プラシーボのちプロポーズ

「えっ」
「ん? どうしたの、なんか気分悪い?」
「だ、だいじょうぶ……」
「なら、いいけど」

 思わず声を上げてしまったけれど、エースが心配してるような不快感はない。ただ私はエースが付けたおなかのそれに釘付けになっていた。
 おなかの上、子宮にあたるところに刻まれた淡く桃色に光るハートマーク。これエッチなマンガで出てくるやつだ!
 私もそんなに詳しくないけれど、確かこうなんか感じやすくなったりするんだよね。認識してしまったせいで効果が出てきたのか、かーっと体温が上がっていくのがわかる。

 たくさんエースに触れられて、後はエースを受け入れる段階でゴムがないことに彼が気付いたのだ。それで「お前が嫌じゃないなら避妊魔法使いたいんだけど」という話になって。
 こんなところで終わってほしくなかった、ちゃんとエースにも気持ちよくなってほしかった。だから迷わずオーケーしたんだけど……。
 まさか避妊魔法にそんな副作用があったなんて。思わず困惑してしまう、心臓が痛い位にバクバクと鳴り響いていた。でも止めてほしいとは全く思わなかった。いつもより乱れちゃうのは恥ずかしいけど、エースは承知の上だろうから幻滅されるなんてことはないだろうし。

「えーす、はやくいれて……えーすの、ほしい……♡」
「……お前からそんな風におねだりすんの、珍しいね」

 確かに普段ならエースにいっぱいいじめられて、おねだりするよう誘導されるけれど、今はそんな余裕がないのだ。わかってるくせに。でも意地悪されたって私はエースが好きで、怒るよりも欲しいの気持ちが勝ってしまう。
 軽くキスした後、エースは大きくなっていた熱を私の膣口に押しつける。でもちゅぷちゅぷと浅い所を行き来するだけ。じれったくて物足りなくて、私はつい彼の腰に足を回して引き寄せる。
 ちょっ、と驚いた声をエースは出していたけれど、もう我慢できない。奥まで彼の熱が届いた瞬間、私は達してしまった。ぎゅーっとエースに抱きついて、ふうふうと絶頂の余韻に荒い息をこぼす。

「生ヤバ……つーかお前、もしかして今イった?」

 気持ちよすぎてその質問に答えられるだけの気力がない。ただしがみついて、ふるふると体を震わせる私の様子で察したのだろう。深く口付けられて「のえっち♡」と耳を食まれた。
 どの口で言ってるんだ。そう一瞬怒っても、奥の奥まで入り込んだ彼の熱に意識がいって、すぐにかき消されてしまう。まだ入ってるだけなのに、感覚を研ぎ澄まされた体は勝手に気持ちよくなって、ぎゅうぎゅうと彼を締め付けていた。

「あっ♡ えーす、えーす♡ きもち、い♡ ふあ、あっ♡」
「……なんか今日のお前、やたら感度よくない?」

 なんでそんな当然のことを聞くの。これも一種の意地悪なんだろうか。ほんの少し考えられても、質問に答えになるような言葉にはならない。だって、と言ってそこで終わってしまう。
 私が答えられないと判断したのか、エースは行為に集中することにしたようだ。ぐりぐりと奥を押しつぶすようにエースが腰を動かす。イったばかりなのと、おなかの魔法のせいで感じやすくなっている体はあっという間に二度目の絶頂を迎える。
 それでもエースの腰は止まらない。ぱちゅぱちゅ♡と優しくしたり、かと思えば激しくと、緩急を付けて私の中を責め立てる。
 何度目かわからないぐらいイってしまった時、エースもその締め付けで限界を迎えたようだ。びゅーっといつもならゴムに遮られる熱がおなかの中に広がった。

「えーしゅ、もっと……♡」

 おなかのマークがさっきよりも強い光を帯びる。じんわりと染みこんでくる熱に促されるまま、私は欲望を口にすれば、エースがごくりと唾を飲んだ。ぐち、と繋がったままの部分が再び音を立てて。

 なお、この後、あの印は避妊魔法がかかったという証であって、私が思っていたような効果は一切なく、単純な思い込みであんな乱れたという真実を知った私はシーツにくるまって「もうお嫁にいけない……」とぐずることになる。
 「オレがもらうんだから問題ないでしょーが」と私と同じく赤い顔のエースが宥めるまで、そういじけることを今の私は知ることなく、ただただ勘違いのまま、彼にいやらしい姿を曝け出すのであった。

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