終わりよければすべてよし

 私がエースへの恋を諦めようと決めたのは二年生の半ばだった。自分はいつ突然元の世界に戻ってしまうかもわからない身で、そして何より輝かしい未来が待っている彼とはあまりにも釣り合わないなと思ったのだ。
 それ以降、元の世界への執着を強めて早数年。卒業しても帰る方法は見つからず、でも私はあちらに居ることが自然なのだからと自分に言い聞かせて諦めずにいたところ。
 昨日、こちらにきて五回目の誕生日を迎える前日。私は学園長から一生元の世界に戻れないことを告げられたのだった。

「おーい、。生きてる?」
「……えーす?」
「うわ瞼パンパンじゃん」

 自宅のテーブルにつっぷして泣いていたのだが、顔を上げればそこには驚いた様子のエースがいた。肩を叩かれるまで気付かなかったが、いつのまに来てたんだろう。
 家に上がり込んでいることについての疑問はない。一番住んでいる所が近い、という理由で何かあった時の為にエースには合鍵を渡していたから。他の人には保護者である学園長にすら渡してないけど。

「どうしたの……?」
「んー? 今年祝ってやるのオレだけだし、だったらその分も盛大に祝ってやろうかなって思っただけ」

 そう言いながら彼はテーブルの上に持ってきていた袋を置く。ケーキと明日の分の材料は冷蔵庫入れたから、と袋の中身を取り出しながらエースは口にした。そこまでしてたのに気付かないって私、本当にどれだけ夢中で泣いてたのか。
 エース、デュース、グリム、ジャック、エペル、セベク……以上のメンバーで毎年誕生日を祝ってきたが、明日はエース以外、仕事が忙しくて当日に祝えそうにないと連絡が来ていた。だけど彼が訪ねてきた理由はそれだけじゃないんだろう。
 エースは取り出した酒缶の一つを私の瞼の上に当てる。ひんやりしていて気持ちいい。彼はああ言っていたけど半分は「元の世界へ帰れなくなった」とメッセージを送った私を心配して、こうして駆けつけてくれたのだと思う。
 その優しさにまた私は彼の事が好きだと胸をときめかせてしまう。とっくに諦めたはずなのに、私の浅ましい恋心はいつまでも胸の内で燻り続けていた。

「そういえば、腹減ってない?」

 宅配ピザのチラシをひらひらさせるエースに、私のおなかがきゅるると音を立てる。恥ずかしくて俯く私をエースが声をあげて笑って。ひどい。
 思わず睨み付ける私に「奢るから許してよ」と謝る彼に私は一番高いピザの名前を口にした。

 片手にカクテル、片手にピザ。後日の体重計が怖いコンボに舌鼓を打ちながら、私達は昔話に花を咲かせていた。グリムがやったあんな事、デュースとそんな事もしたなどなど、あの日々からまだ数年しか経ってないはずなのに随分遠く感じる。
 一通り思い出を語り合った後、エースが「何か欲しい物ある?」と尋ねてきたのに、酔った私はつい「家族が欲しい」なんて言ってしまって。それに彼は何も言わず頭を撫でてくれていた。
 そんな優しくしないで、エース。やっぱり諦められなくなっちゃうから。お酒のせいもあって理性がぐらつく。ふと浮かんでしまった最悪の計画を追い出すように、涙ぐみながら私はまたカクテルを口へと運ぶ。

「お前、弱いんだし、そろそろ止めとこうな」
「あっ」

 でも私のその精一杯の自制をエースが邪魔する。彼は私が持っていた缶を取り上げて、代わりに水の入ったコップを渡してきた。
 没収されたお酒はまだまだ残っていたはずだからもったいないなと思っていれば、ちょうど自分の分が飲み終わったらしいエースはそのまま私の飲んでたカクテルに口を付けて……。
 バッチリ間接キスを決めているというのにエースはまったく気にしてる様子はない。そりゃあ学生時代ならともかく、私達はもう良い大人なのだ。だからこの位でドキドキする方がおかしいのかもしれないけど。
 恨みがましい目で彼を見る私にエースは「そーだ」と何かを思いだしたようだった。

