二倍でも伝えきれない

「3Pしたいんだけど」
「ぜっっったい、いや!!!!!」

 全力でお断りする私の声量はセベクと張り合えるレベルだった。そんな大声をこの至近距離で味わったエースは耳がキーンとなっているようだが、苦しんでいる彼を前に私はもう一回全力で「死んでも嫌!!!!!」と声を張り上げる。その振る舞いは私の全身全霊の意思表示であり、ろくでもない提案をしてきた彼へのおしおきでもあった。
 普通こんな大声を出したら、気を遣って別室にいてくれてるゴーストのおじちゃんが突入してきそうだけど、あいにく先程エースが防音魔法をかけたので彼らが駆けつけることはない。だいぶ修繕されたとはいえ、壁が薄いことには変わりないので防音魔法は必須だった。
 エースは一体何を考えてるの。やっとテスト期間が終わって、グリムもよその寮へお泊まりしてて、久しぶりに二人で過ごせる夜だから期待していたのに。こんなのあんまりだ。
 コスプレプレイに始まり、目隠し拘束やら、自慰披露に、あげくの果てにはお尻での行為と、これまでエースにお願いされるままに流されてきた私だけれど、さすがに今回ばっかりは許可できない。
 私の認識が間違ってなければ3Pって三人でえっちするってことでしょ。そんなの許せるはずない。だって今だって想像しただけで涙が出てくるぐらいだ。

「エースが他の女の子とえっちするのいや、エース以外とえっちするのもやだ……」

 ぐずぐずと鼻を鳴らす。なんでエースがそんなことを提案してきたのか考えてまた気分が落ち込む。もしかして私とするの嫌になったの、私の体に飽きちゃったの。あんまりにもショックすぎて無意識のうちにそれらを口走っていた。
 私が本気で泣き出したからだろう。エースが抱きしめてきて宥めるように背中を撫でた。そのあったかい手の感触に私は彼の胸へすがって唸るように泣きじゃくる。
 涙で私の顔面もエースの服もべちょべちょになるがおかまいなしだ、そもそも泣き出したのエースのせいだから鼻水ついたって謝ってあげない!
 そう心に決めながらとっさに掴んでいた彼の服を更に握り込む。ついでに怒り任せにエースの胸にぐりぐりと強めに頭を擦りつけた。私なりの攻撃だったのだけれど、当のエースは「最後までちゃんと話聞いてよ」なんて全く気にとめてなかった。
 顔を上げてエースをギッと睨み付ける。私の非難めいた視線に「あーこわ」とかエースは言っているけれど、全然怖がってるようには見えない。むしろこれだけ地雷踏まれてるのに別れたいと全く思ってない自分の方が怖かった。

「オレだってお前が他の奴に抱かれてるのなんか見たくないっつーの」
「じゃあ、他の女の子呼ぶの……?」
「違う違う。こーれ」

 そう言ってエースが取り出したのはゴーストカメラだった。机の上に置いてあったとはいえ、いつの間にくすねたのだろう。
 彼の意図するところがわからず首を傾げていれば「これで今のオレのこと撮ってよ」とエースは促してくる。別に今はシャッターチャンスじゃ……。少し間を置いて顔が熱を持つ。確かにその方法ならお互いの要望を叶えられるのかもしれないけど。
 でもさすがにそんな用途で使うのはちょっと抵抗がある。一応、学園長から渡された仕事道具になるわけだし。欲望と理性や良心の狭間に立たされた私は唸りながら葛藤する。
 その様子に後一押しだと感じ取ったのだろう。エースの唇が私の耳元に寄せられた。

「大好きなオレにたっくさん可愛がられたくない?」

 甘ったるい悪魔の囁きにガコン!と欲望の方へ天秤が傾く。陥落した私は「かっこよく撮ってよ」と注文を付けるエースに向けてシャッターを押してしまったのだった。

「ふぅっ♡ んあっ♡ えーす♡ ん、んぅっ♡」

 私の体を知り尽くした手が四つ、肌の上を這っていた。びくびくと彼らの愛撫に震える私を目の前のエースは楽しげに見つめている、きっと後ろから私を抱える彼も同じ表情をしているのだろう。
 これに協力してもらう前提で撮影したせいか、写真から出てきたエース(ややこしいのでこちらの彼は分身、元のエースは本体と呼ぶ)は話が早かった。というか解説する間もなく、本体のエースと手を組んでこの通り私をいじくりまわしていた。
 後ろの本体はお腹や腰回りを撫で回しながら時折うなじや耳を食む。前に座る分身はずっと胸を刺激し続けていた。通常ならば味わうことのない快感に頭が混乱する。分身がきゅっと私の乳首を絞るように摘まむ。

