あと、その服の方が興奮したから
「あ゛〜〜、つかれた〜〜!」
背中から勢いよく倒れ込んだオレを受け止めて、ベッドがバフンと大きな音を立てる。寮服に皺が付くことを気にする余裕はない。でもまあ大丈夫でしょ。今は抜き打ちで服装チェックなんてないし、付いたって魔法で直せば良いし。
寮長特権として与えられたこの部屋のおかげで、今オレは一人きりだ。ここでならどんなにだらけても、副寮長サマことデュースに怒られることはない。
さっきの、オンボロ寮のベッドでやったら確実に壊れてるだろうな。天蓋を眺めながら、疲れてぼーっとする頭を無意識にアイツのことへ繋げてる。
そんな自分の拗らせ具合に嫌気がさしても手の施しようがない。今は恋愛とかするつもりなかったのに。ましてや確実に普通の女の子より面倒なことになるだろうアイツ相手になんて。
三年に進級してリドル先輩から寮長を任命されたオレは以前ほどオンボロ寮へ訪ねられていなかった。単純に寮長の仕事で忙しいっていうのもあるけど、が多忙になったオレを気遣って遠慮するせいで。
寮長になる前は毎週のように遊びに行ってたのに、ここ最近はサッパリだ。これまでオレは泊まらせてくれるお礼と称して、にこの世界の知識を教えたり、細々とした雑用に付き合っていた。
けれど、もう三年目になるとある程度常識はわかってきたし、寮長の仕事で疲れてるエースに負担をかけたくないと、申し出をことごとくに断られ続けている。
のそういうとこ、好きだけど嫌い。オレが親切心だけで動くわけないじゃん。好きな子と一緒に過ごしたいって下心だっつーの。なんて誰かに愚痴ろうにも、この学園じゃ弱味にしかならないので内心に押し留めている。
今朝もアイツがオンボロ寮の開かずの物置を掃除するっていうから手伝いを申し出たのにさらっと断られたし。まあでも結果的に良かったのかも、今日はやたら予定外のトラブル続きで異様に忙しかったし……。
これに加えてハートの女王の法律を遵守してたリドル寮長ってやばくね? オレも寮長になってからは体裁やらを保つのに必要なのは最低限守ってるけどさ。それですら寮長の仕事と合わせるとやること多過ぎるっつーの。
へとへとの体、ふかふかのベッド、明日は休み。自分の現状を実感したせいか、急激に瞼が重くなっていく。疲労困憊だったオレはその眠気に逆らうことなく、目を閉じた。
◇
「あの、エース……」
ゆっくりと瞼が開く。真っ暗な部屋と、最近やっと見慣れてきた天井。あのまま一眠りして目覚めた感じだけど、これはまだ夢だなと確信する。
というのも仰向けのオレの太ももにが馬乗りになっていたからだ。それも羊みたいなツノと、先端が矢尻のような形状をした尻尾、かろうじて乳首と秘部が隠れる程度のスリングショットを身に付けた、なんかまるで本でよく見るサキュバスみたいな状態で。
一瞬マジでサキュバスが来たのかなと思ったけど、この学園は外部からの侵入には滅法強くて。特にサキュバスなんて男子校で暴れられたらヤバイ奴は絶対に入らないようにしてるらしいから、おそらくこれは過去に見た本の内容が混ざったオレの夢だろう。
頭悪い夢だなと自嘲したところで最近忙しすぎてヌいてなかったし、あまり好みじゃないとはいえ好きな子のエロい格好にすっかり下半身は育ってしまってる。それに気付いては赤面しながら困惑してるんだけど、その過激な衣装とは対照的な初々しい反応に更に下腹部が重くなる。明日のパンツの中の惨状を考えると最悪なのにサイコー。
「サキュバスなのに巨乳じゃないのかよ」
夢ですら彼女に翻弄されていることになんとなくムカついて、つい憎まれ口をたたく。
正直はおっぱいが小さい。そしてこのサキュバスのも同じで、横からだったら確実に見えてるだろうなってレベルで彼女の胸元の布はスカスカだった。明らかにサイズがあってない。
オレの言葉にはひどくショックを受けているようで「私だって好きでこんな姿してるわけじゃないもん……」と涙目になっている。あー意地悪しすぎたか。夢の中とはいえ、に泣かれるのはオレの数少ない良心が痛む。
仕方ない。人外にも夢にも人間の理屈は通用しないのが定石とはいえ、一応フォローしとこ。
「そりゃそうでしょ」
「……?」
「サキュバスって獲物にとって最も魅力的な相手の姿で現れるんだから」
「えっ」
オレの発言には目を丸くしている。それからただでさえ赤いのに更に頬を赤らめて。殆ど告白だよな、これ。夢だからともかく、現実では絶対言えねーわ。
