パートナー・イン・クライム
「ただね、もしも誰かに抱かれたりしてたら、戻れなくなっちゃうんだって」
普段から口にしていた家族や友人を恋しがる気持ちに嘘はない。私はずっと元の世界に帰りたかった。望郷の念にかられて涙したことは一度や二度では収まらず、なんなら親友という関係性に甘えて彼らの前で吐露したことだってある。
その上で、私は元の世界への道が開かれたこと、帰ってしまえばもう二度とツイステッドワンダーランドには入れないこと。学園長から告げられた二つの話を伝えた後に、まるで独り言のようにそれを呟いた。
私は元の世界に帰りたかった、でもこの世界を捨てたいわけでもなかった。だから最後まで選べなかった私は二人に託したのだ。
自分のずるさを後ろめたく思いながら、私はその夜オンボロ寮の鍵を開けておいて——。
◇
「おーい、。大丈夫?」
ぺちぺち、優しく頬を叩く手の感触とエースの呼びかけに意識を取り戻す。どうやらデュースに貫かれた衝撃に気を失っていたらしい。
どのくらい飛んでいたのか。私のおなかに回されたデュースの腕も、後ろを埋める彼の熱も、強烈な存在感があるはずなのにすっかり自分の体のように馴染んでしまっていた。
「ダメなら無理しなくていいよ。今日はデュースだけにしとく?」
同棲と、ほぼいつだって交える環境にあるからか。挿入直前でおあずけを食らっている状態にもかかわらず、エースは寛容に接してきてくれる。
それからさっき叩いたところにちゅっと軽くキスされた。エースの動きにベッドのスプリングが軋む。こういうことに使うことを想定して、三人で選んだベッドは丈夫だから、オンボロ寮に住んでいた時のように壊れる心配をする必要はないだろう。
まだ頭がボーッとして思考が追いつかない。その為、私がエースの気遣いに答えられずにいれば、抱きしめるデュースの腕に少しだけ力がこもる。
「エース。それ、後で独り占めするつもりだろ」
「そりゃあね。いいじゃん、今日はお前が独占できるんだからさ」
言い争いとまではいかないけど、口論する二人。その間もデュースは私を優しく抱きしめて、エースは労るように頭を撫でてくれる。初めて二人に愛された日からずっと変わらない、私を包み込んで絡め取る深い愛情を私は感じ続けている。
この世界で私はたくさん大事な人ができた。でも中でも帰れなくなる理由になるのはエースかデュースがよくて。どちらかが応えてくれないだろうか、そんなつもりで開いていた扉からは二人ともが同時に入ってきた。
あの頃の私は二人の気持ちを知らなくて、それからきっと最後まで選べないことも彼らは見抜いていたのだ。そして「巻き込まれにきた」と悪い顔でエースとデュースはそんな優柔不断で卑怯な私を許した。
エースは「面倒事は嫌いだけど、お前もデュースも危なっかしくてほっとけない」と言って。デュースは「この中で喧嘩慣れしてるのは僕だからな、お前とエースの為なら世界相手への大喧嘩だってやってみせるさ」と笑って。
だからこうして大人になっても私達は別れることなく、三人で過ごす道へと進めている。
デュースの大きな手が私の胸を緩く揉む。ぐにぐにと彼の手の中で形を変えるたびに喘ぐ私をエースは楽しげに眺めていた。散々エースに咥えられて赤くなった胸の先をデュースの硬い指先がいじる。びりびりと全身へ走っていく快感に、はっはっと短く何度も息を漏らす。
焦れたデュースと返答できない私にエースはもう傍観に徹することにしたようだった。だけど私は彼の方へ手を伸ばして、かろうじて指先を触れさせた。
「いっしょが、いい」
「……ってば欲張り」
「そんな風にしたのは僕とお前だろ」
締め付けだけでは物足りなくなったのか、デュースが私の体を揺さぶりながら陰核を摘まむ。強い快感に身をよじるが逃げ場はない。続けざまに子宮を腹側から叩かれ、びくんと腰が跳ねた。