はおっぱいたくさんいじめられるの好きだよな」

 目の前のエースの顔の意地悪な事といったら。でも抵抗する気力も、かわいこぶる余裕なんてものもない。だから口から出るのは情けない嬌声だけ。
 彼の言うとおり私は胸を触られるのが好きだ。小さくてコンプレックスだし彼好みじゃない、だからこそエースがいっぱい触ってくれると嬉しくて。もっと、なんて甘える私に対して、任されたとばかりに分身のエースは胸を優しく揉んでくれる。
 そちらに気を取られていれば、本体のエースが下腹部を小刻みに揺らすように揃えた指で刺激してきた。アレされちゃうんだ。思い出した暴力的なまでの快感に子宮が疼く。
 おなかが性感帯になるなんて知らなかった。だからくすぐったいだけだしと好きにさせていれば、挿れた状態で何度も触られているうちに訳がわからないぐらい感じてしまうようになっていた。どうもあのスキンシップはれっきとした開発だったらしい。
 しばらくトントンと軽く叩いた後、私の反応を見計らって本体のエースは手のひら全体を使っておなかを優しく押してくる。中心からじわじわと体が熱くなっていく。背を丸めて快感に耐えようとしても無駄で、視界が明滅し電流が走ったかのように体が跳ねた。

ってば、おなかだけでイっちゃたんだ」
「じゃ次はおっぱいでイこうな」
「ま、まって、ひぁあっ♡」

 絶頂したばかりで敏感になっているのに、間髪置かず分身のエースが激しく胸を攻めたてる。手伝うように本体のエースもうなじに口付けていた。同じ人間だからなのか、息ぴったりだけどそんなところでチームワークを発揮しないでほしい。
 くにくに、ぐにぐに、彼の指先が私の乳首を弄ぶ。背後からの吐息が首筋をなでる。気持ちいい、気持ちいい、もう快楽に頭を支配されてもう他のことは考えられない。おかげで当然のことながら私はまたすぐさま上り詰めてしまった。
 本体のエースにもたれながら必死で息を整える中、分身のエースにパジャマのズボンを抜き取られる。そのまま彼はショーツの上から陰核を押しつぶしてきた。バチバチと瞼の裏で白い光が弾ける、そんな状況だからまともに呼吸ができるはずなくて。ぐずぐずしているうちに最後の一枚も奪われてしまった。

「濡れすぎておしりの方まで垂れてんじゃん」
「う、うう……」
「そっちの方がオレ達には好都合だけどね」

 分身のエースの指が膣口をくすぐる。対する本体のエースはお尻の割れ目へと手を挟んできた。確かにそちらを使うのも慣れてしまったけれど。でもてっきり三人ですると言っても、こんなことになるのは想像してなくて。
 無理だと伝えるべく口を開こうとした瞬間につぷりと膣内へ指が差し込まれた。長い指が膣内をかき混ぜる。ぐちゅぐちゅ品の無い水音を私が撒き散らしている間、本体のエースは後孔をひたすら撫でていた。私が堕ちるのを待っているとばかりに。
 膣内をまさぐる指にまたしても絶頂を迎えて間もなく、後孔へも指が潜り込んでいった。

「ッひう♡ やあっ♡ うごか、あああっ♡」

 本体のエースを後孔に沈めた状態で寝転ばされ、おなかに付くぐらい足を持ち上げられた私は息を吐く間もなく、分身のエースの熱を膣へと埋められていく。後ろに既に入っていたせいで窮屈なのか、膣の肉を割る質量はいつもよりゆっくり進んでくる。全部入り込んだ時にはどちらもギチギチに広げられて圧迫感が凄まじい。
 なんて体勢だ。そう不満を心の中で唱えたところで現状は変わらない。彼にかけられた避妊魔法とついでにその副作用で催淫効果を持つ紋様が私の下腹部でピンク色に輝いているのがいやに目に付く。ただ二人分の熱を受け止めているにも関わらず、恐怖心や痛みが無いのはきっとこれのおかげだろう。

