貴方を愛しています

「監督生、もらってくれないか」

 今年の春頃、薔薇を育てたいのだとデュースから相談を受けた。おそらく私の趣味がガーデニングだと言っていたから頼ってくれたのだろう。
 新苗であれば薔薇を植え付けても問題ない時期だったのだが、デュースは花を育てる事に関して全くの初心者である。園芸に慣れてないのに薔薇は難しすぎるということで、比較的育てるのが簡単なマーガレットを勧めて。
 一緒にサムさんの店に鉢を含めて買いに行った後、育て方について色々アドバイスしておいた。デュースは説明されていれば、しっかりこなせるタイプだ。
 おかげで彼らの部屋で育てられていたその花は写真で見せてもらうたび、立派に成長していて。
 そしてだいぶ肌寒くなり始めた今日この頃、そろそろマーガレットは開花時期だったなあと思っていた矢先。
 デュースが咲いたのだと鉢をオンボロ寮まで持ってきてくれたのだが、それを彼は私に差し出している。

「え、えっと……」
「本当は赤い薔薇を贈りたかったんだ」

 私が言葉に詰まっていれば、静かにデュースは語る。
 そうなることを望んでいたくせ、実際になってみるとこんなにも緊張するものなのか。鉢を差し出したままのデュースの手も震えている。
 あいにく私は彼がその花を選ぼうとしていた理由や、わずかに薔薇色の兆しを見せる頬の意味に気付かないほど鈍感ではなかった。
 マーガレットは温度で色が変わる、そして寒さに弱い花だ。
 白い花弁がほんのり薄桃に変わり始めているという事は暖かい場所に移された、寒がることのないよう大事に育てられてきた証拠だった。
 きっと美しく花開くだろうと思っていた。でも彼が持ってきてくれたそれは予想以上に美しすぎた。
 目鼻が存在してない以上、表情などわかるはずもないのに彼に育て上げられたその子はどこか誇らしげに見えた。

「……すごく綺麗だね」
「お前が育て方を教えてくれた時に、この花が一番好きだって言ってたから」

 頑張ったんだとデュースがはにかむ。
 確かにこっそりそんな話をした覚えがある。私のそんな何気ない言葉がいっそう彼のやる気に火を付けたのか。思わず唇が緩む。
 こんなにも綺麗に育つぐらい、私のために手間暇かけてくれたのが凄く嬉しい。私の事を考えながら育ててくれたその時間が愛しい。
 私も彼の為に何か育ててみようか。いっそ二人で育ててみるのも良いかもしれない。この恋と同じくらい、綺麗な花を彼と咲かせたい。

「デュース、私も」

 受け取った鉢植え、真実の愛の意味を持つ花を抱きしめながら、私は赤い薔薇の花言葉を続けて口にした。

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