エデンで二人占め

「僕は好きな子の初めてが貰えるなら嬉しいけどな」
「そーそー。それにオレとしては最後の男も憧れるかな」

 友人の性事情なんて聞きたくない事の筆頭だろうに、私の優しいマブ達はしっかりと慰めの言葉を返してくれる。
 数時間前に私は彼氏と別れた。元彼が友人達と「処女は重いし面倒くさい」なんてぼやいていた姿に幻滅して私の方から別れを切り出したのだ。あまりに突然だった為か動揺する彼に「処女で悪かったですね」と嫌みったらしく告げれば、何やら色々ごちゃごちゃ言い連ねていたが無視して立ち去って。
 今更だが、あれだけで冷める程度の気持ちだ。最終的に見ればこれで良かったのだろう。元より初めての告白に浮かれていたし、友達からでも良いと言ってくれたから始まったお付き合い。でも穏やかな関係を続けるうち、最近は徐々に好きになり始めていたから少しばかりショックだった。
 でも今は感傷に浸っている場合じゃないだろう。終始納得してない様子だったから、かつてのマジカメモンスターのようにオンボロ寮に押しかけてくるかもしれない。そう考えてエース達に相談したところ、ひとまず今夜は寮長権限でハーツラビュルのゲストルームを貸してもらえることになった。
 グリムは今夜の宿が決まった事情を話したところ、もし来た時は追い払ってやると意気込んでオンボロ寮に待機している。私の親分もこの三年間で随分頼もしくなったものだ。後でたくさんツナ缶用意してあげないとな。
 それで今は件のゲストルームにてマブ二人と今後の動向について話し合って、一通り決まってすっかり雑談を楽しんでいたのだが。
 念のため外から入れないよう施錠魔法と、ついでに防音魔法をエースがかけてくれていたので、思い切ってずっと引っかかっていた事を二人に尋ねてみたのだ。別れのきっかけになった出来事、それから二人とも恋人が処女だったらやっぱ嫌?と。
 聞いたところで何かあるわけじゃない。でも対する彼らの反応が元彼と違って好意的なものだったことに少しホッとしてしまう。気付いていなかっただけで大丈夫な男の人もいるのだなと安心したかったのかもしれない。

「友達から聞いただけなんだけど、その……初めては凄く痛いらしいじゃん」
「まあ、よく聞くよね。オレの友達で経験済の奴も、最初の時は彼女がめちゃくちゃ痛がってたって言ってた」
「じょ、女性は大変らしいな……」

 親友とはいえ異性だからか、そういうぶっこんだ話をするのは初めてだった。でももう一回言ってしまったんだからと開き直って私は更に話を続ける。

「……どうせ痛い思いするなら、初めてでも喜んでくれる人にあげたいや」

 自分でもわがままなのはわかってる。彼らはこう言ってくれているが、男性にとって手間がかかる事には変わりないのだから。けどそれくらい夢見たって良いだろう。
 私は恋すらまだだけども、性行為自体はこの先何度も体験するかもしれない。でも初めては一生に一度しかないのだ。何の感慨もなく使用済のゴムと一緒にあっさりゴミ箱へ捨てるような人より、せっかくなら大切に貰ってくれる人が良い。
 そんな夢見がちな事を考えていたら、カーペットに付いた手へエースの手が重なっていた。なのに「なあ」と呼びかけてきたのはデュースで。

「だったら僕らにくれないか」

 彼が言っている意味が理解できず、ぽかんとアホ面を晒す私へエースが追撃する。

「さっきも言ったけどさ。オレもデュースも、好きな子の初めてとか欲しくてしょーがないんだよね」

 大切にするから。とんでもない事を言われて、とんでもない事をねだられて。けど二人の真摯な眼差しに気付けば私は首を縦に振っていた。

 人間って気持ちよすぎるとアイスクリームみたいに溶けちゃうもんなんだなあ。頭のてっぺんから爪先までくまなく二人の手と口に可愛がられ、とろとろに蕩けてしまっている自分にそんなことを考えてしまう。
 もはや生まれたままの姿である事を恥ずかしいと思う気力すらなくて。エースのお腹の上に身を任せてしまっているけど重くないんだろうか。好き、かわいい、そんな甘い言葉の繰り返しのせいで、ぽやぽやふわふわ、頭までふやけてしまっているようだった。
 何かを唱えながらエースの指先が私のおなかの上で円を描く。無事に発動したのか、突然カッと熱くなったおなかに目を白黒させてしまう。

「さ、さっきのなに……?」
「あー、ごめん。びっくりした?」
「エース、お前避妊魔法なんて使えたのか?」
「むしろ使えないしゴムも持ってないのにやろうとすんなよ、ったく……次はちゃんと付けるから」

 優しく頭を撫でながらの発言に、エースのあの約束は本気だったのだなと今更思ってしまう。
 私がどろどろになっちゃう少し前。どっちが私の初めてになるかの話になった。最初は私にどっちがいいか尋ねてくれたけれど決められなくて、だから二人でやりとりしてもらったのだけれど、エースが「初めてはお前に譲るから、が人生で最後にセックスする相手はオレにして」と。私とデュースはそれを了承して。
 軽はずみに請け負うべき約束ではなかっただろう。でも最初も最後も大好きな親友達が貰ってくれるのを嬉しいと思ってしまったから。

、入れるぞ」
「う、うん……」

 私の足を持ち上げて、デュースの熱が膣口に触れる。ぐっと体重がかけられ先端が埋まって。

「〜〜〜〜ッ゛」

 押さえきれなかった悲鳴が微かに漏れてしまう。痛みにぶわと全身が粟立った。あんなにとろとろになっていてもだめなのか、蕩けていたはずの体はすっかり強ばって固くなっていた。

