女だとわからせる話

 突然だが現在進行形で好きな子のおっぱいがめっちゃ当たってる。
 監督生が前々から気になっていたアートブックが手に入って。それで拙者の部屋で一緒に見ることになったのだ。そこまでは至って健全な気配しかしなかった。どうしてこうなったのかって?
 隣に座っているだけなら、こんなラッキースケベな状況に陥ることはなかったと思う。
 でもいかんせん彼女は想定していた以上におっぱいが大きくて、しかも拙者の方に身を乗り出しているのでガッツリそのやわらかさを味わうことになっていた。そうはならんやろ? なっとるやろがい!
 なんなのこの子の距離感バグ。いやまあ実のところ拙者のせいなんですが……。

 僕はコミュ強陽キャオタクこと監督生氏が女の子と発覚する前から、彼女に想いを寄せていた。
 まさかの同性に恋したことにそりゃー悩んだよね。でも最終的には男だろうがうるせえ好き!と吹っ切れましたけど。
 そして同性だから多少距離感バグってても問題ないでしょとぐいぐい距離を詰めていたわけだ。自分で言うのもなんだけどオタクって変に行動力あるよね。
 彼女は最初「距離感バグってません?」と疑問を抱いていたものの「男友達なんだからこれぐらい普通」で押し通した結果「うーん後悔しても知らないですよ」と許容してくれた。
 当時はそんなことありえませんわwwと笑い飛ばしてたけど、その言葉の真意、彼女が女の子だと知った時に"わかっちゃった"よね……。これは完全なバカップルの距離感なんすわ……。
 監督生氏も監督生氏で、完璧な男装&やたら高い適応力と言う名のわりと適当な性格のせいで、この距離に順応しちゃって。そして、もうああ言っちゃった手前拙者から引くにも引けず、こうして今に至るわけなんだけど。
 女の子のおっぱいって、もしかして感覚ないの? じゃなきゃ、さすがに気付くよね……? 拙者の体で君のおっぱい潰れてるんだが。
 改めて思う。うわあ、やわらかい、おっぱいでかい。こんなんバカになる。あ〜〜IQが下がる音〜〜!

「ねえ、先輩。話、聞いてます?」
「は、ヒッ?!」
「やっぱり聞いてなかったですよね、その様子じゃ」

 僕を責めるような口ぶりなのに、監督生氏の声は思いのほか優しい。それから表情も不機嫌からはほど遠い。むしろなんだか楽しげというか、いやに艶っぽさを感じる微笑みを彼女は浮かべていた。
 思わずごくりと喉を鳴らせば、彼女の細い指が僕の喉仏をくすぐる。

「……私が女だってわかりました?」

 何を言われているのか一瞬分からなかったけど、最大級の煽りだとわかった途端、頭が沸騰するぐらい熱くなった。たぶん物理的にも真っ赤に燃え上がっているだろう。
 安い挑発だとわかっていても乗ってしまうのは所詮自分もNRC生だという証拠か。今の君はきっとチョッロとか思ってるんだろうね、考えたら余計に苛ついてきた。
 ちょっと後ろに押せば、簡単に軽い彼女の体は倒れる。先に仕掛けてきたのはそっちだというのに、仰向けになった彼女は目を丸くしていた。
 男を煽ってなんで無事で済むと思ったのか。もしや陰キャオタクがこんな行動に出るなんて考えてなかったわけ? だったら残念だったね!

「わざわざ言われなくたって元からわかってましたが??? ……むしろわかってないのは君の方だろ」

 覆い被ってやればちょっとは怯えるかと思いきや、彼女は黙って口角を上げる。
 純真なのか、小悪魔なのか。ああ結局どっちなんだよ。もうどっちでもいい。とりあえず今は君が女の子だってわからせてやるのが先でしょ、間違いなく。

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