惚れたが負けはオレだけがいい
「……エース、ごめんね」
「何が?」
フロイド先輩がバインド・ザ・ハートで弾いた誰かのユニーク魔法に当たったエースが女の子になってしまった。
そして彼は中身こそ変わっていないけれどガワは女の子ということで、この学園の唯一の女性かつ恋人である私が住むオンボロ寮に今夜は泊まる事となって。
先生の見立てによれば明日の朝には戻るだろうと。幸いにも性別が変わった以外の影響はなかった。
本当なら、私があの魔法を浴びていたはずだった。ただ魔力に耐性の無い私が魔法を食らった場合、予想外の効能が出て命に危険が及ぶ可能性があるのだと。それを知っていたからだろう、エースが庇ってくれたのだ。
彼は私のせいでこんな事になってしまったにも関わらず、一言も私を責めなかったし、こうしてとぼけたフリすらしてくれている。交友し始めた、私が男装してきた頃なんてグリムの捕獲の報酬にたかってきてたのになあ……。彼の変化になんだか感慨深くなってしまう。
「ところで、今、女の子同士なんだしさ。一緒に風呂入らない?」
「……いいよ」
「えっ、いいの?」
何度も彼とは体を重ねてきたけれど、それは全部明かりを消した部屋での話だ。例え今の彼が女の子だったとしても、私にとってエースが男の人である事には変わりなくて、だから電気が付いている場所で裸を見られるのは恥ずかしい事この上ない。
でもこの一件に責任を感じていた私は彼のお願いを少し迷いながらも了承する。
女の子になったエースは相変わらず綺麗だし、私よりもおっぱい大きいし、足とかもスラーっとしててスタイル抜群だから、比べて落ち込みそうだけど仕方ない。
よっしゃ、と笑うエース。男の子の動作と女の子の姿はちぐはぐで、なんだか面白くて可愛かった。
◇
「ははっ、ちゅーそんな気持ちよかった? すっごいトロトロになってんじゃん♡」
前言撤回、全然かわいくない。
ベッドの上で横たわらされた私は肩で息をしながら必死に呼吸を整えていた。そんな私に覆い被さる彼は大変性悪そうな笑みを浮かべている。
お風呂の中でエースに洗いあいっこの名目でたくさんセクハラをかまされて。ここじゃなんだしと息絶え絶えの状態でベッドに運ばれたのが、つい先程の話である。
最初からこのつもりだったのか。お互いタオル一枚しか纏っていない状態だ。のぼせた頭で何とか紡いだ「ベッドが濡れるからだめ」という断り文句は彼が魔法を使って髪を乾かした事で使えなくなってしまった。
二十センチ近くあった身長差は女の子になって多少縮んだとはいえ、エースの方がやっぱり大きくて。力も私より強いままだったから、あっけなく押さえ込まれてしまう。
魔法の影響で伸びた彼の髪がカーテンのようになって私の顔の周りを覆う。首元に触れる毛先がくすぐったくて、身をよじるが状況が改善される事はなかった。
「ん、ん」
唇が触れる。その結果、ぐいと押しつけられた彼の巨乳が私のささやかな胸の上で潰れて形を変えて。それがくやしいのに、いつもは存在しないやわらかい感触に気持ちいいとも思ってしまう。
最初は軽く合わせるだけだった唇は角度を変えながらだんだん激しくなって。そんな中感じる彼の匂いは男の時よりも甘くて良い匂いだ。でもいつものエースの匂いの方が好きだなとキスに痺れる頭の片隅で考える。
キスをしたままエースは私に巻いたタオルを取っ払う。今の彼よりも貧相な体が露わになって、さっきいやというほど思い知らされた格差が頭に浮かんだ事からつい体を腕で隠す。
「なんで隠すの。女の子同士なんだから恥ずかしくないでしょ」
「だって私、今のエースよりスタイル悪いもん」
「……確かにお前おっぱい小さいよな。正直オレの胸の方が好み」
「う、う」
私の胸の上に乗せられたたわわなそれと自分のを見比べて涙目になった。事実とはいえ酷い。私だって好きでこんな物足りない胸をしてるわけじゃないのに。
文句を付けたくせ、エースの手が私の胸を包む。一回り小さくなった掌でも私の胸は彼の手の中に収まってしまう。いつもより細い指がふにふにと胸を揉んで、すりすりと乳輪を擦る。わざと避けられている乳首がもどかしい。指の形は変わっても手付きはそのままで、エースは確実に私の体を高めていく。
「やっ」
