どろどろになるまで下を舐められたことも一度や二度ではない。ただ今日はスペース的にそれはされないと思うので、ちょっとだけホッとしてたりする。
ナイトブラをずらして、ふにふにと微かなふくらみにエースが指を食い込ませる。巨乳好みの彼には一切引っかからないであろう、こんな物足りない胸でもエースはいつもいっぱい触ってくれる。ちゃっちゃっと乳首だけ触って終わりにしてもいいだろうに。丁寧に胸の輪郭をなぞる指にぴくぴくと体が震えた。
「えーす」
彼もまた私の顔を見ているからか、バッチリ目と目が合う。その瞬間、彼の名前を呼びかけてしまった。どうしたの、?と答えるエースの笑みはやわらかい。だから私もつい頬が緩んでしまって。
これじゃえっちな雰囲気は台無しかなとちょっと思うけれども、心まで繋がっているような感じがして嬉しくなってしまう。
こりこり、固くなった乳首を指で捏ねられる。あ、とか、ふ、とか、意味のない単音で喘いで、そのうち私は胸だけで達してしまった。
服から手を抜いたエースが私を抱きしめる。イった直後だから、それにもぞくぞくしてしまうほど敏感になっているけども、なんとか私からも抱きしめ返した。
じわじわと分け合う温度が心地良い。並んで座って肩が触れ合った時とはまだ別のドキドキに、いつまで経ってもなれないなあ……と、ちょっとだけ自分が不甲斐なくなった。
体を離した後はエースにパジャマのズボンを完全に抜き取られてしまう。上半身はそのままにしてくれたのに。この後のことを考えたら致し方ないのはわかるが、それでも恥ずかしい。
下着越しに秘部を撫でられる。くちくちと、どうしようもなく濡れている音に顔から火が出そうだった。せめて喘ぎ声は抑えようとするも「声、聞かせてよ。興奮するし」と唇を軽くつままれた。
エースのおねだりに私は弱い。それとぐりぐり指で秘部を刺激されて、気付いた時には快感に抗うことなく甲高い声をこぼしていた。もうこうなったら抑えようがない。
ショーツも脱がされて、濡れそぼった中にエースの指が沈んでいく。最初の頃は追い出すように動いていた中は、今はきゅうきゅうと自分でもわかるぐらい彼の指を嬉しそうに締め付けて。
私以上に私の体を知り尽くした指先は弱いところを的確に狙ってくる。きもちよすぎるからと、つい腰を引いてしまえば更に追い立てられる。爪先がぎゅっと丸まって、頭が真っ白になった。
……またイかされてしまった。エースは前戯で何度も私をイかせるのが好きだ。だからか、初めては痛いとよく聞くけども、最初にした時含めてずっと彼とのえっちは気持ちいいだけ。
いや、エース以外としたことないけど、たぶんこれって殆どないことなんだと思う。比べようがないんだけども、エースの愛撫は特別丁寧で優しいんだろうなって。私すごく愛されてるんだなあって。
私も彼の事が大好きだって伝えたくて、でもエースみたいに行動で表せる自信がない。なので「好き、大好き」と言葉にする。
そんな稚拙な告白にエースはキスで返してくる。こうしてたくさんキスしてくれるのにも愛情を感じるものだから、全然言い足りないな〜と悩ましい気持ちだ。
避妊具を付けたエースに体を持ち上げられる。それから向かい合わせになるように彼の足の上に座らされて。わりと既に足ががくがくしているのだけれど、それでもなんとか腰を上げればぴたりと熱いものが入り口に宛がわれた。
ゆっくりと中にエースの熱が入り込んでくる。半分くらい入ったところで「痛くない?」とエースに訊ねられる。答えようにも嬌声が占める喉は言葉を出せないから、こくこくと何度も頷いた。
まだ半分咥えただけなのに、私の体はそれだけで絶頂を迎えてしまう。自分一人じゃ耐えられなくて、半ば無意識でエースの体に抱きつき快感に震えていた。
ずぶずぶと飲み込んで、しばらくして奥にエースの先端がぶつかる。エースでおなかいっぱいになってる。びりっと頭が痺れて、気持ちよさにぼーっとするばかりで全然思考が働かない。
下から突き上げられて、その度に私の体が跳ねる。気持ちいい、気持ちいい、うわごとのように口にする私をエースは興奮と喜びが混ざり合った顔でみつめていた。
何も考えられない。でも「えーす」「すき」「だいすき」とみっともない声と一緒に何度もくり返すことだけは止めなかった。私も同じ気持ちだっていっぱい伝えたい。
キスしながらエースの熱が膜越しに放たれる。一度口を離すとお互い荒い息をこぼして、どちらからともなく再びすぐさまくっつけた。
少しだけまた固くなりつつあった熱が体から抜ける。手早く避妊具の処理を終えるとエースにぎゅうっと抱きしめられた。心地良いけども、いつもと違う様子が気になった。
「……今日はもうしないの?」
「さっきの予備しか持ってきてないから。それに、こんな状態だから説得力ないけど、別にオレ体目当てじゃねーし」
彼のわざと情報を減らしてる台詞を噛み砕くとエース的には今日そもそもしないつもりだったみたいだ。意地っ張りなエースのことだから、その理由は詳しくは話してくれない気がする。
だからこれは予想でしかないのだけれど、誰かに私への態度で何か言われたんじゃないだろうか。それか雑誌に『彼女に誤解されてるかも!』とか書かれていたのかなって。あの映画は参考資料にするつもりだった……これまでの流れを顧みる限り、そんな気がする。
だとすると私が今から言おうとしていることは彼の気遣いやらを全部ぶち壊すことになるのだろう。
「えーっと、エース、あのね、寝室にお徳用買ってあるから」
「…………は?」
「私も体目当てじゃないよ。でも、その、好き、だから」
青春ラブストーリーでは絶対言わない会話をした私達が迎えるのはもちろん、あんなキラキラ甘酸っぱいシチュエーションなはずがなく。でもとにもかくにも画面の中の二人にも負けず劣らずのイチャイチャハッピーエンドであったことだけは記しておくとしよう。
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