自覚がないだけでしてるんだよなあ by長女

「いい夫婦の日、ねえ」

 私がものぐさだからか、敢えて口には出さないけどエースはわりと記念日やら出来事を覚えているタイプだ。
 付き合い始めた日とかになると何かしらプレゼントをくれたり、初めてキスした日になるといっぱいキスしてきたり、初めてえっちした日になると……まあ凄いことになるんだけども。そんな感じで付き合っていた頃からマメだったが、結婚した今もエースは釣り上げた魚にバッチリ餌をくれている。
 そんな彼だから、記念日らしき覚えもないのに、いつもより豪勢な本日の夕食を見て固まってしまったのだろう。ただ瞬く間にその動揺をかき消したあげく、食事中の会話でそれとなく探りを入れてくるのはさすがというべきか。
 ただこの後の事を考えるとあんまり意地悪するのもなんだと思い、デザートに作ったチェリーパイを出しながら「何かの記念日とかじゃないんだけど」と前置きして、いい夫婦の日だからちょっと張り切ってみたのだと白状した。
 それにエースは空返事らしきものを口にしているが、内心はホッとしてるんだろう。男の人に言うのもなんだけど、そういう素直じゃないところも可愛いなあ。

「私の民族は験担ぎ……じゃなくて、えーっと、あっ、ジンクス! ジンクスにね、そうなりますようにって事前に祝う風習があるんだよ。だから、これね、この先もずっとエースといい夫婦でいられますようにって意味を込めてるんだ」
「ふーん、いいんじゃね? オレとしてもチェリーパイ作ってくれる日が増えるのは大歓迎だし」

 なんて気の無いような返事をしているけれど、今までの傾向からしてしっかり頭の中に刻み込んでいるのだと思う。例えもし来年、私が忘れていたとしてもエースはさりげなく祝ってくれる事だろう。
 けど私は今日この日は忘れられない、というか絶対に忘れない日にするつもりだった。

「でも実を言うとお祝いだけじゃなくて、エースのご機嫌取りも兼ねてるんだよね」
「……どういうこと? 何かやらかしたわけ?」
「その、えっと、エースにお願いがあって、あのね」

 しっかり話を聞くべきだと判断したのだろうか、手にしていたチェリーパイの最後の一切れを皿に置いてエースが尋ねてくる。
 事が事なのでなかなか言葉にできない。けどそれでも急かすことなく落ち着いた様子で待ってくれている彼に、何とか勇気を振り絞って私はそれを口にした。

「私、エースとの赤ちゃん欲しいんだ」

 ついに言ってしまった。きゅっと握り込んでいた拳にますます力が籠もる。緊張するあまりエースの顔は見れなかった。
 短くない沈黙を置いて「」とエースが私の名前を呼ぶ。それに私はぎゅっと瞼を閉じて、彼の言葉の続きを静かに待つ。

「……だめって言ったら?」
「一服盛って襲う」
「どんだけ欲しいんだよ」

 思わぬ返しに反射的に答えてみれば冷静なツッコミが入る。エースはよく私に出たマジレス!なんてからかってくるけど、エースも人のこと言えないと思う。
 こうして茶化してくるってことはジョークとして流したいのかな。悲しいけどエースが嫌なら無理にとは言えない。何とか笑顔を取り繕ろうとしたが、上手くできず更に俯いて誤魔化す。
 開いた目尻に薄く涙が浮かぶのがわかった。ちゃんと断られる想像もしていたはずなのに、考えていた以上に辛いなあ。

「さすがに冗談だよ。その、ごめんね。もう言わないから、さっきの忘れ、んっ」

 ショックを受けながらも何とか引き下がろうとしたところ、テーブルを挟んで向かい合わせに座っていたエースは身を乗り出してきて。くいと顎を持ち上げられ、話の途中だと言うのに唇を塞がれる。
 彼の唐突な行いにいつもの癖で思わず瞼を閉じる。一切抵抗できずにいる私にエースは角度を変えながら何度もキスを繰り返す。
 その心地よさに恍惚していれば、口から離した唇を今度は耳元に寄せてきて「意地悪してごめんな」とエースが謝って、それから。

「オレも欲しかったから、がそう言ってくれて今かなり浮かれてんだよね」

 ベッド行こうなと呟いたエースの声は確かに弾んでいて、さっきまでの悲しみはどこへやら。私もまた彼と同じ気持ちになりながら、そのお誘いに頷いた。

「んっ、んんっ〜〜〜ッ♡」

 ぢゅと陰核をきつく吸われ、迎えた本日三度目の絶頂に、思わず足の間へ埋められたエースの頭を掴む。きゅっと爪先が丸まって腰がびくんびくんと震え上がった。度重なる快感にふうふうと荒い呼吸を繰り返す。
 舐められる前からもう潤っていたのに、更に彼の舌で舐め回された中はふやけきっていることだろう。溢れて止まない愛液を啜りとって、エースはようやく秘部から口を離した。

「えーす、もう、ほしいよぉ……♡」
「えー? でも女の子がいっぱいイってる方が妊娠しやすいらしいし? もうちょっと我慢できない?」
「やだ、やだぁ、もういじわるしないで……」
「うそうそ、ごめんってば。泣かないでよ」

