本当のことしか言ってない
私の恋人であるレオナ先輩は顔が良い。
まあ私の周囲の人達はどいつもこいつも顔が良いのだけれども。惚れた欲目なのか、かっこいいなと改めて実感するのは彼だけだった。
他の人達も顔が良いなとは思う事こそあっても、その程度の反応で落ち着いているのは、日常的にイケメンを摂取している状態が続いて、美形に慣れてしまったからなのかもしれない。そうだとしたら贅沢なマンネリだなあ。
でも、それもこれも飛び抜けた顔面偏差値で私のイケメン基準を爆上げしてきた彼らが悪いのだと責任転嫁させていただこう。
「相変わらずかっこいいなあ……」
起き抜けに私は眠る彼の頬へと指を這わす。
レオナさんから昼寝に誘われ、こうして一緒にベッドにもぐったものの、一時間もしないうちに私は目覚めてしまった。普段からそんなに夜更かしをしてないし、ここで寝過ぎたら夜が眠れなくなっちゃうからなんだろう。
起きてる時のワイルドな表情はもちろん良いが、寝顔が少しあどけなくなるのも大変好ましい。見たことはないが、おそらくレオナさん相手なら変顔でも魅力的だと感じられる自信がある。先輩は絶対変顔なんてしないだろうけど。
まるで口癖のよう、事ある毎に私は彼へ「かっこいい」と伝えている。それを毎回先輩は特に感慨も無さそうに受け取っていたのだが、ある日「王族だからな」と、ちょっとした豆知識を授けてくれたのだった。
才を持つ美女は金と権力の元に集う。その遺伝子の寄せ集めなのだから、王族の容姿が恵まれているのはごく普通の事なのだと。
彼がもたらしたこの見識を穿った見方だとは思わない。論理的に考えてその可能性は充分にあり得るだろう。
あと、だから先輩って自らキュートなお耳って認めちゃうほど自分の容姿に絶対的な自信を持ってるのに、尊大な態度にしては他の部分を過小評価しがちなのだろうなと感じた。
嫌な顔されるから言えないけど慕われたら無碍にできない優しいところも、意外とお茶目なところも好きだ。積み上げてきた知性を感じさせる所作も素敵だ。
でも先輩は第二王子としての価値を客観的に理解しても、彼個人の魅力に対しては卑屈なのだ。彼の育った環境を考えれば無理もないだろうけど……。
ただなあ、子供は大人が認識している以上に敏いものだ。くわえてチェカくんに至っては次期国王ということで、ことさら対人における教育を受けていることだろう。そんな彼にあれだけ懐かれている時点で必要とされてるも同然なのに。
先輩が素直に受け入れられないだけで、彼の良いところっていっぱいあるんだけどなあ。まあ、おいおい伝えていけばいいか。彼が私を手放す気もなければ、私が彼から離れるつもりもないんだから。
腰骨を先輩の尻尾がくすぐる。うすうす気付いていたが、やっぱりそうだったか。確信しながら先輩の唇にじぶんのそれを重ねる。
ちょっと動けば、またキスできる程度の距離にある彼の顔。その目はしっかり開いて、ついでに口角も上がっていた。
「俺の寝込みを襲うだなんて、大それたことしてるじゃねーか」
「先輩、狸寝だったから不敬じゃないでーす……それに私、先輩の可愛い恋人ですし」
日本人の気質的にそれを自分で口にするのは大変恥ずかしいが、先輩は特に否定せず、むしろ「そうだったな」なんて当たり前のように返してくる。
恋は盲目ってやつなのか。どうも先輩には私がとびきり可愛い女の子に見えているらしい。ヴィル先輩が美の化身と称されているところからして、私とこの世界の美の基準が違うなんてこともなさそうなのに。
レオナ先輩が思う美女からかけ離れた平々凡々な顔をしている私のことを、彼は暇さえあれば「かわいい奴だな」と言葉にしている。めちゃくちゃ照れくさいが、好きな人にそう思ってもらえるのは本当に嬉しい。
小さく口付けて、先輩は私を抱く腕に力を込める。どうやらこのおやすみ3秒ライオンさんはまだ眠り足りないらしい。うーん、しょうがないなあ。
今日は夜更かし電話に付き合ってもらおう。そう企みながら私は少しでも彼が愛らしく感じるよう、胸元へとじゃれつくみたいにすり寄った。