、大丈夫か?」

 デュースの質問に頷く事はできなかった。痛い、痛い、まだほんの少し入っただけなのに。でもそんなこと言ったらきっと困らせてしまう。だから息を詰めて必死に声を噛み殺す。
 ゆっくりデュースが押し込まれるたび、みちみちと体の中から裂けるような音が聞こえてくる。シーツを掴んで痛みを逃がそうとするが上手くいかない。
 デュースも眉間に皺を寄せて苦しそうに唸っている。どうしよう、どうしたら。

「ひうっ」
「デュース、下触ってやれよ。さっきイかせまくったとこ」
「ああ」
「まって、あっ、ふぁあ」

 ふにふにと胸を弄りながらのエースの助言に、デュースが指の腹でくるくる陰核を撫でる。その気持ちよさに力んでいた体は緩んだのに、中はデュースの熱をきゅうと締め付けてしまう。すっかり痛みが逃げても二人の手はそのままなせいでびくびくと体の痙攣が止まらない。
 上と下、両方からの愛撫に我を忘れて喘いでいたなら、ずんと腰に衝撃が走った。涙の膜でぼやけた目で思わず下を見れば、デュースの熱が私の中に完全に入り込んでいた。

「ひ、あ、あぁ、でゅー、す、ん、んっ」
ッ……!」

 デュースがごちゅごちゅと勢いよく腰を振るう。さっきまであんなに痛かったのに、追加の愛撫に潤んだせいか滑りが良くて今は痛みは殆ど感じられなかった。快感だけを拾い上げて高みへと突き詰められていく。

「あーあーすっかり気持ちよさそうな顔しちゃって……妬けるわ」
「きゃうっ、あっ、えーす、やっ、やああ」

 突然エースに胸の先を強く摘ままれ、そのままこねくり回される。上下からもたらされる快感に耐えきれなかった私の体が大きく跳ねる。
 達したことで中がぎゅうと一際デュースのものを締め付ける。その刺激にデュースが胎内へと熱い飛沫を吐き出した。
 ずるりと体からデュースの熱が抜けていく。絶頂を迎えたばかりで敏感になっていた私はそれにすら甘い息を溢してしまう。

、ありがとう」

 心から喜んでいる様子を見せるデュースに胸がぽかぽかと温かくなる。痛かったけど、それでも彼に初めてをあげてよかった。

「……でゅーす、きもち、よかった……?」
「えっ、その……すごくよかった、です」
「デュースお前なんで敬語なんだよ」
「うっせえ!」
「あーこわ。じゃ風呂に入れてくるから、デュース、部屋の後片付けよろしく〜」

 からかうエースにいつもの私達の雰囲気へと戻る。だが私は抱きかかえようとするエースへ咄嗟に「まって」と声を掛けていた。

「あの、えーすは……? しないの……?」
「もう疲れたでしょ、いいよ。今度で」

 頭を優しく撫でられる。彼の言うとおり、すごく疲れてる。そして労ってくれたエースの表情はひどく穏やかで、本当にそう思っているのが見て分かった、けど。

「……えーすにも、きもちよくなってほしい。いっぱいきもちよかった、から」

 はしたないと思いながらもおねだりする私に、きゅっとエースは唇を結ぶ。だめ?と続けて首をかしげる。それにエースは怒ったような呆れたような顔、頭をガリガリかいて彼は大きく息を吐いた。

「人がせっかく我慢してるのに悪い奴だね、お前」
「そのわりにはやる気満々じゃないか」
「こんな煽られたらね」

 さっきとは逆の位置に二人が座る。エースの綺麗な指が私の手を絡め取る。そして再び私は二人の熱でどろどろに溶かされていった。

 頭を乾かしているうちに寝てしまったを抱きかかえて浴室から戻ってきたならば、後片付けを終えたデュースはすっかりベッドで寝入っていた。
 体力を使ったのもあるだろうけど、きっと緊張しいの二人のことだ。精神的な疲労にだいぶやられてたんだろう。
 そうそう目覚めそうにないが、一応起こさないよう気をつけながらデュースの端へ追いやり、その隣へを横たわらせる。そしてデュースと共にを挟むようにしてオレも彼女の隣へ潜り込む。ちょっと狭いけどオンボロ寮のベッドよりはだいぶマシ。

(どうせ男同士の悪ノリとかなんだろうけど)

 寝っ転がって考えたのはを傷ついたやりとりについて。本当はわかっていた、元彼のやつが言った言葉は本心じゃない、ただただ周りに話を合わせただけだって事は。
 自分の気持ちに嘘吐いたって良いことないのにな。かつてどこぞの馬の骨にを取られた時、オレ死にたくなるぐらいそう思い知ったんだよね。たぶんデュースも同じく。
 同性である以上、微妙な男心を理解しているオレ達はの元彼をカバーしてやれた。でも言ってやらない。だって言ったところでオレにもデュースにも何一つ得がないじゃん。きっと今話してもは許してくれるだろうけど、ってば変に自信がないからヤりたいが為に騙したと取られそうだし。
 好きだから欲しかった、本当にシンプルにそれだけなんだけどな。こうして抱いても、たぶんしばらくはわかってもらえないと思う。
 でもかまわない。今はそれでいい。オレが最後の男になることには頷いたのだから。その約束を理由にオレは一生の傍にいる。最期までに落としきってやればオレの勝ちなんだしさ、もう既に勝機は見えつつあるしね。
 この賭けにはデュースも間違いなく付いてくるだろうけど……最初と最後の男で二人占めするのも、まあ悪くはないだろう。

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