愛のあふれた夜に
「エース、明日、わりと朝早いよ」
「一回だけにするから」
「それにお風呂入ってない」
「別に気にしないけど。ってか今入ったら絶対風呂場で寝るでしょ、お前」
「……別に今夜無理にしなくても」
「……はしたくない?」
二次会を終えてホテルへと戻ってきた時にはすっかり日は暮れていて。いつもの就寝時間には早いけれど、朝から結婚式を終えて疲労困憊の今の状態であればぐっすり眠れることだろう。
もうお風呂は明日の朝でいいや、そう思ってふらふらした足取りながらもまっすぐベッドに向かってダイブして。
エースも同じように私の隣へと身を預けたから「おやすみ」と口にした所、何故かこうして組み敷かれてしまっている。
まあ何故かなんてとぼけてみたけど、彼がこんな行動に出た理由が本当はわかっているのだ。今夜は結婚初夜、つまり夫婦になって初めて過ごす夜だから。
「んっ……」
ずるい聞き方をしたエースは私の頬へ手を添え何度も口付けてくる。彼の唇の感触は心地良い、でも眠気を誘うタイプの気持ちよさじゃない。むしろジリジリと胸の内を焼いて、意地でも寝られなくするのだから大変タチが悪い。
今日は朝から大忙しでへとへとだし、明日からハネムーンで二人きりの時間をいくらでも堪能できるし、というか間違いなくたっぷり抱き合うことになるだろうから、別に今夜無理する必要は一切無いのに。
それでも私の旦那様はどうしても私を寝かせたくないみたいだ。さっきからキスが止まらない。これはたぶん私が乗り気になるまで止めてくれないんだろう。
根負けして彼にぎゅっと抱きつけば、耳元で「ありがと」と呟かれ、さっきよりも深い口付けが贈られる。差し込まれた彼の舌に、迷わず自分のそれを絡めてしまう時点で私もなんだかんだ乗り気だったのかと今更気付いた。
キスの余韻で脱力している私からエースはさくさくとワンピースを脱がしていく。下着も剥ぎ取られそうになったが、私だけ裸にされるのはわりに合わないと抵抗を示せば、エースは自らの服を脱ぎ捨てて。で、結局私は素っ裸にされた。
「今日のお前、すごく綺麗だった」
「なんで今言うの……」
文句を付ける私にエースはもう一度キスをする。教会でした時によく似た、触れ合うだけの口付け。それで反論が途切れてしまう自分が情けない。
ウェディングドレスを着ていた時は似合うと言ってくれたけども。素面では言いにくかったのだろうか。でも似合うと綺麗は同じ三文字でも全然違う、なんか、色々と。
「……エースもかっこよかったよ。惚れ直しちゃうくらい」
私の言葉に熱っぽい瞳を細めて、しつこく彼は唇を吸ってくる。酔ってるエースが興奮してると行う動作だ。かっこいいなんて言われ慣れてるだろうに、私の言葉に反応を示す姿はたいへん胸にくる。
そうこうしているうちに胸を隠していた腕を引っぺがされ、膨らみへ緩く噛みつかれる。ゆるゆる舌を這わせて、先端が尖ったならば今度はそこを口に含んで。
じわじわ広がる快感に思考回路がふやけていく。馬鹿になった頭で覚えるのは、ちうちうと何も出さないそこへ懸命に吸い付く彼の姿にかわいいとか、愛おしいという感情だけだ。やってることは全然可愛くないのに。意味もなく彼の髪を指で梳く。
「あっ」
胸の愛撫はそのままに、軽く腰を撫でてからエースの指が秘部に触れる。そこは既にしっとり潤っていて易々と彼の指を飲み込んでいった。
いつもなら指を割れ目に滑らせて「すっげー濡れてる」とか意地悪な声で言うのに、今夜はそんな余裕はないらしい。優しくも性急な手付きでエースが中をほぐしていく。
仕上げとばかりに胸の先端と陰核を同時にいじられ、彼の思惑通り私はあっさりと達してしまった。
「ね、……」
絶頂の余韻でくったりしている私は好き勝手するのにちょうどいいことだろう。でもエースは顔中にキスを振らせて、甘い声でお伺いを立ててくる。
お腹に付くぐらい反り立っているのに、私がここで本気で嫌がったらエースは止めてくれるのだと思う、きっと。同じような状況で断ったことがないのでわからないけど、彼の優しさはいやと言うほど知ってるから。
でも今夜だって別に嫌なわけじゃないのだ。来て、と彼を小声で誘う。それにエースは秘部へと熱を擦り付けて、私の耳へ吐息を吹き込んだ。
「ん、んん……」
足を持ち上げられ、ぬぷぬぷと彼の熱に体の中を貫かれていく。いつもなら中の具合を楽しむかのようゆっくり動かすのに。今日はなんだか全体的にペースが速い。
お腹の奥をとんとん優しく叩かれて、ぐつぐつと胎内で熱が渦巻く。弱い箇所を重点的に擦られて、私は再び絶頂して。それにぎゅっと締め付けた中にエースが息を詰めた。
「ごめん、ちょっとこのまま……」
彼によって濡れた胎内がひどく熱い。中に入れたままエースがぽふと倒れ込んでくる。疲れたのか、いつもより息が荒い。彼の背中へと腕を回して抱きしめる。
それにエースは唇を合わせてきて。嬉しくて仕方ないのだと彼の瞳が語りかけてくる。
「今、オレめちゃくちゃ幸せ。たぶんが思ってる以上に幸せだから」
お酒が抜けきってないのか、それとも初夜という雰囲気に飲まれたのか、普段よりも素直なエースに顔が赤らむのがわかる。慣れない展開に体が火照ってしょうがない。
ずる、と胎内からエースの熱が引き抜かれる。隣に寝転んだエースが私の体を抱き寄せた。とくとくと彼の胸から伝わってくる、いつもより少し早い鼓動がなんだか心地良い。
「……私も幸せだよ。エースのお嫁さんになれて、すごく幸せ」
彼の胸に顔を埋めて呟く。これから先、何があっても離れることのないよう、しっかりと抱き留めてくれる愛する人の腕の中で、私は優しい夢の世界へと旅立つのだった。
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