なおこの後、挙式するし家族も増える
とんでもないことになってしまった。
時間経過か、はたまたお風呂でアルコールが抜けたのか。だんだん酔いが醒めて冷静になってきた私はベッドの上で正座しながら固まっていた。
このエースの部屋には何度も訪れて見慣れているはずなのに、なんだか今日は全く違うものに思えてしまう。
というのも今の私は友達としてベッドを借りているわけではなく、エースの妻としてここに座っているからだ。そして今はシャワールームから夫が帰ってくるのを待っているわけで。
何故そんなことになってしまったのか。主に酒のせいである。あとは私の低すぎる妥協のハードルと、エースの優しさのおかげだ。
つい数時間前。近々入社を控えた私を、エースは就職祝いとして飲みに連れて行ってくれたのだが、就職先の名前を出した途端、彼に全力で内定を辞退するように説得された。
魔力のない私を雇うぐらいだから、まあブラック企業だろうな〜とは思っていたのだが、私が想像してる数十倍ヤバイ会社だったらしい。
とはいえ、もう元の世界に帰れない以上、この世界で生きていくしかないわけで。そして生きていくにはお金が必要である。他の就職先なんて宛がないからと渋っていたところ、エースがとんでもない申し出を口にした。
じゃあオレに永久就職して、と。私はNRCに通っていた頃からエースが好きだったし、大学に行った私と違って既に某有名研究所で働いていた彼は私を余裕で養えるだけの収入があり、極めつけにこの時の私はべろべろに酔っ払っていた。
だから店を出た私達はその足で役所に向かい、さくっと結婚の手続きをこなしてしまったのである。よって私はもはや、れっきとした人妻・トラッポラだ。
その後、私は家に帰ろうとしたのだが、もう終電の時刻は過ぎていたことからエースの家に泊まることになった。これまでも何度も泊まってきたので歯ブラシやらの生活用品は置かせてもらってたし、それでも足りないものはエースの希望で帰る途中に寄ったコンビニにて購入してある。というか荷物は後で持ってくるとして、ここに引っ越すように言われている。夫婦なんだからと。
「……いや、よく考えたらそんな緊張する必要もないのか」
足を崩して楽な体勢に座り直す。現状を思い返せば、むしろ緊張しているのが馬鹿らしくなった。別にエースと私は法律的なものはともかく、本当の意味で夫婦になったわけじゃない。
顔良し、名門校卒業生、高収入の三拍子揃いで、ギャグかな?と思うようなモテ方をしているエース(というか私の知人は大体そんな感じだけども)だが、私の知る限り彼女ができた気配はなかった。元一年生のメンバーで集まった時に聞いた話では「彼女よりお前らとつるんでる方が楽しい」んだとか。どうもエースは結婚はおろか、恋愛すら興味がないみたいだ。
だから私と結婚したのも行き場のない友人に同情したからであって、あとはちゃっかりしてるエースのことだから虫除けも兼ねているんだろう。なので、いわば私は名目上の妻になるんだろうけど、さほど悲観していなかった。
だってエースに良い人ができるまでの関係だとしても、好きな人と結婚することができたのだ。彼の優しさに報いるためにも、エースが本当に好きな人が現れるまで虫除け頑張ろう!
「おまたせ」
「あ、エースおかえり」
バスローブ姿のエースがベッドに腰掛ける。お風呂上がりのエースは魔法で乾かせるのに何故かいつも「拭いてよ」と私にタオルを渡してくるが、今日はちゃんと乾かしてきたみたいだ。
湯上がりの女の人は色っぽく見えるって話はよく聞くけれど男の人も同じなのか、妙な色香を今のエースから感じる。って、いけない、いけない! そういうことにならない為の私でしょ。
「養ってもらえる以上、家事とか頑張るね!」
「別にそんな張り切らなくてもいいでしょ。お前の料理、普通に美味しいし」
「……そう? ともあれ、これからもよろしくね。エース」
明日からの生活が楽しみだけれど、今日は色々あって疲れた。こういう時は早く寝るに越したことはない。
だから「おやすみ」と口にしようとしたところで、私の髪にエースの手が差し込まれる。ゴミでも付いていたんだろうか。撫でるように動いたその手は次に頬へと添えられる。それから。
「……えっ」
彼の唇が離れて間もなく、私は間抜けな声を上げていた。なお状況は全く理解できていない。あれ、もしかして、今、私キスされ……?
