どう見ても本末転倒

 結婚してから毎晩エースに抱かれている。
 大好きな旦那さんにいっぱい愛されているわけだし、そのこと自体には何も不満はない。まったく照れないとかじゃないよ。やっぱりちょっとえっちは恥ずかしいなって思う。でもそれ以上に脱がされるのが、なんだかすごく恥ずかしい。
 そういったことはもう片手では収まらないぐらいしているのに、私はいっこうに慣れなくて。未だ恥ずかしがる私はきっと面倒くさい女のはずだけれど、エースはむしろ私が恥じらう姿に興奮するらしい。
 エースが喜んでくれるならいいんじゃないかと思わなくもないけど、でもやっぱりあの恥ずかしさをどうにか軽減したかった。どうしたものか。エースのシャツにアイロンをかけながら悩んでいた時、ふと私の頭に天啓が下りる。
 
 ……脱がされるのが恥ずかしいなら、いっそ最初から脱いでいたら恥ずかしくないのでは……?

 これ以上の名案はきっとない。なお新婚さん気分が抜けた私が聞いたら「何言ってんだコイツ」と冷めた目で見ていただろうが。この時は本当にこれこそが最高だって思ったのだ。
 私達の夜は大体エースがお風呂から上がった後の寝室で始まる。だいたいって言うのは、その、たまに休日の朝からとか、帰ってきた直後の玄関でとか、はっちゃけちゃうことがあるので。蜜月テンションって恐ろしい、でも新婚さんってことで許してほしい。
 ともあれ、そういうことで思いついたその夜、早速実行に移してみたのだが……。

「……誘ってんの?」
「へっ?」

 頭から被っていた掛布を捲りあげて、私の姿に気付いたエースは興奮を滲ませた声色で訊ねてきた。全裸待機している間に若干冷静になってきた私は「なんかエース呆れそう……」と思いながらも、引くに引けず続行して。
 いつもの余裕に満ちた顔ではなくギラギラと目を輝かせたエースに噛みつくかのよう口付けられる。押し入ってきた彼の舌が蹂躙するかのよう私の口内をまさぐった。普段とは荒々しい違う動きにちょっと怯えると同時、期待してしまっている自分がいて。快感で涎が零れるぐらい、私の歯列をエースは舌で擦っていた。
 エースのキスがしつこいのは今に始まったことじゃないけど、これはタイプが違う。何度もやわらかく口付けてくるパターンには慣れつつあるけど、こっちには全く耐性がない。おかげで効果は抜群だ!
 なんてふざけている間にエースは胸の先をきゅっとつまみ上げる。唐突な、それも強すぎる刺激にも関わらず、私が拾い上げるのは快楽だけだ。
 ぐにぐに粘土でも捏ねるかのように指で遊ばれ、片手が離れても続けざまにかぷりと口の中へ運ばれてしまう。緩く歯を立てられて、きつく吸い上げられ、手心のない愛撫にもはや私は息絶え絶えだった。

「えーす♡ したも、さわって……♡」
「ははっ、ってば腰揺れてんじゃん。顔だって、もうとろっとろだし。でもどうしよっかなー」

 焦らすような言葉を口にしているけれど、なんだか目に見えて興奮しているエースはあまり余裕がないらしい。早々に陰核へと手を伸ばし、カリカリと引っかかれる。
 そうして私を絶頂へと導くと、しとどに濡れた中へエースは指を差し込んだ。くちゅくちゅといやらしい音をわざと立てるようにして、浅い所で指を行き来させる。気持ちいいけど足りない。もっと奥まで満たしてほしいと、おなかがきゅうきゅう疼いていた。
 おなかの裏を引っかかれると思わず腰が引けてしまうぐらい感じてしまう。エースの熱はもう充分なほど大きくなっているのにまだくれる気配がない。二本目と三本目の指も揃えて、ぐいぐい弱い所を押し込んでくる。おかげでまたしても私だけが果ててしまった。
 ぬち、と彼の指が胎内から抜けていく。私の愛液でびちょびちょになった指を見せつけながら「これ、ぜーんぶお前のえっちな汁だからね」と煽ってくるエース。一見余裕を取り戻したようにも見えるけれど、きっと内心は私と同じぐらい急いているだろう。私に向けられる獣じみた視線は我慢の限界を訴えるばかりだったから。

「ねえ、。お前、自分から誘っちゃうぐらいだし、何が欲しいか言えるよな?」

 だけどプライドが高くて、私の羞恥心を煽るタイプの意地悪が好きで……私に求めてほしいエースは、何が何でも自分からこの欲望を口にしないだろう。私が欲しがるまでは絶対に譲ってくれない。
 私は元の世界ではなくエースを選んだけれど、たぶんどうしても拭いきれない不安があるんだと思う。だからこうして、事ある毎に自分を欲しがるよう誘導してくる。
 事情が事情なのでそれも致し方ないかなと思う。だからエースがいつか安心しきれる日まで、私はとことん示すつもりだ。愛ってきっとそういうことだろうから。

「えーす、おねがい♡ はやく、おく、とんとんして……♡」

 エースのオーダーと異様なシチュエーションに私の頭のネジは何処かに行ってしまったみたいだ。ほぐされて物欲しそうにしているだろう秘部をエースへ見せつけるように指で開く。脱がされるよりもよっぽど恥ずかしいことをしているのにブレーキは全く効かない。
 いつにない私の積極性にエースは驚いてこそいたが、引いている気配は無かった。ただ彼にしては珍しく性急にズボンごと下着をずり下ろして、育ちきったそれを取り出す。間髪置かずに宛がわれ、吸い込まれるようにして奥まで一気に貫かれた。
 ゆさゆさ、いつもとは違って激しく体を揺さぶられる。私が欲しがったとおり、奥を重点的に捏ねられて浅い絶頂を幾度と繰り返す。彼しか知らない中はすっかりエースの形に馴染んでいて、待ち望んでいた熱が与えられたことを喜んでぎゅうぎゅうと締め付けるばかり。
 「えーす」「すき」「だいすき」喘ぎの合間合間に彼が素直に言えない分も私が口にすれば、その分たくさんエースはキスをしてくれる。きっとこれがエースなりの好きの伝え方なんだと思う。

「ん、んんっ♡ えーす、いっしょ、いっしょが、いい♡」
「わかって、るって。は……ぅ、くッ」

 ぐんっと奥を突き上げられて、おなかいっぱいに熱が吐き出された。唇にちゅちゅっとたくさんキスされて、気持ちよさに顔が緩む。快感の余韻でぽやぽやしたまま、最中に繰り返した言葉をひっきりなしに口にすれば、すぐに収まったままの彼が固くなっていった。

「えーしゅ、すき……♡」
「……誘ってんの?」
「うん♡」

 きっかけの言葉こそ最初の問答と同じだけど、あの時とは違って全面的に受け入れる。本当はこの前だって、はなからえっちする気だったけども。あんなにエースがやる気になるとは思ってなかったのだ。
 お互いが望んでいるのだから、何も邪魔するものはない。煽るように腰を揺らせば、すぐさまエースが二回戦を始める。今日もいっぱい抱かれるんだろう。
 こんな目に見えるほど興奮してくれるなら、この作戦は大成功だったのかもしれない。最初の目的である脱がされることへの羞恥心改善はいっこうに解決していないのだけれど、エースとイチャイチャできるからいいやと快感と喜びの彼方へ私は思考を投げ捨てた。

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