「二日酔い対策の薬、買ってきてるけど飲む?」
「前に作ったの残ってるからいい……」
「余ってたらオレにもちょーだい。お前のやつ、市販のよりオレに合ってるみたいだし」

 のろのろと薬を保管しているトレーを棚から取り出して床へ置く私にエースがおねだりする。頼み事する時さらっと褒めて気分を良くするの本当にずるいよなあ。まあそうじゃなくとも、全然余分があるので「いいよ」と頷く。
 なんでエースこのタイミングでそれを言っちゃったんだろう、最悪だ。心の中で八つ当たりしてすぐに改める。違う、エースは悪くない、私が最低なだけだ。
 魔法薬の中には魔力がなくても作れる品がある。おかげで魔法薬学は実技の中でも数少ない成績稼ぎができる科目だった。グリムにだけ負担を押しつけるわけにはいかないと頑張った結果、あのヴィル先輩が褒めてくれる程の腕前になれたのだ。
 ただ魔法薬学に関わる仕事はどれも魔力を必要とするから、それを就職に生かすことはできなかったんだけど。もし魔力があったらエースが就いてる魔法解析官にも劣らない仕事に就けたのだろう。そういったわけで趣味の範囲は超えられなかったが、今みたいに生活の中でバッチリ活用していたりする。そして、悪用も、できてしまう。

「えーっと……これと、あとこっちも入れといた方がいいかな……」

 新しいコップに二日酔い防止の薬をわけて、その中にもう三つ別の薬を混ぜる。予想していた通り、綺麗な水色になったところでエースに渡せば「サンキュー」と彼はそれを飲み干した。
 混ぜた薬のおかげでマシな味になっていたらしく彼が顔をしかめることはなかった。普段も私は魔法薬の味の調整をよくする。だからいつも通りだった。彼も、そして、私も。

、ちょっとトイレ借りるな」
「うん……」

 エースがトイレへと向かう。その背中を見つめながら、私は彼に聞こえないよう「ごめんね」と呟いた。

「……! ……っ!?」

 馬乗りになった私にエースは何やら叫んでいるが、彼の口からは全く音が出てきていない。それどころか指一本動かない状況にエースはひどく戸惑っているようだった。
 彼の体の自由と声を奪ったのは先程盛ったしびれ薬のせいである。五感を保ったまま、言動は取り除く。ジェイド先輩曰く取り立ての時によく使う薬らしい。私が作ったそれは多用しているジェイド先輩のお墨付き、自慢の一品である。
 薬の効果が出てきて困惑する彼をえいやっと押し倒して、エースに悟られることなくこの状況へと持ち込んだ私はなかなか凄いのではないだろうか。でも本番はここからだ。
 身をかがめて彼の唇に自分のそれを重ねる。エースはわからないけれど、私にとってはファーストキスだった。彼の唇の感触と吐息に心臓が爆発しそうな位ドキドキしている。だけど私はもっと凄い事を、酷い事を、今から彼にする。

「エース、おねがい。エースの赤ちゃん、私にちょうだい」

 自分のおなかを撫でながら心からの願いを口にする。私の言葉の意味を、これから起こるだろうできごとを理解したのだろう。エースは目を見開き、じわじわと彼の頬が赤くなっていく。
 全くそういった事の経験が無いし、私の貧相な体はエースの好みとは真反対だ。あとお酒が入ると男の人はできなくなりやすいとか。だからエースがそんな気になってくれるか不安でこっそり媚薬も混ぜておいたのだけれど、ちゃんと効いているようだ。既に私のお尻の下の彼の熱は固くなり始めていた。

「男の人も痛くなるのかわからないけど、万が一に備えて痛いのも気持ちよくなるようにしたし、明日になったらこの事は全部忘れるようにしてるよ。それにもし赤ちゃんができたら、もう二度とエースの前には現れないから」

