体の芯までアナタ色

 私はNRCでの4年間を男装して過ごしていた。なんなら卒業後NRCの用務員と働き始めてからも訂正してこなかった。
 一部の友人達には卒業後にバラしたが、元より私が女だと知っていた人達を除いては今日まで自分は本当の性別を隠し通し続けてきて。
 だから本日の同窓会にて、初めて女の姿をお披露目した私はかつての同級生達の注目の的になっていた。
 私は元より中性的とはいえ、取り立てて演技力があるわけでも、ましてや魔法が使えた訳でもない。にも関わらず在学中、皆を欺き通せたのはひとえに学園長が用意した呪いの指輪のおかげだった。
 効能は性別の誤認。何故魔法ではなく呪いなのかと聞けば、獣人達の嗅覚や妖精族の直感を遮ろうと思ったら呪いレベルでないと難しい、そして簡単に外れては困るからだと。
 呪われた装備だけあって確かに一度はめたら自分では外せなかった。「元から君の性別を知っているか、あるいは君に真実の愛を抱いてしまった相手には効きませんし外せてしまいますが、まあ男子校なので問題ないでしょう」と学園長は言っていて。
 だから卒業前に私の正体を知っていたのは学園長……と、エースだけだった。

 在学中のある日、唐突に「、お前本当は女だよね。最近まで男に見えてたのってどう見てもお前の趣味じゃないその指輪のせい?」とエースから切り出された時は本当にびっくりした。
 正体のみならず原因を突き詰めたこともそうだけど、それ以上にその事が何を示しているかを理解していたせいで。馬鹿だと思いながら私は当時から密かにエースへ想いを寄せていたのだ。
 だからまさかの展開に動揺した私は真っ赤になりながらも頷いて、色々説明する中で指輪の効能については咄嗟に「両思いの相手には効かない」と誤魔化した。彼の性格を考えれば、あれはなかなかのファインプレーだったと思う。だってエースってば、その嘘にすら悶えてたし。なお、あれから数年後の今も真相は話してない。別に私はエースを羞恥心で殺したい訳じゃないので。
 そんなこんなで私達の秘密の交際は在学中から始まって、卒業から数年経った今も続いている。というか同棲なんかしちゃってたりするんだけども。
 今、現在進行形で、私は先述の状態故のちょっとしたトラブルに見舞われていた。

「……エース、怒ってる?」
「別に」

 そうは言いつつも声色からしてエースの機嫌が悪いのは明白だった。というか家へ帰ってきて早々にベッドへ連れ込まれた時点で聞くまでもないのだけれど。
 同窓会の帰り道からエースはずっとこの調子だ。原因はわかってる。女バレによって同窓会でちやほやされていた私が気にくわない……ハッキリ言ってしまえば、ただのやきもちである。
 あれは単に物珍しさからちょっかいかけられてただけだし、私はエースしか見えてないんだけどなあ。でも私と違って真の意味でモテるエースが女の子に囲まれていたならば、彼は一途だとわかっていても自分もガッツリ妬くのでこればっかりはしょうがない。
 根本的に原因を突き詰めていけば、ほぼほぼ私のせいな事もあり、こういう時は彼の好きにさせてあげるのが一番かなと思い、さっきから私は首筋やら鎖骨へぢゅっと吸い付いてくるエースの唇をひたすら受け入れていた。
 明日エースはおやすみなので、たぶんこのまま抱き潰されるんだろう。でも先日スーパーに行ったばかりだからしばらく買い物に行く必要はないし、私は半年前から無職なので何も問題無い。まあ私の足腰は死ぬけどね!

「ね、エース、キスしたい……」

 おねだりすればキスマークを付けるのを止めて、エースはお願いした通り口付けてくれる。それに口で言うのは恥ずかしいけど乗り気なのだという事を示したくて、自分から舌を絡めてみる。今まで数え切れないほど唇を重ねてきたというのに、いつまで経ってもつたない私の舌使いでも彼的には興奮材料になるらしい。エースによって徐々に深まっていく口付けを喜んで受け入れた。
 プチプチとブラウスのボタン、続けて片手でブラジャーのホックもエースに外され、二つの膨らみが晒される。私の首筋をやわく噛みながら、エースはその大きな掌で膨らみを覆い、ふにふにと揉んで。

「あっ♡ えーす……♡」

 それだけで息が上ずり、ぴくぴくと私の体は反応を示してしまう。無意識のうちに溢れた吐息の甘さは男に媚びる女のそれだ。彼とこんな関係になって初めて自分にもそんな一面があったのだと知った。
 ここまで深い触れ合いを許したのはエースだけなんだけども、きっと彼以外が触れた所でこうはならないだろう。ベタベタされるのは好きじゃなかったのに、エースに触れてもらえるのは嬉しくてしょうがない所からしても。私を女にするのも、女にしたのも、女にできるのも全部エースだけだ。

