SMのエスはサービスのS
経験がないわけじゃない。むしろ相手はエースだけとはいえ、同年代の子と比べて多いぐらいだと思う。だというのに、大人になってなお、私は色事に弱かった。
いつだって積極的なエースにされるがまま。恥ずかしがって、いつの間にかそのための理性が快感に押し流されているうちに終わっている。というのがお決まりのパターンだ。
このままじゃいけないと色々頑張ってみたけれど、あまり効き目が合ったようには思えない。エース曰く「お前は変な方に思い切りがいいから、いっそ失敗してくれる方がありがたい」らしいけども。
私だってえっちで、そういったことが上手な方がエースを喜ばせられるんじゃないだろうか。いやでもエース本人が嫌がるほどではないけど否定しているんだよなあ……。
結局私の独りよがりでしかないのか。うーんうーんと頭を抱える私にエースは「じゃあさ」と切り出す。
「オレが今から言うこと守ってよ。破ったらペナルティな」
「……ペナルティって、どんな感じの?」
「お前にとって悪い結果にはならないから安心してよ」
答えているようで、その実はぐらかされている。あとエースにとっては楽しいことなんだろう。だって提案してきた彼の表情は見るからに生き生きしている。これはよろしくない前触れ。
OKを出したらきっと大変なことになる。そう思えば喉が締まって、ひとまず即答は避けられた。
話の流れ的に守ってほしいこともペナルティもえっちなことなんだろう。エースはわりと普段からいじめっ子だけど、えっちの時は特にイジワルしてくる。でもそれに悪い感情を抱けないくらい優しくもされる。
だからこの数年ですっかり私はエスっ気のある彼好みに染まってしまっていた。つまり、彼が望むなら恥ずかしいことも気持ちよすぎることも、全部嫌じゃなかった。
普段はおしゃべりでせっかちなのに今のエースはただ静かに私の返答を待っている。けど断られるなんて全く考えてないんだろう。じっと私を見る視線の力強さに目がそらせない。
「が、がんばって、みる」
頷く私に、にんまりとエースは笑う。シーツに押し倒され、エースに告げられた約束とペナルティに、普段以上に大変なことになるのを私は悟るほかなかった。
◇
「エース、も、だめぇ♡」
「はい。アウト♡」
「ひぁっ♡」
膣をほぐされながら、もう片方の手で乳首を強めに摘ままれる。思わず漏れた声に気をよくしたのか。更にくにくにあそばれて、反射的に唇を噛もうとするがなんとか押しとどめる。
いつもみたいに手で押さえることは手錠で繋がれているのでできないけど、やってしまったらエースは嬉々としてペナルティを実行することだろう。
既に何度も受けているから今更な気もするけども。目隠しのせいでエースの顔は見えないが、きっとすごく楽しそうな顔をしていると思う。だって声がかつてないほど浮ついてる。
エースが出した約束は今からしている間に「いや」「だめ」「やだ」などの否定的な言葉を口にしないこと(ただし以前から決めていたセーフワード「オイスター」は有効なので、本気で嫌な場合はちゃんと言って、とも言われていた)、それから声を我慢しないの二つ。
そして私がその約束を破るたびに、いつもより刺激的な意地悪をする。という感じで進められているのだけれど……。
開始早々にやらかしてしまい、手錠が付けられ、その次に目隠しをされてしまった。ついうっかり言っちゃうんだよね、全然そんなこと思ってないのに。
声を出すと勝手に気持ちが盛り上がってしまう。あと目隠しされてからは特に次は何をされるか、どのタイミングで来るかわからないということで敏感になってしまい、ペナルティの嵐なのだけれど。
ただ当然ながらセーフワードは今のところ登場していない。というか、これまで一度も使ったことがない。エースは私のことをちゃんと見てくれているから。エースは決して私が本当に嫌がるようなことはしないって知ってる。
だからどんなに快感でぐちゃぐちゃにされたとしても、安心して身を預けられるのだ。
「次破ったら生でしちゃおうっかな……今締まったんだけど、もしかして生でするかもって聞いて興奮した?」
この言葉だってプレイの一環であって本気ではないんだろう。初めての時からずっと私から避妊してほしいと言い出さなくても、安全日だって言ってもエースが避妊を欠かしたことはなかったから。
でも、もし本当にそのままされても私は怒れないと思う。むしろエースの方が焦るんじゃないかな、きっと。
いつもはもうちょっとマシなはずだけど、えっちしてる時はどうもバカになってしまう。だからぐずぐずになった思考回路で考えた言葉をそのまま私は口にする。
「赤ちゃんできちゃうから、だめ」
「……お前、それわざと言ってるでしょ」
ぐりっと陰核を押しつぶされて目の前に星が散った。エースの言うとおりだ。働かない頭で、せいいっぱい考えた煽り文句。それはたぶんきっと彼の動揺を誘ったことだろう。……誘えたよね?