昔のオレなら貧乳サキュバスとか需要ないでしょと笑ってたんだろうけど、今のオレにはクリティカルヒットなんだよね。とはいえオレ本当はおっぱい大きい方が好きだから限定で。
ただ迷惑なことにNRCだと結構、需要がある。なにせに想いを寄せる男は少なくない。これまでは牽制というか彼氏面が上手くいってたんだけど、最近はあんまりオンボロ寮に行けなくなって。それで別れた勘違いした奴らに今がチャンスとかほざかれてたりするぐらいだし。そもそも付き合ってないけどさ。
うん、やっぱ無理矢理でも時間作って、に何言われようが、前みたいに会いに行こっと。そうと決まったら腹筋を使って上半身を起こす。もう少しでも上に乗られてたら無理だったし運が良かった。まさかオレが動くとは思っていなかったらしく、はまたビックリしていた。
どうせ夢なんだからオレの好きにしていいよな。目の前に来た唇を塞ぐ。彼女の腰に腕を回して引き寄せれば、はオレへしなだれかかるように体を密着させてきた。
まだキスしただけ。なのにの目はとろんと潤んで、半開きになった口からは荒い息が漏れている。なにその顔えっろ。あのウブなからは考えられない表情に欲情がかき立てられる。
すりすりとやわらかい彼女のおしりを下半身に擦り付けられ、頭が沸騰しそうだった。これ絶対も発情してるじゃん。
ふと視線を落とす。彼女の白いおなかがピンク色の光を放っていた。子宮をかたどったようなそれに淫紋ってマジであるんだ……と謎の感動を覚えてしまう。
にしても、誘惑こそしてるけどめちゃくちゃ受け身だよな。普通サキュバスって男が目覚めたらフェラしてるとか、跨がって挿入済とか搾精してるもんじゃねーの?
まあ夢に整合性求めるだけ無駄か。それにオレ的には攻められるより攻めたいからこっちの方が助かる。今は難しいこと考えずにこのシチュエーション楽しませてもらおーっと。
「ひあっ♡」
布をずらして露わになったの胸は小ぶりだけど綺麗で、グラビアとかで見てきた巨乳よりもずっと興奮した。上気した肌に、触ってほしいとばかりに膨らんだ乳首。おっぱいが控えめだからこそ一際目立ってて、それがエロいったらなんの。思わずちゅうと吸い付く。
「やだっ♡ えーす、やぁあっ♡」
オレが吸う度に気持ちよさそうな声を出すくせに、はぐいぐいとオレの頭を必死に押しのけようとする。ついムカッときて、強く吸い付くとびくびくとの体が震えた。
しつこく愛撫しながら切れ切れになったの主張を解読したところ、エースの好きな巨乳じゃないのに、とのこと。お前オレの下半身ガチガチにしておいてバカじゃねーの。お前のせいでズボンの中めちゃくちゃ痛いんだけど。
イライラしてるのか、ムラムラしてるのか、もうどっちがどっちかわかんなくなってきた。その苛立ちをぶつけるようにきゅっと乳首を摘まむ。ちょっと強くしすぎたかなと思ったけど、は子犬みたいな鳴き声を上げてよがっていた。
感じてるのはわかっていたが、おわびとばかりにぺろぺろと優しく舐める。乳首の下から先端に向かって動かすと特に反応がよくてその動作を繰り返して。口に含んで飴玉みたいに転がすのにも甘い声で喘ぐからたまらない。
「えーす、いい匂い……♡」
胸の愛撫を終えるとが抱きついてきて、くんくんと鼻を鳴らす。興奮のあまりこぼれただろうの熱い吐息が耳にかかる。くるくると太ももに彼女の尻尾が巻き付いて。どっちもくすぐったいけどもそれ以上にムラッときた。
羞恥心のあまり振り切れたのか、はたまたサキュバスの本質が出てきたのか。は体をほんの少し後ろに下がると、オレのズボンの膨らみを撫で回してきた。時折カリカリと引っかかれ、背筋がぞわぞわする。
パンツとズボンを隔てているおかげでなんとかなってるけど、これ直でやられてたら速攻イってたな……。
無様なところを見せる前に負けじとの下腹部に手を伸ばす。
「あっ♡ そこ、だめぇ♡」
「そんな気持ちよさそうな声出してんのにダメじゃないでしょ」
「おねがい、そこ弱いからぁ♡ ひぁあっ♡」
「へー弱いのわかってるってことは誰かに触らせたわけ?」
衣装を付けたままでもわかるぐらい膨らんでいたクリストスを布越しに扱く。オレが触っている少し下の布はすっかり色濃くなっていて、ぐちゃぐちゃに濡れているのは明白だった。
オレの必死のガードの甲斐あって、に彼氏ができたことはないと思う。でもオレも四六時中と一緒にいるわけじゃない。だからもしかしたらオレの知らないところで……なんて想像してしまい、嫉妬からしつこくいじめてしまう。
