使えるものは使う主義

 は小さい。
 口とか、手とか、身長とか全部小さい。お尻だけはちょっと大きめだけど、おっぱいはない。
 え、何? セクハラ? いや、しょうがないじゃん! 好きな女の子のそういうところに目が行っちゃうのは! 一番そういうの気になるお年頃だし。むしろ男子高校生的にそそられない方が不健全というか……誰に言い訳してるんだろ、オレ。
 とにかく、めでたくオレの彼女になったはまあそんな感じの体型なんだけれど、オレは正直言うと巨乳好きだったりする。
 これまでのオカズはもっぱら巨乳のおねーさんものだったし、街とかですれ違った時ちょっといいなーと思うタイプだっておっぱいが大きい子で。
 だけどに関してはタイプから外れてるとかどうでもよかったんだよね。一緒にいると楽しくて、隣にいるのがしっくりきて、笑顔見てると胸がぎゅーってなるというか。オレもしかして今めちゃくちゃ恥ずかしいこと考えてない?
 といった風に、兄貴含めNRC生には絶対悟られたくない感情をオレはに抱いてるわけで。何が言いたいのかと言うとオレはのことはおっぱい関係なく好きで、はおっぱいがないってことなんだけど。

 オンボロ寮に遊びに来ていたオレは今なら二人きりだし、恋人なんだし、ちょっとぐらいベタベタしたっていいでしょと見極めて、のことを抱きしめていた。
 初めてのハグにはちょっと驚いていたけど、ぎゅっと抱きしめ返してきて。かわいいと思った瞬間、とある衝撃がオレを襲った。
 むにゅう、とやわらかいものが胸元に当たる。この時のオレはきっと背中に宇宙を背負っていたことだろう。

「エース?」

 思わず一回体を離して、思いっきり抱きしめなおす。かなり不審な行動だったけど、はさして気にした様子もなくまたオレの背中に腕を回して。やっぱりオレの胸の辺りにその最高な感触は存在していた。

(えっデッッッカ)

 今オレはめちゃくちゃ動揺してる。下手したらドワーフ鉱山で化け物に追いかけられた時よりも動揺してるかもしれない。
 オレと彼女の体の間で形を変えているそれは感触からしてたぶんオレの掌からはみ出るぐらいある。おかげでおっぱいがいっぱい!!とか幼稚園児が喜びそうなレベルの単語がオレの頭を占めていた。
 ふと、ぶかぶかの制服を着ながら「ここの制服って着痩せするね〜」とかが言ってて「お前が単にちっちゃいだけでしょ」と、からかった時の事を唐突に思い出す。いやいやいや、これはもはや着痩せってレベルじゃないだろ!!
 胸元に意識が集中すれば当然むくむくとよろしくない感情やらが起き上がるけど、本日の授業で見た汗を撒き散らすバル先の姿を頭に浮かべて、なんとかやりすごす。
 は男装してたわけじゃないけど女の子だって言ってなかったせいで、周囲に男だと思われていた時期がある。オレも勘違いしていた一人なんだけど。まさか男子校に女の子入学させるなんて普通考えないじゃん!
 それで一時期オンボロ寮にエロ本預けていたんだよね……。寮長に見つかったらマズそうだったし。その時には「しょうがないな〜」と呆れながらも受け取ってくれた。いや断れよ!!
 話が逸れたけど、そんな感じなのではエロい事には理解がある。でも恋愛に関しては、ちょっとしたスキンシップにも恥ずかしそうに、はにかむところからして、かなり奥手なんだと思う。
 なので下手に元気になってるのを知られるのは得策じゃないかなって。引かないで普通に流してくれそうな気もするけど。
 ……いや待てよ。恋人なんだし、いっそちょっとぐらい突っ込んでみても許されるんじゃね?

「オレ、お前がこんなグラマーだって知らなかったんだけど」
「元々着痩せする上に認識阻害の魔法かけてもらってるからね」

 休戦というわけじゃないけれど、一旦体を離して感想を述べてみる。
 着痩せする体質にしたってさすがにこのおっぱいじゃ無理でしょと思っていたら、案の定からくりがあったらしい。
 できる限り言葉は選んだおかげで、オレのぶっこんだ発言に対して、に悪い感情を抱いていないようだった。

「私、身長伸ばしたくて牛乳いっぱい飲んでたんだけど胸ばっかり大きくなっちゃって……」
「あー……」
「背丈がないせいで胸が悪目立ちするし、肩凝るし、軽く見られるし、将来垂れそうで怖いし」

 とにかく自分の胸が嫌いだったのだとは口にする。
 それにオレはだらだらと冷や汗をかいていた。このめっちゃコンプレックス抱いてる様子からしてオレ、かなり危ない橋渡ってたな! セーフ!! すっげー気になるけど何カップ?とか聞かなくてよかった!!!
 いつかは教えてほしいけど、しばらくは胸については触れない方がよさそう。話題的にも物理的にも……嫌われたくないし。

「だからね、認識阻害の魔法すっごく助かってたんだ。自分でも見えないし触ってもわからないし、足下見えなくて怖いとか、人混みでも当たらないようにとか気にしなくていいし!」

 にこーっと晴れやかな顔で、めちゃくちゃボロクソに言うじゃん……。いや、的にはそれだけ困ってたんだろうけど。巨乳好きとしてはもうちょっと手心を加えてほしいというか。
 ……あれ? 自分でも見えないし触ってもわからないって言ったよな、さっき。改めて視線を下に向ければ、さっきまでは無かった膨らみが存在していた。ってことは今、魔法、とけてるって事?

「私の意志でとくのもかけるのも好きにできるようにしてもらったの。見えないし、触れないから」

 そう唇を動かすの表情はさっきと打って変わって蠱惑的で。
 言い終えた彼女はぎゅっと強く抱きついてくる。まるで胸を押しつけてくるみたいに。あ、違うわ、みたいじゃなくて。むにゅむにゅとふわふわと何とも言えない気持ちいい感触に色んなものをぐちゃぐちゃにされる。
 オレは彼女の事を見誤っていたらしい。キスもまだなのにこんなグイグイくるなんて。
 そういえばはオレが巨乳好きだって知ってたわ。かつて預けたエロ本の表紙を思い出しながら、オレはの思惑通りまんまと乗って胸を……。
 じゃなくまずはファーストキスを味わうことにして。
 だってオレ、に触りたいけど、体目的じゃないし。ちゃーんと恋人のステップは踏ませてもらいますよーだ。
 まあその後については……言わなくてもわかるよな?ってことで。

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