「だからこそ、やっぱり好きな子の胸が一番なんだって実感したんだけどさ」
くにくにと待ちわびていた乳首への刺激に体が跳ねる。なんでと聞き返したいのに、私の口は嬌声をあげるばかりで言葉が紡げない。鎖骨へと唇を落としながら、エースはなおも胸の先を執拗にいじめてくる。
「これでも戻るまでセックスするつもりはなかったんだって。自分の胸じゃ全く興奮しなかったし。でも風呂場でお前の胸見てたら我慢できなくなったの。それに、気にしてるのに見せてくれるのも触らせてくれるのも、めちゃくちゃ嬉しい」
そう言って向けてきた微笑みはいつもよりやわらかい。さっきまで結構傷ついていたくせ、もう機嫌を直してる自分のチョロさが真面目に心配だ。きっとどうしようもないんだけども。
開きっぱなしの唇から顎へと飲み込めなかった唾液が垂れていく。今日はだめなのに、そう思ってもお腹の奥がきゅうきゅうと寂しそうに反応している。その疼きをやりすごそうと太股を擦り合せていたのだけれど、当然目敏い彼がそれに気付かないはずもなく。
「あっ、だめ、ん、んんっ」
「もうここ、ぐっちゃぐちゃ。かーわい♡」
膣内へ一気に二本、彼の指が入り込んでしまう。こんなに簡単に侵入を許してしまったのはいつもと比べて彼の指が細いせいだけではないのだろう。
じゅぽじゅぽと行き交う指が上側の気持ちいいところを執拗に擦る。くっと中で折り曲げられた指がピンポイントで弱点へと押し込まれた。瞬間ひくりと喉が引きつり、全身が震え上がる。
絶頂を迎えてよがっても彼のしなやかな指使いは止まらない。おかげで何度も何度も甘イキを繰り返して、生理的な涙がぽろぽろと目からしたたり落ちていく。
「えー、す、もう、やっ、ひとりでいくの、やぁ……」
「イくのがダメなわけじゃないんだ。お前ってば可愛いね、ホント」
エースがタオルを脱ぎ捨てて、私の片足に跨がり、もう片方を持ち上げる。普段なら彼の熱が入ってくるのに心の準備を整えるところだけど、今は違う。何が起こるのかわからず、なすがままになっていたなら、エースは足を互い違いにクロスさせ、お互いの秘部を合わせてきて。
ぴったりくっついたエースのそこも私のことを言えないぐらい濡れている。触られてもいないのに、私への愛撫でそんなに興奮していたのか。突き付けられた事実に私は恥ずかしがれば良いのか、喜べば良いのか。
混乱しているうちにエースが腰を動かしてくる。すりすりと秘部が擦り合い、お互いの愛液が混ざり合って大きな音を立てていた。
「あっ、あ、っ、あぁぁ、えーす、えーす……」
「お前の中でイけないのは残念だけど、生で触れあえんのは悪くないよな」
はくはくと動かしていた唇をエースが塞ぐ。キスしたことで体勢が微妙に変わり、ぐっとお互いの性器が強く押し当てられる。ちょうどそれが陰核を刺激し、迎えた深い絶頂を最後に私は意識を失ったのだった。
◇
「うう、やっぱりおっきい……」
散々好き勝手にされた仕返しに、私にも触らせてとエースへ権利を主張した現在。私はエースの巨乳をたぷたぷと持ち上げながら悲しみに暮れていた。
最初こそ「普通触るにしたって、そんな触り方する?」と笑っていたエースだったが、今や自ら傷を負いに行っている私に呆れた顔を見せている。いったい誰のせいだと思ってるんだ。
「女体化した彼氏にまで負けるなんて……」
「お前は何と戦ってるの。別にいいじゃん、小さくたって」
「良くない! エースだって彼女の胸は大きい方がいいでしょ?! こっちの方が好みって言ってたし!」
「……今の方がいい」
なんでそんなバレバレの嘘吐くの、そう言いたかったのにぎゅっと抱きしめられた事で訴えは喉で引き留められてしまった。いつもよりやわらかな肌、包み込む体は小さくて、抱く腕も細い。でもエースだから、私は抵抗できない。
「好きな子相手じゃなかろうが大きかったら注目されるって、今日一日で嫌って位わかったし」
「……自慢だ」
「あのなあ」
ふに、と彼の唇に自分の口を押し当てる。してやったり、そんな気持ちでドヤ顔を向ければ、エースは不機嫌そうに唇を尖らせる。男の時もそうだけど、女の子になって更にその仕草の似合うこと似合うこと。
彼の本音や思ったよりやきもち焼きだと知れた事に、こういうのもたまにはいいかもと密かに思った。