「ちゃんとオレ達のこと受け止められてえらいじゃん、
「わたし、えらいの……?」
「うん。良い子……ハハッ、ねえ今締まったんだけど。なに、お前褒められると気持ちよくなっちゃうわけ?」

 かわいい、と囁かれて彼の質問を肯定するかのよう、きゅうと分身のエースの熱を締め付ける。その時おなかに力が入ったのか、本体のエースも「あ、ホントだ」と呟いていた。
 楽しげな、私にとってはおそらく都合の良くない声である。でも私はエースにならいじめられるのも好きだ。今日だって普通に考えたらわりと酷いことされてると思う。だけど私は結局何をされてもエースが大好きで。
 分身、本体の順番でキスされる。ただでさえおなかいっぱいなのに二人ともまた大きくなった。そう、エースもちゅーしただけで興奮しちゃうぐらい私が好きだから。つい全部許してしまうのだ。

「んんぅっ♡ えーしゅ♡ えーしゅ♡」

 ゆっくり引き抜かれて押し込まれて。いつもより狭くなっているせいか、二人の熱の形をはっきりと感じ取ってしまう。同時に両方を責められて、どっちがどうなっているのかさえわからない。おなかいっぱいで苦しいのにそれ以上に気持ちいい。
 腰の動きはそのままに、分身のエースが陰核をいじめる。気持ちよすぎて喘ぐというより泣いてる状態になっても止めてくれない。もう涙や涎で酷いありさまだろうに、それでもエースは「とろとろの顔しちゃってかーわい♡」とか「その声すごくクるんだけど」と甘やかすようなことを口にする。
 ごりごり奥を擦られる快楽に頭がおかしくなりそうだ。強すぎる快感に逃げようとしても分身のエースに上から押さえつけられて全く身動きが取れない。私が全く痛がってないから二人とも容赦なく揺さぶってくる。
 だんだん早くなるピストンに彼らの限界が近いことを悟る。でも私にできることなんて何もない。好き好きと甘ったるい声で唱えて、ただただ二人の熱を締め付ける。
 分身のエースにキスされた瞬間、中で二人の熱がドクドクと脈打った。最奥に叩き付けられる精液の感覚にがくがく体を震わせる。その間も意志とは関係無く、私の中は一滴残らず搾り取ろうとするかのよう、うねり続けていた。
 ずるりと熱が引き抜かれて、おなかが空っぽになる。ぽっかり開いたせいで精液もどぷりと溢れてしまった。それが寂しくておなかを撫でていれば、本体のエースが手を重ねてくる。

「お前って本当にオレのこと煽る天才だよな」
「まあ元々これで終わるつもりなんかないんだけどね」

 そう言って、エースはまだ息を整えきっていない私を反転させる。そして今度は本体が前で、分身が後ろにして、また二人の熱が埋め込まれる。欲望のまま貪りつくされて、私の嬌声は明け方まで続くこととなったのだった。

 二人のエースに何度も何度も抱かれ続けていた中、突然「あー時間切れだわ」とこぼして分身のエースは突然消えた。ちょうど交代しようと抜いたところだったから、そこでおしまいになったけども。
 ぐったりしている私の頭を撫でながら「またしような」とエースは言う。お断りだ!と怒られるなんて全く思ってない、そんな顔だった。なんて奴だ。その通りだよ!
 図星をつかれて恥ずかしいから何とか反撃しようと下手に口を開かず考え込む。そういえば今日のエースはいつもよりも激しかった気がする。あれはたぶんヤキモチ焼いてたんだ。
 だからそれを指摘してやれば、エースはきょとんとした顔をしていた。あ、あれー? 良い線行ってると思ったんだけど。

「ち、ちがうの……?」
「それもあるけど、それだけだと思った?」

 つい質問する私にエースは尋ね返してくる。質問に質問で返さないでほしい。私がむーっとなっているのに対して、エースの目は熱っぽかった。その甘い眼差しに何も言えなくなる。私の頭を撫で続ける手はどこまでも優しい。

「お前がオレのこと、めちゃくちゃ大好きなんだって実感して嬉しいから止まらなくなったんだけど」

 男心わかってないね、お前。そう微笑むエースは人の事言えないぐらい、私への愛情を隠せてなかった。

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