つまりは相思相愛ってこと

ッ!!」
「来たか、トラッポラ」

 急いで魔法薬学室へと駆けつけたオレをクルーウェル先生が出迎える。
 彼に保護されていると聞いていたが部屋の中にの姿は見えない。キョロキョロするオレに、緊急用のベッドがある準備室の方に匿っているのだと先生は口にして、それから。

「トラッポラ、もし監督生の顔が溶けていたとしたらどうする」

 先ほど彼からきたメッセージにはが魔法薬を浴びせられたと書いてあった。命には別状はないらしいが、そんなことになっていたなんて。先生の言葉から頭に浮ぶのは先日彼女と見た映画に出てくる硫酸をかけられたゾンビの姿だった。
 けどオレが言うべき台詞は決まってる。

「オレが治しますよ。オレ要領良いから、そのくらい楽勝なんで」

 自信に満ちあふれたように言ったつもりなのに声も手も震えていた。その程度の虚勢に彼が騙されるはずもなく、フーッと先生は大きく息を吐く。
 けど発言を翻す気はさらさらない。は気にしてオレを遠ざけようとするだろうけど絶対に離れてやらない、どんなに時間がかかったとしても治療法を見つけてやる。
 言い切ったオレに先生は何故かばつが悪そうな顔を向けてきた。その後すーっと先生は目を逸らす。

「あーなんだ、試すような真似をして悪かった。別に仔犬の顔は溶けてない」
「は?」
「やむを得ないとはいえ、治療法が俺の立場的にも心情的にも勧めがたくてな」

 密かに意気込んでいたオレの出鼻をくじいて、先生は改めて説明し始めた。
 犯人はが好きだったらしい。だがにはオレという恋人がいる。だからに恋を忘れる薬と惚れ薬を盛って寝取ろうとした。
 だが、かけられた直後には逃げ出して、先生の元に匿ってもらったのだと。また惚れ薬というのは大抵は精力剤であり、彼女が浴びたのもただの媚薬だった。
 今のはオレに恋していたことだけをスッパリ忘れた状態かつ媚薬に苦しめられている。そして恋忘れの薬は効能を話しても効果が切れるまでは理解できない上、どちらの薬も治すには対象へ真実の愛を抱いている相手と身も心も繋げる必要があるのだと。
 真実の愛だなんてまるでRSAの教科書に出てきそうな解決法だけど、つまりセックスしろということらしい。確かにそれは言いづらいだろうけど。
 今更ながらとんでもないことを口にしてしまったと実感するオレに先生は準備室の扉を指さす。

「恋を妨害する薬なんてものは真実の愛には必ず負けるようにできている、だからあの質問に迷わず覚悟を決めたお前は合格だ。俺の私物だが多少汚しても許してやるから行ってこい」

「……えーす?」

 後ろ手に扉を閉めれば、とろんと熱に浮かされたの目がこちらへと向けられる。オレの姿を捕らえた途端の表情が和らいだ。先生は薬のせいで怯えられるから離れていたと言っていたのに、オレにはむしろ安心した様子を見せることについ嬉しくなってしまう。
 が寝かされていたベッドは昔家族で泊まったリゾートホテルのそれと遜色がない。先生は仕事で泊まり込む事もあるから用意したと言っていたが、だとしてもこれはいくらなんでも馬鹿でかすぎるだろ。
 今回のために誂えたかのようなサイズに動揺しながらも彼女に触れられる距離までベッドに近づく。

 熱いからかのジャケットとベストは床に落ちていた、見当たらないけどネクタイも外したようだ。身を起こした彼女のブラウスの胸元は大きく開かれ、白い下着がチラッと覗いている。
 そんなオレの視線に気付いたらしいが両胸を腕で隠す。変なもの見せてごめん、とこぼした声はいつも以上に弱々しい。その下だってオレは知ってるのに。
 どうやらは初めての時と同じく、自分の体は魅力的でないと思い込んでいるみたいだった。

「あの私、ちょっと風邪っぽくて。しばらく寝たら治ると思うから」
「そうじゃないでしょ」

 やっぱり逃げようとする。だから乱雑に靴を脱ぎ捨て、ベッドの上に乗り上がる。それからいつものように抱きしめればの体は強ばった。普段なら嬉しそうに腕を背中へ回してくるのに、異なる彼女の反応に仕方がないとはいえ少し寂しくなった。
 今のはオレに恋してない。だったらもう一回意識させればいいだけだ。少し体を離しての顔を見つめる。