前後不覚になって叫ぶ中、陰部をまさぐるデュースの手をエースがどかして両足が持ち上げられる。体勢を知覚する前にずぶりとエースの熱が胎内へと入り込んだ。
おなかの壁を挟む二本の圧迫感に押し出されたような声が出る。少し苦しげな、でもそれ以上の快感を得ているとわかるほど甘ったるくて。だからなんだろう、ぐんと子宮口を強く突き上げられる。
膣と直腸、両方の肉壁を同時に削られ、強烈な快楽に頭がスパークする。奥をゴリゴリと刺激されるのが気持ちよすぎて怖いのに、もっとしてとばかりに体を揺らしてしまう。
「ひう、あ、ぁあっ、えーすっ、でゅーす……!」
二人の名前を呼んで気持ちいいと泣く。ならば、私を貫くただでさえ大きな熱がどちらも更に凶悪に膨らんだ。
しんじゃう、こわれちゃう、快感に喘ぐ私はもう限界だというのに二人は再び胸や陰核も虐めてくる。いやいやと首を振っても、二人とも「嫌って顔してないじゃん」「僕のを嬉しそうにぎゅうぎゅう締めつけてるしな」なんて告げて言葉で私を責め立てた。
そして二人こそが正しいとばかりにぐちゅぐちゅと卑猥な音が流れ続けてる。混ざりあった私達の体液が接合部からシーツへと垂れて大きな染みを作っていた。
気持ちいいが頭を占めて、もうどれがどこから与えられている快感かわからない。二人にきつく体を押さえつけられるのも、激しく腰を打ち付けられるのも、彼らに求められているのだと実感して喜びからぐずぐずにとろけてしまう。
好き、好き、と思いの丈をひたすら口にする私にデュースは耳元で「僕も愛してる」と囁く。エースは嬉しそうに笑って、角度を変えながら何度も口付けてきた。
キスができない代わりなのか、デュースが私の背中に歯を立てる。少し痛い、でもそれ以上に気持ちいい。思わず反らした喉にエースが舌を這わす。
ぎゅうぎゅうと二人の熱をきつく締め上げて、貪欲に彼らの精をねだって。そんな自分を私は浅ましいと思うけど、二人は好きな子がいやらしくて可愛いのは最高だと言ってくれる。だからおなかに力を入れて彼らの絶頂を促して。
一際奥に差し込まれた熱が両方ほぼ同時にどくどくと強く脈打った。おなかの中が彼らに白く塗りつぶされる。何度も達していたけれど彼らの熱を受けて私もまた達していた。
一滴残らず内壁へ塗りつけるように二、三度腰を揺らして、体から熱が抜けていく。二人から撫でられて、キスされて、甘やかされているだけなのに、私はまたぞくぞくと身を震わせてしまう。
その欲情を目敏いエースが見逃すはずもなく、そしてデュースが後ろだけで満足するわけがない。お互いの位置を入れ替えた二人が私を覆う。
「、またオレ達と悪いことしよーな」
「あ、あ、あっ」
二人に開発されたおなかをエースにゆるゆる撫でられて、陸へ打ち上げられた魚のように私は体を跳ねさせる。開きっぱなしの口をデュースが唇で塞いだ。する、とデュースの大きな手が私の髪を優しく梳く。
「三人一緒なら怖くないだろう?」
続けてデュースは脳髄を焼き尽くすような快楽の予感に怯える私を諭すかのよう、あの日の二人がくれた言葉を再現する。それに私はへにゃと頬を緩めた。
私は元の世界を裏切れなかった。一人だろうと帰るのを諦めれば良かっただけ。なのにできない私に二人は付き合ってくれたのだ。元の世界から私を奪い去る。それはきっとお優しいヒーローなんかにはできない、ヴィランの彼らだから為し得たことで。
二人分となれば絶対に戻れないな。完全犯罪成立ってね。そう発した彼らの暗く熱い目に私は自身はおろか、二人に生涯を絡め取られたことに気付き、喜びに身を震わせた。
何があろうと二人は私を離さないだろう。そして私も、もう彼らを離せない。ずっとずっと一緒に悪いこと、付き合ってね。私の非道な願い事に二人は迷うことなく手を伸ばした。