恋をつついて愛を出す
「これでどーよ」
「はわわ」
ベッドに腰掛ける私の前には、腰へ手を当て胸を張る美少女。……ではなく、あまりにも美しすぎる女装姿の彼氏に思わずIQの下がった発言にもなってない奇声が口から漏れる。
現役バスケ部だけあって足はごついし、首筋や肩幅は完全に男の子だが、それでも顔だけ見れば女の私よりも遙かに美人の女の子である。わかっていたが元が良すぎる。そりゃあこんな自信に満ちた表情にもなるわけだよ。
何故女装趣味のない恋人がこんな事になっているかと言えば、男子校だけあって女の子が全く居ない状況に耐えかねた私はここ最近連日ロザリアちゃんのところに入り浸っていた。
それによりエースの相手がおろそかになり、数日前に拗ねた彼から問い詰められて「たまには女の子と話したい!」と答えたのだ。そこで話は終わったはずだった。だがエースとしては続きがあったらしい。
つい先程何やら荷物を持ってオンボロ寮に押しかけてきた彼は「女の子と話したいんでしょ」と言って、今に至るというわけだ。
「え、凄い。私の彼氏美人過ぎでは……?」
「とーぜん」
「すごく可愛い、本当に女の子みたい! なんでそんなに可愛いの……?」
「……あっそ」
自分の顔の良さを自覚しているエースは私の賛辞を全く否定しない。あいにく許されるだけの顔してるんだよなあ、今の彼だと尚更。かわいいは正義ってこういうことか。ただ顔から下は完全に男の子なので脳みそバグりそう。
ただ今になってやっぱり嫌になってきたのか。なんだか急にエースの機嫌が悪くなった。でも怒ってる顔も可愛い、美人やばい。だめだ、頭の悪い感想しか浮かばない。
「……で?」
「え?」
「何の話をしたいわけ?」
ここでカフェの新メニューが気になるとか、新色のリップが可愛かったとか、そういう無難な話を振れば良かった。エースは男の子だけど、ハーツラビュル寮の生徒はスートを描く関係からか、わりとメイクに詳しかったりするのだから。
でも私は言葉に詰まってしまった。何故ならば、私がいっつもロザリアちゃんに聞いてもらっているのは惚気。あともっとイチャイチャするにはどうしたらいいかな……?なんて相談。そう、どれもこれもエースにまつわる話なのだ。エースがかっこよくてドキドキするなんて張本人に言えるわけが無い。
目を泳がせて、いかにも挙動不審な態度を見せれば、エースの眉間に皺が寄る。まずいまずいと思えば思うほど冷や汗が止まらなくなって。
「何隠してんの?」
「な、なんのことかな〜……?」
我ながら大根役者にも程がある。ハーレム系鈍感主人公でも気付くわ。そう内心ツッコミを入れている私にエースは溜め息を吐く。
そこから数秒もしないうちに私は天井を見上げる羽目になっていて。ギシリ、とベッドが軋む。エースの大きくて骨張った手が私の胸へ緩く食い込んだ。
「エ、エース……?」
「オンナノコ同士なんだから、ちょーっとぐらい触り合いっこしたって問題ないよな?」
覆い被さってくるエースは女の子の顔立ちで、私の大好きな男の子の表情をしていた。
◇
「んっ、ふ、ぅ……」
合わせられた彼の唇は口紅のせいか、いつもと違ってべたつく。だけど口の中を舌でかき混ぜられる快楽にすぐその違和感は思考の隅へと追いやられてしまった。
口紅が剥がれたものの、しっかりと化粧を施されたエースの顔はやっぱり可愛らしく女性的だ。だが表情が私を抱く時の雄臭いそれで、ギャップに頭が混乱する。普段とは違うドキドキが止まってくれない。
エースはわりと凝るところは凝るタイプらしい。今の彼はトレイ先輩から貰ってきた魔法薬で髪を伸ばしていた。その髪は後頭部でリボンを使い一つに纏められているせいで、彼の喉仏や首筋がハッキリ強調されている。
完全に男の人の体だ。その色気にときめかずにはいられない。シャツから覗いてるだけでもグッとくるのに、これは過剰摂取過ぎる。
「えーす……」
「喋る気になった?」
どうやら口を割らないなら体に聞こうという魂胆だったらしい。彼の目的はハッキリしたけど頷く訳にはいかない、だって普通に恥ずかしい……!