「オレは絶対にお前のこと治してやれる」
「え、えーす、それ、って」
の事が好きなんだよ、ずっとずっと前から」

 オレの言葉に薬のせいで紅潮していたの頬が更に赤らんでいく。前に告白した時もこんな風に真っ赤になったっけ。あの時はもオレのことが好きだったから上手くいったけど、今はどうなってしまうんだろう。
 拒絶するの姿を想像して胸が痛くなる。できることなら無理強いはしたくない。けどもし断られたら例え嫌われてもそうするしかないんだ。そうじゃなきゃはいつまでも苦しいままなんだから。
 無意識のうちに爪が食い込むほど拳を握り込んでしまう。そこへの手がそっと添えられた。

「えーす、あの、ね。わ、たし、はじめてなのに、こんな状態で、きっとすごく、へんだと、思う」

 ——それでも嫌わないでくれる?
 オレと同じように怯えた瞳をしたがたずねてくる。今のにとってはもっと不安なことをされるのに、一番怖いのはそこなんだ。想像だけで溜まってしまったらしい彼女の目尻の涙を指で優しく拭う。

「んっ」

 死んでも嫌ってやるもんか、その思いを伝えるべくの唇を奪う。
 緊張からか、いつもなら緩く開いている唇はぴったり閉じられていた。だからまずは触れ合うだけのキスを繰り返し、緩んだ隙に舌を口内へと滑り込ませる。逃げようとする舌を強引に捕らえて絡ませた。
 初々しい反応に優しくしてやるべきだと思っているけど、どうしても興奮を押さえられそうもない。好きな子を前にした男子高生の自制なんてしれている。
 覆い被さるようにしてをマットレスへと押し倒す。無意識の上目遣いにだいぶクラッとした。

「あっ♡」

 媚薬のせいで敏感になっているんだろう、ブラウスの上から軽く胸に触れたなら、普段よりも甘い喘ぎ声がの口からこぼれる。それにはひどく混乱しているようだった。
 咄嗟に口を押さえようとする彼女の手を強引に下ろして、ブラウスのボタンを外していく。

「えーす、だめっ、わたし、おっぱい、ないから、がっかり、しちゃう、から」
「やだ」
「ッあ、あ♡」

 ブラジャーを脱がそうとするオレをが抵抗する。だけどもおかまいなしにホックを外してずり上げたなら、もうこっちのものだ。
 ふにふにと小ぶりな膨らみを緩く揉む。自分のせいでよりやわらかくなった胸の感触を楽しんでいれば、次第にの息が上がってくる。
 わざと触っていなかった胸の先ではなく乳輪を舌先でなぞる。焦らすように丁寧に舐めれば、いつも通り「早く」とは呟いた。ただそれは咄嗟に口から出てしまったらしく、彼女はまた戸惑っているようだった。記憶になくとも体は覚えているのか、縋るような目ではオレを見る。
 ご希望通りようやく胸の先に舌を這わせてやる。舐めて吸って甘噛みして、少しばかり強く刺激してもは気持ちよさそうだった。最初からこうだったわけじゃない。快感に怯えてしまうような無垢だったをオレがここまでいやらしい女の子にしたんだ。
 胸への愛撫を続けていれば、ぴくぴくとの体が震え始める。もしかしてと思いながら、舌の動きはそのままにもう片方を指で弄ってみる。それに彼女はオレの頭を引き剥がそうとするけれど腕に力が入らず上手くいかないようだった。

