最後に言ったのが全部

 男の人からすると喘ぎ声が大きすぎるのはよろしくないらしい。
 エースと付き合い始めてから、ちょくちょく目を通すようになった女性向けの恋愛ネットニュース。そこに載っていた男性相手のアンケート結果を見て、私は胆を冷やしていた。
 もちろん全て鵜呑みにするつもりはない。でもその『喘ぎ声が大きすぎると萎える』という記事だけはどうしても気になってしまう。
 なにせエースとえっちしてる時、いっぱい声を出してしまってる自覚があるので。
 恥ずかしいと思うけど気持ちよすぎて、いつも我慢できずにそのまま出しっぱなし。演技なんてする余裕はないけれど、あまりに大きいと嘘っぽく感じるものだとか。
 できるかどうかと言えば、たぶんあんまりだろうけど次する時は頑張って抑えてみようかな……。

「こーら、唇噛むなってば」
「ん、んぅー……」

 声を抑えようと無理矢理閉じていた口にエースが指を差し込んでくる。自分ならともかく彼の事は噛めなくて、でも声は我慢できなくて変な形に口が固定されてしまった。
 彼の指のせいでうまく飲み込めず、たらと口角から涎が垂れる。口の中に指を入れるのもそうだけど汚いだろうにエースは全く気にとめていないようだった。
 エースが腰を動かして、胎内の彼の熱がぐっと奥に入り込む。衝撃にびくんと体が跳ねた。ぐりぐりとねじ込むように責められて、視界が白くちかちかと瞬く。
 怖いぐらいに気持ちいい。そう感じてしまった瞬間、生理的な涙がぼろぼろ零れて。
 口から抜けた彼の手が私の腰を力強く掴む。ぐんっと大きく腰を打ち付けられて、でもどうにか声を抑えようとした結果、引きつったような音が口から漏れた。
 我慢しなきゃだめなのに、やっぱり全然抑えられない。ぁ、ぅ、といつもよりはマシだけども、耐えられなかった嬌声がぽつぽつ吐息に混じる。

「……なんで今日、声我慢してんの?」

 ちゃんと防音魔法かけたってば、と付け足す彼の声は妙に刺々しい。エース、怒ってる?
 気のせいだと思いたかったけど彼の整った顔も目に見えて苛立っていた。
 快感でぐちゃぐちゃになった思考回路じゃ、彼が怒っていることはわかっても、その理由は導き出せない。せいぜい元々考えていた原因を思い出すのが精一杯だ。

「ぁっ、えっ、ちな、こえ、んんッ、がまんできなくて、ごめんなさい……」
「……お前バカでしょ」
「あっ♡」

 繋がっているところの粒を優しく潰された瞬間、大きく喘いでしまった。一度出たのを皮切りに、もう押し殺せなくなって、エースが動くたびにあられもない声が溢れてしまう。
 だめ、だめなのに。気持ちよくて我慢できない。ずちゅ、ばちゅっ、勢いよく突かれた快感に頭がスパークする。背中を仰け反らせて、明らかに絶頂を迎えた私をエースは更に容赦なく責め立てる。
 ずっと気持ちいいのが続いてる。声を出してからはもっと気持ちよくてたまらない。欲求のまま、ぐずぐずになって喘ぐ今の私は絶対に可愛くない。でもそんな私にエースは萎えるどころか興奮しているみたいで。
 それが嬉しくて、もう我慢しようなんて決心はどこかへ行ってしまった。自分の心に従って、好きと言うたび、彼を呼ぶたび、必然的に喘いでしまうけども、それでも伝えたかったから。

「オレのせいでぐちゃぐちゃに喘いじゃうお前は最高に可愛いっつーの」

 興奮とは別の意味で赤くなっているだろうエースがぽそっと呟いて。
 へにゃと笑う私に、ごまかすように彼が口付ける。それから、ぴたりと奥の奥までくっついた熱が膜越しに弾けて。それを機に瞼がゆっくり落ちていく。その強烈な眠気に逆らうことなく、私は目を閉じた。

「お前バカでしょ」
「二回も言わなくても……」
「だって事実だし」

 目が覚めたら、最中の私の様子を不審に思ったエースから尋問されて。ただでさえ口が回る上、何かと鋭いエースがここまで疑いの眼差しを向けている以上、言い逃れできるはずもなく、私は素直に白状した。その結果がこの罵倒である。

「普通に考えればわかるじゃん。オレがノリ気じゃないように見えんの、お前」
「むしろ積極的だね……」
「だいたいさ、思わず大きい声出るのは感じてる証拠なんだから嫌なわけないでしょ」

 それだけ言い終えると、ふいっとエースが顔をそむける。どうしたのだろうと首を傾げる私にたっぷり時間を置いて「あとは最後に言ったのが全部」とエースが小声でこぼす。
 一瞬なんのことかわからなかったけど、理解した私はたぶんエースと同じように頬を赤らめて。またへにゃと笑って、今度は私からキスをした。

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