 私に似たらともかく、産まれてきた子がエースの血を感じさせたなら、エースも周囲も困惑するだろう。エースには覚えがないし、私達の関係はマブでしかない。だから今夜の願いが通じたなら、例え通じなかったとしても知り合いが誰もいない場所へ逃げるつもりだ。今からの仕打ちからして、もう二度と彼に顔を見せるべきじゃない。
 私の宣言にエースは目を閉じて何やら深く考え込んでいるようだった。打開策の見えない状況に観念したかのようにも見える。何にせよここまでやってしまった以上、好きにさせてもらおう。
 汚れないように彼の服を脱がそうとしたが、痺れ薬のせいで全部脱がすのは難しそうだ。だからエースのトップスをできるだけ捲りあげる。露わになる引き締まった腹筋に思わずドキッとしてしまった。自分のおなかとは大違いだ。
 続けてエースのベルトを外す。手が震えているせいか、カチャカチャと無駄に鳴る金属音。それにまた緊張してしまう。

「ひゃっ」

 ズボンをくつろげて、ボクサーパンツをずり下ろせば、エースの分身が飛び出してくる。男の人のそれを見るのは初めてな事もあり、まじまじと眺めてしまう。こんな大きいの入るのかな……。
 おそるおそる手を伸ばして、痛くないよう緩く握り込む。掌の中のそれはひどく熱くて、びくびくと脈打つ様がまるでここだけ別の生き物みたいだった。固いけど骨が入ってないせいか、少しやわらかさもあって、とにかく不思議な感触だ。
 確か擦ると気持ちいいんだよね。上下に手を動かせば、またエースのそれは手の中で大きくなる。私の行動にエースはふうふうと荒い息を溢して、こちらを睨み付ける目には薄く涙の膜が張っていた。私のつたない手付きでもちゃんと気持ちいいらしい、良かった。
 ふと我に返って本来の目的を思い出す。つい好奇心から触ってしまったけれど、私がこうする前からエースの準備は整っていた。薬の効果が切れるまで、まだ余裕はあるけれど、自分の経験値を考えれば余計な時間を使ってる場合じゃない。自身の手際の悪さには呆れるばかりだ。
 これからの内容を考えれば自身こそ準備するべきだろう。恥ずかしいという気持ちはある。でもお酒のせいで変に気が昂ぶっているのと、どうせ明日にはエースは忘れていると思えば、もういいかと私のネジの緩んだ頭は結論を出す。
 一度立ち上がった私はショーツを脱ぎ捨てて、改めてエースの上に座る。彼がトイレに行った隙に飲んだ媚薬のおかげか、私の秘部も既に潤っていて、座った瞬間にぬちゅと粘っこい水音が立った。エースの腹筋が私の愛液に濡れる。
 ワンピース型のルームウェアの裾を捲り上げて、下腹部にもう片方の手を伸ばす。見せつけるような私の姿にエースはひどく驚いていたけれど止められなかった。

「えーす……♡」

 はしたないと思っても学生時代からずっとエースの事を考えながら自分を慰めていた。だから勝手に彼の名前が口から出て、しかもその声はもう甘ったるくて。
 エースに見られちゃうのに大きく足を開いて、興奮から膨れてしまった粒をそっとこする。爪で緩くひっかけば勝手に腰が揺れて。エースの視線が私の指先に集中していることに気持ちがまた昂ぶってしまう。

「ふあっ♡ えーす、すき♡ すき……♡」

 奥まで入れるのは怖い。だからいつものように浅い所で指を抜き差しする。ちゅぷちゅぷと指を動かし、できる限り中をほぐして。
 ……これならきっと大丈夫。指を抜いて息を整えていた中、エースの分身に目が行く。さっきよりも反り立ったそれは血管を浮き出ていて、ぱくぱく開閉する先端からは透明の液体が滲んでいた。
 怖々確かめたエースの顔はこの上なく赤くなってる。それに私のこの色気のない体でもエースに興奮してもらえたのだと嬉しくなった。
 腰を上げて彼の熱の先端にやわらかくなった秘部が当たるように跨がる。くちゅと触れ合った粘膜の感触に思わず身震いした。それはエースも同じみたいで、彼は息を詰めて。
 痛みを誤魔化す媚薬はエースに盛った分しか残ってなくて、自分が飲んだのはそこまで強いものじゃなかった。そのせいで少し先端が入り込んだ時点で違和感が凄い。つい怖くなって腰を引いてしまいそうだった。
 ——でも、それでもエースが欲しい。

