逆襲の監督生(完遂できるとは言っていない)

「なにこれ」

 目が覚めたら後ろ手に椅子へ縛り付けられていたのだ。そりゃあ文句も付けたくなるよねと思っているが、エースをそんな目に遭わせている犯人は他でもない私であった。
 恋人の住処であるオンボロ寮へとお泊まりに来て、ゴースト達はお出かけ中、グリムはサバナ寮に一泊でちょうど二人きり。だから期待していたのに食事後、異常な眠気に襲われ、ちょっと一眠りのつもりするつもりで私のベッドを借りたら椅子に拘束。以上が恋人のエースの身に起こった一連の出来事だ。
 さっきも言ったが私が犯人だけど。ただでさえ体格差がある上、意識のない彼を椅子まで運ぶのは本当に苦労した。たぶん既に体力を半分くらい奪われたと思う。でもここからが本番なのだ。
 張り切った様子の私に、じと〜っと半目で睨み付けてくるエース。別に痛いことはしないからそんな怒らないでほしい。本当に痛いことはしない。何もしないわけじゃないけど。
 寝ていた彼の懐から抜き取ったマジカルペンが机の上にあるのを改め確認し、いそいそとエースの前に座り込む。気持ちキリッとした表情を浮かべながら、エースの顔へと視線を向けて。

「エース、今日は私に頑張らせて」

 いつも気持ちよくしてくれてるから、たまには私がいっぱいしてあげたい。その為に事前にたくさん勉強しておいた。
 期待を込めながらおねだりする私にエースは不服そうだ。私がそういったことがド下手なのを知ってるし、エースはされるより私に色々するのが好きだからなんだろう。

「……どうせこの状況じゃオレなんもできないし、やりたいならやれば?」

 でもエースはなんだかんだ私に甘い。投げやりながらも許可を取れたので「ありがとう」とお礼を告げ、立ち上がって彼の口にキスをする。そこからキスを重ねていくと少し機嫌が直ったのか、彼の眉間の皺が少し和らぐ。
 ただ頑なに唇を閉じて深いキスを避けていたなら、またへそを曲げられてしまった。だってエースのキス、最後までしちゃうと気持ちよすぎて何もできなくなっちゃうし。だからこれは致し方ない!
 そう言い聞かせながらまた座り込む。彼のズボンの前部分が少し膨らんでいることを嬉しく思いながら、震える手でベルトを外す。続けてファスナーをしっかり下ろして、赤いボクサーパンツをずらせば、中から緩く勃ち上がったエースの性器が出てくる。

「……あんまジロジロ見ないでよ」
「ご、ごめん。こんな大きいのがいつも入ってるんだなあってびっくりしちゃって」

 初めて見るわけでもないのに改めて間近で眺めたせいか、そんな風に思ってしまって。正直に感想を告げれば「今更何言ってんの」と、ちょっと辛辣な物言いでエースが返してくる。うーんご機嫌ななめだなあ。
 気を取り直して、さっきよりも少し大きくなった気がするそれにちゅ、ちゅと愛しさを込めて唇を寄せる。縛ったので当たり前だが、それに対するエースの反応はただ耐えるだけ。いつもは頭を撫でられたり胸を触られるのでなんだか新鮮だった。
 竿の裏筋を舌からゆっくり舐め上げる。何度かしてきたけどこの独特の匂いも味もいっこうに慣れない。でも勉強した内容を思い出しながら、おそるおそる先端の膨らんだ部分に舌を這わす。確か敏感な所だから優しくしなきゃだめだったはず。唾液を塗りたくるように何度も舐めてたくさん濡らしてから口の中へと含む。
 事前にバナナで練習したけれど、大きさは断然違うし、感触だって全く違う。だからエースの反応を確かめながら、くびれた部分をちろちろと舐め回す。我ながらぎこちない舌使いだなと思う。それから自分ばっかり興奮してるなあとも。普段と違って全く触られてないのに、さっきからおなかの奥がきゅんと疼いてしょうがない。

「……へたっぴ」

 自覚はしていたが彼から指摘されたことにムッときた私は無理矢理奥まで咥え込む。それに「こら、無理するなって」とエースは諫めてくる。私ができないのはエースが下手くそなままでも大丈夫なように甘やかしたからなのに。
 気持ちの上ではそのまま続けたかったが慣れていないせいか、ただただ苦しくて。渋々彼に言われた通り喉の奥から引き抜く。取り出した後、けほと軽く噎せた私に「ばか」とエースはやわらかくも叱りつけてくる。気遣われてるとはわかるのだけれど、それでもちょっと気に入らない。