 駄々をこねる私の頭をエースが撫でる。浮かれてるなんて言ってたわりに行為が始まってしまえばエースはいつも通りで。自分だけが盛り上がってるようで寂しくなる。
 それが顔に出ていたのか。今度は頬を撫でられる。いつもなら嬉しいはずのそれが今はちょっぴり嫌で、でもやっぱり好きで、すりすりと掌に甘えるように顔を擦り付ける。そんな私を見るエースは優しい目をしていた。

って全然わがまま言わないじゃん。だからさ、お前がおねだりしてるの見ると嬉しいし、もっとしてほしくてつい意地悪しちゃうんだよね」
「……えすっぽら」
「変なあだ名付けないでよ。だいたいお前もトラッポラじゃん」

 ちゅ、ちゅとじゃれ合うかのように軽いキスをエースは繰り広げてくる。これはエースのいちゃいちゃしたいという合図だ。彼のさっきの発言をろくでもない主張だと思いながら、その甘やかすような動作に私はすぐ懐柔されてしまう。
 キスの合間に「すき」と「えーす」と言い連ねながら彼に抱きつく。そうぴったり体を寄せ合い、しばらくしてエースがゆっくり体を起こす。

「好きだよ、

 エースが私の膝裏を掴みながら、濡れそぼった秘裂に自身の先端を擦り付ける。それに期待していたからか、私は無意識のうちに腰を揺らしていた。押し当てながら上下されれば、さっきから溢れかえっている愛液がぬちぬちと音を立ててエースのものに絡みつく。私のせいで濡れる彼のそれがひどく卑猥で、見ているだけで恥ずかしいと思うのに、なぜか目をそらせなかった。
 いつもとは違う剥き出しの温度に心臓が早鐘を打つ。ああ、私これからエースと赤ちゃん作るんだ。最初からそのつもりだったけれど、改めて実感が湧いてきたせいで、どきどきが止まらなくなる。
 物欲しげにひくついているだろう膣口に切りっ先が軽く押しつけられる。それに早くと急かすように私の体はエースの亀頭に吸い付いていた。緩い快感に腰がぞわぞわする。

「あ、ああ♡ えーす♡ えーす♡ ひぅううっ♡」

 くぷりと音を立てて先端が埋まって、ゆっくりと私の胎内へエースの熱が沈んでいく。隔てるものがないせいで、いつもよりもハッキリわかる彼の形と温度におなかの奥がきゅんと疼く。
 じわじわ入り込んでくる感覚に思わず身をよじれば、しっかり腰を掴まれて最奥まで穿たれる。全部入りきったところで一息吐くエースの姿はあまりに色めいていて、それを見た途端またおなかの奥が切なくなった。
 痙攣しているおなかをそっとエースが撫でてくる。その手付きに自分でも信じられない所にまで入ってるのだと思い知らされた。自分でも届かない所にエースは触れて、そして私はここに彼の子供を宿して。

「もう子宮下りてきてんじゃん。ってばそんなにオレとの子供欲しかった?」
「ほしい、えーすとのあかちゃん、ほしいよぉ……」
「……さっきも思ったけどそれ言われるんの、やっばいわ。めちゃくちゃ興奮する」

 もう中は馴染んだろうにまだ動いてくれない彼に焦れて、つい足をエースの腰へと絡める。それにエースは「こーら」と笑い混じりに叱りながらも、ほどくことはなくて。そのまま体をかがめてエースがキスしてくる。

「あっ♡ んっ♡ ん、う♡ ふぁ♡ えー、す♡ えーす♡」

 キスに力が抜けたことにより絡めていた足を下りたところ、エースが律動し始める。ぎりぎりまで抜いて一気に奥へ押し込んだり、わざと音を立てるように中を掻き回したり。結合部からのぐちゅぐちゅという音に鼓膜まで犯されてるみたいだった。
 ただいつもよりも奥を重点的に責められて、またしても私は一人で達してしまう。絶頂を迎えた事できゅうときつく締め付けてる中に逆らうかのよう、エースは激しく腰を打ち付けてくる。

「んんっ♡ えーす♡ あッ♡ まって♡ おく、だめ♡ あっあっ♡ さっきイったばかり、だからぁ♡」
はイった直後に奥いじめられるの好きだよなー♡」
「ッあ♡ らめっ♡ また私イっちゃ、ふあああッ♡」

 ごりゅごりゅと容赦なく子宮口を抉られて背が仰け反る。あまりにも強い快感に耐えきれず逃げようと試みても、その度に腰を掴みなおされて引き戻される。
 こめかみから伝ったエースの汗がぽたりと私の肌に落ちて自分のそれと混じり合う。触れ合う肌はいつもより熱い気がする、漂う空気もなんだか普段よりも熱くて甘くて。
 えげつない腰の動きはそのままに胸へ彼の舌が這って、先端を吸われる。同時に受け入れろとばかりに執拗にとんとんと子宮口を叩かれて、声にならない悲鳴を上げてしまう。
 そうこうしているうちにすっかり開いてしまったらしい子宮口がエースの先端を包み込んで、その刺激にばちばちと頭の中で火花が飛んだ。