「んっ、ぅ……っ……」

 ゆっくり腰を落としていく。指とは比べものにならない質量だからか。エースが中に入り込む度、引きつったような痛みが走る。それからぷちぷちと体の中で何かが裂ける音がして。足ががくがく震えている。涙目になりながらも何とか腰を下ろしきった。
 しゃりとお互いの下生えが触れ合う。視線を下げれば、エースのおなかに薄く赤い染みが一つ。どうやら繋がった所から愛液に混じった血が垂れてしまったらしい。
 圧迫感に息が上がる。でもそれ以上に嬉しくて涙が浮かんだ。私の中を隙間なく埋めてくれる彼の存在がどうしようもなく幸せだった。

「あっ、あ♡ えーす♡ えーす♡」
「……っ! ……ぅ……!」
「すき、だいすき……♡」

 腰を浮かせて、下ろして。そんな単調な動きでも媚薬に犯された体にはもはや暴力と言って良いほどの快感になるみたいだ。
 その証拠にエースは固く瞼を閉じて腹筋を震わせている。媚薬が入った状態にも関わらず快感に抗おうとしているらしい。でもその我慢も長くは続かなかった。先端が奥にぶつかった瞬間、とくとくと私の中に熱が吐き出される。
 中に広がる熱の感覚に身を震わせながら私も達してしまう。腰が抜けて、ぺたんと彼の上に座り込んだ。おなかの中が溶けそうなくらい熱い。満たされた喜びから思わずおなかを撫でる。
 目的は果たしたけれど、まだエースのは固くて大きくて。一度出した程度じゃ、きっと媚薬は抜けてないだろう。だから頑張らなきゃいけないのに体力の無い私は慣れていない行為に既にへろへろで。でもこのままじゃエースは苦しいままだ。

「えーす、がんばるから、ちょっとだけまって……」

 エースには悪いけど少し休憩させてもらう。彼のおなかに手を付きながら深呼吸で息を整えて。そうして再び動きだそうとしたその時だった。
 突然ぐるんと視界が反転する。一瞬何が起こったのかわからなくて呆然としている間に、青筋を立てたエースが私を見下ろしていた。あ、あれ……?

「お前、よくも好き勝手やってくれたよな……」

 怒りを滲ませた声でエースがぼやく。そう言って彼は私の唇を塞いできた。荒々しい口付けだけど、入り込んだ舌は的確に私の快感を高めていって。
 快感に力が抜ける。そのタイミングを見計らって、エースは腰を打ち込んできた。さっきとは違う、快楽にとろけた声が私の口から溢れる。おなかの奥を小刻みに叩かれてはろくな抵抗もできず、ただただ喘ぐことしかできない。

「んあっ♡ ひああっ♡ えーす♡ えーす♡」
「アイツらに無理言って二人きりにしてもらったのに、オレの気持ちも知らないで……!」
「だめっ♡ えーす、だめ♡ おなかとんとんしちゃだめぇ♡」
「オレの赤ちゃん欲しいならダメじゃないでしょ」

 足を大きく開かされて、ぐりぐりと奥を刺激される。その直接的な快感と、まるでエースも赤ちゃんを欲しがってるような発言にひどく興奮して。
 びくびく体が震えて目の前が白く点滅する。膨れ上がった快感が弾けて全身へ広がっていく。そしてまた中にエースの熱が流し込まれた。
 一滴残さず飲めとばかりにゆるゆる精液を押し込むように彼は腰を動かす。それでも中の彼はまだ熱いままだった。

「えーす……♡」
「絶対に逃がさないから。しっかりオレの子供孕めよ、

 ギラギラと獣じみた目を見せる彼にぞくりと体が震える。そんな中、空気を読まずに「すき」と口にした私の唇を噛みつくようなキスでエースが塞いだ。

「で、なんであんなことしたの、お前」

 長い一夜の最中に私は眠ってしまったらしい。目覚めた時には身なりが整えられていた。そしてベッド脇に運ばれた椅子には怒り心頭のエースが腰掛けている。
 できるだけ冷静を装おうとしているみたいだけど、エースの声には怒りが滲み出てる。それも当然だろう。彼の信頼に付け込んで、ひどい真似をしてしまったのだから。
 好きだからなんて言えるはずもなく「ごめんなさい」とただ謝る私に、くしゃくしゃと頭をかいて彼は大きく息を吐く。

