友情価格に感謝しろ
片思いだと思い込んでる親友達両方から相談され続け、ずっとやきもきさせてきた二人が先日ようやく、くっついた。
ミドルスクール時代に色々あったり、今はそんな事してる場合じゃないから、オレとしては人ごとでも恋愛とは距離をおきたかったんだけど……。
残念ながら例の二人がいつも一緒にいる友人なので、放っておくに放っておけなくて。
だって絵に描いたような天然と鈍感極めてるアイツらだけだと、いつまで経っても結ばれそうになかったし。
それにアイツら、オレへ事ある毎に頼ってくる以外にも、普段から構ってくるから巻き込まれざるをえないというか。
せっかく両思いになったわけだし、普通カップルらしくイチャイチャしたいと思うじゃん。
だから気を遣って、できる限り二人きりにしてやろうとすれば、なんでか付いてくる。
アイガモのヒナか?ってぐらいに。お前ら、オレのこと好き過ぎない?
そうやって懐かれてしまうと邪険にするのも難しくて。そんなこんなで休日の今日もオレはガッツリ二人の恋愛事情に付き合わされていた。
「あーもう……。デュースなにやってんだよ。手ぐらいさっさと繋げよ」
隣を歩く監督生へ手を伸ばしては引っ込めているデュースに小声でぼやく。
もどかしい。でもデュースって変なところで暴走するタイプなので、今ぐらいのアプローチで止まってほしい気持ちもある。
オレ達が今いる薔薇の迷路だが構造上隠れやすいので気付かれる心配はしていない。
二人とも初めてのデートでそれどころじゃないだろうし、そもそもオレがこっそり見守っているのは二人とも分かってる。
話せば長くなるけど、端的に言えばオレがこうやって二人をデバガメをしてるのは本人達に頼まれたからだ。
最初は街に行く予定だったのに、学園長から監督生の外出許可が下りなくて、デートできなくてどうしようという相談だった。
これについては二人ともから別々に話を持ちかけられて。
あんまりにもションボリしてるので「寮長にうまく話を通してやるから、薔薇の迷路使わせてもらえば?」と提案した。
じゃあ今度はどんな服を選んだらいいんだろうと、また二人別々に意見を求めてきた。
監督生はケイト先輩に頼んでお姉さんのおさがりを貰って解決。
デュースは大変だった、なんか色々と。
だってアイツ、お前どこで買ったんだよってツッコむしかないバチバチのヤンキー服しか持ってねえの。
だからオレの服を貸そうかって考えたけど、色合いとか目指すテイスト的に、トレイ先輩の服の方が向いてそうってことで借りてきて、こっちもできあがり。
一件落着〜と思った矢先に、次は初デートを見守ってくれと。これに関してもやっぱり二人別々に頼ってきた。お揃い過ぎる思考回路に『もうお前ら結婚したら?』と思ったオレは悪くない。
休みが潰れるから断るつもりだった。だけどあんまりにも縋られるから、なんというか。
監督生はチェリーパイ焼いてくれる約束で了承して、デュースにはチョコクロワッサンとスペシャルランチ三日おごりで手を打った。
それなら割に合うかなと計算したのと、約束を破ると二人とも怖いから、仕方なしにオレはこうやって律儀に観察してるってわけ。
「ここまで来るといっそ哀れだな……」
相変わらずデュースは手繋ぎチャレンジに失敗し続けている。
それにしてもちょくちょく二人の会話が聞こえてくるのだが、見事にオレの話しかしてない。なんでだよ!
「……おっ、監督生やるじゃん」
デュースのヘタレ具合にイライラしていたら、アピールに気付いたらしい監督生からぎゅっと手を握り込んだ。
ニコニコしている監督生にボッと火が付いたように赤くなるデュース。
本当にウブだなと思っていたら、ピンと張っていたデュースの背がだんだん丸まっていく。
その異変の理由を同じ男であるが故に察してしまったオレは頭を抱えた。
デュースが女に耐性がない事はわかっていた。
だからってお前……いくらなんでもお前……。手繋いだだけでそんな事ってある?
オレも童貞だけど、そこまで拗らせてないんだけど。早く収めろ、頼むから。
監督生ただでさえウブなのに気付かれたら一発で終わりじゃん!
予想外のハプニングにオレがハラハラしていれば、監督生がデュースの様子がおかしいことに気付いてしまった。
ただ幸いにも前屈みになった根本的な原因はわかっていないようだった。お願いだから気付かないでくれ。いやホントに止めてあげて。
顔を真っ赤にするデュースは見るからに異様だ。
監督生としては熱があると思ったんだろう。彼女がおでこをくっつける。
瞬間、デュースがガッと監督生の肩を掴んだ。
嫌な予感に割って出ようか一瞬悩んでるうちに熱烈なキスシーンが始まってしまって。
アイツやりやがった! 胃がキリキリと痛む。お前、お前な! 初キスでそれはだめだろ!!
好きな子の唐突な接近にパニクったのはわかるけどさ。
って、うわ……アイツ、あれで飽き足らず舌ねじ込んでるんだけど……。なんでオレこんなもん見せられてるの。猛烈に帰りたい。
でも、そのわりには監督生、まったく抵抗していな……いや、違うわ、監督生、気絶してんじゃん!! バカ! この……バカッッ!!
デュースも遅れて監督生が気絶した事に気付いたらしく、監督生を抱き留めながらオロオロしている。その情けなすぎる姿に思わず大きな溜め息が出た。
——チョコクロワッサンとスペシャルランチ、一週間に延長させよう。
そう心に決めながら助け船を出すべく、オレは茂みから姿を現すのだった。