、お前さっきからイき過ぎ」
「ご、めんなさい♡ あっ♡ うう♡ えーす、きもちいい♡ きもちいいよぉ♡」
「別に怒ってるわけじゃないって。むしろオレのでぐっちゃぐちゃになってるお前が可愛くてしょうがないって話」
「ッ、んんっ〜〜♡」
「……お前、今かわいいって言われたのでイったの? のえっち♡」

 彼の言葉で締め付けるどころか達してしまった私にエースは意地悪な顔をする。そしてそれからは何度もかわいいかわいいと、時折愛の言葉を織り交ぜたものを耳元で囁いてきて。一々反応しなければ良い話なのに私の体は律儀に毎回エースの声に悦んでしまっていた。

「んあっ♡ すき、すきなの♡ えーす♡ すき♡」
「はあーかわいい。一緒にイこうな」
「う、ん♡」

 仕上げとばかりにぐぐっと子宮口を押し上げられる。ぴったりくっつくどころかめり込んでいるかのような状態に体を震わせていたなら、再び私が絶頂した事による収縮で中のものがぶわと膨らんで。

「あっ♡ いっぱい、エースのあついのきてる……♡」

 びゅうびゅうと勢いよく子宮に注がれる熱の塊に思わずエースの体に縋り付く。彼の亀頭をしかと銜え込んでいたから、きっとこの熱は全て子宮に吸い込まれたことだろう。内側から私を染め上げていく熱の感覚に浸りながら浅い呼吸を繰り返す。
 私の体をぎゅっと抱きしめながら、エースは吐き出した精液を塗りたくるように奥へぐりぐり擦りつけてくる。終えたはずなのに堅さを保ったままのそれから与えられる刺激に甘ったるい声が押さえられなかった。そんな私の痴態に興奮してるのか、彼の息が少し荒くなる。
 たっぷり彼の熱を抱え込んだおなかを撫でれば、じんわりと温かさが伝わってくるような気がした。

「えーす、ちゅうしたい……」

 この一回で終わるはずがない。だから二回目のきっかけになるように、それとおねだりされるのが嬉しいと言っていたから口にしたならばエースは迷い無く唇をくれる。
 その感触に酔いしれながら、私は強く彼を抱きしめた。

「……なんか、今日、お前甘えん坊じゃない?」
「嫌だった?」
「んーん、ただ珍しいなってだけ」

 終わってからくっついて寝るのは普段通り。ただいつもはエースが積極的に距離を詰めてくるのに対し、今夜は私から彼の方へと身を寄せていた。ただ僅かな隙間も許せないのか、ぎゅうぎゅうとエースが抱きついてくる。
 行為後特有の倦怠感と彼の心地良い体温に瞼が重くなる。そんな姿を見たエースが「おやすみ」と私の額へ軽くキスしてくるが、生憎まだ私は寝るつもりはなかった。今にも睡魔に負けそうだけど。

「赤ちゃん欲しいし、できたらすっごく嬉しいけど、でもエースといちゃいちゃできなくなるのは寂しいから、今のうちにいっぱいいちゃいちゃしておきたくて……」
「は?」
「だからまだ寝たくない、いちゃいちゃしたい……」

 支離滅裂になりながらも何とか決意表明はできた。だが残念ながら私はここまでのようだ。ふわあ、無念……。
 といった感じで意思と反して瞼が落ちようとしたその時だった。思いっきりエースに唇を塞がれ、口の中を彼の舌で掻き回される。呼吸を奪うようなキスに酸欠になった結果、すっかり目が冴えてしまって。
 何事?もしかしてもう一回戦行くの?とおののく私にエースはなんだか拗ねたような表情を向けていた。

「そりゃ子供の前ではしないけど、子供ができたってお前といちゃいちゃするの止めるつもりとかないから」

 まさかの宣言にぱちくりと目を瞬かせる。ちょっと状況に頭が追いついてない。ただ一つ明確にわかったことがある、エースは怒ってるわけじゃなくて照れてるんだろう。

「子供ができたって母親である以前にはオレのお嫁さんなの、オレの好きな女の子だから……はい、おやすみ!」

 彼にしては雑な切り上げ方をして、顔を見られない為か、またしてもエースはぎゅうぎゅうに私を抱きしめてくる。きっと今の彼はかつてなく赤い顔をしていることだろう。
 意外とシャイなエースからすれば、さっきのあれはかなり勇気を振り絞った末の発言のはず。だから茶化すような真似はせず、素直に受け止めて。

「……ありがとう。エースの、大好きな人のお嫁さんになれて本当によかった。頑張るから、これからもずっとエースのお嫁さんでいさせてね。おやすみ」

 彼となら絶対にいつまでもいい夫婦でいられるに違いない。そう確信しながら彼へ寝る前の挨拶を返す。それに寝たふりをするエースは何も言わなかったけど、腕に力を込めてきて。
 当初予定していた意味とは異なるけれど、忘れることのない記念日ができた事を喜びながら、今度こそ私は彼の腕の中で眠りに就いた。

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