「えーす♡ えーす♡ なんかきちゃ♡ あっ、あああ♡」

 そうしてるうちに案の定は絶頂を迎えたようだった。オレとセックスするまでオナニーすらしたことのなかったにはイく感覚なんてわかるはずもなく、未知の体験と過ぎた快感から涙目になってしまっている。
 怖がっている彼女を宥めるようにキスをして、らしくないと思いながらも素直に「かわいかった」との耳元で囁いた。
 それだけで安心したようにふにゃと唇を緩ませるのだから、なんというか。思わずもう一回口付けるオレには目を細めていた。
 下を脱がそうと掛布をめくってギョッとさせられる。寝るのに邪魔だったからか、はベルトは着いていなかった。それはわかるけどもなんでズボンまで履いてないわけ?
 さっきチラッと確認した時は気付かなかったけど、よくよく見ればジャケットと一緒に脱ぎ捨ててあった。いくら薬のせいで熱いからってお前ね。
 あまりの無防備さに頭痛を覚えつつもショーツの上から秘部を軽く押す。薬の効果か、のそこはクロッチ部分が薄く透けるぐらいに濡れてしまっていた。絶景に思わず喉が鳴る、すっげーエロい。
 普段ならここぞとばかりにいじめてしまうところだけど、さすがに一応処女の監督生にそれはだめでしょ。荒ぶりそうなイタズラ心を押さえつけながらのショーツを足から抜き取って、近くにあった枕をの腰の下に差し入れる。
 それから彼女の両足を開かせて、その間に自分の体を挟み込んだ。オレの好きにされながらも、恥ずかしさに耐えるよう健気にきゅっとシーツを握るはたまらなく可愛かった。

「きゃぅ♡ ぁああ♡ らめっ、えーす♡ そこは、あっ♡」

 溢れてる愛液を掬い取ってクリトリスに優しく塗りつけるようにして刺激する。これまでの愛撫に充血して少し大きくなったそこは殊更敏感になっていた。だからあんまり力を込めないよう気を付けながら親指で捏ねる。一度イっていたこともあって、はすぐに二度目の絶頂を迎えた。
 くったりしているにキスして、潤っている膣口へと指を這わす。うん、これなら確実に痛くないだろう。ゆっくりと指を膣内へと潜り込ませていく。
 絶頂でわけがわからなくっているうちに済ませたかったけれど、思ったより早く冷静になってしまったらしい。異物の侵入にの体が強ばった。元々狭いのに力むせいでの内壁は俺の指をギチギチに締め付けてしまう。
 けどたっぷり濡れているおかげで何とか動かせそうだ。怖がらせないようにゆるゆるとの中を探っていく。

、痛い?」

 ぶんぶんと勢いよくは首を横に振る。その必死すぎる姿は普段ならからかうためのネタにしていたけど、初めてでパニックになっている彼女にそんな真似はしない。というかオレも今はそんな余裕がなかった。
 の様子を窺いながら慎重に指を増やす。中の良いところを刺激すると同時に胸の愛撫も忘れない。
 オレは巨乳が好きで、はそのことを知っている。だからは胸にものすごくコンプレックスがあった。そしてそれはオレを好きになってしまってから抱いてしまったらしい。確かにの胸は理想からは外れてたけど、男は女の子が思ってるより単純で。男にとっては好きな子のおっぱいってだけで特別なのにな。
 そういったわけで本当の初めての時もはオレに嫌われるんじゃないかって怯えてて、だからこそオレに胸を触られるのを喜ぶ傾向にあった。
 まあつまり何が言いたいかって言うと、さっき胸を見ようとした時の発言からして、はまたオレに恋してくれているってわかったのと、安心させる為にすげえおっぱい触ろうってことだ。
 しばらくしての足先がピンと伸びる。三度目の絶頂を迎えたの中はすっかりやわらかくとろけていた。うん、そろそろいいだろう。
 指を抜いてズボンの前をくつろげる。パンツを下ろせば自分でも引くぐらいガチガチになった息子が飛び出してきた。見てられなくて急いでポケットからゴムを取り出して装着する。
 の秘部に自分のそれを擦り付けようとしてオレは固まった——がぽろぽろと涙を流していたからだ。

、ごめん。嫌だった?」
「ち、がう。いやじゃ、ないの。えーすと、えっちしたい、の」
「ッン゛、そ、そう。じゃあ、なんで泣いてんの?」
「えーすがなれてるから、それで」

 ぼろぼろといっそうが泣きじゃくる。面倒くさくてごめんなさいと謝るを宥めながら話を聞いたところ、どうやらオレがの裸を見ても動揺しなかったり、愛撫が上手かったり、枕を腰の下へ挟んだことにオレが経験豊富だと思い込み……過去の女(お前だよ)に妬いてしまったらしい。
 からして見ればこれがオレ達の初めてのセックスなのだからそう思うのは当然なんだけども。胸がぎゅーっとなる、なんでこんな可愛いこと言うかなコイツ。