「……さっきも言ったけどさ。オレ、アイツらに頼み込んで二人きりにしてもらったわけ」

 そういえばそんな事を言っていたような気がする。ただ理由はわからず、聞くだけの私に「お前に告白するためにさ」と言葉を続ける。驚きのあまり何も言えなかった。固まった私の頬をむにっとエースが掴む、憎々しげに私を彼は見る。

「どうせお前はごちゃごちゃ一人で思い詰めて身を引こうとするだろうから、オレ反論ぜーんぶ潰せるだけの材料揃えて、一晩かけて口説き落とそうとしてたんだけど」
「え、えっと」
「言っとくけどオレ達が両思いなの気付いてなかったの、だけだから。そういったわけでアイツら気を利かせて夕方頃まで来ないんだよね。サプライズなのもあるけど『お前らもいい大人なんだし、うっかり一線越える事もあるかもしれないしなー』って。おかげさまで一線どころの話じゃなくなったんだけどさ」

 アイツらというのはおそらくデュース達のことだろう。エースの口ぶりからして仕事が忙しいというのは嘘だったらしい。
 それにしても言葉の端々にとげがある。うん、私のやらかしを考えたら当然だ。完全にキレてるエースを前に、両思いだった事を素直に喜べるほど私は図太くなかった。

「オレ魔法解析官でホンット良かったわ。じゃなきゃお前の思惑通り、ぜーんぶ忘れて好きな子に逃げられてたわけだし」

 一際大きな溜め息を吐きながらエースが口にした言葉にハッとなる。そうだ、どうして薬途中で効かなくなったんだろう。この様子だと記憶もバッチリあるみたいだし。
 ただこの雰囲気からして質問していいのかわからずおろおろする私を見て、エースがゆっくり口を開く。

「魔法解析官ってなった直後に、水虫になるとか十円ハゲができるとか、そういう嫌な効果が出る魔法薬飲まされては体内で解析と魔力による中和を行うって訓練ひたすらやらされるんだよね」
「ど、どうしてそんなことに……」
「スピードと正確性を求められる仕事だから、数こなして覚えろって感じみたい。まあでもおかげで例え魔法薬盛られても効果を押さえ込めるんだけど」

 女の子のいる飲み会とか連れて行かれると100%盛られるし、ポソッと呟くエースは遠い目をしていた。盛った私が言うのもなんだけどエリートも大変なんだな……。
 忘却薬をまず無効化して、それから痺れ薬を解いていたなら思いのほか時間がかかったのだとエースは続ける。

「媚薬とか痺れ薬は慣れてるけど、忘却薬なんて訓練の時以来だし、お前の薬、相性良いから早く効きかねないしですっごい焦った」
「ご、ごめんなさい……」
「まあ……おかげですっごいエロいの見れた事だし今回は目をつぶってやるよ」

 すっごいえろいの。エースの言葉に自分のとんでもない痴態を思い出して頭を抱える。私はなんてことを。身悶える私にエースは楽しげな顔をしてる、く、くぅうっ……!
 しばらくじたばたしていたけれど、何とか落ち着いてきた頃。エースが私の頬を優しく撫でる。さっきの意地悪そうな顔はどこへやら、熱の籠もった目でエースは私を見ていた。

「今日はどうせお前立てないでしょ。それにアイツら来る前に手続き終わるかわかんないし、役所は明日行こうな。あとジュエリーショップも」

 明日の予定を言い切ったなら「好きだよ、」とやわらかな声でエースは私に告げる。それにやっと冷ませた体温がまた上がる。
 私はひどいショートカットを決めたけどエースはエースで三段ぐらい飛ばしてきた。逃がすつもりはないとばかりに。でも私は彼の言うとおり、すぐに身を引こうとしてしまうから、強引に手綱を付けてもらうぐらいがいいのだろう。
 明日、ジュエリーショップに連れて行ってもらったなら、お揃いの指輪にもう一つ。誕生日プレゼントとして、小指ぐらいの、そう遠くない未来に会えるその子の分もおねだりしてみよう。なんて。エースの手に頬ずりしながら、私は唇を緩めた。

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