ぐるぐるしている頭が結論を出す前にベッドへと押し倒される。えっ、えっ、と更に困惑の声が自然と口を出た。これだけ私が混乱しているというのに、エースは説明無しで再度唇を塞いできた。
「舌出して」と彼からおねだりされるがままにすれば、じゅると音を立てて彼の口に飲み込まれる。絡んでくる舌が擦れるたびにビリビリとした感覚が背中を走る。
酸欠と気持ちよさにボーッとしていた間にぷちぷち、パジャマのボタンが外されていく。後は寝るだけだからと手抜きしていたカップ付きのキャミソールもなんなく脱がされて、平たい胸が彼の目に晒されたところで、やっと私は我に返った。
「や、やだ、エース、見ないで」
「別にいいでしょ。オレお前の旦那さんなんだから。隠さないでよ」
旦那さんという響きに気を取られているうち、胸を隠していた腕を退かされてしまう。あうあうと慌てることしかできない私を見ながら、エースは舌なめずりする。ひえっ。
ふにふに、彼の指の先が私の胸に埋まるのと離れるのを繰り返す。あまりに小さすぎて揉むにも至っていないが、エースはこの感触がお気に召したらしい。ねちねちと責められるうちに、くすぐったいが快感へと変わっていく。
しばらくして、ほったらかしだった乳首にエースの舌が這う。突然の強い刺激に驚いて、彼の頭を押しのけようとしたけれど、びくともしない。抵抗したお仕置きとばかりにきつく吸い上げられて、びくっびくっと勝手に体は反応してしまう。
散々胸をいじめた後、彼の手がおなかをなぞって、更にその下へと伸びた。反射的に足を閉じたが、ズボッと容赦なく太ももの隙間にエースの手が差し込まれる。まだ下は着用しているからか、エースはふとももを揉むだけだ。でも、これ、なんか……逆にえっちな気がする……。
耐えきれず足の力を抜く。好機とばかりにショーツごとズボンが脱がされた。バスローブ姿のエースとの差はたった一枚なんだろうけど、ほぼ裸の私に対して彼のローブは一切乱れていないので、やたら恥ずかしい。
きっともう私は悲惨なくらい真っ赤になってるだろう。だけど、エースは遠慮してくれない。こじ開けるように大きく左右へと足を広げられた。
羞恥心から私が軽くぐずついたってエースはキス一つでごまかして押し進めてくる。私はそんなチョロくないと言いたいところだけど、すっかり大人しくなっているので、彼の作戦は悔しいが大成功だった。
足の間にエースの頭が埋まる。やだ、という声は秘部に触れたエースの舌のせいで音にならなかった。そんなところ舐めちゃうなんて。上に付いた粒をちゅっと吸われて、過ぎた快感から目の前に星が飛ぶ。跳ね上がる腰を押さえつけてエースは更に舐め回す。
大きな波にピンッと爪先が伸びて、それでも休む間もなく与えられ続ける快楽にぴくぴくと全身が痙攣する。もう自分でもちゃんと呼吸できているのか、わからないぐらい息は乱れっぱなしだ。
エースの体が離れて、バスローブを脱ぎ捨てる。程よく筋肉の付いた彼の裸はとても綺麗だったけれど、その下中央部で反り立つアレがあまりにも存在感を出していて、思わず目を逸らした。
ぴり、と何かビニールが千切れるような音に意識が向かう。器用に彼がそれを装着している姿に「ぴえっ」と悲鳴が口を出た。
いつの間にそんなものを……。ハッ、そういえばエースもさっきコンビニに行った時、何か買ってたのってそういうこと?! つまりエースは最初からこういうことするつもりだったの?