「あぅ♡ ち、ちがうの、じぶんで」
「……お前もオナニーするんだ、なんか意外」
「え、えーすのこと考えて、して、た。んんっ♡」
動揺してぐりっと思いっきり押しつぶしてしまったが、に痛がってる気配はない。ドッドッドッ、かつてないほど強く鼓動している心臓を手で押さえつける。
なんていうか、さすが夢だよな。オレが弱そうな台詞ピンポイントで突いてくるじゃん……衣装はアレだけど。
下半身の布もずらしての秘部を指でなぞる。想像した以上にぬるぬるで、指を動かすたびにぐちゅぐちゅと粘ついた水音が立った。
「えーす、ちゅー、ちゅーして……♡」
指を入れようとしたなら、は甘えた声でキスのおねだりをしてくる。ここでおあずけする方が自分らしいと思う。でもそれ以上にオレも彼女とキスがしたい。
唇を合わせれば、嬉しそうに小さな声をが漏らす。角度を変えて何度か重ね合わせていたところ、肩に手を置かれた。
「えーす……♡」
「えっ、ちょっ」
のハートマークの浮んだ目はどう見ても正気じゃなかった。とっさに覚えた危機感から離れようにも、これまでが嘘のようにオレを押さえつける手は力強い。しかも急に力が抜けて、オレは最初のように後ろに倒れ込んでしまった。
彼女に見下ろされながら、ふと気付く。の下腹部に刻まれた淫紋がさっきよりも色濃くなっていた。あっコイツ、あのキスでオレの精気を吸ったな?!
察したところで時すでに遅し。すっかり油断していたオレのベルトをは慣れない手つきで外していく。不器用なところはそのままなのか、やっぱあんまりサキュバスっぽくないな……まあ夢だし……。
なんとか取り出したオレの性器を見て「これが、えーすの……♡」とはうっとりしている。そしてオレの上に跨がると、彼女は潤みきった秘部へ亀頭を宛がった。
絡みつく愛液が熱い。にゅぷ、と先端がの中へと埋まる。まだ先っぽだけなのに既に腰が溶けそうなぐらいの快感を覚えていた。少しでも気を抜けばすぐに出してしまいそうで、ぐっと奥歯を噛みしめて射精を堪える。
くぷぷぷ、の中へオレのが飲み込まれていく。こちゅんと先端が行き止まりに当たって、がオレの上へ座り込んだ。うん、まあスムーズに入ったけどさ。
「……処女なのに騎乗位すんなよ」
「えーす、いやだった……?」
「嫌とかじゃなくて、血出てるんだけど。痛くないわけ?」
「うん、えーすのおなかいっぱいでうれしい」
ふにゃふにゃした顔からして嘘を吐いてるわけではないと思う。でもなんだかなー何とも言えないこの微妙な気持ち。これは夢、これは夢、ただの予行練習。いや本番はサキュバスプレイとかするつもりはないんだけど。そう自分に言い聞かせないとやってられない。
「えーすのせいき、おいしい……♡」
反撃しようにも全然力が入らない。それでもなんとか腕を伸ばすが、精々彼女の腰を支えるかのように掴むことしかできなかった。どうやら現在進行形で精気を吸われているらしい。
夢なのに自分の思い通りにいかないもどかしさにうんざりしてる。でも体はが与えてくる快感に屈してしまっていた。
ぬちゅぬちゅとが腰を動かす。生来の不器用のせいか、あとは初めてなのもあるだろう。その動きはものすごくぎこちない。さっきまで童貞だけど、っていうか現実では童貞のままでもわかる。
けど好きな子とセックスしてて、それもがとろとろの顔してるせいでバカみたいに興奮してる。の中は熱くて、きゅうきゅうと懸命にオレのことを締め付けてくる。精神と肉体、両方からの刺激によって、オレの限界はすぐそこに迫っていた。
「えーす、すき、すきっ♡」
「ッ、こんの、バカ……!」
「あっ♡ えーすのせーえき、びゅーって……♡ すごい……♡」
からの告白にオレの我慢はあっけなく崩れた。
絡みついてくるの中に欲を吐き出す。オレの射精を悦ぶかのよう、きゅっきゅっと締め付けて。先端を包む肉壁はちゅうちゅうとまるで一滴残らず搾り取ろうとしているかのような動きで更にオレを責めたててくる。
「またおっきくなってる……♡」
オレを貪欲に欲しがる体に、当たり前だけどすぐに元気になってしまった。それにまたぐにゅぐにゅとの中がうねる。早漏になりそうだから止めてほしい。
ゆるゆる腰を振るは上体を倒してオレにキスしてくる。オレよりも優位に立っているとは思えない、とろけた顔。目だってオレのことが好きで好きでしょうがないって言ってる。えろいのに、かわいくて、頭がおかしくなりそう。