ふるふると首を横に振る私にエースは薄く笑う。美人がその表情やると謎の迫力があるな……と考える私の思考回路はだいぶバグっているんだろう。
慣れた手つきでエースは私のルームウェアのボタンを外していく。ブラをずらして、彼の手は私の薄い膨らみをふにふにと弄ぶ。すっぽりと胸を包み込む手の大きさやごつごつと骨張った感触に、こんなにも綺麗で可愛くたって、彼は男の人なのだと思い知らされる。
「ひ、ぅ、あぁっ♡」
「ってば、ちょーっとオンナノコ同士のじゃれ合いしてるだけなのに気持ちよくなっちゃうんだ」
「やぁあっ♡ えー、す、みみ、だめぇ……♡」
低くかすれた声で囁かれて背中がぞわつく。視覚の彼は女の子なのに、聴覚と触覚で味わう彼は男の人で。混乱している私を更に追い詰めるかのようにエースは耳を甘噛みしてくる。
いつの間にかツンと主張し始めていた胸の先をエースの指が摘まむ。それに喘ぐ私の声は彼の囁きとは真逆で高く甘ったるい。気持ちよさに勝手に腰がくねる。
片方の胸を弄る手はそのままに、空いた方の胸へエースが唇を寄せる。ちゅうと優しく吸われ、乳輪の境目の辺りが残っていた口紅に赤く染まった。その直後カリと軽く立てられた歯の白さがいやに目立つ。
とろけた顔をしているであろう私を見下ろすように眺める彼は妖しげな色香があった。霞む頭で彼の下腹部を見れば、スカートを押し上げている熱がバッチリ視界に入ってくる。
このまま最後までしちゃうのかな。女の子みたいに可愛いまま、でもエースは男の人で。考えてお腹の中がきゅうと切なくなる。そんな中、私の視線に気付いたエースはニヤと意地悪そうな顔をして。
「お前ばっか見てるのずるくない?」
「ひゃっ!」
ショートパンツと続けざまにショーツを脱がされてしまう。更にぐいと両足を広げられ、おかげで恥ずかしい所をエースにまじまじと見られることになってしまった。私は布越しにしか見てないのに。足を閉じたくてもしっかり私を掴む手は力強くて叶いそうもない。
一糸乱れぬ姿の彼と、シャツに袖を通しただけの私。もうエースは私の裸なんて見飽きてるだろうけど恥ずかしい。だからいつもならエースも脱いでとおねだりするのだけれど、今日はどうにも彼が脱いでくれるところを想像できなかった。
考え事をしている間にエースの顔が秘部に埋まる。唾液を塗りたくるように秘部全体をエースは舐め回して。ジンジンと甘い痺れが背筋を通って全身へと走って行く。
気持ちよすぎる。どうにか止めてもらおうと彼の頭を押しのけようとするが、腕に力が入らない。ただ彼の髪を束ねていたリボンがほどけただけに終わった。下ろされた髪が私の太股のあたりをくすぐる。その僅かな刺激にすら私は反応せずにはいられない。
尖らせた舌で一番敏感な粒を押しつぶしたり、ちゅうと吸い付いたり。重なる愛撫にお腹の奥から蜜がとろりと零れてきた。それを合図にエースはきつく粒を吸い上げる。
「やぁああっ♡」
爪先が伸びて、びくんと腰が跳ね上がる。目の前がチカチカと白く瞬いた。起き上がったエースが既にへろへろの私の頬を優しく撫でる。
汗のせいだろう、エースの化粧は少し落ちてきている。おかげで女の子っぽさや可愛さは削れてきていても、彼が今も綺麗でカッコイイ事には変わりない。こうして愛おしげな目のまま微笑む姿は、ましてやこんな姿の彼は私しか見れないんだろうなあ。
『かわいい』エースは声には出さなかった。けどその形に動いた唇に凄くドキドキしてしまう。もっと恥ずかしい事をしてるけど、エースにそう思われるのは照れくさいけど嬉しい。
エースがスカートはそのままにボクサーパンツを脱ぎ捨てる。さすがに下着までは女物じゃなかったらしい。もしレースのフリフリとか付けてたら私どんな顔していいのかわからなかったので、そこは安心した。引くとかは無さそうなんだけど、なんか変な扉開いちゃいそうだなって。
スカートを捲りあげて、エースはくるくると手早くゴムを付けていく。エースの顔はまだ可愛い、でもその熱は凶悪でぜんぜん可愛くない。半透明のゴムを纏った熱の部分だけ、スカートが持ち上げられている。存在感が凄い。