未だ状況を読み込めずにいたが、そんな風にしていられたのも僅かな間だけ。にゅるにゅると秘部へと擦り付けられる熱に否が応でも現実へと引き戻される。
つぷ、と先端が中に潜り込んだ。彼にたくさんほぐされた中はさしたる痛みもなく、ぬぷぷとエースを飲み込んでいった。お互いの下半身がぴったりとくっつく。あんな大きいのに入っちゃったんだ。信じられない気持ちでいる私にエースが唇を寄せる。
「えーす」
「なーに、オレの奥さん」
ああ、そっか、私エースの奥さんになったんだ。エースとしてはちょっとばかり、からかったつもりだったんだろう。でも私はその呼び名にひどくときめいてしまった。正直な私の体はその喜びに反応して、ぎゅっと彼のものを締め付けてしまう。
眉をしかめた彼から「いきなり締めないでよ……オレ初めてなんだから」とクレームが飛んできたけど知らない。だって私も初めてなんだから。
「そろそろ動いても大丈夫そう?」
「う、ん。エース、その前にもう一回ちゅーして……」
私のリクエストに応えてエースがキスしてくれる。そして舌を絡めながら彼がピストンを始めた。
腰を引いたら、その分ぐっと奥へエースが入り込む。彼の熱が中で動く度、鼻から抜けるような声が漏れた。喘ぐのとキスで開きっぱなしの口から唾液が零れる。そんな私のだらしない表情にエースは興奮していたのか、ただでさえ大きな質量が更に増した気がする。
初めてなのに、こんな乱れるなんて恥ずかしい。そう思うのに体は彼から与えられる刺激に喜ぶばかりだ。キスされたまま奥をトントンされると頭が真っ白になるぐらい気持ちいい。その動作に弱いと気付いたのか、エースはその動作を続けて。
意識が飛ぶ寸前、彼の体にしがみつけば、ぐちゅんっと一際奥にエースの先端がぶつかる。彼が動きを止めて、代わりにおなかの中でどくどくと熱が脈打つのを感じながら私は瞼を閉じた。
◇
明くる日の朝、美味しく優しくいただきますされた私は真っ赤な顔でエースの胸に抱かれていた。どうしてこんなことに。別に嫌だったわけじゃないんだけど、正直夢オチじゃなくてよかったって喜んでるんだけど。
ひとまず朝ご飯の用意しなきゃ。そのためにもベッドから脱出したいのだが、がっちり私をホールドするエースの腕のせいで身動きが取れない。身じろいだところでびくともせず、これじゃエースの寝顔を鑑賞するぐらいしかできない。
諦めて彼の顔を見たところ、いつの間に起きていたのか、はたまた狸寝だったのか。細めた彼の双眸が私を眺めていた。びっ、びっくりした……。
「おはよ」
「お、おはよう……えっと、あの、んッ」
さらりと挨拶してきたエースに、昨夜の出来事からつい意識してしまう私は挙動不審になってしまう。だが、そんなこと知ったこっちゃねえとばかりにエースがキスしてきた。
確かに昨日は思わずちゅーしてなんておねだりしたけども、だからといって、この健全な時間帯にこれはよろしくないんじゃないかなあ!
「な、なんで今ちゅーしたの……?」
「薔薇の王国だと夫婦がおはようのキスするのが常識だから」
「そ、そうなの?」
「ちなみにおやすみといってきますとおかえりでもする。うちの両親もやってたし」
「ううん、異文化だなあ……」
なおこちら、その後しばらく経ってから知ったのだが嘘である。
エースのご両親の下りはともかく、そんな常識は一応ない。まあ一応なだけであって、結構この世界の夫婦は日常的にキッスするんだけども。
真実を知った時には私も欠かさずやらないと物足りなくなるぐらいには慣れ親しんじゃったんだけども。
「じゃなくて! 昨日、あんなことした理由が知りたいんだけど……」
「そりゃ新婚初夜だったし」
あまりにもしれっと返されて、私は納得するしかなかった。確かに間違っていない。元いた世界でもそんな雰囲気あったし、もしかしたらさっきのキス(※嘘)みたいに私が知らない常識があるのかもしれない。
少なくとも性欲処理ではないなと思う。あんなに甘くされて、それなら人間不信になるぞ。
「ちなみに今晩も抱くし、明日もその後もめちゃくちゃに抱くから」
「えっ」
「いいでしょ、オレ達夫婦なんだから」
楽しげな表情、それでいて私を見つめる視線は焦げてしまいそうなくらい熱くて甘やかだ。私は本当にとんでもないことになってしまったと思いながら「おてやわらかにお願いします……」と返す。ちなみに、この私の要望が通ることはなかった。
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