それはそうだが、これはこれ

 私が昨日フった男子に、エースがユニーク魔法をかけられた。凶悪かつ強烈なその効果を私達は身をもって思い知る事となったのだけれど、ひとまずそれを実感させられた経緯について話すとしよう。
 まず朝、突然エースから「今日一日オレに絶対近づかないで」とメッセージが送られてきて。理由が書いていなかったのは気になったけどお願いされていた通り、私は彼から距離を置いていた。
 デュースはいつも通り一緒に過ごしてくれたのだけれど、事情については知っていても話してくれず。複雑な気持ちになりながら普段と同じく体力育成の授業に備え、医務室のベッドで着替えていたところ、その事件は起こった。
 入り口の鍵は閉めたはずなのに誰か入ってきたのだ。と言っても医務室の先生だろうなと私は特に気にとめていなかった。鍵を開けられるのは先生だけだし、彼は事情を知ってるのでカーテンを開けることはない。
 だけどブラウスを脱いだところで思いっきりカーテンを全開にされた、魔法が切れるまでサボりに来たエースに。
 声にならない悲鳴を上げた後にエースが謝って、そしてわかったのだが彼は『異性とラッキースケベをしてしまう』ユニーク魔法をかけられたらしい。
 なんだそのクソ魔法と思ったけれど、更に話を聞いたところ私が原因っぽい可能性(教えてないけど私の想い人であるエースへの八つ当たり)が浮上してきて。
 今回は偶然かもしれないし、例え距離を置いてても発動するみたいだし、自分が遠因を担ってるかもしれない状況に責任を感じたこと、あとは別にエースにならえっちなことされても嫌じゃないしな……ということで、そこからはいつものように過ごしていたのだけれど。
 まあ次々と起こること起こること。こけそうだった私を支えて胸を触ったり、脚立から落ちそうになったのを助けようとしてくれたエースの顔に跨がったり、二人で資料室の整理をしてたらいきなりベルトが千切れてパンツ丸出しになったり、それを隠す為にエースが脱いだブレザーをかけようとしてくれた瞬間に近くにあった魔術システムが誤作動してとんでもない体勢で箱詰めにされたり……。
 ちなみに箱詰めにされているのは現在進行形だし、ついでに私の下半身はパンツ一丁である。しかもエースの腰の辺りに跨がって密着してる状態なのだけれど、狭すぎて体勢は変えられない。あと顔がすごく近い。これどうしたらいいの。
 光が入るような隙間は無いのに、彼の表情がわかるぐらいの明るさは保たれているのがまた困る。何か内部に空気の循環と照明の魔法がかかっているらしいけども、エースの魔法は発動しないとの事だった。
 窒息の恐れはないとしても、このままではいられない。どうやったら脱出できるのか。あとどのくらい閉じ込められるのか。さっぱりわからないけど、とりあえずトイレに行きたくなる前には解放してほしい。好きな人の前で人権を失いたくないのだ、乙女心とか以前に人間として。

「絶対アイツしばく、絶対アイツしばく、絶対アイツしばく……」

 現状が辛いのだろう、エースは呪詛のように延々と犯人へのしばく宣言を繰り返す。私もゴールデンクラッシュするつもりだったので奇遇だね、ここ出たら一緒に殴りに行こうね……。
 私はあいにく羽のように軽かったりはしない。そして好きな人に重いと思われたくない一心でさっきから微妙に腰を持ち上げて頑張っているんだけど、足がぷるぷるしてきた。こんなことならもっとスクワット頑張っておくんだった……!
 そうやって無理な体勢を取っていたせいか、箱の狭さも相まってやたら汗をかいてしまっている。エースに臭いとか思われてたらどうしよう。ただ汗をかいているのはエースも同じみたいで、さっきよりも彼の匂いを強く感じた。それにドキドキしてしまったことで体温が上がって、なんだか悪循環に陥ってるような……。

「ひあっ」

 足が限界を迎えた私は「エース、重くしてごめん」と謝るつもりで腰を下ろそうとしたのだが、その前にごりっとお尻に固い物が当たる。びっくりして思わず悲鳴をあげた私はそこへ座り込んでしまった。
 私のお尻の下にあるから見れないというのに、おそるおそる視線を下げようとすれば「やめて」と遮る声が飛ぶ。そして見たエースの顔はかつてないほど真っ赤になっていた。彼は頑張って顔を逸らそうとしているけれど、スペースがなくてそれは叶わない。
 さすがにうとい私でも現状はわかる。いくら好みから外れた異性の友達が相手とはいえど、さすがに高校生男子には刺激が強かったみたいだ。多感な時期っていうもんね。
 だから、ただの不可抗力だって自分に言い聞かせてるのにエースが私で興奮してくれたんじゃないかと嬉しくなってしまう。