なんかそれがあまりにも幸せで。夢だからっていうのもあるけど、攻められっぱなしでもいいかと諦めがついてしまう。
この夢がどこまで続くかわからないけど、たぶんまだまだ終わらなくて。この調子じゃ朝からシーツも洗浄魔法行きだなと少々憂鬱になりながらも、オレはこの淫夢へと身を委ねた。
◇
「つまり、お前の話をまとめると、昨日お前はオンボロ寮を掃除してた時に見つけた本を開いて」
「うん」
「で、それにサキュバス化の呪いを付与されたから、あんな事になって、ついでに昨日のアレは夢じゃない……」
「反省してます……」
昨日の醜態の原因を確認し終えて、エースは頭を抱えていた。初体験後、ベッド上で迎えている朝にしては重く苦しい空気が私達の間に漂う。でもそれも経緯を考えれば当然なので文句などエースが言うことはあっても、私が言えるはずがない。
呪いと一緒に衣装(布面積からすると服とは到底言えないけど)も消え、素肌にエースのTシャツを纏った私は身を縮こめる。状況を考えれば素っ裸のまま部屋から叩き出されても当然のことをしたのに、服を貸してくれた上にちゃんと話を聞いてくれるエースは本当に優しいよなあ……。
さっき彼が言った通り、私は昨日サキュバス化の呪いを受けてしまった。ただその直後にクルーウェル先生に確認してもらったのだが、長らく封印されていた間に弱体化していたらしく、主な活動時間である夜にしか発動せず、また一人で補える程度の精気を摂取すれば解呪されるようになっていたらしい。
なんで男子校にこんなもん置いているんだとの疑問は晴らさなかった。あの、人が嫌がることは進んでやりましょう(悪意)がモットーのNRCである。十中八九、怖い話になりそうだったから。
ともあれ内部から発生したサキュバスだった為、私は学園の防衛システムに排除されることなく、夜を迎えてサキュバスの力により夢を通じてエースの元へ辿り着き……以下省略というわけである。
なお先生からアドバイスに関しては「正規の方法以外では解けないから頑張れ」と凄い投げやりなものしかもらえなかった。いやこのままだとサキュバスの犠牲者出るんですよね?と追加で質問しても「ちゃんと好きな男のところへ行くようになってるから安心しろ」としか言われなかった、そうじゃない。
おかげで起きたら全裸の私が腕の中にいてエースが叫ぶはめになったし、今だってこうして悩ませてしまってるんだけど。
「エース、本当にごめんね……」
謝る私に眉間を揉みながらエースは大きく溜め息をつく。よりにもよって好きな人に迷惑をかけてしまった、そして最低なことに私はエースに抱かれたことを嬉しく思ってる。だからこそ余計に申し訳なかった。
「こんな形で言いたくなかったけど、もうお前にはバレてんだよな……別に襲われたことはもう怒ってないから、オレものこと好きだし」
「えっ」
「は?」
思いがけない情報に声を上げた私にエースが怪訝な顔をする。時間差で赤面していく私にエースの体がわなわなと震えた。
「もしかしてお前、あれだけオレが露骨な態度見せたのに気付いてなかったわけ?!」
「だ、だって私、エースのタイプじゃないもん」
「ああ、そうだよ! だからこそ好きじゃなかったら欲情してる説明つかないでしょーが!」
「その、サキュバスの不思議パワー的な何かでえっちな気分になってるんだと思ってました……」
「……なんだよ、それ。オレ余計な恥かいただけじゃん」
少しばかり項垂れた後、エースは私を抱き寄せてくる。もうサキュバス化は解けたはずなのにやっぱりエースは良い匂いだった。もっと彼を感じたくて抱き返していれば、突然視界がぐるんと回る。
天蓋の内側が目に映ったのは一瞬、すぐさまエースがそれを覆って彼以外見えなくなった。
「こうなったら、お前がちゃーんと理解するまで教えてやるよ」
幸い休みだし、と付け加えるエースは良い笑顔のわりに青筋が立っている。そしてゴリゴリと固いものがお尻に押しつけられた。それが昨日散々私の中で大暴れしたものだと気付いて体温が上がる。
あんなにいっぱいしたのに、もう伝わった、どっちも訴えてみるが鼻で笑われた。エースの手に指を絡み取られ、いわゆる恋人繋ぎの形でぎゅっと固く握られる。それに驚いていたら「もうオレの彼女なんだからいいでしょ」と照れたエースにキスされて。
彼みたいに精気を吸われたわけじゃないのに、ふにゃふにゃになってしまった私はエースの思いの丈をたーっぷり体に教え込まれることになるのだった。