三人きりのユートピア 02
僕の喧嘩におけるモットーは『やる以上は徹底的に』だ。
筋を通さない奴に温情をかけたって無駄、そう僕は喧嘩に明け暮れたあの日々の中で知った。中途半端な仕打ちでは報復されるだけ、ならば変な気も起こせないよう再起不能になるまで打ちのめすのが一番だと。
「……余計な心配だったら良かったんだけどな」
二人を起こさないようベッドから抜け出した僕はトイレの中でスマホに入っていた『ow1つた』のメッセージを確認し、思わず溜め息を吐く。予想するにドラコニア先輩からの暗号じみた文字列はおそらく『おわった』で良いのだろう。
先輩のがおがおドラゴーンくんを修理して以来、彼とは密かに交流していて。それは彼が一国の王となった今でも続いていた。先輩は僕とエースがの恋人になった事を報告した時はとても喜んでくれて。
そして先輩にとってが大事な親友だったこともあり、彼は『を守る為に協力してほしい』という僕のお願いを快く引き受けてくれた。
彼に依頼したのは呪いを付与した茨の設置だ。あの茨は刺さった者へ悪夢をもたらす。僕がわざと空けておいたあの穴以外、施錠されたオンボロ寮に入り込む術はない。だから押し入ってきた招かれざる者には必然的に呪いにかかるようになっている。先輩のメッセージからして無事に呪いは発動したのだろう。
もし潔く諦めるならそれでよし。威嚇はするが、わざわざ喧嘩を売る趣味は今はないからな。だけど僕が心配していたような外道だったのだ、遠慮してやる義理は無い。
が初めてだったと知っている以上、あの幻影はこたえただろう。本当のところは今日やっとが僕らの気持ちを受け入れてくれたことで二回目を迎えたばかりだから、だいぶ現実とは剥離しているのだけれど。まあいずれはあんな風になれる事だろう。
この作戦が最も効果的だろうが、幻とは言えの体を見られるのをエースは嫌がりそうだから内緒にさせてもらった。
悪いな、エース。僕は嘘も隠し事も苦手だから、いずれ鋭いお前は何か勘付くかもしれないが、絶対に口は割らないぞ。あと穴は二人に見つかる前に後でこっそり塞いでおかないとな。
「そろそろ戻るか……」
このゲストルームに付いてるトイレからベッドへと向かう。
僕がいない分寒かったのか、ベッドの上の二人はぴったりと身を寄せ合っていた。すうすうと健やかな寝息とあどけない寝顔がなんだか微笑ましい。僕はが好きだけど、エースがと仲良くしているのを見るのも好きだった。
愛情と友情、形は違っても僕は二人が大好きで。だから大切な二人が幸せそうなのは嬉しいのだけれど。
掛布の中に潜り込んだ僕は二人まとめて抱きしめる。急に二人とも魘されだしたが、ちょっとばかし大目に見てくれ。寂しくなったんだ。
「二人とも、おやすみ」
今夜はきっと良い夢が見られるだろう。大好きな二人となら、ずっと、ずっと、最期の時まで。