「は、はい!」
「オレ相手に敬語って……どんだけ緊張してんの、お前」

 そりゃ緊張だってするだろう、この状況なんだから。なお反論できるのは心の中だけだ。もはや告白と匹敵するような本音を口に出せるはずがなかった。
 ぺたとエースの手が私の頬に触れる。顔は相変わらず赤いけど、見る限りエースはさっきよりも落ち着いていた。私はもっと赤くなってるだろうし、まだあわあわしてるのに。

「なんで今日オレがお前を避けようとしてたか、わかるよな?」
「私にラッキースケベしない為だよね」
「半分だけ正解。お前に軽蔑されたくなかったの」
「するわけないよ。仕方ない状況なんだし」
「今も引いてる気配ないもんな……こんな時に言いたくないけどオレさ、好きな子に嫌われたくなかったわけ」

 思わぬ言葉にぽかんとする私にエースは「アホ面」とからかってくる。事実だろうけど、ちょっとムカついた。
 それからぎゅっと抱きしめられる。私の気持ちはまだ伝えてない。それで慌てて「私も」と口にすれば「知ってる、さっきの反応からしてお前がオレのこと大好きだってバレバレ」とエースは自信満々に答えてくる。反論はできなかった。
 また体温が上がる。自分の熱で溶けてしまいそうだ。たぶんもう頭の方は手遅れみたいで、ぐるぐると同じ所を回るばかり。少しでも冷まそうと体を離す。

「あ、あの、エース、前に漫画で見たんだけど」

 実はずっと気になっていることがあった。でも冷静になる前に更なる衝撃を加えられて、私の思考はどんどんおかしな方向へ進んで戻れそうもない。だからここでの私が行うべきはは口を噤む事、決して疑問を紡ぐべきではなかった。
 でもそう理解しているのは働かない私の理性だけ。他に自分含め、止められる人はここにはいなくて。

「ズボンを履いたまま、大きくなっちゃうと窮屈で、だから、その……お、おちん、ちん、痛く、ない?」
「…………今、お前のせいですごく痛くなった」
「えっ!? あの、えーっと、私に何かできることある……?」

 もう黙ってくれとばかりに唇を塞がれる。ファーストキスにしてはいささか荒々しいけれど、ただただ嬉しくてなすがまま受け止めた。息苦しさに口を開ければエースの舌が入り込んでくる。ぬるぬると口内を舌に舐め取られて、合わせた唇の隙間から甘えたような声が溢れた。

「ん、んぅ」

 唇を重ねられたまま、ショーツ越しにエースの熱いのが擦りつけられる。彼と違って私の性器を覆うのは薄い布一枚で。形がはっきりわかってしまっているからか、溝に添うようにしてエースは腰を前後に動かす。

「さすがに最後まではしないから。お前だって嫌でしょ、こんなところで初めてとか」
「うん、ちょっと……やだ……」
「……そこはハッキリヤダって言ってくれなきゃ困るんだけど」

 どういうことなのか、たずねる余裕は今の私にはなかった。私から溢れてしまった体液にぐちゅぐちゅという粘っこい水音が衣擦れに混ざる。次第に大きくなっていく水音にただでさえ赤い顔が更に熱を持つ。
 ズボンに遮られて入ることはないけれど、入り口にぐりぐり押し当てられて背中がぞわぞわした。私の反応が良いことに目敏く気付いたようで、エースはゆさゆさと腰揺さぶって更に刺激してくる。下から突き上げられるのが本当にえっちしてるみたいで、びくびく体が跳ねる。そして普通にえっちするよりも恥ずかしいことしてるんじゃ……と思わされて。
 たまたま割れ目の上の方にエースの先端がぶつかった時、ひときわ強い快感に襲われ、反射的に高い声を上げてしまった。さっきのは、いったい。

「やっ、あ、あっ」
「お前ここ擦られるのイイんだ」
「だめっ、だめっ、おなかきゅうってなっちゃう……!」

 ダメだと言ってるのにエースはしつこくさっきの場所を責めたててくる。押しつぶすように何度も何度も刺激されて、その度に目の前がちかちかと星が回っていた。ぶわーっと体の奥から何かが湧き上がって、限界まで溜まったそれが弾けた瞬間、がくがくと全身が震える。
 咄嗟に抱きしめたエースの体もぶるりと揺れて。荒い息と笑みをこぼしつつ、私達は唇を重ねた。

「そんなふざけた魔法あるわけないだろ! ってかマジであるなら自分にかけるし!」

 あの後すぐ箱は解除され、脱出した私達は正式にお付き合いを始めて。
 そしてあれから数日経った本日、ようやく犯人を見つけた私達はお礼参りにしゃれ込んでいたのだけれど……私達が付き合うきっかけとなった数々のトラブルはただの偶然であると知った。
 ちょっとでも罪を軽くする為にでたらめを言ってるんじゃないかと一瞬疑ったけど、あまりにも説得力のある言い訳に「確かに」と私とエースは納得するしかなかったのである。
なのでエースが三発ほど殴った後、私がゴールデンクラッシュでトドメをさした。罪は罪、罰は罰、以上!

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