「ん、あっ♡」
「今日は声我慢するのナシね」

 胸の先をきゅっとひねられ、一際高い声を上げる。普段なら口を手で押さえようとしてしまうところだけど、シーツを掴んでエースのお願いに頷く。
 今日の私はいつも以上に素直に従うつもりでいることに気付いたのか、エースが唇を舐める。彼のその仕草と、細められながらも獰猛な目つきにお腹の奥がきゅうと疼いた。
 くにくにとエースの指先が私の胸の先を弄ぶ。ちょっと強めにこねくり回されたかと思えば、指の腹ですりすりと優しく撫でられて。緩急を付けた愛撫に私の体は的確に高められていく。加えて好き勝手あげている自分の声にも興奮しているせいか、いやに快感が増して。
 すっかり主張し始めた胸の先端をエースは口に含む。ちゅっと吸ったかと思えば、舌先で突いたり、優しく甘噛みしたり。その度にじくじくとお腹の中で熱が溜まっていく、普段よりも早く大きく膨らんでいくそれは今にも溢れてしまいそうで。

「ふぁ♡ う、んんっ♡ えー、す♡ もっ、むね、やだ……♡」
「なんで? いつもよりめちゃくちゃ感じてんじゃん」
「あっ♡ だめ♡ だめ、なの♡ も、う、イ、イっちゃう、からぁ……♡」
「ふーん、じゃ見せてよ。おっぱいでイくとこ」
「ひゃぁあっ♡」

 散々いじめられたそこをぴんと指先で弾かれた瞬間、背筋を反らして達してしまう。
 ぴくぴくと体を痙攣させながら絶頂の余韻に溺れる私の額へエースが唇が寄せる。言われた通りにできたご褒美なのだろう、怒っていても甘やかしてくれる彼に嬉しくなって「えーす、すき」とついに口にする。それに対する彼の答えは「知ってる」とシンプルなものだった。でも唇に追加でキスしてくるところからして喜んでいるのだろう。
 スカートの中にするっとエースが手を差し込んで太股を撫で上げる。軽く汗ばんでいるせいか、しっとりと彼の掌に肌が吸い付く。

「んぅっ♡」
「すっげーぐちゃぐちゃ、もうこれならすぐ入っちゃうんじゃね?」

 太股から滑った指がクロッチ部分を軽く押す。そのまま下着越しに割れ目をなぞられたなら、くちくちと濡れた音を秘部が鳴らす。並々ならぬ興奮にきっとぷくと膨れ上がっているだろう陰核を押しつぶしながら、楽しげな様子でエースが尋ねてくる。
 彼のどことなく荒い息にエースも十分過ぎるほど興奮しているのが透けて見えたから、私は首を傾げて。

「もう、いれる……?」
「……痛いの苦手なくせに何言ってんの、まだ慣らしてないだろ」
「エースなら痛くてもいいよ」
「ッ、ばか、ばーか、ばああーか!! 好きな子に痛い思いさせて喜ぶ趣味とか無いっつーの!!」

 お仕置きなのに相変わらず優しいエースの姿にへにゃと頬が緩む。セックスの最中にするべき表情ではないとは思うけど我慢できなかった。案の定エースはまた拗ねてしまったようで、いかにも不機嫌ですという顔をしていた。
 でも行為が中断されるなんてことはなくて、するっとショーツが足から抜き取られる。

「んっ♡ ん♡ ひあっ♡ ん、あっ♡」

 エースの指が膣の浅い所を何度も行き来する。もっと奥まで入れてほしくて腰を揺らせば「のえっち」と耳元で囁かれる。私をそんな淫らな体にしたのはエースなのに、それに人のこと言えないでしょとばかりに彼のズボンの膨らみを撫でればぴくんとエースの体が跳ねた。一瞬しか見えなかったけれども、動揺した彼の表情はとてもかわいかった。
 ぐっと奥まで指が差し込まれ、気持ちいいところを執拗に撫で回される。ただでさえ弱い所を刺激されているのに、更には陰核も同時にぐりぐりと押し込まれれば私はまたしてもあっけなく絶頂を迎えてしまった。
 達したばかりで敏感な膣内をエースの指が擦るように出し入れさせる。きゅうきゅうと締め付けられながらもスムーズに動く指からして、もう準備が整っているのは明白だった。でもエースが愛撫を止める気配は感じられない。

「えーす♡ も、ゆび、やだ♡」
「いいじゃん。気持ちいいし、オレの指好きだろ?」
「でも、でも、えーすといっしょがいい……」

 気持ちよさに頭が働かなくて、エースのおあずけへ返せたおねだりは実に稚拙な本心だけだった。ぎゅっとエースの上着を掴んで、彼の目を見ながら「いっしょにきもちよくなって」と口にする。

「あっ……」
「そんな悲しそうな声出さないでよ、すぐあげるから」

 エースの指が胎内から抜ける。それを惜しむような声が咄嗟に零れてしまえば、エースに宥められて。ぐっと片足を持ち上げられる。続けざまに、ひたと指とは断然大きさの違う熱の塊が秘部へと宛がわれた。

