好き好き大好き愛してる

 これは雑誌の受け売りだが、女性が男性の好きなパーツについてアンケート調査するとほぼ確実に『手』か『指』がトップにくるらしい。それだけ男性の手フェチの女性が多いということなんだろう。そしてもれなく私もその一員だった。
 男の人が張り出したおっぱいやお尻に目が行くのと同じで、私もついつい男の人の手に注目してしまいがちだ。清潔感があって、手が大きくて、適度にゴツゴツと骨張っているとついついセクシーだなとドキドキしてしまう。
 だからエースの事を好きになったのはそれだけじゃないけど、彼が綺麗な手の持ち主だったのはかなり大きかったかもしれない。恋人であるエースの手は私にとっては理想そのもので、おかげで気付かぬうちに見惚れていたらしい。
 だから隠していたつもりだったが、付き合って早々に手フェチであることがバレてしまったし、なので当然エースの手が大好きなこともバレバレだった。
 おかげでエースは己の手のアドバンテージを事ある毎に生かしてくる。手をにぎにぎしてサイズの違いを示してきたり、お前こういう仕草好きでしょとか仰る通りの動きをしたり、私のフェチ心を大いに満足させて。
 あげくのはてには「手フェチの女の子って好みの手に対して触られる想像するんだってね……のえっち♡」なんて爆弾落としてきたりしている。
 なお反論しようにも図星だったし、改めて自分で調べてもエースが言った通りだった。なんなら指はセックスシンボル!とか指から相手のセックスの傾向がわかる!などなど彼の発言に援護射撃するような情報が盛りだくさんで私のLPはもうゼロだから許して。

「ぅん、ん……♡」
「お前ホンット、オレの指好きだね」

 まあ当然エース相手じゃ許されないんだけどね。なんてオーバーキル。そんなこんなで今日も私は彼の指にメロメロにされていた。
 口に差し込まれた彼の人差し指と中指にちゅうちゅうと夢中で吸い付く。グリムがおでかけしていて、ゴーストのおじさん達も気遣って近寄らない私の自室は真夜中という時間帯も手伝ってひどく静かだ。おかげで私がエースの指を愛撫する音と、お互いの興奮が表れた息遣いがよく耳に付く。
 客観視できないから上手くいってるかわからない。でもできるだけエースの興奮を誘おうと、いやらしく見せつけるように付け根から指先に向かって舐めあげる。咥えた後だから効果は半減してる気もするけど、一本一本丁寧に舌を這わせていく。
 私が一方的に触ってるだけ。なのに大好きな彼の手に愛撫しているという事実にさっきからずっとおなかがきゅうきゅうと疼きっぱなしだ。全部全部触ってほしい、彼の指先が体中をなぞっていく想像に全身が熱くなる。
 それもこれもエースの手がえっちだから悪い。私がえっちなんじゃない、エースの手がえっちにしてるだけだ。

「ふ、ぁあ♡」

 しばらくエースは私に好き勝手されていた。けれどそれでは満足できなかったのか、はたまた彼を煽るのに成功したのか。打って変わってエースの指が私の口内をまさぐり始めた。
 上顎を優しくなぞられてあまりの気持ちよさにぎゅっと瞼をつむる。エースは喉奥に指が行かないよう慎重な動きを見せている。けれど的確に性感帯を刺激され、私はただただ快感に流されていく。さっきまで私がアドバンテージを握っていたはずなのに、あっという間に逆転されてしまった。

「んっ♡」
「オレの指が大好きなお前の為にも、今日の愛撫は指だけにしちゃおうかなー」
「……じゃあ、ちゅーしないの……?」

 唾液まみれになってしまった手をベッドサイドのティッシュで拭った後、首筋を彼は指でなぞる。大好きなエースの指にいっぱい触ってもらえるのは嬉しい。でも彼の言葉から今日はキスおあずけなのかとしょんぼりしてしまう。こんなことなら、さっきした時にもっとっておねだりしておけばよかったな……。
 若干拗ね始めていたところ、エースが何とも言えない表情でキスしてきた。それに喜ぶと同時、胸の先端をくにくにと彼の指に遊ばれる。
 服を着たままなのになんでこんな的確に乳首をいじれるのか。そんなくだらない疑問はすぐに快感に塗りつぶされる。思わずあがった嬌声は唇を塞がれているせいで、いつものそれと違ってくぐもっていた。
 服と言ってもエースからもらった無地のTシャツ一枚だ。薄い生地は興奮からそれがツンと立っている様も、いつもより濃くなった赤色もありありと示してくる。そうなるように誘導されているとわかっているのに、自分の淫らな姿が恥ずかしくてたまらない。
 Tシャツの裾からエースの手が入り込む。迷わず胸に来るかと思いきや、おなかを優しく撫でて、次も腰や脇と焦らしてくる。視覚からの刺激は無くなったけど、見えないからこそ何をされるかわからない緊張と想像に過敏になっていた私はそれらにも快楽を得て。
 エースの手が胸に来た時には息絶え絶えになっていた。だからといって私の恋人は手加減してくれない。むしろ好機とばかりに責め立ててくる。ささやかすぎる私の膨らみは触っていて楽しいものじゃない、でもエースは私の胸をたくさん触ってくれる。快感と喜びと、それから『あの綺麗な手が私の胸を楽しんでいる』という事実にぞくぞくと体が震えていた。
 たっぷり胸をいじめた後、エースは私の寝間着を脱がしにかかる。彼のお古であるそれはゆるゆるだったこともあり、すぽんと頭からあっさり抜けていった。ついでとばかりにショーツも没収され、シーツへと押し倒される。