指が抜かれて熱いものが秘部に押し当てられる。ぐぐぐと中に入り込みながらエースがキスしてきた。離れたすぐ傍にある唇から漏れる彼の吐息はいつもより荒くて。よかった、エースも興奮してる。その事に気付いて喜ぶと同時に体が熱くなる。
焦らすようにゆっくり抜き差しされる。先端の膨らんだところで内壁を引っかかれて、ぞわぞわと背中が震えた。エースの形がわかっちゃうぐらい、緩慢な動きは気持ちいいけど、もどかしい。
もっともっと激しく求めてほしい。口にするには恥ずかしいその気持ちは普段なら抱きついて表せるけど、今日は腕が使えないから足を彼の腰に巻き付けて代わりにしてみる。引き寄せるようにぐっと力を込めれば奥深くまでエースが埋まった。
「ちょっ、締めすぎだって。そんな我慢できなかった?」
「できない♡ いっぱいいっぱいして♡」
「……付けてるかどうかわかんないのにそんなこと言っていいの?」
今出したらできちゃうかもね、とエースは私に囁く。彼の発言は本気にも聞こえる声色だった。感触だけじゃ、それが嘘か本当かわからない。
思いもよらない展開に追い打ちをかけるよう、エースの先端が子宮口をこんこんとノックする。その度にびりびり頭が痺れて、ただでさえぐちゃぐちゃの頭の中がもっと酷いことになって。
それでも頷く私に「さすがに付けてるっつーの、けど」と続ける。
「いつかは出すし、お前が帰るって言ったら泣いて謝ったってすぐにでもやるから」
覚えとけよ、といつもより低い声でエースが囁く。それは彼にとっては脅し文句だったのだと思う。でも私にしてみれば、とびきりの愛の告白で、この上ない意地悪でしかない。
本当は生身のままエースを受け入れてみたいし、全部受け止めてみたかった。じゃなきゃ安全日なんてわざわざ調べない。
でもエースは私のことを大切にしてくれているから、絶対にしないわけで。そんな彼だからこそ私はエースを好きになったんだろうけども、なんとなく不安というか寂しさを感じていた。そうなってもいいと、そうなりたいと思ってるのは私だけなのかなって。
だから実はエースが私との未来を離さないようにしてくれてるとわかって嬉しいのだ。ただ、さすがにエースのことを傷つけてまで叶えたいとは思えなくて。なのでエースの理想まで私の願いはおあずけなんだろう。
「いい子にして、待ってるね」
雰囲気に似つかわしくない平和ボケした答えを返す私に、エースはたぶん固まってると思う。なんでお前そう変な方に思い切りいいの、とぼやいていたことからして、完全に予想外の反応だったみたいだし。
もしかして怯えられると思ってたんだろうか。確かにいきなりヤンデレの片鱗を出してきたのは意外だったけど、新たな一面にドキドキしただけ。
気を取り直したのか、足がエースに担がれた。私の中でまた大きくなった熱がさっきよりも早く行き来する。その末にエースがぐっと息を詰めて、最奥に触れながら果てる。薄い膜越しに吐き出された熱が残る日を夢見ながら、ゆるゆると私は自分のおなかを撫でた。