「んっ♡ んっ♡ んぅ♡ っ、えーす……♡」

 ぐぷぐぷと掻き分けるようにしてエースの熱が内壁を押し広げていく。とろとろに溶かされたそこは吸い込むかのようにエース自身を奥へと誘い銜え込んで。みっちり奥の奥までエースの熱で中が満たされた。
 そしていつもとは違う、初めての感触に身震いする。初めて直に触れ合った粘膜はいつもなんて目じゃないくらい熱くて、お腹の中が火傷してしまいそうだ。
 最奥に入り込んだ状態でエースがキスしてくる。嬉しさと心地よさにきゅうと中が絞まり、はっきりとエースの形を感じ取ってしまう。大きい、熱い、恥ずかしい、気持ちいい、好き、嬉しい、色んな感情がごちゃまぜになっていく。
 すりすりと中の熱を意識させるかのようにエースがおなかを撫でる。まさに今えっちしているのにその動きがすごくえっちだな、なんて思ってしまった。

「あっあっ♡ えーす♡ えーす♡」
「お前のナカ、やっぱすっげえ気持ちいいわ」

 とちゅとちゅ、と小刻みに奥を責められる。奥を押されるたびに反射的に出る声の甘さといったら、我ながら恥ずかしいばかりだ。
 奥深く押し込んだまま、私の首筋へエースが顔を埋める。ちくりと小さな痛み、また一つ彼の証が増やされる。もう私はとっくにエースのものなのに。
 私の様子を窺いながらエースは腰の動きを早めていく。ぐちゅんぐちゅんと激しく腰を打ち付けられ、息が詰まる。気持ちよすぎて怖い、ちょっと苦しい、なのにエースが与えてくれているものだと思うとそれすら愛おしく思えてしまう。
 それ以上入りようがないのに入れろとばかりにぐりぐりと大事な所をエースの熱が押し込んでくる。あるいはマーキングのようだとも感じながら、刺激されるたびに走る電流のような快感をただただ受け止めて。

「えーす♡ あ、んっ♡ あっ♡ ふあああっ♡」
「ッ出、る……!」

 ぐっと腰を押し込んで、ぴったりと子宮口に先端を合わせた状態でエースの熱が大きく脈打つ。いつもなら膜に遮られてしまう熱が今日は全て子宮の中へと注ぎ込まれていく。それがよほど嬉しいのか、私の内壁はもっととばかりに彼を搾って吸い込んで。
 一通り吐き出し終えた後、エースが覆い被さってくる。ちょっぴり重たいけど、彼の体温は心地良い。脱いでたらもっと気持ちいいんだけど、それは二回戦以降に期待かな。

「……ごめん」
「大丈夫だよ。一月じゃお腹ふくらまないし、キスマークもドレスの最終チェックの日には消えてるだろうから」

 ちょっと寂しいけどね。そう言いながら左腕は彼の背中へ回し、右手はエースの左手と絡めて繋ぐ。行為で上がった体温のせいか、薬指の辺りに当たる金属は少し生ぬるい。
 逆側の、かつて呪われていた私の左手の人差し指にはもう何もない。今朝方エースに外してもらったから。でも薬指には彼の妻となる証をはめてもらったままだ。

「それにね、ここもエースのものにしてもらったんだなって、その、実を言うと、嬉しいし」

 こればっかりは一月後、私がトラッポラ姓になってからのお楽しみだと思っていたのだけれど、まさか前倒しで貰える事になるとは。
 エースは一月後、私と結婚する。だがこれまでの認識では私がエースに嫁ぐとは誰も思ってもいない。だって彼らの中ではは男なのだから。ならばエースの結婚を知って、頑なに妻を明かさなかった場合、彼らはエースの妻を好き勝手想像するのだろう。
 私はそれが嫌だった。想像でもエースの妻が別の人になるのが嫌だった。だから我ながらろくでもない独占欲だと思いつつ、どうしても彼の妻になるのは自分だということを証明したくて、渋るエースを説得し、本日、女であるということをバラしたのだ。
 本当にそんなアホらしい理由だけで他に含みなんて何もなくて。だからまさかエースが嫉妬するなんて考えてなかったし、ついでに生中決められることになるなんて一ミリも想像してなかった。安全日だと言っても今まで徹底的に避妊してたあのエースがやらかすなんて……わがままを突き通すのもたまにはアリだな。

「なんでお前そう煽るようなことばっか言うの……」

 彼には悪いがそんな風に企んでいたところ、エースが大きく息を吐いて、ぎゅっと繋いだ手へ力を込めてきた。
 体勢のせいでエースの顔は見れない。でも呟かれた声の甘さと、中で固くなる彼の熱の感触に、きっと長い夜になるのだろうなと思いながら、私はその大きな掌を握り返した。

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