「ここ、いじってほしい?」

 秘部の割れ目に添うように指を動かされ、わかりきったことをエースはたずねてくる。最初の頃は頷くだけで進んでくれたけど、今は言葉にしないといつまでもおあずけされてしまう。
 だから体温が上がっていくのを感じながら「さわってほしい」と口にする。もう何度も繰り返してきたやりとりなのにどうしてこんなにも恥ずかしいんだろう。

「あっ♡ あ、ああ♡」

 充血し膨らんだ陰核を弾かれて思わず腰が揺れる。指の腹で優しく撫でられるのも、とんとん叩かれるのも気持ちよすぎて頭がびりびりする。急に摘ままれた瞬間、目の前が真っ白になってかくかくと下半身が跳ねた。
 絶頂の余韻に浸る間もなく、膣内にエースの指が入り込む。ゆっくりだけども一気に二本も。だからといって彼とのセックスに慣れた内壁は痛みを覚えたりしない。彼の指使いが丁寧なこともあって、ただただ気持ちいいだけだ。
 下腹がうずいて熱い。整えられたしなやかな、そして何より大好きな彼の指を私の体は歓迎する。私の中を掻き回すその指へすがるように絡みついて、抜き差しされるたびに離れないでとばかりに締め付ける。あまりに正直な反応にみっともないと思ったところで止められない。
 更に増えた指によって、みちみちと隙間無く埋められているはずなのに零れた愛液がシーツへと垂れる。さっきから私は何度も甘イキを繰り返していた。その度にぎゅうと指を銜え込んでいるから、きっとエースも気付いていることだろう。
 いつもこんな感じだけど、以前私ばっかりイってごめんなさいなんて謝った日には大変な事になった。彼女がオレの指で気持ちよくなってるの見て喜んでないと思ってたわけ?なんて言われながら、頭がおかしくなりそうなぐらい、いじめられて。
 でも嫌じゃないくせにと責められて……思い出しただけなのにまたイってしまった。自分でも訳が分からない、でも一つだけ理解してることもある。たぶんエースのせいだって。
 指を抜いたエースからキスされる。さっきまで彼に抱いたちょっとした反抗心的なものは、その優しい唇にすぐさま溶かされてしまった。

「今日は指だけがいい?」
「やだ、エースも気持ちよくなってくれなきゃやだ……」
「そういってくれて助かるわ。こんなとろとろになってるのにおあずけとか拷問だし」

 そんな風に思ってるなら聞かなければいいのに。エースはすぐに私に恥ずかしい事を言わせたがる。ひどい。でもこんな意地悪なところも私は大好きで、それでエースが興奮してくれるなら結局は口にしてしまうのだ。
 避妊具をまとった熱が膣口に押し当てられる。先端が中へと潜り込んだ。内壁を擦り上げながら、どんどん奥へエースの熱が埋まっていく。エースの形になっていく。
 器用な彼は腰を動かしながら、胸や陰核を指で愛撫してくる。中からの刺激だけでも精一杯なのに。もはや泣き言みたいな嬌声をあげることしかできなくて、そんな私を見てエースは満足げに笑っていた。
 子宮口に先端をぐっとめり込ませながら、エースは私のおなかを軽く押す。オレのここまで入ってんの、わかる?と彼はその存在を意識させてきて。私の全部をエースに征服されているような錯覚に酔わずにはいられなかった。
 彼が私の体を揺さぶるたびにぬちゅぬちゅと音が立って、エースの熱が特に感じるところを突いてくる。快楽に溶けきっていれば、彼は私の頭を撫でてくる。下腹部からの強烈な快感、髪から与えられる心地よさ、その二つの同時進行に混乱しているうちに私の脚がピンと伸びた。
 キスされながら、胎内でびくびくと震えるエースの熱を感じ取る。本当はこのままがいい。でもエースは早々に離れてしまう。それは私の事を大事にしてくれてる証拠で、避妊した意味が無くなっちゃうからしょうがないとはいえ、少し寂しい。
 すりすりと唇をエースの指が撫でる。お返しに彼の手にキスすれば「オレの手、そんな好き?」と訊ねられた。

「エースが好き」
「……答えになってないでしょ、それじゃ」

 全部ひっくるめて好きだってことだと付け加えるとたぶん照れギレするだろう。現時点でそっぽ向きながら耳を真っ赤にしてるぐらいだし。
 手フェチはともかく、私がエースを大好きなことなんて第三者から見てもバレバレなのに。もっと恥ずかしいことは平気で言わせるくせに。好意をまっすぐ伝えられることを彼はひどく恥ずかしがる。
 でも言ったところで照れるだけで別に嫌がってるわけじゃなくて喜んでるのはわかってるので、たまに言っちゃうんだけどね。
 巨乳好きなのに私の平たい胸に興奮するし、私の手フェチに積極的に付き合ってくれるし、私からの好きになんだかんだすごく喜ぶし、エースは私フェチだよなあ……なんてエースが知ったら確実に照れブチギレするような事を考えながら「エース大好き」と彼に追い打ちをかけて、私は再びシーツに沈む事となるのであった。

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