「そんなこと言えるのも今のうちなんだから……」

 口がダメならとパジャマのボタンを外して胸を曝け出す。男の人は直接的な刺激もそうだけど視覚情報で欲を煽られるものらしい。だから私は両手で寄せても挟めないレベルの貧乳だが、それでも興奮してくれるエースのことだからこれはきっと効く……はず。
 だいぶ希望的観測が入っているものの、実践あるのみ! 当たって砕けろ精神で片手でできる限り胸を寄せて、乳首を亀頭に擦り付ける。普段はやわらかいはずなのに、もう既にちょっと固くなっている胸の先は自分の欲情を伝えているみたいで恥ずかしい。羞恥心を乗り越えて、すりすりと擦りつけるたび、ぴくぴくとエースの熱が反応してくれる。
 物理的な刺激としては弱いだろうけど、シチュエーションとしては悪くないみたいだ。胸の間のエースの熱はどんどん大きく固くなってくる。ただこれ、私の方も変な気持ちになっちゃうな……。むずむずしつつも続けていれば、エースのそれはすっかり成長して私を貫く時の大きさになって。その先端には唾液じゃない透明の液体がじわと滲んでいた。
 完全体へ導けた事にどうだ!とばかりに上向けば、彼は何とも複雑な表情を浮かべている。悔しそうな恥ずかしそうな色んな感情が入り交じった、初めて見る顔。物珍しさに思わずまじまじ見つめていれば、ふいっと顔を逸らされる。

「満足したならほどいてよ……オレもに触りたい」
「……だ、だめ。まだ終わってないもん」

 エースらしからぬストレートなおねだりについほだされそうになったが、何とか持ちこたえる。エースを自由にしたらすぐぐずぐずにされてしまうからだめだ。今日は私がエースを気持ちよくするって決めたんだから。
 それに終わった後、仕返しにとんでもない目に遭わされるであろう事はわかりきっているので、どうせならできるところまでやってしまいたい。
 再び先端を口に咥えると、さっきより苦いようなしょっぱいような感じが強くなった気がする。決して好きな味ではないけれど、エースが気持ちよくなってる証拠だと思えば悪い気はしない。
 銜え込んだ先っぽをちうちうと軽く吸いながら、根元を手で緩く握って上下に軽く扱く。気持ちいいのか、口の中の熱はびくびくとさっきよりも大きな反応を見せる。

「ひうっ♡ あっ、やだっ、えー、す♡」

 それに張り切ってもっと頑張ろうとしたところで突然あらぬ場所への刺激に思わず口を離す。ぐりぐりと彼の足が器用にもパジャマ越しに秘部を押し込んできていた。気付いてすぐ距離を置いたが、じわと愛液が布へと染みこむ感覚に私もまた感じていた事は悟られてしまった事だろう。

「オレの舐めてただけなのにそんな濡れちゃうんだ……のすけべ♡」
「……足も縛っておくべきだった……」
「ホントにね」

 さてここからどうやって立て直すべきか。そう考えていた矢先、エースが椅子から立ち上がった。そして、はらりと彼の腕からロープが落ちる。えっ。
 咄嗟に彼のマジカルペンの所在を確認するが、ちゃんとそれは机の上に置いたまま。じゃあどうして。混乱している間に私の目の前に来た彼がしゃがみこむ。エースはやたら威圧感のある笑みを浮かべていた。

「最近オレさ、新しいマジックの練習してたんだよね。慣れてないから時間かかったけど挑戦しといてよかったわ」

 縄抜け、と付け足された言葉に顔が引きつる。そんなのってある? まさかすぎる番狂わせに目眩がした。座ったまま後ずされば、その分エースが詰めてくる。

「たくさん気持ちよくしてもらったわけだし? いーっぱいお返ししてやるからさ」

 ひえ、と悲鳴を上げると同時抱きかかえられて、ベッドへと運ばれて、それで。

「あああッ♡ だめっ、もう、えーす、やっ、ああぁ♡」
「ははっ、すっげえ気持ちよさそ♡ やっぱこうじゃないとな♡」
「やっ♡ やら、やあぁ♡ またイっちゃ〜〜〜〜ッひあああ♡」

 いっぱいキスされて全身くまなく愛撫されて更に指だけで三回イかされた後、ようやく入り込んだ熱に私はさっきからずっと絶頂を迎えさせられていた。
 内側から断続的に与えられる快感だけでも頭の神経が焼き切れそうなのに、エースは腰の動きはそのままに陰核をぐりっと指で押しつぶしてくるものだからたまったもんじゃない。
 ぶるぶる震える体から快感と共に迫り上がってくるそれにいやいやと首を振る。でもエースの指は止まってくれない。

「えーす♡ だめっ♡ もう、らめぇ♡ も、れひゃう……♡」
「おもらしじゃないから大丈夫だって、ほら」
「や♡ やっ♡ らめ、らめっ♡ あ、っやあああ〜〜ッ♡」

 痙攣する下腹部にあわせて、ぷしゃ、ぷしゃと透明の液体を吹き出す。恥ずかしさにぐずつけば、その涙をエースが舐め取る。こんな状況に追いやったのはエースなのに慰めるのも彼で、ほだされるのは自分で。その事がただただ悔しい。
 だからせめてもの仕返しにぎゅうと彼の体に縋り付く。こうされたら動きにくくて邪魔だろうから。
 なのにエースは「あまえんぼう」と嬉しそうに私を抱き返すだけ。
 それに勝ち目なんて最初からなかったんだなとようやく私は悟ったのだった。

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