「お前しか知らないけど」

 むちゃくちゃにされた情緒はなかなか平常に戻ってくれない。おかげでちょっと拗ねたような口ぶりになってしまった。
 が追求した通り慣れてるし童貞ではないけど、嘘は言ってない。オレはしか知らないし、お前だってオレしか知らないんだから。
 オレの発言にぽかんとした後、嘘ではないと判断したらしい。おずおずとは口を開く。

「じゃあ、私を、エースの初めての女の子にしてくれるの?」
「初めても最後もお前のものだし、のはオレのものだから」
「……うん、全部エースがいい」

 ぎゅっと抱きついてくるにキスをしながら押し倒す。
 さっきの体勢に戻ったところで、濡れそぼった秘部に先端を宛がった。初めての痛みに備えてが固く瞼を閉じる。本当はいっぱいしてるし、これだけ濡れていたら問題ないと思うけど……。
 女の子ってセックスにおいて精神的な影響が大きいって言うよな。念のため、力を抜かせるためにも耳を甘噛みする。今日はあえて避けていたけど、ここもオレが開発した性感帯の一つだ。そちらに気を取られている隙に腰を進めていく。

「ひぁああっ♡」
 
 全部収まった瞬間にまたが絶頂する。入れただけでイくなんて媚薬って凄いなと思いつつ、薬が抜けた後にいずれ挑戦しようと心に決めた。びくびくと跳ねたままの腰を掴む。
 体を繋げればと言っていたけれど、どうやらまだの記憶は戻っていないようだった。なら今のにとってこれは初めてのセックスになるんだろう。
 初めての時のことは必死すぎて正直あまり覚えてない。ただできる限り優しくしようと、それだけを頑張ってた気がする。

「ん、ああっ♡ えーす♡ えーす♡」

 ——少なくともこんな容赦なく奥を責めたてたりはしなかった。
 度重なる絶頂で下りてきていた子宮の入り口を先端で何度もノックする。そのたびには軽く果てて。最初こそ我慢しようとしていたみたいだけれど、オレが邪魔をせずともは大きな声で甘い声を上げていた。
 ぐずぐずに泣き喘ぐ姿にどうしようもなく興奮する。オレのせいでぐちゃぐちゃになるが可愛くて、ついつい腰を打ち付けてしまう。オレだけを知っている中はすっかりオレの形になっていて、ひどくいやらしかった。

「わ、たし、はじめてなのにっ、きもちいい、きもち、いいよぉ」

 経験が無くても今の感じようがおかしいのはわかるらしい。えっちな女の子でごめんなさいと謝りながらはイく。ウブな台詞と乱れ具合ときゅうきゅう締め付ける中がちぐはぐで、そのアンバランスさにいっそう欲情する。そんな言葉、男を煽るだけだっつーの。
 早く思い出してほしい。忘れられているのが苦しい。密かに抱いていた願いからか、普段はなかなか言えない本音が、驚くほど素直に「好き」の言葉が口を出た。名前と一緒に繰り返してやれば、も同じようにオレの名前と一緒に「大好き」と返してくれる。
 キスしながら最奥に自身を押しつけた状態で同時に絶頂を迎える。処理を終えた後、を抱きしめるようにしてオレも眠りに就いた。

 目覚めた時には薬はの体から無事に抜けていた。先生との間に微妙な空気をかもしながらもお礼を告げて部屋を後にする。
 色々あったから外はすっかり暗くなっていた。今回の犯人については現在ヤバイ懲罰を受けているとはいえ、また何かあったら困るということでオンボロ寮までを送り届けることにして。

「そういえばね、エースに言いたいことがあったんだ」
「何?」

 帰り道を雑談しながら並んで歩いていたところ、が突然足を止めて口を開く。
 街灯に照らされた彼女は照れくさそうにはにかんでいた。

「付き合ってたことは忘れちゃってたけど、私ねエースのことが好きなままだったんだ。私もずっとずっと、エースが好きだったよ」

 ——恋を妨害する薬なんてものは真実の愛には必ず負けるようにできている。
 先生がオレを送り出す直前に言い放った激励を思い返す。理解したオレのカッコイイとは言いがたい表情をは嬉しそうに見つめていた。

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