ぴたと秘部に熱が押しつけられる。先端をぬるぬると割れ目に擦りつけた後、エースが中へと入り込んでいった。スカートに隠されて繋がっている所が見えなくなる。体の中は彼を男だと理解するのに、彼の顔は女の子で。
「えー、す……♡」
「いつもよりぎゅうぎゅう締め付けてくるんだけど、女の子のオレに犯されて興奮してるわけ?」
エースの熱を根元まで受け入れた私の中は彼の言うとおり普段よりもきつく包み込んでしまっているのが自分でもわかった。へんたい、そう罵られても反論できるだけの材料がない。
そうこうしているうちにエースはゆっくり抽送を始めて。ずるると彼の熱が内壁を擦りあげて、先端の張り出した部分が肉を掻き分ける。その繰り返しがどうしようもなく気持ちいい。
私の反応を見ながらエースは動きを変える。今はひたすら優しくとんとん奥を叩かれて、それに私はだらしない顔で喘ぐことしかできない。
エースはまだ余裕そうなのに、私は早くも本日二度目の絶頂を迎えようとしていた。だがエースが直前で律動を緩やかにしたせいでそれは叶わなかった。
イきたい、でもエースは私が一人でイくのは許せないのかもしれない。だからうっかりおねだりしそうな自分を抑えていれば、すりすり耳を撫でられる。
「ね、。教えて。あの子と何話してたの?」
あの子、あの子って誰だろう。ぽやぽやしている頭で必死に考えて、たぶんロザリアちゃんの事だろうと思考は弾き出した。快楽に浸された今じゃ羞恥心と言う名のブレーキは効かない。だから私は彼に尋ねられるままに答えていた。
「えーすのこと……」
「オレの話?」
「かっこよくて、いつもどきどきするって。えーすのすきなところとか、きいてもらってるの……」
大好きなエースの話に顔が緩む。頭がふわふわする、おなかが気持ちいい。ぽーっとしていたけど、体の中の異変に思わず目を見開く。
「え、あれ、えーす、なんでおおきくなって……? ふぁあああっ♡」
きゅっと固く唇を結んで、エースは無言で腰を打ち付けてくる。私がイってもおかまいなしで彼は揺さぶってきて。いつもの彼らしくない行為に疑問は抱いても止めるつもりはなかった。
普段の優しいえっちも好きだけど、今みたいに激しく求められるのも嬉しい。奥をぐりぐりしながらエースはキスをしてくる。それから何度も耳元でかわいいと囁いてきて。その度に軽く絶頂して、きゅうと彼の熱を締め付けてしまう。
全力で甘やかしてきてくれる彼にとろとろに溶かされた私はエースが中で震えたのを最後に意識を飛ばした。
◇
「エースのばかばか! あんなのずるい!!」
「お前が変に隠し事するから悪いんじゃん」
あの後、すっかり元の姿に戻った彼にも抱かれた私は正気になった今、思いっきり彼の背中をぽかぽか叩いている。その引き締まった肌には最後の情事で私が付けてしまった爪痕がくっきり残っていた。なかなかに痛そうである。
「それにしてもお前いつもオレにドキドキしてるんだ」
「しょうがないでしょ、エースかっこいいし好きなんだから!」
キレる私にエースはニヤニヤしてる。かと思えば、膝を叩いて私に上へ座るように促してきた。とんでもない弱味を握られてしまった私はもうそれに従うしかない。
彼に背を向けるようにして膝の上に腰を下ろせば、ぎゅうと抱きしめられる。私の背中と生身のままのエースの胸板がぴったりくっついた。薄いルームウェアでは彼の胸の鼓動を遮る事はなくて、どくどくと早い心音が響いてくる。あ、あれれ……?
「……あの子に妬いてたってかっこ悪くない?」
「そ、それでもエースはかっこいいもん」
「女の子の格好すれば、オレだけを頼ってくれるかもとか考えてても?」
「なんで急にそんな素直なの……?」
エースの腕はほどけない。だから彼の顔が見れない。たぶんわざと見せないようにしてるんだと思う。わりとエース、シャイだから。こんなストレートに本音を語ってくれることなんて初めてだ。
戸惑う私にエースは「めちゃくちゃ嬉しかったから」と小さく呟く。それと同じ声量で「オレもが好き」と続けられる。ひええ。
愛情の過剰摂取にオーバーヒートしつつも、私はこの腕がほどけたらロザリアちゃんのアドバイス通り、自分からキスを仕掛けようと目論むのだった。